国内
2026-05-29 09:10
1986年の『写ルンです』の発売から約40年。デジタル全盛の今、あえて手間のかかる『写ルンです』や『チェキ』といったアナログ写真が、若者を中心に世界的な人気を巻き起こしている。なぜ今、アナログが人々の心に響くのか。スマートフォンの普及による需要激減の危機を乗り越えた富士フイルムの挑戦の歴史に迫る。さらに、ヘルスケアや半導体材料など、多角的な分野で成功を収めるきっかけとなった「技術の棚卸し」や企業理念、そして写真文化の未来について同社に話を聞いた。
【写真】懐かしくてエモい! 初代からイルカの絵が可愛い平成レトロな“防水”『写ルンです』も
◆売上減少でも切り捨てず…「写真文化を残す」という精神が根底に
――カメラ分野は栄枯盛衰が激しいですが、『写ルンです』が発売から40年経った今も、若者を中心にブームとなっているのは本当にすごいことだと感じています。デジタル化の波の中で、需要の浮き沈みやさまざまな危機があったのではないでしょうか。
【勝山珠有さん】 そうですね。1986年の発売当時、写真は特別な日にお父さんが撮るようなものでしたが、『写ルンです』の登場で誰もが気軽に写真を撮れるようになり、新しい写真文化が生まれました。これまで累計で17億本以上を出荷しています。ただ、ご存知の通りデジタル化の波が訪れ、需要は激減しました。これまでに110種類以上のラインナップを販売しましたが、そこから製造する機種を絞り込みながら販売を続けてきました。しかしその後、SNS文化が追い風となり、2021年以降に再び需要が回復傾向にあるという状況です。
――採算が取れない時期もあったと推測しますが、企業として「販売を中止する」という議論にはならなかったのでしょうか。
【高井隆一郎さん】 弊社のイメージング事業では、撮影デバイスだけでなくプリントまで製品・サービスを展開しています。そのため、カメラ単体の売上だけでなく、「撮影から出力までの体験全体」として動向を冷静に見ていました。売上が下がったからといってすぐに切り捨てるのではなく、「この体験は今後本当になくなるのだろうか」と1つひとつ注意深く状況を注視してきました。また、需要が激減したとはいえ、『写ルンです』や『チェキ』は業務用途やウェディング、イベント用途などでの安定したニーズが一定数残っていたことも、やめないための大きな支えになりました。写真文化をしっかりと世の中に残していこうという精神が根底にありましたね。
◆コロナ禍で写真の持つ「底力」が再評価…思い出が鮮明に蘇る体験が『写ルンです』の強み
――2021年頃から再び右肩上がりになったということですが、そのきっかけは何だったと分析されていますか?
【高井隆一郎さん】 実は、2007年頃にアジアで『instax”チェキ”』の需要が少し浮上してきた時期がありました。すでにスマホやデジカメが普及し始めていた時期に、「なぜチェキが売れるのか?」とユーザー心理を分析し、グローバルでの事業展開を強化した結果、大きく成長しました。その流れを見て「『写ルンです』もいけるのではないか」と考えるようになりました。2020年のコロナ禍では、外出が減りお店も閉まったため、売上が落ちると予想していました。しかし、蓋を開けてみると減少幅は緩やかでした。家の中で身の回りのものを撮り、プリントする人が増えたのです。忙しい日々から立ち止まり、何かにゆっくり向き合う時間が増えたことで、写真の持つ「底力」が再評価されたのだと思います。
――タイパが重視される今の時代に、あえて手間のかかるフィルムカメラがデジタルネイティブ世代に受けているのは非常に面白い現象ですね。
【勝山珠有さん】 今やスマホで綺麗に写真を撮れるのが当たり前の時代です。その中で、あえてフィルムを巻き、ファインダーを覗き、シャッターを切り、現像を待ってようやく写真が見られる。この一連の「手間」が、今の若い世代には逆に面白く新鮮に受け入れられているようです。フィルムならではの粒状感やざらつきのある画質も魅力の1つです。そして何より「待つ時間」ですね。現像に出している間、「あの時どんな風に撮れたんだろう」とワクワクする。現像後、画像データを受け取り、27枚の写真を一気に見返した時に、当時の思い出が鮮明に蘇る。そのボルテージが最高潮に達する体験こそが、『写ルンです』ならではの価値だと思っています。
――『チェキ』と『写ルンです』は、アナログカメラとしてユーザー層の重なりもあると思いますが、楽しみ方や使い分けはどのように違うのでしょうか。
