
音楽の授業を受けているのは、茨城県内にある夜間中学の生徒たちです。在校生は30人いますが、その全員が外国にルーツがあるといいます。かつては「学び直し」の場だった夜間中学ですが、在留外国人の増加で新たな役割を担いつつあります。
全校生が外国ルーツ 夜間中学で学ぶ理由
校歌を歌うのは、茨城県常総市にある市立水海道中学校夜間学級の生徒たちです。
2026年4月に入学した1年生は14人。在校生30人全員が外国にルーツがある生徒です。
授業は平日の午後5時半から。日常会話やひらがな、カタカナの読み書きといった基礎を学びます。
生徒たちが学ぶ理由は様々です。
パキスタン出身(18)
「この先、高校に行きたいと思う。いろんなことを知りたいから」
パキスタン出身(41)
「私はビジネスをします。日本語分からないから、ちょっと難しいです。だから私学校行きます」
夜間中学5年目の桜井先生。
水海道中学夜間学級 桜井和子 先生
「日本で暮らしていくために、日本の学校のシステムに馴染んで学んでいきたいという気持ちは感じます」
2年生の三瓶雄一郎さん(18)は、父親の仕事の都合で2年前にフィリピンから来日し、この学校で学んでいます。
日本人の父親とフィリピン人の母親の間に生まれた三瓶さん。夜間中学で学び始めて2年が経ちますが、まだ日本語に慣れていません。
――覚えた漢字は?
水海道中学夜間学級2年 三瓶雄一郎さん(18)
「空。簡単な漢字だけ。山とか川」
――夜間学級の先生は?
「優しいです。とても優しいです」
長年フィリピンで暮らした父親・和弘さんは、雄一郎さんがこの地になかなか溶け込めていないと感じています。
三瓶雄一郎さんの父 三瓶和弘さん(71)
「言葉が通じないことが不安になることじゃないかな。話してみれば同じですよね。考えていることも同じですよ」
言葉が壁になっているからこそ、日本語を学べる夜間中学の存在は大きいと感じています。
三瓶和弘さん(71)
「(夜間学級は)必要ですね。最初の日本文化との触れ合いのためにね」
この夜間中学がある茨城県常総市は、人口の8人に1人が外国人です。
トラブルや差別の芽を摘み、生徒たちが地域に溶け込めるよう、この夜間中学では地域との交流に力を入れています。
「実際の姿を見てもらうのが一番」地域と繋がる交流会
水海道中学夜間学級 桜井和子 先生
「地域のお祭りに参加できるようにお囃子の練習をしたりとか、対面して活動することによって、外国籍の人たちが悪い人ではない、みんなと一緒に楽しく暮らしていける生活者だっていうのを、市民の人たちにわかっていただけるような活動を夜間学級としてしていくべき」
この日開かれたのは、国際交流会。仲間たちの文化や歴史への理解を深めるイベントです。地元の住民や常総市長も招待されました。
生徒たちが持参した自国を代表する伝統料理が並びます。
交流会には日本の大学生の姿も。千葉県柏市にある麗澤大学の学生たちです。
大学の先生は学生たちを参加させた理由をこう説明します。
麗澤大学 井上里鶴 准教授
「留学生が結構いる大学、それでも関わりがない。その様子を見ていると、連れて行って、実際に話をして、実際の姿を見てもらうのが一番だな」
学生たちは…
麗澤大学の学生
「日常で海外の方と接することはなかなかなくて、ニュースを通して知ったりして、ちょっとマイナスなイメージなのかなと。対面で接してみて、すごく優しい方たちがたくさんいるんだなと実感しました」
――用意した料理は何ですか?
スリランカ出身(20)
「スリランカカレーとスリランカの米です。大学の友達もおいしいって、いっぱい食べたって聞きました」
――大学の友達?
