
いま投機筋による“史上最大の円買い”が注目されています。しかし円高の進行は限定的で、日銀会合を経た後も、いまだ「半世紀ぶり」の円安水準となっています。為替市場で何が起きているのか?エコノミストの唐鎌大輔氏が解説します。
【写真を見る】1ドル=160円まで“円安逆行”も 日銀の“利上げ路線”に潜む「落とし穴」今後のドル円相場の見通しは?
日銀の「利上げ路線」に賭ける投機筋の“危うさ”
みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔さん:
世界全体に存在する投機的な動きを把握する上で、参考にされる「IMM通貨先物取引」のデータをみると、3月4日の時点で、約110億ドルと史上最大の「円買い」が積みあがっています。
何でこんな事になっているのか。足もとで、円が買われている理由は、日銀がどんどん利上げしていくから、それに応じて日米の金利差が縮小し、円高になる…という思いで買われているワケです。
つまり、投機的な為替のマーケットはものすごく日銀の利上げを当て込んだ勝負をしている状況です。
ただ、日銀の利上げは、円高に賭けていいほど確定的なものではなく、「勇み足」なんじゃないかと私は思っています。
だから、何かの拍子に、投機的な円買いが全て売り戻された時、更なる円安となる可能性を見ておいた方がいいと思います。
史上最大の円買いも…半世紀ぶりの円安水準は変わらず
みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔さん:
しかもドル円相場は、3月になって、1ドル147円から149円を行ったり来たりしてるだけですよね。
史上最大の円買いをしてるのに、これしか円高にならないのが一番、問題だと思います。
更に通貨の総合力をはかる「実質実効為替レート」をみると、日本円は今もなお1960年代前半ぐらい水準なので、ここまで円買いを積み上げても、「半世紀ぶりの円安水準」というのは変わっていないんです。
今後のドル円相場はどのレンジで動く?
みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔さん:
時代の目線を大事にした時に リーマン・ショック後のドル円相場というのは、大体、1ドル=100円から120円ぐらいのレンジで推移してきました。
この3年、見ても動いている幅は大体20円くらいなんです。
なので、今は1ドル140円から160円というレンジが一つの主戦場になってる感じですね。
この中で勝負するんだという心持ちで、見ていくと良いと思います。
重要なのは一次データを読み解くこと
「投機のポジションは為替の取引では9割だから」と言うのですが、投機筋は何を見て取引しているかというと“実需の流れ”を見ています。
なので、「投機筋の動きだけを見とけばいいんだ」というのはプロっぽいけど、実際に言っていることは“素人”だと私は思います。
なので、引き続き「国際収支や貿易統計などの誰でも見られる一次データを見た方が良い」という主張をしていきたいと思います。
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【解説】
・唐鎌大輔 | みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト(著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』、『「強い円」はどこへ行ったのか』など)
【聞き手】
・竹下隆一郎
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