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オンラインサロンはなぜ消えなかったのか? 「学びの場」から「居場所」へ変わった10年の軌跡

国内
2026-03-30 09:30
オンラインサロンはなぜ消えなかったのか? 「学びの場」から「居場所」へ変わった10年の軌跡
居場所として機能する、オンラインサロン
 日本最大級の会員制コミュニティサービス「DMMオンラインサロン」が今年2月、サービス開始から10周年を迎えた。この10年でオンラインサロンは「学びの場」から「居場所」、さらには「自己実現のステージ」へとその役割を大きく変え、企業によるビジネス活用も増加。DMMでは累計サロン開設数は4000件、累計会員数は100万人を突破したという。しかしその一方で、課金制かつクローズドな構造から、「胡散臭い」「宗教っぽい」といったネガティブなイメージが語られてきたのも事実。それでもなぜ消えることなく拡大し続けてきたのか。ブームから生活インフラへと変遷したオンラインサロンの10年をDMMオンラインサロンの事業部長・豊好竜弥氏とともに振り返る。

【写真】「SALON AWARD 2025-2026」で4年連続大賞受賞を果たした、河村真木子さん

■“学びの場”として広がったオンラインサロン黎明期、有料・会員制が生んだ安心感

 オンラインサロンが世の注目を集め始めたのは2016年前後。その多くはビジネス系や自己投資を目的とした「学びの場」で、有名人やインフルエンサーが主宰し、クローズドな空間で知識やノウハウを共有する形式が“新しさ”と受け止められたことが特徴だった。

 そのムーブメントの発端となったのが2012年にローンチしたオンラインサロンプラットフォームの「Synapse」だった。2014年に堀江貴文氏が所属すると主宰者や参加者が増加。2017年にはDMMによって子会社化され、流通規模は2016年の2.5億円から1年で9.5億円にまで拡大した。

 成長の背景には、スマートフォンの普及や通信環境の向上、YouTubeなど動画プラットフォームの拡大、個人でも気軽にオンライン上で人を集められる土壌が整ったことなど、時代の変化も大きく影響していた。

 その一方で、課金制かつクローズドなコミュニティ構造は、お金を払って会員にならない限り外部からでは活動内容が見えにくいため、「何をやっているかわからない」「不透明で閉鎖的」といったネガティブなイメージを生む要因にもなったが、その構造こそが「オンラインサロンに求められる大きな役割だった」と豊好氏はいう。

「無料でオープンなSNSは、匿名で皆が言いたい放題の状態になる反面、有料かつ会員制であるオンラインサロンは比較的安全性を担保した空間で、安心して議論や交流できることが大きなメリットでした」

 オンラインサロンの可能性が広がる一方で、“誤解”とも向き合いながらスタートしたが、ネガティブな印象に対してはサロン開設時に“審査制”を用いたことが抑止にもなった。

「誰でもオンラインサロンを開設できるわけではない、というルールにしたことは大きかったと思います。厳しい開設審査やサロン内を巡回する管理体制の徹底、さらに著しく秀でた活動をするオーナーを表彰するアワードの開催など、外への情報発信も心がけてきました。

 クローズドなコミュニティなので、その内をすべて公開することはできなくても、「こういう活動が行われている」「こういうポジティブなつながりが生まれている」と発信を続けたことが、オンラインサロンのメリットを社会に浸透させる下地になっていきました」

■コロナ禍が転換期に、「情報を得る場」から「安心して関われる居場所」へ

 人々の価値観に大きな変化をもたらしたのがコロナ禍だった。外出自粛を余儀なくされ、社会全体が立ち止まり、多くの人が「これからどう生きるか」「誰とつながるか」を考えるようになった2020~21年、その指針を先んじて示した人たちがオンラインサロンに参入した。コミュニティが「学べる・つながれる場所」として機能し、DMMオンラインサロンでは問い合わせが例年の3倍ほどに急増。

 カテゴリーもそれまでのビジネス系や自己投資、著名人と交流できるファンクラブのようなサロンから多岐にわたって拡大。「ライブハウスや劇場、フィットネスジムなどそれまでリアルな場所でコミュニティを形成していた方々からの問い合わせもすごく増えたことが印象に残っています」と豊好氏は振り返る。

 さらにこの時期、特筆すべきは、黎明期から豊好氏が訴えてきた有料・会員制のメリットが広く浸透していったことだろう。というのも、コロナ禍は在宅時間の増加によりSNSの利用者や利用時間が増え、同時にデマや誹謗中傷の拡散が社会問題となった。オンラインサロンは、そういった危険を回避できる“心理的安全性が確保しやすい居場所”という立ち位置をも担うようになっていった。

 言い換えれば、オンラインサロンはこの時期、「情報を得る場」から「安心して関われる場」へと、社会の中での役割を大きく変えていった。スマホとSNSの普及によって、誰もが常時つながれる時代になった一方で、安心して深く話せる場はむしろ希少になっていった。だからこそ、有料であること、会員制であること、同じ熱量を持つ人が集まっていることが価値として改めて評価されたのだろう。オンラインサロンがコロナ禍を経ても消えなかった背景には、この“心理的安全性”への需要の高まりがあった。

■「強いコミュニティの維持には、主宰者が“教える人”ではなく、“場をつくる人”として関わることが重要」

 DMMオンラインサロンがその年に活躍したサロンを表彰する「SALON AWARD 2025-2026」で4年連続大賞を受賞した河村真木子氏も、「コロナ禍をきっかけに、オンラインだけで完結するサロンから、オンラインとオフラインの両軸でコミュニティを形成する場へと役割が変化した」と自身の体験をもとに説明する。