【勝山珠有さん】 『写ルンです』は、「待つ時間のワクワク感」が1つの楽しみです。一方『チェキ』は、撮ってその場でプリントできるのが最大の特徴です。友達同士でその場でメッセージを書き込んで渡したり、結婚式でお祝いの言葉を集めたりと、プリントした写真自体が「コミュニケーションツール」になるのが大きな違いです。
【高井隆一郎さん】 弊社ではブランドの価値を再定義する際、『チェキ』には「don’t just take, give.(撮るだけじゃない、あげたいから。)」というタグラインをつけました。これはスマホにはできない『チェキ』ならではの体験です。
一方、『写ルンです』(海外名は『QuickSnap』)についても、グローバルで大きく伸びた際、その価値を再定義し、タグライン「Moments worth waiting for.」、日本語では「飾らない瞬間、なのに特別。」を制定しました。すぐに確認できないからこそ、その場の雰囲気を壊さず、気取らない自然な写真が撮れる。後で見返した時に「めちゃくちゃいい写真じゃん」と言えるのが、『写ルンです』の価値であると定義しました。
◆令和における「良い写真」の定義とは?…クリアで綺麗なものだけが正義ではない
――画質や色味を、あえて「令和風」や「エモい」方向に技術的に変化させたりはしているのでしょうか?
【高井隆一郎さん】 変えた部分と変えていない部分もありますが、フィルム自体の技術や品質は大きくは変えていません。大きく変えたのは、我々の中での「良い画像の定義」です。かつては、ボケていない、色がはっきり出ているクリアな写真こそが「良い写真」でした。
しかし、令和の時代になり、良い写真の定義は人によって違うと気付きました。粒子感があったり、ブレていたり、ボケていても、それが決して悪い写真ではない。我々チームの中で「画像の定義」を広げたことは、大きな転換でした。綺麗なものだけを正義にしてしまうとターゲットが狭まり、写真の楽しみ方を奪ってしまいますから。
――機能やデザインも昔からほとんど変わっていない印象です。
【勝山珠有さん】 基本的な操作や構造は初代から大きく変えていません。ただ、昨年のリブランディングでデザインをブラッシュアップし、ファッションにも合うようなパキッとした緑色にしつつ、初代のラインを活かしたかっこいいデザインに刷新しました。
【高井隆一郎さん】 『写ルンです』のシャッターを押す時の「パチッ」という感覚や、フィルムを巻く「カリカリカリ」という音など、ユニークで変えてはいけない部分は勇気を持って変えない。シンプルで、加工できないという本質を残すことを意図的に行っています。
一方で、チェキのエントリー機(『instax mini 13』)には、「セルフタイマー」を搭載しました。エントリー機は誰でも使えるように極力シンプルにすべきですが、スマホでのセルフィー文化が「背景や全身も入れる」スタイルに変化していることを分析し、離れて撮れるように10秒と2秒のタイマーを追加しました。コストを抑えつつ、ユーザーの行動変化に合わせたアップデートは常に行っています。
◆「残すべき宝」「捨てるべき過去」…“技術の棚卸し”とマインドセットが生んだ多角化
――御社はフィルム技術を活かして、非常に多角的な事業展開をされています。デジタル化で本業が危機に瀕した際、どのように乗り越えたのでしょうか。
【広報担当者】 フィルムの需要がピークを迎えたのは2000年です。当社は1980年代から市場の変化を予見し、着々と「技術の棚卸し」を進めてきました。事業転換の際、保有する技術を「市場の成長性があるか」「当社の技術を活かせるか」「継続的に競争力を持ち続けられるか」の3つの基準で選別し、既存技術と新規技術を4象限に分類しました。何を「残すべき宝」とし、何を「捨てるべき過去」とするか。この選別基準が、ヘルスケアやエレクトロニクスといった新たな成長分野への転換を成功させる根幹となりました。
【高井隆一郎さん】 写真フィルムの「塗布技術」や、酸化を防ぐ「抗酸化技術」が化粧品に応用できたり、機能性分子の設計技術が半導体材料やイメージセンサーのカラーフィルターに展開できたりと、写真技術の応用範囲は非常に広かったのです。
――現場のエンジニアや社員の方々のマインドセットを変えるのは大変だったのではないでしょうか。
【広報担当者】 従来の仕事の進め方をゼロベースで見直し、1人ひとりに価値観と行動の転換を促しました。変化を恐れず挑戦し、スピード感を持ってイノベーションに取り組むマインドを育んできたのです。現在では「地球上の笑顔の回数を増やしていく。」というグループパーパスを制定し、従業員1人ひとりの志を起点に、全社が同じ方向を向いて社会課題の解決に取り組んでいます。
――医療や半導体など、全く異なる分野で富士フイルムだからこそ出せる強みは何ですか?
