
10月5日に召集される秋の臨時国会。物価高対策の目玉である「食料品消費税減税」と、与党連立の“絶対条件”とされる「議員定数削減」という2つの法案の行方が焦点だ。しかし、いずれの法案も"参議院の壁"という共通の難題に直面している。与党はどのように野党との合意形成を図るのか。そして、異例の人事が国会運営にどんな影響を及ぼすのか。臨時国会をめぐる情勢を読み解く。
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“野党工作”が不可欠 「消費減税」で与党薄氷
秋の臨時国会は10月5日に召集され、会期は12月12日までの69日間となった。注目法案の一つが、食料品の消費税を来年4月から2年間、1%に引き下げる「消費税減税法案」だ。所信表明演説や各党の代表質問、予算委員会が一通り終わったのち、早ければ10月20日にも審議入りする見通しとされている。
この法案に対し、各党は国民会議で意見を表明している。賛成したのは与党の自民党と日本維新の会。日本保守党は「本来であれば食料品の消費税は恒久的にゼロにしたい。1%ならすぐできるなら妥協案だ」として容認の立場を示した。一方、国民民主党、中道、立憲民主党、公明党、チームみらいといったその他の野党は反対または慎重な姿勢を表明している。
TBS政治部の野党担当・奥村康平記者は、野党各党が反対に回る主な理由として「2年後に消費税を元に戻す際の実質的な増税リスク」、「財源の捻出方法が不透明なこと」、「農業事業者や外食産業への支援策が具体化されていないこと」の3点を挙げた。さらに、「財源の部分が解決できないと、どの党が納得するか見通しが立たない」と指摘する。
実際に臨時国会へ提出される法案の概要は、財源については「赤字国債に頼らず、歳出・歳入の見直しで確保する」という表現にとどまり、具体策は盛り込まれていない。TBS政治部の自民党担当・佐藤浩太郎記者は「前回から同じ状況」と指摘する。財源の具体策が示されない限り、野党各党の姿勢が変わる見通しは立たない。
問題はそれだけではない。審議が予定されている、参議院の「財政金融委員会」を通過できるかも大きな壁となっている。採決票を持つ委員は24人だが、与党が持つのは自民9・維新2の計11票にすぎず、自民に所属する委員長採決で決まることを考慮しても1票足りない。
奥村記者は「野党が一致すれば、参議院では政府与党の進めたいものを止める力がある」と明言する。委員会の段階から「野党工作」が不可欠な構図となっている。
松山参院会長「連立も視野に」国民民主・公明への秋波
与党側が名前を挙げる交渉相手は、国民民主党と公明党の2党だ。自民党の松山政司参院会長は記者会見で「野党との話し合いが極めて重要」と述べ、国民民主党については「協力し合える余地がある。将来的には連立も視野に入れて真剣に意思疎通を図っていくべきだ」と踏み込んだ発言をした。さらに公明党についても「自公政権で20数年、与党として信頼関係を積み重ねてきた。どういった協力ができるか模索していきたい」と付け加えた。
国民民主党は現状、厳しいスタンスを取りながらも「減税そのものには反対しない」という立場を維持している。奥村記者によれば、消費税を下げる部分以外、つまり給付制度の設計や中低所得者への支援策などで国民民主党が「のめる」内容が提示されれば、交渉の余地が生まれるという見方がある。
公明党については事情がやや複雑だ。衆議院では「民主改革の会」とともに「中道」という会派に属しており、仮に公明党が賛成に回る場合、会派内での賛否分裂、あるいは民主改革の会ごと取り込むことが必要になり、容易ではない。奥村記者は「中身がしっかり整理されて納得できるものにならない限りは難しい」と慎重な見方を示す。
一方、衆議院を通過してから60日以内に参議院で採決されない場合に否決扱いになる「60日ルール」後の衆議院での再可決について、松山参院会長は「頼るのはまずあり得ない」と明言している。参議院関係者の間でも「このルールの適用は参議院の存在意義に関わる」という考え方が根強く、与野党ともに消極的だという。
会期は12月12日までだが、衆議院での丁寧な審議が参議院での議論の質を左右するという点で、佐藤記者は「まず入口の衆議院のところから与野党協議を充実させていくことが大事だ」と強調する。
