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「外国人」を争点化する政治家たち…広がる誤解「非正規滞在者の増加」「日本人の賃金を下げる」をファクトから考える

国内
2026-02-05 17:00

衆議院選挙(2026年2月8日投開票)では、多文化共生や外国人をめぐる政策が注目されています。深刻な人手不足を背景に、国内の外国人労働者数は過去最高の257万人を突破し、外国人なしには成り立たない産業も出てきました。しかし、その一方で、SNS上では根拠に乏しい排外主義的言説が拡散し、特定コミュニティへの攻撃が深刻化しています。


こうした状況を踏まえ、難民・移民政策の研究者で、外務省、国際移住機関(IOM)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)での勤務経験もある国際基督教大学(ICU)准教授の橋本直子さんとともに、衆院選を通して示された各党の多文化共生政策を読み解きました。


(TBSラジオ『荻上チキ・Session』2026年2月2日放送「衆院選2026:各党の多文化共生政策を徹底比較」より)


参院選と比較した各党の「変化」

まず、橋本さんは、各党の公約の変化について「昨年の参院選と比べると、多くの党が外国人政策を公約の中に入れるようになりました。メインメニューの一つに位置づけるようになった」と指摘。その上で「これは功罪両方ありますね」と述べ、注目が集まることで政策が前進する可能性を評価しつつも、政治の側の姿勢には懸念を示しました。


「選挙での得票を狙って、外国人政策を政争の具にしている党も見受けられ、そこは心配しています」。


橋本さんは、外国人に関わる政策が争点化する局面で、実態や統計に基づかない議論が先行しやすいとし、社会の分断をあおる言説が広がることへの警戒感をにじませました。


各党の「外国人政策」は4つの方向性に分類できる

橋本さんによれば、今回の衆院選における各党の外国人に関する政策は、大きく4つの方向性に分類できるといいます。


1. 外国人受け入れ反対


「日本は日本人だけでやっていこう」というベクトル。ただし、現実的かどうかは議論の余地がある。


2. 外国人の人権・権利保障重視


外国人の人権や権利保障を重視し、非正規滞在者にも在留特別許可を与える方向性。非正規滞在者の集団合法化は中長期的な影響や国境管理への影響を慎重に考える必要がある。


3. 外国人問題への対処を強調


外国人による犯罪や不法滞在、土地取得問題などを強調し、それらに「断固として戦う」姿勢を前面に打ち出すアプローチ。橋本さんは「省庁が出しているデータよりも誇張している面もある」と指摘。


4. 共生社会構築への取り組み


外国人増加を所与のものとし、日本語教育や文化・行動様式の相互理解を進める共生社会の構築を目指す方向性。


「必ずしも各党がこの4つのうちどれか1つに分類されるわけではなく、相反するような政策を一緒に入れている党もあります。また一般的には逆の立場と思われる党が、同じ政策を提案していることもあり、右左やリベラル・保守という分かりやすい座標軸には入れにくくなっています」と橋本さんは説明しました。


日本における「外国人」を巡る実情

日本の外国人を巡る実情について、橋本さんによれば、外国人は大きく3つのカテゴリーに分けられるといいます。


1. 観光客(ツーリスト): 2025年は速報値で4,200万人、2030年には6,000万人を見込む


2. 中長期滞在者: 約396万人(約400万人)


3. 労働者: 257万人


外国人労働者がいなければ成立しない産業として、橋本さんは「介護、製造業、ビルクリーニング、建設、造船、ほぼすべての農林水産業、宿泊業、外食産業」を挙げました。


非正規滞在者は減少傾向

排外的な言説の根拠としてよく挙げられる「非正規滞在者の増加」や「治安悪化」について、橋本さんは事実に基づいて説明します。


非正規滞在者数はピークの1993年の約30万人から減少傾向にあり、最新の速報値で約7.1万人。過去2年は減少しています。観光客や中長期滞在者が急増している一方で非正規滞在者が減少していることは「日本の国境管理はちゃんとできている」証拠だと橋本さんは述べました。


外国人による犯罪については、刑法犯の検挙件数・人員数は過去2年若干増加しているものの、外国人数の増加率に比べれば低い水準。刑法犯検挙人員に占める外国人の割合は5.5%に過ぎず、「94%は日本人によるもの」と橋本さんは指摘します。


また「外国人の起訴率は毎年必ず日本人の起訴率よりも高い」とし、「外国人だけが見逃されている」という事実はないと強調しました。


「治安」という言葉で多くの人が懸念しているのは、実際には刑法犯よりも「マナー違反」「うるさい」「ゴミ出しルールが守れない」などの行動様式や文化的な違いに起因するものが多いと橋本さんは分析。こうした「体感治安」の問題は、刑法で対処すべきものではなく、定着支援や言語学習の充実で対応すべきだと指摘しました。


各政党の「外国人に関わる政策」の内容は?

