
災害の爪痕が残る被災地へ、いち早く駆けつける専門家集団がいます。彼らは気象庁機動調査班、通称JMA-MOT(Japan Meteorological AgencyーMobile Observation Team)。私たちが当たり前に受け取っている気象情報や防災情報は気象庁機動調査班に支えられていました。(アーカイブマネジメント部 萩原喬子)
【写真で見る】静岡・牧之原の竜巻被害(2025年10月9日)
気象庁機動調査班って何?
気象庁機動調査班“JMA-MOT”は、気象庁の職員で構成される災害調査専門チームです。このチームが正式に発足したのは2008年(平成20年)10月17日。それ以前も気象庁は災害発生時に現地調査を行っていましたが、調査を行う職員や方法が統一されておらず迅速な行動が難しいという課題がありました。そこでよりスピーディーで効果的な調査ができるよう組織的なチームとして整備されました。
気象庁機動調査班はどんな仕事をしている?
機動調査班は竜巻などの突風被害、台風、地震、火山の噴火など、情報や被害が起こった時に迅速な調査をするチームです。現地での状況確認や住民への聞き取り調査を行い、そこで得られた情報と気象レーダーやアメダスなどの観測データを総合的に分析します。これによりなぜその場所で災害が起きたのか、そのメカニズムの解析、今後の防災気象情報の改善にいかされます。
竜巻とダウンバーストの違いは?
気象予報士 森 朗氏:
近年はスマートフォンの普及により、災害時の映像が数多く残されるようになりました。これにより以前は「突風」と大きくくくられていた現象もより細かく分類出来るようになりました。
ダウンバースト…積乱雲から吹き下ろした空気が地面に激しくぶつかる現象
ガスフロント…積乱雲の下にできた冷たい空気の塊が暖かい空気とぶつかって発生する突風
どちらも渦を巻いた上昇気流によって発生する「竜巻」とは違います。
先月(2025年9月)に出動したのは…
「静岡・牧之原の竜巻」
先月5日(2025年9月5日)、静岡・牧之原では台風15号の接近に伴い突風が発生し、大きな被害が出ました。機動調査班の現地調査の結果、この突風は秒速約75mで国内の統計史上、最大級の強さの竜巻であることがわかりました。
この判断には、以下のような複数の証拠が用いられました。
・活発な積乱雲が通過していた
・移動する渦の目撃証言や映像があった
・被害や痕跡は帯状に分布していた
・「ゴー」という特徴的な音が聞こえたという証言が複数あった
・ごく短時間(1分程度)の現象だった など
気象予報士 森 朗氏:
突風の強さを表すものに「日本版改良藤田スケール(JEF0~JEF5)」があります。この静岡・牧之原市の竜巻はJEF3にあたり、改良藤田スケールが開始された2016年4月以降、2例目となりました。
「茨城・境町のダウンバースト」
先月18日(2025年9月18日)、茨城・境町で重さおよそ25トンのクレーンが倒れる被害がありました。機動調査班の調査により、この突風は竜巻ではなく、「ダウンバースト」か「ガスフロント」の可能性が高いとの発表となりました。
また同じ日に茨城・つくば市でも建物を倒壊させる突風が発生しましたが、こちらはガスフロントに伴う「竜巻」と認定されました。このタイプの竜巻は観測例が少ないため貴重なデータとなりました。
気象予報士 森 朗氏:
現象の特定には現場検証が欠かせません。防災情報の裏には災害現場に駆けつけ地道な調査を続ける気象庁機動調査班の存在があります。彼らが集めたデータと情報が今後の防災気象情報の精度向上につながり、命と暮らしを守ることにつながっていきます。
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