維新の“絶対条件”「定数削減」の実現は?連立崩壊リスクも
消費税減税と並ぶもう一つの焦点が、衆議院比例代表の定数を176議席から131議席へ、45議席削減する「議員定数削減法案」だ。日本維新の会が自民党との連立において「絶対条件」として掲げてきたこの法案は、与野党が話し合う選挙制度協議会で今週中にも結論を出す予定だった。しかし9月28日の同協議会で「10月末をめどに結論を得るよう努力する」とされ、事実上の先送りとなった。
なぜこれほど議論に時間がかかるのか。佐藤記者は「一言で言えば、各党の意見の隔たりが非常に大きい」と解説する。衆議院の比例定数を45議席削減するという案は、基本的に野党に不利なルール改正となる。加えて、与野党を問わず「定数削減ありきではなく、選挙制度そのものを抜本的に改革すべきだ」というそもそも論が根強くある。
野党側も「45」という削減数の根拠が示されないまま審議が継続されることへの強い反発を維持している。奥村記者は「根拠が解決されないまま法案が出てくると、前回特別国会で国会審議に野党が参加しなかったような状況が繰り返される可能性もある」と指摘する。
見通しについて佐藤記者は「消費税減税よりかなり厳しい」との見方を示した。それでも自民党が審議をやめられない理由は、維新との連立関係に直結しているからだ。「前回は譲ったんだから今回こそ」という維新側の圧力は強く、法案を成立させられなければ、連立離脱に発展するリスクもある。参議院関係者も「約束だからやらなければいけない」と話している。
総理が国会に出席しなくなる?"異例人事"で波紋も
二つの法案の行方と並んで注目されるのが、改造内閣で国対委員長に就任した村井英樹氏の存在だ。
村井国対委員長は岸田政権下で官房副長官・総理補佐官を務め、総理の多忙ぶりを間近で見てきた経験を持つ。就任前には自身のYouTubeチャンネルで「総理の国会出席について見直すべき」との考えを公言しており、就任後には「総理の委員会出席は原則不要」とする民間シンクタンクの提言をSNSでリポストしている。
「充実した審議が大前提であることはもちろんだが、総理の国会出席が非常に大きな負荷になっているのではないか」というのが村井氏の基本的なスタンスだ。
これに対し、野党は強い警戒感を示している。中道会派・民主改革の会の後藤祐一国対委員長は「民間のシンクタンクの報告書で総理は委員会に原則出席しないでいいという話もあるが、ちょっとそこまで言われると心配になる」と懸念を示した。衆参の野党国対委員長会談の場でも「国会改革の名の下で総理の国会出席がさらに削られることへの懸念」が相次いで上がったという。
奥村記者は「総理の出席時間がさらに短くなることは、与野党の国会日程の交渉などでさらなるハレーションを生む可能性がある」と指摘。消費税減税も定数削減も、与野党の丁寧な合意形成が前提となる中で、総理の出席問題が新たな摩擦要因として加わることになりかねない。
参議院側では、先の国会で幹事長を務めた石井氏に代わり青木一彦氏が新幹事長に就任。国会対策経験が豊富で、立憲の斎藤国対委員長とは当選同期という関係から、野党との交渉での活躍が期待されている。
佐藤記者は「参議院自民党内では、内紛や確執よりも1つにまとまって野党に対峙し法案を通していくという方向に考える人も多い」と述べた。
最終的に法案審議の行方を左右するのは、衆議院段階での与野党協議の質だ。「衆議院で野党との交渉が崩れたり、もつれると、その状態がそのまま参議院に持ち込まれる。まず衆議院の入口から与野党協議を充実させることが大事」と佐藤記者は指摘する。
奥村記者も「野党が衆議院でバラバラになって与党側に付いてしまえば、参議院でまとまった勢力として戦うことはできなくなる。1つ1つの法案審議において、野党が一致して政府与党と向き合えるかが重要な要素になる」と見ている。
高い支持率を維持したまま臨む秋の臨時国会。しかし消費税減税、議員定数削減という2つの焦点はいずれも、参議院という高い壁が立ちはだかる。野党工作の成否、維新との連立維持、そして国会運営をめぐる与野党の攻防――69日間の会期の中で、その答えが出ることになる。
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