TBSラジオ「荻上チキ・Session」では、各政党の外国人に関わる政策についてまとめました。


●自民党

・一部の外国人による制度の不適切利用が国民の不安や不公平感を助長している
・永住者と日本国籍取得の審査を適正化
・税、社会保険料の未納や制度悪用を根絶
・外国人の土地取得に関する新たな法的ルールを速やかに整備


●日本維新の会

・外国人比率の上限設定を含む人口戦略を2026年度中に策定
・偽装難民問題を踏まえた難民認定制度の抜本改革
・日本国籍取得審査の厳格化と取り消し制度の創設


●中道改革連合

・日本人と外国人が互いを尊重し、ルールに基づく多文化共生社会を目指す
・多文化共生社会基本法や難民等保護法、入管法等改正法を制定


●国民民主党

・外国人による投機目的の不動産取得に対して空室税を課す
・防衛施設周辺以外も対象とした外国人土地取得規制法案を成立


●共産党

・外国人の人権を守り、地域社会で共生していける入管法へ改正
・難民認定申請中の送還規定や送還忌避罪などの廃止
・出入国在留管理庁から難民行政を切り離し、独立した難民等保護委員会を新設


●れいわ新選組

・独立した難民認定委員会を設置
・外国人の包括的な権利を規定する法律を制定
・育成就労制度の廃止を目指す


●参政党

・外国人総合政策庁を新設し、外国人の受け入れ総量と運用を厳格化
・偽装難民による乱用申請を防止
・外国人への生活保護支給を停止し、必要に応じて帰国支援等の代替制度を検討


●減税日本・ゆうこく連合

・外国人による土地の購入を抑制


●日本保守党

・安全保障上の脅威となる外国勢力による不動産(特に土地)買収の禁止
・入管難民法の改正と運用の厳正化
・経営・管理ビザの相手国を制限、特定技能2号の家族帯同を大幅に制限


●社民党

・罰則付きの包括的な差別禁止法を策定
・移民、難民を含めた多文化共生社会を目指す


●チームみらい

・入国税や非居住外国人に対する固定資産税の引き上げ
・外国人旅行者の消費税免税制度の見直し


「外国人労働者が日本人の賃金を下げる」という誤解


橋本さんは各政党の政策について、いくつかの問題点や誤解を指摘します。


外国人の土地取得規制について、「重要施設周辺の土地取得を外国人だけ規制するのは疑問です。日本でのテロ事件はほとんど日本人によるものであり、公認された外国人テロは1件しかありません。外国人だけを狙い撃ちにしても市民の安全は守られず、国籍問わず調査するべき」と述べました。


また「偽装難民」という表現について、「難民申請者を偽装難民と見るか、保護すべき対象と見るかで大きく立場が分かれています」と指摘。難民認定委員会の創設を提案する党が複数ありますが、「日本には他の先進国にある国内人権委員会がないため、まずそれを作らないと難民申請者だけの委員会は作りにくいのでは」と現実的な課題を挙げました。


また、外国人と生活保護に関する誤解も広がっています。


「外国人が生活保護を受けられるのは、永住者、特別永住者、日本人の配偶者など限られた在留資格の人だけ。全生活保護受給世帯のうち外国人が筆頭の世帯は2.8%で、この比率はほぼ変わらない。そのうち約半数は韓国・朝鮮籍の方で、1980年代まで年金に入れなかった歴史的経緯があります」


外国人労働者が日本人の賃金を下げるという主張についても、「経済学者の研究では、そういう傾向は見られないというのがほぼコンセンサス。むしろ外国人労働者の増加で景気が改善し、全体の賃金が底上げされる」と指摘しました。 


政治家が取り上げることで「かえって不安感」

橋本さんは「政治家が『外国人問題』を取り上げることで、かえって不安感が出ている面もある」と指摘します。


「移民問題・難民問題の安全保障問題化と呼ばれる現象です。霞が関はちゃんとデータを出しているので、有権者側がどれだけ賢くなれるか、SNSから流れてくる情報ではなく、自分から取りに行く姿勢が重要」と強調しました。


また、これまで外国人の社会統合が地方自治体やNGOに「丸投げ状態」だった問題についても触れ、「2024年1月23日の閣僚会議で、日本語学習や日本のルール学習プログラムを国が責任を持ってやっていく方向性が初めて示されました。20年ほど外国人支援団体や専門家が言い続けてきたことが、ようやく政府の文書に載るようになった。これは大きな一歩」と評価しました。


政策が「書き込むだけでなく、現実味と実効性を持つ形になるのか、事実に基づいた政策になるのか」を見極めながら、各党の政策を見ていく必要があると締めくくりました。


政治の場で外国人に関する政策が注目されることは、課題への取り組みが進む可能性がある一方、選挙のための政争の具となるリスクもはらんでいます。有権者には、感情に訴える言説に振り回されず、事実に基づいた冷静な判断が求められています。


(TBSラジオ『荻上チキ・Session』2026年2月2日放送「衆院選2026:各党の多文化共生政策を徹底比較」より)


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