“トランプ関税”をめぐる日米交渉に向け、赤沢経済再生担当大臣がワシントンに到着しました。一方、この数時間前、トランプ大統領が交渉に自ら出席する意向を明らかに。交渉の行方はどうなるのでしょうか。
トランプ大統領 関税や在日アメリカ軍の負担にも協議する意向
赤沢亮正 経済再生担当大臣
「自分でも驚くほど、今朝落ち着いている。準備ができたということ」
4月16日、世界に先駆けてアメリカとの関税交渉に赤沢経済再生担当大臣が向かいました。
8日には、交渉に自信をのぞかせていました。
赤沢亮正 経済再生担当大臣
「コーネル大学留学中に、欧米流の交渉術を学んだことがある」
16日夜、トランプ氏は…
トランプ大統領のSNS(日本時間16日午後7時すぎ)
「日本が関税と軍事支援のコスト、『貿易の公平性』についての交渉にやってくる。私は財務長官と商務長官とともに会議に出席する」
日本との交渉について、自ら出席する意向を明らかにし、関税のほか、在日アメリカ軍の負担についても協議する意向を示したのです。
アメリカからはベッセント財務長官らの出席のみが発表されていましたが、日本政府関係者は「投稿内容について確認している」としています。
「アメリカに大きく打って出たいと思っていた矢先だった」 日本の和牛 アメリカの注文減で国内供給過多のおそれ
波乱のスタートとなる関税交渉。
主な焦点は、トランプ大統領が日本に課すと表明した24%の“相互関税”を引き下げられるかどうかです。
“相互関税”をめぐってトランプ氏は、まず、各国一律に10%の関税をかけました。
その後、日本の場合は14%が上乗せされ、一時24%に引き上げられましたが、中国を除く国について、上乗せ分の適用を90日間停止にしました。
この90日の間に、自動車や農産物を含む幅広い分野の関税などが話し合われることになります。
アメリカ産牛肉を使ったステーキが人気の都内のステーキ店では、円安などで仕入れ価格は高騰していて、関税交渉の行方に注目しています。
ステーキハウスミスターデンジャー 松永光弘 オーナー
「関税合戦によって日本がどう交渉するか」
生産現場も心配が尽きません。
茨城県の和牛「常陸牛」は、霜降りの甘い脂が特徴で、欧米や東南アジアで人気となっています。
茨城県常陸牛振興協会 谷口勇 事務局長
「アメリカが輸入する関税率を大幅に上げると、我々にとっては青天の霹靂」
常陸牛を世界に売り出していた、茨城県常陸牛振興協会の谷口事務局長は、このように話します。
茨城県常陸牛振興協会 谷口勇 事務局長
「令和7年(2025年)からアメリカに大きく打って出たいと思っていた矢先だった。ショックは大きい」
“相互関税”の90日間停止を受けて、アメリカの取引先からは“駆け込み需要”があり、15日は普段の4倍にあたる20頭分の注文があったといいます。
関税が上がった場合、アメリカでの販売価格が高騰し、消費者が離れることを懸念しています。
茨城県常陸牛振興協会 谷口勇 事務局長
「日本の価格からすれば1.6倍ぐらいかそれ以上になってしまうので、さすがに裕福なアメリカ国民でも食べづらくなるのかなという思いがある」
生産者は、アメリカの注文が減った分が日本に回り、国内で供給過多になる不安を口にします。
藤井商店 藤井勲 代表
「(国内の供給が)だぶついちゃうということなので、国内の価格が下がるという懸念がある」
アメリカとの交渉の中では、日本独自の規制なども「非関税障壁」として見直しを求められる可能性があります。
谷口さんが気がかりなのは、「牛マルキン」と呼ばれる交付金制度。
食用の牛の販売価格が、餌代など生産にかかる費用を下回った場合、差額の9割を国などが補填しています。
茨城県常陸牛振興協会 谷口勇 事務局長
「仮に取っ払ったりすると、それこそ農業崩壊につながりかねないという懸念はある。私たちとしては、妥当な制度じゃないかと思っている」
交渉にトランプ氏出席 有権者・支持者にアピールする狙いか 日本政府は対応協議に追われる
小川彩佳キャスター:
トランプ大統領は、なぜ突然関税交渉に出席すると発表したのでしょうか。
ワシントン支局 涌井文晶 記者:
トランプ大統領としては、自らが交渉に出席することで日本側から譲歩を勝ち取り、アメリカの有権者、自らの支持者にアピールしたい狙いがあるものとみられます。
関税政策をめぐっては、先週から相互関税の一部を発動直後に撤回したり、スマートフォンなど電子機器向けの関税をめぐっても、扱いが二転三転したりと混乱が目立っています。