【広報担当者】 創業以来培ってきたナノレベルの品質管理と、技術への圧倒的なこだわりです。例えば半導体製造の現場でも、同一条件で高品質な材料を供給し続ける力が高く評価されています。現在、イメージング事業が全社の売上に占める割合は17%程度になりましたが、それは会社全体の収益が大きく成長しているためであり、イメージング事業自体も25年度まで5期連続で最高売上を更新しています。
◆カウンターカルチャーから「寄り添う」存在へ、写真文化の未来
――デジタルデトックスが叫ばれる中、Z世代やさらに下の世代において、アナログの価値はどうなっていくとお考えですか?
【勝山珠有さん】 デジタル化が後戻りすることはありませんし、AIの普及で情報過多はさらに進むでしょう。だからこそ、あえて情報から距離を置き、手間のかかるものに価値を見出す気持ちは、今後なくなることはないと思っています。
【高井隆一郎さん】 Z世代の次にくる世代であるアルファ世代は、物心ついた時からAIという「話し相手」が身近にある世代。スマホの普及の中でデジタルとアナログの狭間にいたZ世代とはまた違う内面を持つようになる可能性があります。そうした世代の傾向をしっかり分析しないと、製品作りの方向性を間違えてしまうという危機感は常に持っています。
ただ、タイパ重視のデジタル社会において、「あえて時間をかけるプロセス」が心地よいと感じられるのは、グローバルで共通して存在している感情です。アナログカメラは、しばしばデジタルに逆行する「カウンターカルチャー」だと言われることがありますが、アナログはデジタルの対立概念ではなく、「デジタルもあるし、アナログもある」という前提の中で、人々の生活に寄り添い、共存していく存在へと変化していると感じます。
――フィルムや中古カメラの需要が高まる中、御社から新しいフィルムカメラが登場する可能性はあるのでしょうか。
【高井隆一郎さん】 私の中では、十分にあり得る選択肢の1つです。現在、市場として新しいフィルムカメラの生産が限られているため、中古カメラが売れているのがここ数年のトレンドのようです。フィルム自体の需要も増えていますから、今後のトレンドや消費者の皆様の「価値体験の感じ方」をしっかりと見極めながら、検討していきたいと思っています。
(文/磯部正和)
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【勝山珠有さん】 そうですね。1986年の発売当時、写真は特別な日にお父さんが撮るようなものでしたが、『写ルンです』の登場で誰もが気軽に写真を撮れるようになり、新しい写真文化が生まれました。これまで累計で17億本以上を出荷しています。ただ、ご存知の通りデジタル化の波が訪れ、需要は激減しました。これまでに110種類以上のラインナップを販売しましたが、そこから製造する機種を絞り込みながら販売を続けてきました。しかしその後、SNS文化が追い風となり、2021年以降に再び需要が回復傾向にあるという状況です。
――採算が取れない時期もあったと推測しますが、企業として「販売を中止する」という議論にはならなかったのでしょうか。
【高井隆一郎さん】 弊社のイメージング事業では、撮影デバイスだけでなくプリントまで製品・サービスを展開しています。そのため、カメラ単体の売上だけでなく、「撮影から出力までの体験全体」として動向を冷静に見ていました。売上が下がったからといってすぐに切り捨てるのではなく、「この体験は今後本当になくなるのだろうか」と1つひとつ注意深く状況を注視してきました。また、需要が激減したとはいえ、『写ルンです』や『チェキ』は業務用途やウェディング、イベント用途などでの安定したニーズが一定数残っていたことも、やめないための大きな支えになりました。写真文化をしっかりと世の中に残していこうという精神が根底にありましたね。
◆コロナ禍で写真の持つ「底力」が再評価…思い出が鮮明に蘇る体験が『写ルンです』の強み
――2021年頃から再び右肩上がりになったということですが、そのきっかけは何だったと分析されていますか?
