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病と闘う10万人の子どもが直面する社会との“壁”と学ぶ機会 闘病経験者がアートで社会と繫がりを【Nスタ解説】

国内
2025-11-18 22:38

幼少期に入退院を繰り返すなど、長期の闘病生活を送った実業家・岸谷蘭丸さん。実は、病気の子ども達と社会を「アートの力」で繋げる活動を行っています。
病気を克服した先輩として、子どもたちに伝えたい思いとは。


【写真を見る】岸谷蘭丸さん 小児リウマチ闘病中の少年時代


「小児慢性特定疾病」って何? 全国に約10万人

岸谷蘭丸さん:
子どもの病気は伝わらない、伝わりづらいというのがとても大きな問題だと思っています。

例えば身長が伸びづらいといった、客観的に目立ちにくい症状は、体に支障が出て初めて(周囲が)気づくという病気です。僕も子どもの頃、関節の痛みという症状があったのですが、視覚的に全く確認することはできません。

そうすると子どもだから、ただ泣いて騒いでるだけなのか、本当に具合いが悪いのか、まず分かってもらえない。地味なことでも、実は本人にとってすごく深刻な場合もあります。僕の活動を取り上げていただくことによって、多くの人に気づきを持ってもらえたら、すごく嬉しいなと思っています。


山形純菜キャスター:
岸谷さんは10歳まで“小児リウマチ”で闘病生活を送っていた経験から、病気の子ども達と社会を「アートの力」で繋げる活動を行っています。

慢性的な疾患のため、長期的な治療を必要とする「小児慢性特定疾病」。厚生労働省が把握しているだけで、約10万9200人の18歳以下の子どもたちが通院・治療を受けているといいます。対象は、がんや糖尿病、ぜん息など801疾病にのぼるということです。


岸谷蘭丸も経験「幼少期の入院」社会とのつながりが希薄に

岸谷さんとともにイベントを主催した、小児科医の川口幸穂さんによると、「小児慢性特定疾病」には多くの課題、壁があるということです。


まず小児病棟の多くで、▼病棟内の行動範囲が限られ、▼中学生以下は立ち入り禁止になっています。患者は同級生や友達とは会えず、コミュニケーションを取れるのはサポートしてくれる医師や看護師、親だけに限られてしまうという状況です。

また、求められる家族のサポートとして、▼24時間の付き添い、▼不在時は子どもを病棟保育士に預けるといったケースも少なくないということで、時間的・経済的にも負担が大きくなっています。


「周囲の人たち全員の人生が変わってしまう」経験者が語るつらさ

岸谷さん:
自身の病気によって、親や周囲の人たち全員の人生が変わってしまうというのがすごく大きいと思います。

僕が入院した病院は、1日に1時間しか面会できませんでした。4~5歳の一番親に甘えたい、親と寝たいという時期に、ほとんど親に会えないまま過ごしました。2~3時間ずっと窓に張り付いて、親がいつ来るかなと待ちわびたのが思い出です。

その大変さがあまり周知されていません。

「小児慢性特定疾病」は約800種類の対象疾病があるのですが、患者数は確認されてない人を含めると全国に約15万人~20万人もいます。

自分の子どもが対象者になる可能性があり、学年やクラスに1人はいてもおかしくない確率です。その中で、社会がもう少し理解を持ち、社会全体でサポートしてあげられるようになるとすごくいいなと思っています。


出水麻衣キャスター:
闘病されているとき、「親に会いたい」という思いの中で、例えば絵を描きたいという没頭できる行為は、岸谷さんをどのように救ってくれましたか?


岸谷さん:
病室って狭くて何もなくて、何もしてはいけない環境です。そんな中で唯一許されるのは、本を読んだり、絵を描いたりすることだけでした。

でも、すごく狭い病室の中で一気に自分の世界をガーッと広げられるというのは、子どもにとっては救いだと思います。

僕も本ばかり読んで、絵ばかりを描いて、それを人に見てもらって、褒めてもらうことはすごく嬉しかった思い出があります。

今の子どもたちも「同じなんだ」と知ることができて共感しました。

特にメタバースが誕生して、病院の中からでも外と繋がれるのは、子どもにとってひとつの成功体験になると思っています。

これはもっと広がってほしいし、病気の子どもだけではなく、例えば学校に通えない子ども、何かしらの理由で外に出られない子ども、そういう子どもたちがインターネットの発展で社会と繋がれるのは、すごく素晴らしいことです。頑張ってほしいなと思います。


「学びの機会」の喪失 私たちにできることは

山形キャスター:
もう一つ、小児科医の川口さんが課題として挙げたのが「学びの機会」でした。

文科省によると、入院・療養で学校を欠席しなければいけない平均日数は、67.7日です。学校の出席すべき日数が約200日前後ですので、約3分の1の日数を休まなければいけない子どもたちがいるのです。
(文部科学省「令和4年度 病気療養児に関する実態調査結果」より)

そんな学校に通えなくなった子どもたちを受け入れる施設が、「院内学級」です。公立の小中高校、特別支援学校などが病院内に設置されていて、全国に960学級あります。

ここでは、学校と同じように授業を体調に合わせて受けることができるのですが、小児科医の川口さんによりますと、「入るためには転学が必要で、諦める人も多い」ということです。


井上キャスター:
まず、多くの方にこの現状を認識してもらうことが大切ですよね。


岸谷さん:
一個人がどうこうというのは、正直難しい。

それでも、周囲にそういう人がいたときに、まずは実際にこういう状況があるんだと認識してもらうこと。

それから、国に対してムーブメントを起こしていくことがすごく大事だと思います。社会全体がこの問題に注目しているけれども、国はどうするのかと提起することです。

僕が視察に行った国立病院は、トイレのペーパータオルを廃止したり、職員用の廊下の電気を消したりするなど、資金繰りがとても大変だと言っていました。

高度医療を包括する国立病院にしわ寄せがいくような状況に、「予算を増やしてください」と声を挙げること。

また、対象となっている子どもと遭遇したとき、少し連絡を取ってあげよう、繋がりを作ってあげようと行動を起こしてもらうこともすごく大事だと思います。

今回、この問題を取り上げていただいて、ご覧になっている皆さんに知っていただけたことは本当に大きな一歩だと思っています。

過去の自分と重ねて、何か行動しなきゃという気持ちがすごく強くて、僕が出演することによって、「小児慢性特定疾病」について知ってもらえる、いろんな人の耳に入ることが大きな一歩だと思います。


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<プロフィール>
岸谷蘭丸さん(24歳)
ボッコーニ大学在学
岸谷五朗と岸谷香の長男
海外大受験塾「MMBH」設立
教育・多様性などを発信


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