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煙もニオイもない「オーラルたばこ」、“禁煙一択”か“低減”か…医療界の懸念にどう答える?

国内
2026-09-09 09:10
煙もニオイもない「オーラルたばこ」、“禁煙一択”か“低減”か…医療界の懸念にどう答える?
BATジャパンから発売されているオーラルたばこ
 8月25日、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン(以下、BATジャパン)は、「モダンオーラルたばこ」に関するメディア向け情報交換会を開催した。近年、日本国内でも急速に市場を拡大している本ジャンルだが、その健康リスクについては疑問の声も寄せられている。説明会では、モダンオーラルたばこの基本から、医療界からの懸念に対する見解、そして同社が掲げる「ハームリダクション(健康被害の低減)」の考え方まで、幅広く議論が交わされた。

【画像】マンゴー、グレープにミント…多彩なフレーバーのオーラルたばこ

■煙やニオイが一切出ない「モダンオーラルたばこ」とは

 「モダンオーラルたばこ」とは、純白の小さなパウチを歯茎と頬の間に挟んで使用する新しいたばこ製品。紙巻きたばこや加熱式たばことの最大の違いは、「燃焼」も「加熱」も一切行わない点にある。そのため、煙やニオイが発生せず、受動喫煙の心配もない。

 BATジャパンの担当者は、「従来のたばこの概念を覆す製品であり、煙が出ないため周囲に迷惑をかけることなく使用できるのが大きな特徴」と説明する。

 日本では、2020年の改正健康増進法の施行を機に、煙の出ない製品への注目が集まった。近年は競合他社もオーラルたばこの新製品を投入しており、市場はにわかに活気づいている。

■国内では既存製品との誤解も? 喫煙率を激減させたスウェーデンの実例

 同社によれば、オーラル製品には主に4つの分類があるという。台湾や東南アジアで昔から親しまれている「伝統的製品(ビンロウなど)」(たばこ製品ではないものも含まれる)、北欧で数世紀前から普及しているたばこ葉を含む「スヌース」、欧米で近年広がっているたばこ葉を含まない「ニコチンパウチ」、そして、加工たばこ葉を使用した新しいカテゴリである「モダンオーラルたばこ」だ。

 しかし、BATジャパンは「オーラルたばこと言っても様々な種類があり、とくに国内ではそれが混同されがち。利用者や周囲の方々にご理解いただくのが難しいことが課題」と明かす。

 一方、世界に目を向けると、オーラルたばこの普及が社会的な変化をもたらしている国もある。「スヌース」が古くから親しまれているスウェーデンでは、紙巻きたばこの喫煙率が年々低下し、現在では5%を下回る(スヌース利用率は15.7%)。EUでは喫煙率5%未満を「スモークフリー」と定義しており、スウェーデンは事実上のスモークフリー国として認定される見通しだという。さらに、同国の肺がん死亡率がEU内で最低水準(人口10万人あたり20人未満/2022年、年齢標準化死亡率)であるというデータも紹介され、紙巻きたばこからの移行がもたらす公衆衛生上のメリットの可能性が示唆された。

 普及が進む一方で、新しい製品に対する懸念の声も上がっている。説明会では、「最近、口腔科や歯周病学会の医師などから、オーラルたばこのリスクを懸念するネガティブな報道が出ているが、どう捉えているか」という質問も投げかけられた。

 これに対し担当者は真摯に受け止めつつも、情報発信においても「混同」が見られることを指摘する。

「報道や学会でのご指摘を拝見する限り、旧来の伝統的なオーラル製品を含めた過去の研究結果を引用されているケースが見受けられます。新しいカテゴリであるモダンオーラルたばこの特性への理解がまだ浸透していないことが、先生方の不安や懸念につながっているのではないでしょうか。我々としても、積極的に発信していく必要があると感じています」

 同社によれば、スウェーデンにおける長期間の疫学研究などでは、スヌースの使用と歯周病などの間に有意な関連は認められないとするデータもあるという。また、米国食品医薬品局(FDA)からは、「紙巻たばこの喫煙と比較して、口腔がん、心疾患、肺がん、脳卒中、肺気腫、慢性気管支炎のリスクが低下する」と一部スヌース製品に対して評価した調査もある。

「一方で、スヌースとすい臓がんリスクに関する代表的な疫学研究においては、リスクが上昇(2007年)という研究、関連が認められない(2017年)という研究が両方出ています。研究手法や評価の仕方によって変わることもあるので、複数の最新研究を併せて、総合的に評価していただけたらと思います。我々としても、単一のデータでリスクがないと断定するわけではありません」

 さらに、リスク評価の「比較対象」が重要であり、「あくまで『紙巻きたばこを吸い続ける場合』と比較したときに、切り替えることでどれだけ有害性物質が軽減されるのかを精査した上で案内しています」と強調。ゼロリスクを謳うのではなく、紙巻きたばこからの移行による「相対的なリスク低減」であることを改めて訴えた。

 こうした「相対的なリスク低減」を訴えるBATジャパンだが、医療現場では依然として「禁煙一択」を指導する見方が根強い。もちろん、たばこ製品である以上、健康リスクを回避する最善の策が「禁煙」であることに変わりはない。同社自身も「非喫煙者や未成年は絶対に使用を開始すべきではなく、最善は禁煙である」という立場を明確にしている。

 しかし、現実問題として禁煙は容易ではない。厚生労働省のデータによれば、禁煙治療を試みた人のうち、継続して禁煙できたのは約3割にとどまり、約7割の人が再び喫煙に戻ってしまうという現実がある。

 そこで同社が推進しているのが、「ハームリダクション(健康被害の低減)」という考え方だ。「喫煙を継続することを選択する消費者に対し、単に現状の紙巻きたばこを提供し続けるのではなく、新しいアプローチを検討する必要があります」と語る。

 たばこ関連疾患の主な原因は、ニコチンそのものの依存性ではなく、たばこ葉を「燃焼」させることで発生する数千種類の有害性物質にあるとされている。WHO(世界保健機関)が低減を推奨する9つの主要な有害性物質を見ると、紙巻きたばこを100とした場合、BATが公表している製品分析では同社の加熱式たばこは約90-95%削減、そしてモダンオーラルたばこは約99%も削減されるというデータが示された。

 実際、医師向けの媒体に所属する記者からは「医師の間では依然として『禁煙一択』という見方が強いが、どう距離を縮めていくのか」という質問が飛んだ。これに対しBATジャパン側は、現状の医療現場の認識を受け止めつつ、「ニコチン自体に発がん性があるわけではなく、燃焼による有害物質が主な要因であるという事実を丁寧に伝えていく必要があります。どうしても禁煙できずに紙巻きたばこに戻ってしまうくらいなら、より有害性物質の曝露が少ない製品へ切り替えてもらう方が、公衆衛生の観点でも建設的だと言えます」と回答。医師に対しても、ハームリダクションの概念の理解促進を図っていく方針を示した。

■ゼロリスクではない、だからこそ挑む「スモークレスな社会」へのシフト

 受動喫煙ゼロという画期的な特徴を持つモダンオーラルたばこだが、新しい製品ゆえに、医療界を含めた社会の理解はまだ過渡期にあると言える。BATジャパンは、「最終的にスモークレス製品が主流となることが、当社のビジョン達成につながる」と語る。

 紙巻きたばこからの移行を促し、ハームリダクションという選択肢を社会に定着させることができるか。情報への誤解を解き、社会との継続的な対話を進めるモダンオーラルたばこの今後に注目が集まる。

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