クマの被害が全国で相次ぐ中、対応する自治体に…「クマを殺すな。山に返すべきだ」「熊の駆除をしないから、人が殺されたじゃねーかよ」こうした意見が相次ぎ、頭を悩ませています。
【写真を見る】「クマを殺すな。」自治体に実際に寄せられた“苦情”の内容
「殺すな」「無能集団」クマ出没で寄せられる多数の“苦情”
全国各地で出没が相次ぐクマ。6日も山形県鶴岡市で81歳の女性がクマに襲われました。女性は太ももをひっかかれましたが、擦り傷程度で歩けるということです。
環境省によりますと、4月から7月までにクマに襲われけがをするなどの被害にあった人の数は全国で55人に上っています。これは過去最多の被害者数となった2023年度とほぼ同じペースです。
こうしたクマの被害への対応に加え、自治体はいま“苦情”の対応にも頭を悩ませています。
北海道福島町では、7月12日、新聞配達中の男性がクマに襲われ死亡しました。このとき、北海道のヒグマ対策室に寄せられた、多数の苦情の具体的な内容が明らかになりました。
7月12日(原文ママ)
「お前等が熊の駆除をしっかりしないからまた人が殺されたじゃねーかーよ」
「いい加減にしろって無能集団が」
7月12日
「ヒグマ警報とかそんな意味のないことしないでさっさと熊を駆除しなよ」
「とにかく駆除 駆除 駆除」
7月12日
「仕事しないなら退職しなさいよ!」
男性を襲ったクマは、6日後の18日に住民からの目撃情報で、捜索していたハンターによって駆除されました。すると、今度はこんな電話が…
7月18日
「なんでもかんでもクマを殺すな。クマを山に返すべきだ」
7月22日
「人を襲ったクマだとか、いい加減なことを言うな」
7月18日
「動物たちは意味があって生きている。麻酔で眠らせて動物園に送り、その姿に癒やされるべき」
約120件の“苦情”を5人で対応…自治体も苦慮
人を襲ったクマを擁護する意見が相次いだのです。こうした意見は男性が死亡した7月12日から24日の間に約120件寄せられ、ヒグマ対策室ではわずか5人の職員で対応にあたっていたといいます。
北海道ヒグマ対策室 森山寛史さん
「中には2時間という電話もございました。数少ない職員で対応している中、長時間の電話であるとか、複数回同じような意見が来ると、業務に支障が生ずる可能性があります」
「無能集団」「退職しなさい」といった言葉については。
北海道ヒグマ対策室 森山寛史さん
「誹謗中傷に近いような意見をいただくと、非常につらく感じたところでございます」
ヒグマ対策室によれば、クマの捕獲は▼出没場所、▼人への付きまとい、▼食害などの状況から判断しているといいます。それと同時に、▼個体数の管理、▼ゾーニング管理(空間的な棲み分け)などでクマとの共存を模索しています。
北海道ヒグマ対策室 森山寛史さん
「今回のように人身事故防止のために、適正に行われた捕獲に関しては、地域の皆様の安全や生活を守るために必要な行為であり、こうしたヒグマの有害捕獲の重要性については、ご理解いただきたい」
もはや“カスハラ”の域…苦情への対応
小川彩佳キャスター:
苦情の電話には誹謗中傷も含まれますし、これはもうハラスメントの域に入ってきていますね。
教育経済学者 中室牧子さん:
ある民間企業が行った、過去3年間にカスタマーハラスメントを受けた人に対する調査で、ハラスメントの内容を聞いてみますと、1位の「長時間拘束して同じ内容を繰り返す」が45%近く、あと40%近くが「侮辱や暴言、名誉毀損」と回答しているそうです。
いま、北海道ヒグマ対策室に寄せられている内容を見ると、まさにそういった内容なので、カスタマーハラスメントと言っても過言ではないと思われます。
これまでは企業を中心に対策してきましたが、これからは自治体や学校など、パブリックセクターでもカスタマーハラスメントの対応というのは重要になってくるのではないでしょうか。
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<プロフィール>
中室牧子さん
教育経済学者
教育をデータで分析
著書「科学的根拠で子育て」
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