忙しない日々のなかでは、下ばかり向いて歩いていませんか。空を見上げれば、みなさんの街でも無数の星が広がっているかもしれません。その“星空”をきっかけに、人口減少が進む島の未来を変えようとしている写真家がいます。その挑戦を追いました。
写真家が惚れ込んだ礼文島の“星空”
東京から約5時間。 飛行機、さらにフェリーを乗り継ぎ、たどり着いたのは北海道の礼文島。 日本海に浮かぶ自然豊かな島です。
この島に拠点を持つ写真家・柏倉陽介さん。
アメリカやイギリスの名だたる博物館に作品が展示されるなど、世界を舞台に活躍する写真家です。
そんな柏倉さんが惚れ込んだのが...
自然写真家 柏倉陽介さん
「キラキラ輝いていて、礼文島らしい星空だと思います。フランスのシャモニーとかニュージーランドのテカポとか、あとは日本の西表島とか。とにかく綺麗って言われているところと本当に遜色なく見える感じですね」
礼文島に住居兼アトリエを構えてから、5年が経ちました。
自然写真家 柏倉さん
「素晴らしい景色の中に家がポツンとあったりすると、ここに住みたいなって何回も何回も思ってきた。もうここ、今しかない というところで決めましたね」
礼文島と出会い、人生が大きく変わった柏倉さん。あるプロジェクトを始めました。
「星を観る」ための場所を作りたい 写真家が挑む「星空鑑賞区」
自然写真家 柏倉さん
「この星空だったら、人が沢山来てくれるんじゃないかと思って。今は星空鑑賞区という星をみんなで観る広場を作ろうと」
「星を観る」ための場所を作ること。「星空鑑賞区」と名付けました。
――この場所はどうなるんですか?
自然写真家 柏倉さん
「この場所に石を敷き詰めて、歩きやすくする感じですね。作業は本当に簡単で、草刈り。刈った草を鍬などでよけていくだけなんですよね。重機とか使わないで、人間の手で出来る範囲内でやっている」
2027年春の完成を目指し、テニスコート1面ほどの広場を作る予定です。
作業の費用は、柏倉さん自らが負担。まずは年間1000人の観光客を集めるため、地道に作業を続けています。
自然写真家 柏倉さん
「しっかりくつろげる椅子を運んで、地面とかもどうするかというのをこれから」
島民「家を借りたい」という人はたくさんいたが… 柏倉さんを選んだ理由
柏倉さんが礼文島に拠点を持つきっかけとなった、金田春雄さん。
星空鑑賞区の予定地であるこの場所や、拠点となる家を提供したのも金田さんです。
家を借りたいという人は沢山いましたが、カメラマンとしての経歴や想いに惹かれ、柏倉さんを選びました。
礼文島島民 金田春雄さん
「こういう所に住んでほしい、来てほしいし、それで選考しました」
――ぴったりの人がきて?
金田さん
「そうです。でもそれ以上の人ですね」
そんな金田さんですが...
金田さん
「これを魅力に感じる柏倉さん、すごいな。小さい頃から見ているからかな。感激しないのは。当たり前のように思っているからかな」
自然写真家 柏倉さん
「島の方も気付いていない。 島の外の人も気付いていない。もしかしたら、ここで気付いているのは僕だけかもしれないと思って、人口減少とか色々な過疎化が進んでいるなかで、もしかしたらこれがひとつの重要なアクションになるのではないかと」
“人口減少”の島で… 星空に希望を
島の課題は人口減少。20年前には3400人以上いた島民も、今では2100人ほどに。生業のひとつ、昆布漁にも影響が出ています。
漁師 小澤保さん
「(人が)少なくなった。昆布を採っても干すのに手間がかかる。人手も要るから。人が少ないし、アルバイトを雇うにも雇えない。来る人がいないから、干す人がいないし」
突破口としたい星空鑑賞区ですが、それを進めるのにも課題があります。
天気が不安定な礼文島では、綺麗な星空を、必ず見られるとは限りません。
また、観光客を受け入れるための宿泊施設の整備や、騒音など、対策しなければならないことは、山積みです。
それでも星空鑑賞区の完成を目指す輪は、少しずつ広がっています。
人口減少の煽りを受ける島の中学校でも、期待の声が上がります。
礼文町立 香深中学校 眞宮英博教頭
「(星空観賞区が)当たり前の活動になると良いですよね。柏倉さんだけではなくて、違う大人も一緒に夜、子どもたちと一緒に星を撮るとか」
――夜空を観る授業があったらどうか
礼文町立 香深中学校 福士暖人さん
「行きたいです。なんか皆で星空を観て、新しい礼文の自然のことについてとか。観たいです」
星空鑑賞区の挑戦は、まだ始まったばかりです。
自然写真家 柏倉陽介さん
「人がいないから、人が遠ざかっていくのが今の状況。人が少なくて何もないから、だからこそ自然が豊かで星が近い。そういう所に憧れて人が移り住んでくる。そういう逆のサイクルっていうのも、僕はこれからどんどん増えていってほしいと思う」
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