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被災地に“おもちゃ”の支援は必要なのか? バンダイが挑む子どもの心のケア、「ガシャポン備蓄」の真意

国内
2026-07-09 09:10
被災地に“おもちゃ”の支援は必要なのか? バンダイが挑む子どもの心のケア、「ガシャポン備蓄」の真意
「支援おもちゃ」を手に取った子どもたち
 地震や台風などの自然災害が頻発する日本。被災地支援では水や食料などの「衣食住」が最優先される中、玩具メーカーのバンダイは、被災地の子どもたちに向けてカプセル玩具の「災害時こども支援おもちゃ」(以下、支援おもちゃ)を備蓄・提供する独自の活動「災害時こども応援活動」に取り組んでいる。ライフラインの確保が急務となる中、被災地へのおもちゃ支援の必要性については賛否がわかれる可能性もある。だが、子どもたちの「心のケア」も欠かすことのできない重要な支援だ。被災地にあえておもちゃを送る決断に至った、その真意について、同社の青木優さんに話を聞いた。

【画像】『太鼓の達人』キャラデザイナーが手掛けたとっても可愛い「支援おもちゃ」

◆全社員のアイデアから生まれた、被災地への「支援おもちゃ」

――まずは被災地支援活動を始められたきっかけについてお聞かせください。バンダイでは全社員からアイデアを募る形でスタートしたとお聞きしましたが、初期段階ではガシャポンを積んだ移動トラックで現地に向かうという企画もあったそうですね。そこからどのように計画が変わっていったのでしょうか。

「2020年頃、災害が多かった時期に『会社として困っている被災地の子どもたちに何かできることはないか』と、全社員からアイデアを募集したのが始まりです。当初は、ガシャポンを積んだ移動トラックで被災地に赴き、子どもたちに回して楽しんでもらう企画が有力でした。

 しかし、子ども支援活動を行う 、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン様に相談し、被災地のリアルな状況をお聞きしました。発災直後は交通機関が麻痺しており立ち入り規制もあるため、簡単には現地には入れないことや、被災地の現状を詳細に把握していない我々が赴くことで迷惑になったり、二次災害を招いてしまっては本末転倒になる。災害が起こる前の段階でできることは何かを考え、自治体様などに備蓄品として提供をする方向性に変更となりました」

――被災地の環境を考慮した結果、おもちゃの仕様にも工夫が必要になったそうですね。普段開発されているようなおもちゃとは、どのような部分を変えられたのでしょうか。

「避難所はパーソナルスペースが非常に狭く、年齢層もさまざまです。そのため、避難所で安心して遊べるおもちゃとは何かをセーブ・ザ・チルドレン・ジャパン様のアドバイスを受けつつ検討しました。音が出るものや大きなスペースを必要とするものは周囲への配慮が必要となるため、最終的には省スペースで音が鳴らず、柔らかく安全性にも配慮した『エアーマスコット人形』や『スクイーズ人形』を採用しました。『エアーマスコット人形』は空気を抜けばコンパクトにたたむことができ、避難所生活でも保管しやすい点が特長です。また、スクイーズ人形は柔らかい素材でできており、ぎゅっと握ることで気持ちを落ち着かせる効果も期待しています。こうした特長を踏まえ、子どもたちが避難所でも安心して楽しめるおもちゃとして開発しました」

◆カプセルに込めた「起き上がる力」と被災地での反響は? ガシャポンがつなぐ交流の輪

――支援おもちゃのデザインやコンセプトについてもお伺いします。被災地の子どもたちに向けたものとして、一見するだけでは分からないような特別なメッセージ性が込められているとお聞きしました。

「キャラクターデザインには『太鼓の達人』のキャラクターを描いたデザイナーの横尾有希子さんにお願いし、あえてガシャポンカプセルという形状を生かし、『カプセルを閉じて身を守り、転んでも、起き上がることができるように!』といった想いを込めています」