【高井隆一郎さん】 実は、2007年頃にアジアで『instax”チェキ”』の需要が少し浮上してきた時期がありました。すでにスマホやデジカメが普及し始めていた時期に、「なぜチェキが売れるのか?」とユーザー心理を分析し、グローバルでの事業展開を強化した結果、大きく成長しました。その流れを見て「『写ルンです』もいけるのではないか」と考えるようになりました。2020年のコロナ禍では、外出が減りお店も閉まったため、売上が落ちると予想していました。しかし、蓋を開けてみると減少幅は緩やかでした。家の中で身の回りのものを撮り、プリントする人が増えたのです。忙しい日々から立ち止まり、何かにゆっくり向き合う時間が増えたことで、写真の持つ「底力」が再評価されたのだと思います。
――タイパが重視される今の時代に、あえて手間のかかるフィルムカメラがデジタルネイティブ世代に受けているのは非常に面白い現象ですね。
【勝山珠有さん】 今やスマホで綺麗に写真を撮れるのが当たり前の時代です。その中で、あえてフィルムを巻き、ファインダーを覗き、シャッターを切り、現像を待ってようやく写真が見られる。この一連の「手間」が、今の若い世代には逆に面白く新鮮に受け入れられているようです。フィルムならではの粒状感やざらつきのある画質も魅力の1つです。そして何より「待つ時間」ですね。現像に出している間、「あの時どんな風に撮れたんだろう」とワクワクする。現像後、画像データを受け取り、27枚の写真を一気に見返した時に、当時の思い出が鮮明に蘇る。そのボルテージが最高潮に達する体験こそが、『写ルンです』ならではの価値だと思っています。
――『チェキ』と『写ルンです』は、アナログカメラとしてユーザー層の重なりもあると思いますが、楽しみ方や使い分けはどのように違うのでしょうか。
【勝山珠有さん】 『写ルンです』は、「待つ時間のワクワク感」が1つの楽しみです。一方『チェキ』は、撮ってその場でプリントできるのが最大の特徴です。友達同士でその場でメッセージを書き込んで渡したり、結婚式でお祝いの言葉を集めたりと、プリントした写真自体が「コミュニケーションツール」になるのが大きな違いです。
【高井隆一郎さん】 弊社ではブランドの価値を再定義する際、『チェキ』には「don’t just take, give.(撮るだけじゃない、あげたいから。)」というタグラインをつけました。これはスマホにはできない『チェキ』ならではの体験です。
一方、『写ルンです』(海外名は『QuickSnap』)についても、グローバルで大きく伸びた際、その価値を再定義し、タグライン「Moments worth waiting for.」、日本語では「飾らない瞬間、なのに特別。」を制定しました。すぐに確認できないからこそ、その場の雰囲気を壊さず、気取らない自然な写真が撮れる。後で見返した時に「めちゃくちゃいい写真じゃん」と言えるのが、『写ルンです』の価値であると定義しました。
◆令和における「良い写真」の定義とは?…クリアで綺麗なものだけが正義ではない
――画質や色味を、あえて「令和風」や「エモい」方向に技術的に変化させたりはしているのでしょうか?
