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「数字を稼ぐなら胸を張れ」青木真也が記者に突きつけた、メディアと選手のリアルで最適な関係【インタビュー前編】

国内
2026-09-05 13:00
「数字を稼ぐなら胸を張れ」青木真也が記者に突きつけた、メディアと選手のリアルで最適な関係【インタビュー前編】
『超RIZIN.5 浪速の超復活祭り』で朝倉未来と対戦する青木真也 (C)ORICON NewS inc.
■青木真也が考える「メディアとの距離感」と、自分の生き方に対する責任

 「予防線を張るようなことをするなよ。裏で『くだらない質問をしてすみません』なんて謝るんじゃなくて、数字を稼ぐために言葉を切り取るメディアとして、胸を張れ」。8月29日、都内で行われた『ANGEL CHAMPAGNE presents 超RIZIN.5 浪速の超復活祭り』出場ファイターによる公開練習に出席した青木真也は、自身のYouTubeサブチャンネルで公開した動画で、オリコンニュースの記者に対して強い不快感を表明した。

【画像】『超RIZIN.5』シェイドゥラエフvs.マッキーほか全対戦カード

 公開練習後、オリコンニュース記者はバックステージで青木とすれ違った際に「くだらない質問をしてすみません」と謝罪した。その真意は、3問の質問のうち最後に「PRIDEやDREAMから見てきた元ファンとして質問させてください」と、メディアに携わる者としての立場を曖昧にし、中途半端な姿勢で青木と向き合ってしまったことへの謝罪であった。

 短い言葉の謝罪で真意を説明しなかった記者の行動には、大いに問題があったのは間違いない。動画を見た直後、記者は、大一番の直前に余計なストレスを与えてしまったことを謝罪し、言葉の真意を説明したいと思った。しかし青木は動画内で「申し訳ないと思うなら終わった後に話を聞きに来て記事を作ればいい」と発言。これを受け、オリコンニュースでは改めて青木に取材をオファーすると、試合の10日前という段階にもかかわらず、青木はオファーを受けてくれた。

 ファイターとメディアの関係性、メディアへの不信感が大きくなったきっかけ、そして“自分の名前”でビジネスすることの難しさとやりがい。1時間以上にわたる対話の中で、青木はオリコンニュースの記者にじっくりと語ってくれた。できるだけ青木の言葉をそのまま伝えるため、前後編でお届けする。
(取材・文/オリコンニュース編集部長 五十嵐走平)

 約束の時間通りに取材部屋のテーブルについた青木は、開口一番「なんで謝るの? オリコンニュースは自分たちのスタイルでやればいいし、俺は俺のスタイルでやるんで」と、こちらの謝罪を拒否した。そして「数字を稼ぐことは悪いことなの? 俺たちの言葉を盗んで、より多く見られるために時には悪意を持って切り取ってるんでしょ。そういうビジネスを俺は否定しない。ただ、相容れないだけだから」と記者をまっすぐ見つめた。

 まさに青木の指摘通りで、言葉が返せなかった。無料のウェブメディアとして、記事も動画もより多くの人に見られてPVや再生数を稼ぐことを目指している。ウソや捏造は当然あり得ないが、完全に悪意がゼロかと問われると、「絶対にゼロです」と断言はできなかった。

■「たぶん俺も損してるんだよ」自分の生き方に自ら責任を取ってきた青木のプライド

 青木はそんな事情を理解したうえで、「俺は数字を追い求めるメディアのスタイルが気に入らないってだけ」と続ける。「だから、別にオリコンニュースと揉めてないし。だって、俺が嫌いって言ってもオリコンニュースは世間に認められて存在しているんだから、どんな取材をしようが自由じゃん。影響力も拡散力もあって、RIZINは取材に来てほしい、ファンもオリコンニュースの記事や動画を見たいっていうなら、それはいいと思う。ただ、俺とは相容れないってだけだし、嫌なものは嫌っていうのが俺のスタイルだから。オリコンニュースは全力で数字を取りにいけばいいんです。中途半端に謝ったり、予防線を張るようなことはしないでほしい」と強調した。

 自身の東スポ前田記者との記事を引き合いに出し「あれなんてまさに数字を取りにいってるし、自分のYouTubeも数字にこだわることにプライドを持ってやってるから。だから、今回のことも俺に謝罪するんじゃなくて『プロなら数字に対して胸を張れ』って言いたい」と言葉に力を込める。

