
新たなローマ教皇を決める選挙「コンクラーベ」で、アメリカ出身のプレヴォスト枢機卿(すうききょう)が選出されました。
【写真を見る】新ローマ教皇は初の“アメリカ出身教皇”【ひるおび】
「コンクラーベ」とは、
カトリック信者およそ14億人のトップであるローマ教皇を決める選挙です。
バチカンのシスティーナ礼拝堂で行われ、ローマ教皇が決まると白い煙、決まらないと黒い煙が煙突から上がります。
1回目は5月8日午前4時ごろ(日本時間)、2回目3回目は8日午後7時前(日本時間)にいずれも黒い煙が上がりました。
そして、9日午前1時すぎ(日本時間)4回目の投票後に、新教皇が選ばれたことを示す白い煙が上がりました。
注目の267代新教皇に選ばれたのは、ロバート・プレヴォスト枢機卿(69)。
教皇名は「レオ14世」で、初のアメリカ出身の教皇です。南米ペルーで長く司祭として活動し、社会的弱者や移民支援などの活動が前教皇フランシスコに高く評価され枢機卿に任命されました。
コメンテーター 三田寛子:
初のアメリカ出身っていうところは、どう見たら?
東京大学教授 山本芳久氏:
これまでアメリカから選ばれると思われてなかったわけですけど、スーパーパワーであるアメリカから選ばれつつ、その一員でありながらその最高権力者にも直言していくことができると期待されている人。現代の我々が直面している問題の解決が進むのではないか。X(旧ツイッター)でもアメリカの現状について発信をしています。
アメリカ トランプ大統領の反応
初のアメリカ出身の教皇が誕生したことでトランプ大統領は
「プレヴォスト枢機卿に心からお祝い申し上げるアメリカ人初の教皇になることを大変光栄に思う 我が国にとって大きな栄誉。教皇レオ14世に会えるのを楽しみにしている」とSNSで発信しました。
日本でも注目【コンクラーベ】
日本でも注目されている映画『教皇選挙』(原題 Conclave 2024年制作/120分/アメリカ・イギリス合作)は、ローマ教皇選挙の舞台裏と内幕に追ったミステリーで、コンクラーベがどのように行われるのかを詳しく描いています。
今年3月に行われた米アカデミー賞で「脚色賞」を受賞。同月日本でも公開され、くしくも上映期間中の2025年4月21日にフランシスコ教皇が亡くなったことを受け観客数が急増し、興行収入ランキングで7週連続TOP10入りするヒット作となっています(5月6日時点)。
秘密選挙【コンクラーベ】
そもそも教皇とは世界のカトリック信者14億人にとってどんな存在なのでしょうか?
教皇は、ローマのカトリック教会の最高指導者で、全世界のカトリック教徒にとって精神的指導者としてバチカン市国の元首の称号。「イエス・キリストの代理人」ともいわれます。初代教皇が誕生したのは約2000年前で、レオ14世は267代目にあたります。
東京大学教授 山本芳久氏:
(教皇は)上から何か命令するということではなく、一人一人の信徒に、人生でどう生きていけばいいのかという導きを与えるもの。
コメンテーター 上地雄輔:
教皇になったことでXとかで発信しにくくなるものなんですか?
東京大学教授 山本芳久氏:
教皇として新たなやり方で発信を始めると思います。フォロワー数も増えると思います。
コンクラーベとはラテン語で「鍵がかかった」を意味します。
教皇の死去後15〜20日以内に実施しなければいけないという決まりがあります。
なぜ、コンクラーベと言われるようになったのかというと、13世紀に約3年間教皇が決まらず、社会に不安が広がった際、市民が教皇を選出させるために枢機卿らを礼拝堂に鍵をかけて閉じ込めたことに由来しています。
どのようにして教皇を決める?
教皇は枢機卿の中から選出されます。
現在約250人いる枢機卿のうち80歳未満の枢機卿133人に投票権が与えられていて、無記名投票が行われ、得票数3分の2以上を得た枢機卿が「新教皇」になります。
コンクラーベの開催地 バチカン市国
選挙が行われるバチカン市国は、世界最小の独立国で国全体が世界遺産に登録されています。大きさは東京ディズニーランドとほぼ同じで、総人口は618人。有名なサンピエトロ大聖堂やバチカン美術館があります。
今回のコンクラーベの「争点」
前教皇のフランシスコは改革路線でした。
異なる宗教や宗派、同性愛者、教会内の女性の権利向上に対して比較的前向きだった人物と言われています。
今回のコンクラーベでは、改革路線の人物が選ばれるのか、保守路線の人物が選ばれるのかが注目されてました。選ばれた「レオ14世」は、改革路線の意見も聞き、保守路線の意見も聞く、バランスのとれた人物だといわれています。
東京大学教授 山本芳久氏:
新教皇がバルコニーから演説した時に「橋をかける」という言葉を使いました。
これは教皇フランシスコが盛んに使っていた言葉。これを使うことで教皇フランシスコの基本的な姿勢を受け継いでいくという姿勢を明らかにした。
ただジェンダーの問題などでは教皇フランシスコよりも保守的だと言われていているので、改革派からも保守派からも「この人であれば」というそういう合意に至った可能性がある。
映画『教皇選挙』で描かれたコンクラーベ
映画『教皇選挙』の中では、選挙中のスキャンダルや陰謀、差別が描かれ、聖職者が政治家に見えるほどの熾烈なパワーゲームが赤裸々に描かれています。
劇中では「コンクラーベは戦争ではない」という主人公に対し(別の枢機卿が)「戦争だ!」と強く訴えるシーンもあります。
実際は、水面下で話し合うことはありますが、映画で描かれたような買収やスキャンダルが飛び交うことはないようです。ただ事前に足の引っ張り合いはあるようで、今回も「最有力候補」といわれた枢機卿に対し、「健康不安を抱えている」というフェイクニュースが出回りました。
コメンテーター 三田寛子:
今まで歴代266人いらした中の267代目。
映画も見たくなったし、レオ14世の世界の平和に向けての働きみたいなのも期待したいです。
東京大学教授 山本芳久氏:
「レオ14世」と言う名前がポイント。
レオ13世という、1873年から1903年まで比較的長く教皇を務めた方がいて、労働者の権利を強く訴え、単なる教会の中の話ではなくて世界全体に向けてメッセージを発した人物でした。カトリックの伝統を現代世界に対してメッセージを発していく、そういう人だったんです。
この「レオ14世」も信仰の遺産を受け継ぎながら、教皇フランシスコ同様に環境問題や様々な紛争の問題に積極的に関与していく姿勢を名前で示した可能性があります。
国際弁護士 八代英輝:
世界で起きてる色々な紛争に対して引いた立場をとられるのか?
積極的な発言をされていくのか?世界的な動向が大きく変わる中で、それだけの権威の方がどういった風に振る舞われるのか?注目したいですね。
恵俊彰:
トランプ大統領、(レオ14世の就任を)喜んでますけど、むしろ「トランプ大統領にもはっきり物申しますよ」って方かもしれないですね。
(ひるおび 2025年5月9日放送より)
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<プロフィール>
東京大学教授 山本芳久氏
1973年、神奈川県生まれ。
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了(哲学専門分野)、博士(文学)。現在、東京大学大学院総合文化研究科准教授。主な著書『トマス・アクィナス 理性と神秘』(岩波新書、サントリー学芸賞受賞)、『キリスト教講義』(若松英輔との共著、文藝春秋)など。
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