【高井隆一郎さん】 変えた部分と変えていない部分もありますが、フィルム自体の技術や品質は大きくは変えていません。大きく変えたのは、我々の中での「良い画像の定義」です。かつては、ボケていない、色がはっきり出ているクリアな写真こそが「良い写真」でした。
しかし、令和の時代になり、良い写真の定義は人によって違うと気付きました。粒子感があったり、ブレていたり、ボケていても、それが決して悪い写真ではない。我々チームの中で「画像の定義」を広げたことは、大きな転換でした。綺麗なものだけを正義にしてしまうとターゲットが狭まり、写真の楽しみ方を奪ってしまいますから。
――機能やデザインも昔からほとんど変わっていない印象です。
【勝山珠有さん】 基本的な操作や構造は初代から大きく変えていません。ただ、昨年のリブランディングでデザインをブラッシュアップし、ファッションにも合うようなパキッとした緑色にしつつ、初代のラインを活かしたかっこいいデザインに刷新しました。
【高井隆一郎さん】 『写ルンです』のシャッターを押す時の「パチッ」という感覚や、フィルムを巻く「カリカリカリ」という音など、ユニークで変えてはいけない部分は勇気を持って変えない。シンプルで、加工できないという本質を残すことを意図的に行っています。
一方で、チェキのエントリー機(『instax mini 13』)には、「セルフタイマー」を搭載しました。エントリー機は誰でも使えるように極力シンプルにすべきですが、スマホでのセルフィー文化が「背景や全身も入れる」スタイルに変化していることを分析し、離れて撮れるように10秒と2秒のタイマーを追加しました。コストを抑えつつ、ユーザーの行動変化に合わせたアップデートは常に行っています。
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――御社はフィルム技術を活かして、非常に多角的な事業展開をされています。デジタル化で本業が危機に瀕した際、どのように乗り越えたのでしょうか。
【広報担当者】 フィルムの需要がピークを迎えたのは2000年です。当社は1980年代から市場の変化を予見し、着々と「技術の棚卸し」を進めてきました。事業転換の際、保有する技術を「市場の成長性があるか」「当社の技術を活かせるか」「継続的に競争力を持ち続けられるか」の3つの基準で選別し、既存技術と新規技術を4象限に分類しました。何を「残すべき宝」とし、何を「捨てるべき過去」とするか。この選別基準が、ヘルスケアやエレクトロニクスといった新たな成長分野への転換を成功させる根幹となりました。
【高井隆一郎さん】 写真フィルムの「塗布技術」や、酸化を防ぐ「抗酸化技術」が化粧品に応用できたり、機能性分子の設計技術が半導体材料やイメージセンサーのカラーフィルターに展開できたりと、写真技術の応用範囲は非常に広かったのです。
――現場のエンジニアや社員の方々のマインドセットを変えるのは大変だったのではないでしょうか。
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――医療や半導体など、全く異なる分野で富士フイルムだからこそ出せる強みは何ですか?
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◆カウンターカルチャーから「寄り添う」存在へ、写真文化の未来
――デジタルデトックスが叫ばれる中、Z世代やさらに下の世代において、アナログの価値はどうなっていくとお考えですか?
【勝山珠有さん】 デジタル化が後戻りすることはありませんし、AIの普及で情報過多はさらに進むでしょう。だからこそ、あえて情報から距離を置き、手間のかかるものに価値を見出す気持ちは、今後なくなることはないと思っています。
【高井隆一郎さん】 Z世代の次にくる世代であるアルファ世代は、物心ついた時からAIという「話し相手」が身近にある世代。スマホの普及の中でデジタルとアナログの狭間にいたZ世代とはまた違う内面を持つようになる可能性があります。そうした世代の傾向をしっかり分析しないと、製品作りの方向性を間違えてしまうという危機感は常に持っています。
ただ、タイパ重視のデジタル社会において、「あえて時間をかけるプロセス」が心地よいと感じられるのは、グローバルで共通して存在している感情です。アナログカメラは、しばしばデジタルに逆行する「カウンターカルチャー」だと言われることがありますが、アナログはデジタルの対立概念ではなく、「デジタルもあるし、アナログもある」という前提の中で、人々の生活に寄り添い、共存していく存在へと変化していると感じます。
――フィルムや中古カメラの需要が高まる中、御社から新しいフィルムカメラが登場する可能性はあるのでしょうか。
【高井隆一郎さん】 私の中では、十分にあり得る選択肢の1つです。現在、市場として新しいフィルムカメラの生産が限られているため、中古カメラが売れているのがここ数年のトレンドのようです。フィルム自体の需要も増えていますから、今後のトレンドや消費者の皆様の「価値体験の感じ方」をしっかりと見極めながら、検討していきたいと思っています。
(文/磯部正和)
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