 YouTubeで自分の考えを発信することで「たぶん俺も損してるんだよ。面倒くさいヤツって思われることが増えて、仕事は減ると思う」とマイナス面も理解している。それでも「それでいいと思ってる。自分が納得できなかったり、違和感を覚える方が嫌だし、それでここまでやってきたから。もっと早くに潰れちゃうと思われてたけど、43歳まで結果として生き延びてしまった。これが俺のスタイルだし、自己責任を負ってるんで」と、自分の生き方に自ら責任を取ってきた青木のプライドが垣間見えた。

 ファイターとメディアの関係性について青木と話を続けていくと「俺のキャリアは、メディアに手のひらを返され続けた人生ですよね」という言葉が聞かれた。詳しく尋ねると「大きなポイントは、ギルバート・メレンデス戦です」と2010年4月にアメリカで行われた試合を振り返った。

 あの時期の青木は、まさに激動だった。DREAMが2年目を迎えた2009年、4月に階級を上げてウェルター級トーナメントに参戦するも、1回戦で桜井マッハ速人に1ラウンドKO負け。7月の再起戦でビトー・“シャオリン”・ヒベイロとの寝技対決が期待されるも、キックで距離を取り続ける戦いを徹底し、判定勝ちしたものの、落胆したファンも多かった。

 10月には前年のライト級トーナメント決勝で敗れたヨアキム・ハンセンとのタイトルマッチで再戦し、2ラウンド残り4秒に腕ひしぎ十字固めで一本勝ち、念願のDREAMライト級ベルトを獲得。そして2ヶ月後の大みそか『Dynamite!!』の戦極との対抗戦の大将として、廣田瑞人と王者対決に臨み、ハンマーロックを極めたが、廣田がタップアウトしなかったため右腕を骨折させてのレフェリーストップ勝ち。さらに、試合後に敗者の廣田に対して中指を立てる姿が全国テレビで放送され、大きな物議を醸した。

■メディア不信の原点となったメレンデス戦「あの時に言われたこと、書かれたことを全部覚えてますから」

 喝采と批判、その両方を浴びた1年を経て行われたメレンデス戦。日本格闘技界の期待を背負った一戦だったが、結果は0-3判定負け、内容的にも完敗だった。この時期について青木は「あの時のマスコミは手のひらを返したし、俺の欠席裁判もした。当時は俺に言葉を発する場所がなかったから『数字のために適当なことを書きやがって』って悔しかったし、俺は異常に記憶力が良くて根に持つ性格だから、あの時に言われたこと、書かれたことを全部覚えてますから」と振り返る。

 当時の格闘技メディアで活動し、現在も青木を取材する記者もいる。悔しさを忘れていない青木だが「その後もコツコツと現場に足を運んで、プロレスも見に来てくれる人には、ちゃんと取材を受けてます。別に友だちになるわけじゃなく、お互いの仕事をやるだけなので、話を聞きに来てくれるなら話しますよ。俺は取材拒否したことないからね」と、プロとして明確な基準を守り続けている。

 かつては自分の意見を主張する場を持てなかった青木だったが、YouTubeやSNSなどによって“戦える”ようになったことで「メディアとのバランスがガラッと変わった。今は選手のパワーが強くなって、メディアにとって苦境の時代だと思いますよ」と状況を俯瞰する。さらに「逆に言うと、オリコンニュースの五十嵐さんとは、こうやって揉められるわけじゃないですか。それはオリコンニュースにパワーがあるってことだし、チャンスでもあるんですよ。今の時代にターザン山本(90年代に『週刊プロレス』を大ヒットさせた元編集長)は、いないんですよ。この人の書いた記事だから読みたい、この人の分析だから聞きたいって存在がいない。だからこそ、青木真也と揉めた記者が次にどんな記事を出すのかって、見てもらえるチャンスなんですよ」と進言してくれた。

 まさか、YouTubeで怒られたことがチャンスになるとは、まさに発想の転換。失礼な態度を取った記者に対しても、次の展開へのアドバイスを送る。メディアの看板で仕事をするサラリーマン記者と、人に嫌われることがあっても自分のスタイルを崩さず20年以上もトップ戦線で生きてきたプロファイター。覚悟と経験の差をまざまざと感じさせられた。

(後編では青木が朝倉未来を「煽らない理由」、そしてその先に見据えるビジョンについて語った)

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