連日、世界中をにぎわせている“トランプ関税”。中国との対立が激しくなるなか、日本の株価は乱高下を繰り返しています。私たちの生活への影響はどうなるのでしょうか?
株価下落で「日本の消費が下がる可能性」も
井上貴博キャスター:
日経平均株価は、4月3日にトランプ氏が相互関税を発表して以降、乱高下を繰り返しています。
7日 3万1136円58銭
10日 3万4609円00銭
この株価が我々の生活にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
TBS報道局経済部 高見知可 記者:
株価の下落によって、日本の消費がさらに下がる可能性が指摘されています。
第一生命経済研究所主席エコノミストの星野卓也氏によると「人間の心理として『株価下落』の情報を得ると、消費マインドが落ちる傾向にある」といいます。
これが実際の消費でも現れます。
「逆資産効果」という経済用語があり、先行研究によると「100円金融資産が下がった場合、2~4円個人消費が下がる」といいます。金融資産が100万円下がれば、2~4万円消費が控えられることになります。
株式などの資産の下落が、消費の減少につながるということです。
日本では現在、新NISAが始まるなど貯蓄から投資への流れが加速しています。そのため、昔に比べて消費に与える影響がひときわ大きくなっています。
井上キャスター:
日本はこれまで投資をする人がそれほど大きくなかったので、あまり株価の動きが消費に与える影響はなかったといわれていたものが、現在顕著になりつつあるということですね。
円高進み、輸入品 値下がりか 企業収益減で「夏のボーナス」に影響も
TBS報道局経済部 高見知可 記者:
続いて、物価です。
今足元では、リスク回避の円高が進んでいます。円高が進めば輸入品が値下がりする可能性があります。
一方で賃金は、物価が下がれば、企業の収益も圧迫されることになります。そのため働いている人の給料にも影響が出てきます。早ければ今回の関税の影響により、「夏のボーナス」にマイナスの影響が出てしまう企業もあるのではという指摘もあります。
今までリーマン・ショックやコロナショックという大きな金融危機がありましたが、第一生命経済研究所主席エコノミストの星野卓也氏によると「まだ金融危機にはなっていない」といいます。
ただ、トランプ大統領は「何かを治すためには、時には薬を飲まないといけない」と発言しています。この発言について星野氏は、「経済を犠牲にしてでもやるべきだという強い姿勢のあらわれだ」だといいます。
リーマン・ショックやコロナショックは、意図して起きたものではなく、自然に起きたものでしたが、今回はトランプ氏の関税政策が起点になるので、トランプ氏の行動にかかっているという意味で、この先どう転ぶのかは不透明な情勢だということです。
プロ経営者に聞く 経営判断としてボーナスを控えめに設定することはありえる?
井上キャスター:
人災とも言われていますが、トランプ氏がどう考えるのかで状況が大きく変わります。
トランプ氏はビジネスマンなので、株価が下がると焦るのではないかと言われていましたが、それも焦らなかった。ですが今度、債券市場が大きく変動すると焦った。意外に弱点もあることを知った感じはありますが、いかがでしょうか。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
日本の消費者の心理と、企業も実は似たような心理を持っています。先が見えない・不透明なものを、企業は一番嫌がります。
今の状況では、計画の立てようがないので保守的になってしまいます。「とりあえず様子を見よう」「とりあえず資金を貯めよう」「ボーナスに反映する」といった対応も、企業や業界によってはあるかもしれません。
自動車産業は、アメリカの輸出だけでも年間6兆円ぐらいで、日本の自動車関連全体では、550万人ぐらいが雇用されているわけです。そのため今の状況がこのまま続けば、影響がないとは言い切れません。
今後、日本政府もアメリカ政府と交渉するようですが、それがどこまで折り合いがつくのか。少しでも先が見込まれるのであれば、企業も安心ですが、今はそのような状況ではないですね。
出水麻衣キャスター:
企業も不安になると、ボーナスの価格などを抑えめに設定するというのは、経営判断として十分にありえるということでしょうか。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
やはり最悪の場合を考えるので、もっと状況が悪くなっても大丈夫なように、今はこのくらいに抑えておこうという企業は出てくるかもしれません。
出水キャスター:
「とりあえず」が、一体いつまで続くのかというところですよね。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
そうですね。大統領の任期は4年なので、この先4年ぐらいは見ておかないといけないというのが最悪のパターンですよね。
井上キャスター:
任期が4年だとして、その4年で「生産拠点をアメリカに持っていこう」という企業判断は、経営者としてできるものなのでしょうか。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
ものにもよりますが、工場を持って行くだけでも、ものすごい時間と労力とお金がかかります。4年後に違う大統領になって、撤廃するとなれば、何のために工場を移したんだという話にもなりかねません。これだけ不透明になると、一旦様子を見ようというのが今の全世界の企業の考え方です。
井上キャスター:
そうすると経済もどちらかというと縮小し、景気も縮小していきますよね。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
もちろん積極的に投資している企業も中にはありますが、一般的にはやめておこうというのが一番だと思います。トランプ氏は、アメリカに雇用が入って、投資を増やすための政策としてやっているので、狙っていないことだとは思うのですが、今の状況はどうなのかなと思います。
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<プロフィール>
高見知可 TBS報道局経済部
日銀・流通・農水省など担当
ハロルド・ジョージ・メイさん
プロ経営者1963年オランダ生まれ
現パナソニック・アース製薬の社外取締役など
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