――素晴らしい想いが込められているのですね。実際に被災地でそのおもちゃを受け取った子どもたちや、ご家族の方からはどのような反響があったのでしょうか。

「令和6年能登半島地震などで緊急支援を行った際の話ですが、お渡しした時にカプセルを見た子どもたちが『あ、ガシャポンだ!』とすごく喜んでくれたそうです。『何が出た?』『こんなの出たよ!』と友だち同士や大人たちと見せ合ったりして、被災地の中でコミュニケーションを生む役割を果たしてくれました。おもちゃがきっかけで子どもたちが笑顔になり、交流の輪が広がったというお話を聞けたことは、とても嬉しい報告でした」

◆衣食住と同じくらい大切な「心のケア」は? 自治体での「おもちゃ」備蓄の壁も

――活動を進める中で、発災時におもちゃを届けるタイミングの難しさもあると思います。現在は自治体に事前の備蓄をお願いしているとのことですが、その普及にあたっての壁や、地域の学校との連携におけるハードルについて教えてください。

「発災直後に東京からお届けするのは難しいため、事前に市区町村などの各自治体へお声掛けをして備蓄していただき、発災時の配布タイミング等のご判断はお任せする体制をとっています。しかし、自治体によって備蓄できるスペースも変わってまいりますし、いざ災害が起きるとどうしても水や食料などの衣食住が最優先されるため、支援おもちゃの備蓄スペースの確保にはハードルは高いのが現状です。災害時の子どもの『心のケア』の重要性については、まだまだ認知や理解が十分ではない現状において、支援活動の輪をいかに広げていくかは大きな課題となっています」

――衣食住の支援が優先される中で、「不要不急」と捉えられがちなおもちゃによる支援の重要性を、御社としてはどのようにお考えでしょうか。

「確かに被災時には衣食住の確保が最優先されますが、それらと同じくらい、あるいはそれらを補う形での『心のケア』も、代えがたい重要性を持っていると感じます。おもちゃを通じて『心のケア』をおこなうことで、子どもが普段の生活を取り戻し、笑顔になってくれれば、周りにいるご高齢の方や大人たちも幸せな気持ちになれます。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン様のお話しでは、衣食住と同じくらい、子どもが早く普段の精神状態に戻るためのサポートが重要だということは、まだあまり知られていないのが現状とのことです。その重要性を少しでも広げるためにも、この活動を通じ、これからも自治体の方々へ地道に啓蒙し続けていきたいです」

◆安全への徹底したこだわり 被災地ではおもちゃの「二次的活用」も求められている

――備蓄となると長期間の保管が必要になりますが、いざ使う時におもちゃが劣化していないかという品質管理への対策はどのようにされていますか。

「備蓄品については使用期限を生産年から5年に設定し、年に1回、自治体様にご協力いただき、弊社独自基準での定期品質検査を実施しています。いざ災害時に開けたおもちゃが壊れていたり、遊べないといったことで子どもたちを悲しませることは絶対に避けなければなりません。安全を第一に考え、怪我につながるようなことがないよう、品質管理を行っています」

――被災地ではおもちゃの「二次的活用」も求められているとお聞きしました。今後の展望も含めて、どのような工夫や展開を考えていらっしゃいますか。

「バンダイでは同梱しているミニチラシにキャラクターのイラストや紹介を盛り込むことや、『被災地では運動不足になりがち』とセーブ・ザ・チルドレン様にお聞きしていたことから、支援おもちゃを使って周りの人とコミュニケーションを取りながら運動にもなる遊びを考え、動画を作成し、2次元コードをチラシに載せ動画へ誘導するなど、ゴミとして捨てず何度も楽しく、見たくなるような工夫を盛り込んでいます。バンダイでは『こどもたちの未来のために』という想いのもと、さまざまな社会活動に取り組んでいます。この活動を通じて、全国の自治体へ備蓄が広がっていくことを目指して地道に活動を続けていきます」

 非常時において「心のケア」は後回しにされがちだ。しかし、おもちゃがもたらす安心感や笑顔は、子どもたちだけでなく周囲の大人をも明るく照らす力を持っている。困難な状況でも「自ら起き上がれるように」という切なる願いが込められたバンダイの支援おもちゃ。安全性にも徹底して配慮されたこの取り組みが全国の自治体へ広がり、万が一の際に子どもたちの心を守る確かな「お守り」となることを願ってやまない。

(文/磯部正和)

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