開票まであと2日に迫った自民党総裁選。各陣営の担当記者が候補を深掘りし、選挙戦略を解剖します。今回は高市早苗候補です。
【画像を見る】飲み会が苦手だという高市氏 麻生氏から助言が…
3度目の総裁選出馬ですが、過去の総裁選とは戦略を大きく変更したということです。
高市早苗氏3回目の総裁選 スタートダッシュにつまずく?
井上貴博キャスター:
高市早苗氏は3度目の総裁選への出馬です。
特に注目を集めたのは2024年。1回目の投票ではトップに立つも、決選投票では石破氏に敗れ、惜しくも2位という結果になりました。今回が3度目の正直となります。
高市氏の“強みと弱み”を、番記者である大室記者が分析しました。
【高市氏の“強みと弱み”】
党内基盤:△
野党連携:△
経験:◎
刷新感:◎
「経験」もあり、女性初の総裁というインパクトは大きいので「刷新感」には◎。一方で、「党内基盤」や「野党連携」は偏りがあることから△となっているのでしょうか。
TBS報道局 政治部 大室裕哉 記者:
「野党連携」については、党内外から「高市氏とは組みづらい」という声が多く聞かれると思います。特定の政党と個人的なつながりがあるかと言われると、林氏や茂木氏などの他の候補には劣るという意味で、△をつけました。
「党内基盤」も△としましたが、2024年の総裁選では旧安倍派を中心に支持を受けました。その議員の多くが、2024年の衆院選や2025年の参院選で多く落選してしまったがために、今回はスタートダッシュからつまづいているということもあります。
また、高市氏は若いころに先輩議員との飲み会でお酌係だったことがきっかけで、飲み会が苦手で、仲間作りができなかったということもあり、△をつけました。
高市氏は、2024年の総裁選で敗北した日に、麻生最高顧問のもとを訪れ、「高市、用意しとけ。議員は仲間作りが大事だ。これから半年くらい『飲み会』に行け」と助言を受けました。
この言葉を胸に、高市氏はこの1年、仲間作りに励み、苦手だった飲み会にも参加したそうです。
それに加えて、中堅・若手議員ら約15人で「高志会」を結成しました。当選5回の黄川田議員や、当選2回の尾崎議員をはじめ、今の総裁選挙でも中心になり、高市氏を支えているメンバーです。
高市氏“鹿発言”の真意は…
井上キャスター:
今までの高市氏とは違う部分が見てとれますが、それは数字として、どのくらい出ているのでしょうか。
【国会議員票(295人)の動向】
※JNN独自調査 9月26日時点
▼小泉氏…約80人
▼林氏…約50人
▼高市氏…約50人
▼小林氏…30人前後
▼茂木氏…30人前後
高市氏は、もう少し国会議員票が上がるのではないかと言われていましたが、この数字はどう見ればいいのでしょうか。
大室裕哉 記者:
高市氏を支持していた議員が多く落選しているところで、まずスタートダッシュにつまずいています。
それに加えて、告示日の9月22日に行われた、「外国人観光客が鹿を蹴っている」という趣旨の“鹿発言”演説を聞いて、「高市氏が総理になったら大丈夫か」と思った議員が数多くいて、国会議員の寄り付きがあまり見られなくなっています。そのため現在の約50人からの上積みは見られない現状となっています。
井上キャスター:
前回の総裁選では、高市氏は保守色を前面に押し出し、惜しくも2位で敗れました。
そう考えると、今回はどの候補もだいぶマイルドにしていて色がなくなり、どのように戦略を立てるかという難しさを感じます。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
国会議員の人たちは勝ち馬に乗りたがります。
2024年は高市氏が勝てるかもしれないという可能性が相当高くなっていたので、みんな高市氏に寄ってきました。今回は前回ほどのブームはないので、様子眺めをしています。そういう点では厳しい対応ですね。
高市氏自身も麻生氏に助言を求めていますが、麻生氏自身も勝ち馬に乗ろうとしているわけです。
井上キャスター:
報道を見ていると、ある意味、最も勝ち馬に乗ろうとしているのが麻生氏のように感じますが、麻生氏はどう考えているのでしょうか。
星浩さん:
小泉氏の裏にいる菅氏や、林氏の裏にいる古賀氏など、長老たちの確執の陰を受けていて、そこをまず刷新しないと、今回の総裁選も全体をモデルチェンジするわけにはいかなくなりますよね。
SNS戦略を実践 狙いは議員票ではなく「党員票」
井上キャスター:
高市氏陣営からすると、議員票が難しいのであれば、党員票の獲得ということになりますか。
大室裕哉 記者:
国会議員票でなかなか広がりを見せていないので、高市氏陣営の戦略としては、“党員票で圧勝するしかありません”。
決選投票に進んでも、議員票で勝つことは難しい現状があるので、それならば党員票で、小泉氏の神奈川と林氏の山口以外では全て1位になるぐらいの勢いで圧勝する。
そうすることで、「高市氏に入れた党員の声を無視していいのか」という国会議員の議員心理を動かしていく戦略で、決選投票を勝ち抜いていく考えです。
井上キャスター:
高市氏の“鹿発言”は、その考えの中で党員票を取りに行ったという理解でいいのでしょうか。
大室裕哉 記者:
この“鹿発言”は外国人政策への入りとして発言しましたが、その真意は目の前の国会議員ではなく、全国でネットから視聴している党員に向けられたものでした。
実際、「5人の候補者のうち一番印象に残った」という声も数多く聞かれます。
ネット意識という部分では、SNSの総フォロワー数は高市氏がダントツで多いです。
【SNS総フォロワー数】
(10月2日時点 Nスタ調べ)
▼高市氏…160.1万人
▼小泉氏…52.0万人
▼茂木氏…12.1万人
衆議院・参議院の選挙では、国民民主党や参政党がSNS戦略を利用して、かなり支持を広げました。その戦略に倣って、高市氏もSNS戦略を実践しています。
井上キャスター:
高市氏は決選投票に残り、2位であっても党員票が集まれば、議員心理が自分に来るのではないかという考えですが、どのくらい党員票の差が開くと、議員心理が動くのでしょうか。
星浩さん:
圧勝すれば別ですが…。自民党の党員は、保守色の強い団体や業界、地域の名士などで構成されています。高市氏の場合、保守色の強い団体には浸透していますが、その他には浸透がまだ及んでいないのが現状だと思いますね。
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〈プロフィール〉
大室裕哉
TBS報道局政治部 自民党担当
高市早苗氏の番記者
趣味はMLB観戦
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身 政治記者歴30年
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