退職代行サービス「モームリ」の運営会社社長とその妻が逮捕されました。元従業員は「違法だから絶対に口にしないで」と口止めされていたといいます。どういった行為が“違法”と判断されたのでしょうか。
【写真を見る】「私には考えられないことをやってくれたなと思っている」先方の会社は困惑…
「モームリ」社長ら逮捕 違法に弁護士へ紹介か
「上司に退職の意向を伝えるのが怖い」「面と向かって話したくない」。そんな人たちの心を揺さぶります。
退職代行サービス「モームリ」の運営会社「アルバトロス」社長の谷本慎二容疑者(37)と、妻で従業員の志織容疑者(31)が、弁護士法違反の疑いで逮捕されました。
「退職代行」は、仕事を辞めたい人が「退職代行サービス」に依頼すると本人に代わって退職の意思を会社に通知します。
「退職代行」は、どのように行われていたのか。谷本容疑者らは、業務の様子を動画で公開していました。
谷本志織 容疑者
「(ご依頼者様)から依頼を受けまして、退職希望の旨とそれに伴い今後出勤ができない旨、こちらをご本人に代わりお伝えさせていただきたくご連絡をしました」
先方
「あ、そうですか。はい。(ご依頼者様)さんね。今日来なかったからどうしたのかなと思って」
突然、「退職代行」の会社から連絡を受けた先方の会社は困惑し、不快感を示しました。
先方
「何の連絡もなしに翌日から来ないって。どういうことなんですかね?これ」
志織 容疑者
「ただ、ご本人様は出社することが難しいということで、今回依頼を受けてお電話させていただきました」
先方
「あんまりにも酷すぎますよね。これね」
志織容疑者
「お気持ちは理解できるんですが…」
先方
「だから分かったって!あまりにも極端すぎて。私には考えられないことをやってくれたなと思っているんで。なんぼ払ったらいいんですか逆に!」
弁護士法では、弁護士資格を持たない人が“報酬目的”で▼代理で法律関連の交渉を行ったり▼法的な仕事を第三者にあっせんしたりする行為を禁止しています。
今回、谷本容疑者と志織容疑者は、おととし7月から10月にかけて報酬を得る目的で退職に関する法的な仕事を弁護士に紹介した疑いがもたれています。
「モームリ」は2022年にサービスを開始し、積極的な広告・宣伝で急成長。利用者数は若者を中心にのべ4万人を超えました。
おととし、「モームリ」を利用したという愛知県の女性。勤務していた会社に何度も「辞めたい」と伝えたものの応じてもらえず、「モームリ」に頼りました。
「モームリ」を利用した愛知県の女性(50代)
「(モームリなら)YouTubeとかを見てちゃんとやってくれそうと思って」
その後「モームリ」による仲介で会社は辞められたものの、未払いだった給料は支払われませんでした。
この未払い分を取り戻すために「モームリ」の担当者から紹介されたのが、提携している弁護士です。
女性は着手金などとして「モームリ」と弁護士事務所に、あわせて8万5000円を支払ったといいます。
愛知県の女性(50代)
「(弁護士が)内容証明を出したというだけで『(女性の勤務先から)電話を一方的に着信拒否されて何もできなくなった』と言われた。『もうこれで終わらせてもらいます』と一方的に打ち切られました。本当になけなしのお金だった。金を持っていったなら責任を持ってやってもらいたかった。本当に怒りしかありません」
夫婦から口止めか 元従業員「違法だと把握している」
こうしたトラブルの情報は警視庁にも多数、寄せられていました。
去年、警視庁は複数の関係先を家宅捜索。この日、JNNは任意聴取を受けた谷本容疑者を直撃していました。
ーー非弁行為はあった?
「モームリ」運営会社 谷本慎二 容疑者(去年10月)
「そこら辺ももう全部、警察にはお伝えしてるんで」
ーーどのように伝えた?
谷本 容疑者
「…」
SNSでは、「弁護士から報酬はもらってない」などと主張していました。
しかし、元従業員は谷本容疑者らが違法性を認識していたと証言します。
「モームリ」元従業員
「『違法行為だから、絶対会社外で口にしないでね』って、社長と社長の妻(志織容疑者)から言われているので、完全に違法だと把握している。弁護士にあっせんすれば、1万6500円のバックが入るから、それも売り上げに繋がるし、ちゃんと紹介してねと社員全員の前で言われた」
運営会社が弁護士事務所から受け取っていたとされる“紹介料”は1件につき1万6500円でした。
「モームリ」元従業員
「借金があるとか、もうすでに会社と係争中、もめている方に“依頼、受け付けられません”と言って売り上げゼロで流すよりも、弁護士に紹介してバックをもらった方が売り上げになるよねと」
一方で、家宅捜索後も「モームリ」の利用者は絶えませんでした。2月2日に退職が確定した人は54人いたそうです。
谷本容疑者らは「弁護士法違反になるとは思っていなかった」などと容疑を否認しています。
警視庁は、「モームリ」側から紹介を受けた弁護士についても調べるなど、全容の解明を進めています。
利用者増加する退職代行 実態は?
藤森祥平キャスター:
今回逮捕された谷本容疑者らは、利用者が退職の交渉をする際に必要な法律関連の業務を弁護士側に紹介し、その報酬を受け取った疑いが持たれている。退職代行サービスが急成長している中で、こういうことが起きていたんですね。
教育経済学者 中室牧子さん:
「マイナビ」の調査によりますと、過去1年間に退職した人の中で、退職代行というサービスを使った人が16.6%もいらっしゃるそうです。利用者には営業職や、年齢でいうと若い世代が多いようです。
退職代行は海外ではあまり見られないサービスで、日本の非常に特徴的なサービスです。退職するときの感情的な負担が大きいため、それを誰かに肩代わりしてもらいたいということだと思います。
辞められる企業側からすると言いたいこともあるし、利用についても様々なご意見があることはわかりますが、利用者は増えている。
そうすると、どこからが合法でどこからが違法かを事業者側がちゃんと把握しておくのは当然のこととして、利用者側もちゃんと把握しておかないとトラブルになりかねないです。何が良くて何が悪いかという線引きを把握しておく必要があると思います。
藤森キャスター:
まさかこの業態に違法行為があったということを、利用者は想像していなかったと思いますよね。
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<プロフィール>
中室牧子さん
教育経済学者 教育をデータで分析
著書「科学的根拠で子育て」
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