
埼玉県の川口市内にある「花ててたりと」。花屋であり、障害者の就労継続支援B型事業所です。店に入ると様々な観葉植物の緑色の葉が目に入ってきます。奥の冷蔵庫の中には生花。ひまわりやマリーゴールドなど季節の花で色とりどりです。その横には、注文に応じて利用者が作る、ドライフラワーのブーケやアレンジメントの見本が飾ってあります。
【写真でみる】「花ててたりと」の店内 夏は観葉植物の緑が目立つ
障害者の社会参加の選択肢をもっと豊かに
「花ててたりと」には、様々な障害のある利用者が1日15人ぐらい、体調を考慮したり、生活の状況に合わせて、自分のペースで通っています。花の仕入れ、手入れなどの管理、接客、掃除、アレンジメントの製作。さらには、看板に絵を描いたり、SNSで宣伝したりと、利用者それぞれがやりたいこと、できることに取り組んでいます。
花の売り上げは、工賃として利用者に支払われます。職員は、利用者それぞれに必要な支援を行ったり、相談に乗って、アドバイスしたりします。
運営会社「TETETARITO」は、8年ほど前、同じ川口市内に「本屋さん ててたりと」をオープンしました。代表の竹内一起さんは「事業所では利用者がパンやお菓子を作ることが多いが、障害のある人の選択肢を増やしたい。本が好き、本に関わりたいという利用者もいるはずだ、と考えた」と話します。利用者によるユニークな選書が売りなのと、雑誌などの定期購読で、「町の本屋さん」としてすっかり定着しています。
時間をかけて咲かせる才能
「花ててたりと」がオープンしたのは、その約4年後です。竹内さんは「花は、アレンジメントとか花束で個性が出るものなので、できるんじゃないかなって思ったんです。それと本は定期購読を、クリニックとか美容院とかから、たくさん取っていただいてますが、観葉植物のレンタルとか、会社の玄関に花を活けさせてもらうとか、そういうところを拾っていけるんじゃないかなと考えました」と話します。
ただ本は仕入れれば、すぐに商売になりますが、花は束ねたり、アレンジメントを習得するまで、多少の時間はかかります。東京・四谷の花屋「花どうらく」の協力を得て、「町の花屋さん」として軌道に乗ってきました。今でも、月に2回ほど、講師が来て、利用者、職員が学んでいます。そして、開店祝いの胡蝶蘭や、歓送迎会の花束、神棚の榊などの注文を多く受けるようになってきました。
店の名前は「ててたりと」。逆にすると「とりたてて」。つまり、「どこにでもある普通の町の本屋さん、花屋さん」ですが、逆に利用者一人ひとりにとっては、それぞれの特別な意味がある場所になるように、とつけました。
障害者の居場所として広がる選択肢、広がる挑戦
店の奥には広い作業スペースがあり、取材した日は利用者の佐藤さんと横山さんが、練習で作ったブーケを写真に撮っていて、聞くと「インスタグラムに載せるんです」ということでした。
バラの花が好きだという佐藤さんは「お花屋さんを開きたいという夢があったんです。そうしたら、相談員さんがここはどうだろうと紹介してくださったんです」と話します。
ラナンキュラスが好きだという横山さんは「きれいだし、楽しそうだなって思って入ったら、ブーケ作ったり、アレンジメント作るのが楽しくて、なんかはまっちゃいました」ということです。何か思い出に残ることはありましたか、と聞くと「ワンちゃんの命日に送るアレンジメントを注文されて、いろんなカラフルな色を入れたんです。それがかわいいって言ってもらえて、やっててよかったなって思いました」と話していました。
また、宣伝のチラシ作りも担当することがあり、「もう少しクオリティが高いものを作りたいので、知識を入れているところです」ということでした。
佐藤さんは、しめ縄にドライフラワーをつけるお正月の飾りを作るのが、どんどん予約が入って楽しかったそうですし、時に花の仕入れで市場に行かせてもらうと、「いろんな花があって、勉強になります」と話していました。
「花ててたりと」では、今年初めて5月の「母の日」に、近くにある、埼玉高速鉄道の川口元郷駅と鳩ケ谷駅に臨時出店してカーネーションを販売、好評だったそうです。話を聞いた二人以外の利用者にとっても、それぞれに意味がある場所になるよう、日々運営にあたっています。
「本屋さん ててたりと」も「花ててたりと」も障害がある人が社会参加できる場の選択肢を増やすという、注目される試みです。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当 : 崎山敏也)
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