
こちらは、クマに襲われた重傷患者のCT画像です。顔面の骨が砕けているのが分かります。クマによる外傷患者の実に約90%が顔面を損傷。鋭い爪でひっかかれた衝撃は交通事故に匹敵するレベルだといいます。
“交通事故に匹敵”する衝撃…クマ外傷の約90%が「顔面損傷」
中学校の校舎に侵入し、国道を走り、畑を荒らす。人の生活圏に堂々と足を踏み入れるクマ。
2025年4月から7月末までに、クマに襲われけがをした人、亡くなった人は全国で55人。これは過去最多の被害があった2023年に匹敵する数です。
8月15日には、北海道・知床半島にある羅臼岳の登山道で26歳の男性が死亡。7月には、北海道・福島町で新聞配達員の男性がクマに襲われ亡くなりました。
Nスタが訪れたのは、秋田大学医学部附属病院 高度救命救急センター。
30年にわたり、クマによる外傷患者の治療に携わってきたセンター長の中永士師明医師。運ばれてくる重傷者にはある特徴があるといいます。
秋田大学医学部附属病院 高度救命救急センター 中永士師明 センター長
「(外傷で多いのが)圧倒的に顔面なんです。2023年に我々が調べたところでは(患者の)90%。顔面外傷、顔がけがしている状況」
クマに襲われた際、腕などをけがするケースも多いですが、突出して多いのが「顔面」のけが。
こちらの患者も顔面に大きなけがをしていたといいます。
中永士師明 センター長
「顔面骨骨折というような状態です。鼻骨も折れている、下顎骨ですね、顎の骨も折れているような状況。場合によって鼻がとれてしまうとか、けが自体はやはり重傷という方が多いです」
クマの鋭い爪で引っかかれた衝撃は“交通事故に匹敵するレベル”だといいます。
こちらはクマに襲われた重傷患者のCT画像。頭蓋骨が折れてしまっています。
時に致命傷になる顔面外傷。7月、北秋田市の障がい者施設でクマに襲われ、8月に亡くなった73歳女性の死亡の原因も頭と顔のけがだったといいます。
なぜクマは顔を攻撃するのか?命を守る“防御姿勢”とは?
そもそも、なぜクマは顔を攻撃してくるのでしょうか。
中永士師明 センター長
「(クマは)相手を威嚇するために立ち上がるんです。立ち上がった時に、ちょうど人間の顔に手が一致するので、手を払うときに顔がやられる。顔とか目を攻撃すると、相手が怯むということを分かっているので、それで顔を狙ってくると思います」
では、どのように身を守ればいいのか。
襲われたにも関わらず重傷とはならなかった人には、ある“共通の防御姿勢”があったといいます。
中永士師明 センター長
「近距離で遭遇した場合は、自分の身を守ることに徹してもらうことが一番いい。顔を守るというような姿勢ですね」
その“防御姿勢”を実際に教えてもらいました。
中永士師明 センター長
「両手を首の後ろに組む」
「小さくかがむ」
「クマが去るのを待つ」
両手で首を守りつつ体を小さく丸める“防御姿勢”。腕などを攻撃される可能性はありますが、顔と首を守ることで致命傷は負いにくいといいます。
秋田大学大学院の研究グループによりますと、2023年度に県内で70人が被害に遭いましたが、この防御姿勢をとった7人には重症の人はいなかったということです。
中永士師明 センター長
「(防御姿勢は)最終手段なので、一番はクマと出くわさないこと。自分からクマのテリトリーに入っていかない。山登りとかキャンプですよね、これだけクマが出て危ないといわれている時期は、ちょっと控えてもらうことが本当はいいかなと」
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