スリランカ出身(20)
「そうです。今友達になった、今話して」
卒業後は日本語支援員へ 外国人と日本人の“橋渡し”に
この夜間中学の卒業生で、外国人と日本人の橋渡しをしている女性がいます。
常総市内の公立小学校で日本語支援員として働く今西秋恵さん(27)。日本語が苦手な外国籍の児童たちの授業を支えています。
ブラジルの日系家族のもとに生まれた今西さんは6歳で来日し、常総市内の小学校に通いましたが、日本での生活には馴染めませんでした。
卒業後に通った夜間中学での出会いが、大きな支えになったといいます。
夜間中学の卒業生 今西秋恵さん(27)
「かなり多くの人と会えたし、今でも交流している友達もいます。支えてくれる場所。疎外感とか寂しさとか、そういったことを洗い流してくれる場所」
今西さんが担当するこの小学校では、全校生徒の4分の1が外国籍です。
夜間中学で感じた勉強の楽しさを子どもたちにも伝えたいといいます。
今西秋恵さん(27)
「勉強が楽しいって思えるような。6年生の最後にはここに来てよかったなって思ってくれるような、そんな形を願いたいですね」
外国にルーツのある生徒たちと社会を繋ぐ夜間中学。今日も授業が行われています。
夜間中学から広がる「共生の輪」 初の日本語指導ガイドラインも
藤森祥平キャスター:
夜間中学の外国人の生徒さんが、日本人と日本語で触れ合ったときの嬉しそうな表情を見て、こういう機会が増えるといいなと思いました。
TBS報道局 社会部 谷脇惇志記者:
夜間中学に通う外国籍の生徒のほとんどは、両親の都合で来日しています。彼らは純粋に日本人の子どもと同じように、自分の夢や目標に向かって日々学んでいます。
取材した外国人の生徒は日本が好きで、「日本人と友達になりたい。ただ、そのレベルに達していなくて、だからこそ頑張っている」と話してました。
藤森キャスター:
少しでも、学びの場や環境の整備といったサポートが必要だと感じますね。
トラウデン直美さん:
手を伸ばしたいのに、距離を感じて手が伸ばせない。そうなると疎外感を感じてしまい、さらに距離が広がってしまうことがあると思います。こうした形で、学びを通して距離が近づくことは、本当に必要だと思います。
今、夜間学校がこうした役割を担っていますが、それだけではなくて、いろいろなセクターがその役割を担っていく必要があると思います。
上村彩子キャスター:
全国の夜間中学に通う生徒の割合は外国籍が6割を超えており、日本語指導の需要も高くなっています。
【夜間中学に通う生徒の割合】
外国籍:63.8%
日本国籍:36.2%
5月、文科省は「夜間中学における日本語指導ガイドライン」を初めて公表しました。
TBS報道局 社会部 谷脇記者:
元々夜間中学は、国語や数学といった義務教育を行う場所であり、だからこそ日本語の指導は手探りの状態が続いていました。
夜間中学の先生も、「最初はどう教えていいかわからない」と話していました。
上村キャスター:
生徒の皆さんも、教育現場で前向きに取り組んでいるわけですが、日本に合わせるというわけではなく、一緒に住む地域の仲間として、言葉がその土台になると嬉しいなと思います。
トラウデン直美さん:
人間にとって言葉はすごく大きなコミュニケーションツールの一つではあると思いますが、それだけではありませんし、もちろん言葉を通して頑張ってコミュニケーションを取りたいという気持ちが大きいと思います。
私自身も未だに「日本語上手ですね」って言われることもあるのですが、見た目ではやはりわからないんですよね。どんなに日本人に見えたとしても、外国で生活してきたから日本語が難しいという方もいらっしゃると思います。
そういったところを少しずつ歩み寄りながら、「受け入れる」という気持ちではなく、そこにいる仲間たちとして触れ合えていけばいいと思います。
一緒に社会を作っていく仲間だという意識を持つだけで、世界は変わるような気がします。
TBS報道局 社会部 谷脇惇志記者:
今後も外国人の数は増えていくことが予想されます。
急激な増加を不安に思う人もいらっしゃると思いますが、その気持ちが過度に増幅してしまうと、差別や偏見に繋がってしまう恐れもあると思います。
まずは相手のことを知ることから始めることが、共生の第一歩になると思います。
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<プロフィール>
谷脇惇志
社会部 法務検察・国税担当
危険運転事故の遺族や拘禁刑などを取材
トラウデン直美さん
SDGsなどの社会課題に関心
特技は乗馬 初級馬術指導者の資格も
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