
戦後80年プロジェクト「つなぐ、つながる」です。戦時中に日本軍の兵士が家族や親しい人にあてた手紙「軍事郵便」。実は今、中国のネット通販で「日本による侵略の証し」として売買の対象となっています。
中国内陸部・湖南省。歯科医の欧陽霈さん(25)は4、5年前から集めているものがあります。旧日本軍の兵士が書いた手紙「軍事郵便」です。
日本の軍事郵便を収集 欧陽霈さん
「これらは満州に駐屯していた兵士が、日本の家族にあてて書いたものです」
軍事郵便は日清戦争の頃に国が規定し、戦地や駐屯地から無料で手紙を送ることができました。年間およそ4億通のやりとりがあったといいます。
一方、欧陽さんが集める理由は…
日本の軍事郵便を収集 欧陽霈さん
「祖父は私に『日本人との間には血で刻まれた深い恨みがある。この記憶は必ず留めないといけない』と語っていました。だからこれらのコレクションは、私にとって歴史そのものなんです」
実は、中国では、ネット通販で軍事郵便を購入することができます。家族や知人に近況を知らせたり、健康を気遣ったりする内容が大半ですが、「日本による侵略の証し」との説明で販売されています。
記者も、1通あたり200円から1万円程度で購入できました。
なぜ私的な手紙である軍事郵便が中国に…。そこで、購入した手紙に記された滋賀県の栢口辰三郎さんの住所を訪ねました。
孫の隆さんによると、辰三郎さんは仏像を彫る「仏師」だったといいます。知人とみられる男性から辰三郎さんに宛てられた軍事郵便を見せると…
祖父の手紙が中国で販売 栢口隆さん
「(Q.おじいさん宛てで間違いない?)そうですね。昔のハガキ、よう残っていましたね」
外部に流出した原因に心当たりがないか聞いてみると…
祖父の手紙が中国で販売 栢口隆さん
「ひょっとしたらハガキとか、まとめてごみに出したとか…」
辰三郎さんが亡くなった1970年以降、遺品を整理する過程で古物商などに流れ、中国の業者にまとめて買い取られたとみられます。
軍事郵便を売買する中国人
「大阪の縁日では、たくさんの人が露店を出して、おじいさん、おばあさんが残した遺品を大袋で売っていました。見た目はガラクタでも、いいものがたくさんあったよ」
専門家は海外にまで散逸している現状を危惧しています。
軍事郵便を研究 新井勝紘さん
「今の状況は非常に厳しいですね。戦争に行った兵士が何を見て、何を家族に伝えようとしていたのかっていう最もリアルな史料なので」
検閲があっても本音が垣間見えるものもあるといいます。
軍事郵便を研究 新井勝紘さん
「カエル。カエルというのは無事に帰ってきてほしいという意味。だから封書の中に入ってくるんじゃないですか」
終戦から80年たった今、戦下にしたためられた手紙は中国で数奇な運命をたどっています。
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