こうした悪いムードを払拭しようと、自ら日本側との交渉に出席することを決めたと考えられるのではないかと思います。
藤森祥平キャスター:
日本にとってプラスに考えるのは少し難しいような気がしていて、一段と圧力が高まりそうですが、どうなのでしょうか。
ワシントン支局 涌井文晶 記者:
日本にとっては、少し悪いサインではないかと私も考えています。トランプ大統領は、どんな課題についてもすぐに成果を出したがるところがあります。なので、日本側にも具体的な提案を求める可能性もあるのではないかと思います。
また、報道陣に対して、会談の冒頭が公開される可能性がありますが、トランプ大統領はテレビカメラの前でも発言を抑えることはしません。ウクライナのゼレンスキー大統領との会談でも発言を抑えなかったので、日本側に厳しい要求を並べることも覚悟しなければならないと考えます。
小川キャスター:
一方で、日本政府はトランプ大統領の突然の登場の動きを、事前に想定できていたのでしょうか。それとも完全に寝耳に水という感覚なんでしょうか。
官邸キャップ 中島哲平 記者:
日本政府側は今回、トランプ大統領が交渉の前に出てくるのは想定していなかったというふうに口を揃えています。
こういうこともあり16日夜、総理公邸に林官房長官や外務省幹部が続々と訪れ、石破総理と今後の対応について協議したものとみられます。
ある政府関係者は、今回、トランプ大統領が交渉の場に出てくることについて「カウンターパートの人がいるのに、外交儀礼上ありえない」と怒りをあらわにしています。
ただ、政府関係者の多くは、「トランプ大統領が何をしてくるのかわからないというのは想定内だ」と話しています。
また、自民党幹部の中には、赤沢大臣がアメリカを訪れる前に、「日米安保については一切話さないように」と釘を刺していて、赤沢大臣も今回、慎重な対応をして交渉を進めるものとみられます。
ピンチの日本側 アメリカ側の要望をよく知るチャンスとの見方も
トラウデン直美さん:
しかし、トランプ大統領のことなので、日米安保、在日米軍の話を持ち出す可能性もある中で、トランプ大統領はすぐ成果を求める人です。なかなか答えられない日本としては難しい状況ですよね。
官邸キャップ 中島哲平 記者:
ただ、赤沢大臣には権限があるわけでもなく、トランプ大統領が来ることを想定していなかったこともあり、きちんとした答えを用意していません。どうしても今回、話を持ち帰ることしかできないのが現状だと思います。
ある政府関係者の中には、トランプ大統領が交渉の場に出てくるのは「あくまでアメリカ国内に向けたアピールだと。『ちゃんとやっているぞ』『スタートさせたぞ』というのを国内にアピールするためなのではないか」という見方をしている人もいます。
日本側としてはピンチでもありますが、アメリカ側が何を望んでいるのかをよく知るチャンスでもあるというふうな見方も出てきています。
小川キャスター:
赤沢大臣は、トランプ大統領の突然の登場に対応できるのでしょうか。
教育経済学者 中室牧子さん:
私が聞いたところ、日米首脳会談のときは、石破総理が直前の時間だけでも30時間くらい外務省からレクを受けたという話を聞いています。
総理の1分や2分はすごい大事な時間で、デジタル行財政改革会議という会議で数か月に1回、総理に会いますが、そのときに与えられる時間は2分くらいです。なので、30時間もレクを受けたのかと思って、すごい驚きました。
事程左様に、事前の準備の時間も結構大事だと思います。外交とは、個人の瞬発力だけではなく、事前の分析、シナリオ作り、シミュレーションも含めて、国全体の総合力が問われているところでもあるのかなと思います。
赤沢大臣には何回か会ったことがありますが、非常に能力の高い人という印象を持っているので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
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<プロフィール>
トラウデン直美さん
環境問題やSDGsについて積極的に発信
趣味は乗馬・園芸・旅行
中室牧子さん
教育経済学者 教育をデータで分析
著書「科学的根拠で子育て」
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