「コロナ禍前は主宰者側がオンラインから出ようと思っていない、その名の通り“オンラインサロン”が大半でした。黎明期はその形が新しかったわけですが、でも、オンラインだけではどうしても強いコミュニティが作れなかったり、飽きて離脱してしまう人が増えることが主宰者にとって大きな悩みにもなっていました。強いコミュニティを維持するには、主宰者が“教える人”ではなく、“場をつくる人”として関わることが重要で、実際、手前味噌ですが、私たちのサロンではオンラインサロンという枠組みを超えて、“コミュニティづくり”にフォーカスしたことが、会員がやめず、増え続けている、成功の理由ではないかと思っています」(河村氏)

 河村氏の言葉は、オンラインサロンが10年の間にどう変わったかを端的に示している。黎明期には、主宰者から限定情報や価値を受け取る“一方向の場”としての色合いが強かったが、現在はそれだけでは人は残らない。会員同士が交流し、小さなコミュニティが生まれ、時にはプロジェクトが動き出す。そうした“横のつながり”があるからこそ、「続けたい場所」になっていく。ブームに終わらず定着した背景には、この一方向型から参加型への進化があったといえそうだ。

 豊好氏も言う。

「コロナ禍で参入された主宰者の方々からは、『物理的に会うことができなくても、オンラインだけで一定のコミュニティの熱量は高められるものなんだね』という驚きの声はいただいていました。しかし、やはり、それだけでは足りません。我々は黎明期からオフ会を開催するなど、オンとオフの両軸での活動を推奨してきましたが、今は、その両軸で取り組むことでコミュニティの熱量がどんどん上がっているサロンが増えていると感じています」

 オンラインサロンは、オンライン完結のサービスとして発展したのではなく、むしろオンラインとオフラインを往復しながら、関係性を深める仕組みとして成熟してきた。コロナ禍ではオンラインが代替手段になり、その後は対面が戻ることでさらに熱量が高まった。オンラインかオフラインかという二択ではなく、両輪で回ることでコミュニティの継続性が増したことも、定着の大きな要因と言えるだろう。

■“関係性を育てる場”であることが継続の鍵、進化するオンラインサロンの現在地

 河村氏のサロンを例に豊好氏はこう解説する。

「河村さんのサロンが人気で続けたい人が多いのは、ジャンルごとに小コミュニティを作って、会員さん自身が盛り上がれる状態を作っていることなんです。1万人いると話しにくいですが、それが50人になったら手をあげて発言しやすいですよね。小コミュニティを作ることで、会員さんが自発的に動けるようにする。主宰側は会員さんの意見を取り入れながら構造を柔軟に変えている。そこも、河村さんのサロンの素晴らしい点であり、人気の理由だと思います」

 この「小さく分かれることで、むしろ熱量が高まる」という発想は、現在のオンラインサロンを考えるうえで重要なヒントになりそうだ。かつては著名人とつながれること自体が価値になりやすかったが、いまは“誰が主宰するか”だけでなく、“参加者同士がどう関われるか”が継続の鍵になっている。「有名人だから伸びる」、「フォロワーが多いから成功する」という単純な世界ではなくなり、コミュニティの設計力そのものが問われる段階に入っているのだろう。

 同じ目的を持つ人同士でプロジェクトを動かすサロンをはじめ、現在は、企業が商品開発やコミュニティマーケティングに活用するものなど、コミュニティをつくるための「手段」としても活用されているオンラインサロン。DMMオンラインサロンでは今後、どのような展望を抱いているのか。

「まず、オンラインサロンのコミュニティは、閉ざされている分、入るのに躊躇される方も多いと思うので、今後は内容を全部お見せすることはできませんが、少しだけ体験できるような企画だったり、動画で一部だけを抜き出してご紹介したり、コミュニティの良さをカジュアルに伝えられるサービスを提供できればと考えています。

 あとはもっともっとカテゴリーを増やして、裾野を広げたいですね。例えば、釣り好きな人の集まるコミュニティとひと口に言っても、釣りそのものが好きな人もいれば、釣った魚を食べることが好きな人など、細分化されると思うんです。深さも大事ですが、横のつながりを広げることで入りやすくもなりますし、熱量の高いコミュニティがつくれることにもつながると思うので、オンとオフと同じように、深さと広さもしっかり築いていきたいです。

 AIであらゆる課題解決ができる時代だからこそ、人と人とが直接コミュニケーションを取ることの価値が相対的に高まってくると思っています。これからも大小さまざまなコミュニティを創り続けて、人々のつながりから生まれる前向きな活動を支援できたらと考えています」

 ここまで振り返ると、オンラインサロンが10年続いてきた理由は、単に“サービスとして残った”からではなく、時代ごとに役割を変えながら、人が求めるものに応えてきたからだと見えてくる。黎明期には「学び」や「限定交流」の場として、コロナ禍には「リアルの代替となる居場所」として、そして現在は「同じ熱量を持つ人たちが継続的につながるコミュニティ」として。情報を受け取る場から、関係性を育てる場へ。こうした変化に適応してきたことこそが、オンラインサロンがブームに終わらなかった最大の理由なのかもしれない。

(取材・文/河上いつ子)

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