世界を揺るがしているトランプ関税。アメリカとの交渉のため、16日、担当の大臣が出発しました。交渉でアメリカは何を持ち出してきて、政府は一体、どう対応するのでしょうか。
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“トランプ関税”直接交渉へ 日本側のカードは?
高柳光希キャスター:
日本時間の17日、トランプ関税について初の直接交渉に向かう赤沢経済再生担当大臣は、ベッセント財務長官に対してどのように出るのでしょうか。
TBS報道局経済部 竹岡建介 記者:
一言で言うと、コスパ重視の交渉を目指す考えです。
日本としては、アメリカ側に自動車をはじめとする関税を引き下げてもらいたいと強く求めていきますが、交渉は“ギブアンドテイク”なので、メリカ側に利するようなカードを日本は切らなければいけません。アメリカが納得すると同時に、日本のダメージがなるべく少ないコスパの良いカードを切りたいわけです。
高柳キャスター:
お互いにメリット・デメリットがある中、日本側のカードには、▼自動車の非関税障壁、▼農産物の市場開放、▼ドル高・円安の緩和、▼アラスカで採取されている液化天然ガス、▼防衛装備品の購入などが挙げられます。
このようなカードがある中で、どのように交渉を進められていくと見ていますか。
TBS報道局経済部 竹岡記者:
アメリカ側が求めていることはたくさんあるのですが、例えば、日米で自動車の安全認証基準や、電気自動車の充電の規格が違うという点などが壁になり、アメリカの自動車が日本で売れないとして、「アメリカの安全基準や充電規格を受け入れろ」と主張。
また、コメについても、日本は国が流通システムを制限しているとして、もっと輸入するよう求めています。
コメの要求は日本国内の農家の生活に大打撃となる可能性があり、日本としてはすぐに切れるカードではありません。
農産物の市場開放は、ハードルが高そうだという一方、アラスカで採取される液化天然ガスのカードは切りやすいのではないかと見ています。
液化天然ガスは火力発電などの原料になるもので、アメリカとの共同事業という考えがあります。アラスカは地理的にも近く、火力発電の燃料を安定供給できます。採算が取れ、日本にとってプラスになるのであれば、悪い話ではないといった声が政府内からも聞こえてきます。
今回は、とにかく相手の考えや反応を探って、どういったカードを切るのがコスパがいいのか見極めるのがミッションだと言えます。
赤沢大臣は“経験豊富”な交渉人にアドバイスを仰ぎ…
高柳キャスター:
まずは見極める段階という今回の交渉は、世界の中でもトップバッターということで各国が注目しています。
赤沢大臣も、茂木敏充前幹事長や甘利明元経済再生担当大臣など、いわば交渉人の先輩たちにアドバイスを求めたということです。
TBS報道局経済部 竹岡記者:
茂木氏は、過去に日米貿易協定で厳しい交渉を担当し、アメリカ側からタフネゴシエーターと称されているわけです。
また、TPP交渉を担当した甘利氏など経験豊富な先人にアドバイスを仰ぎ、そして、対米交渉の先陣を切るということなのではないかと見ています。
井上貴博キャスター:
トランプ大統領の言うことがコロコロ変わる中で、交渉の主導権は今アメリカにありますから、トランプ大統領が言うことに対する受身の交渉になります。日本側が、カードを安売りして切っても、アメリカ側の思うツボですし、難しいところですね。
航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗さん:
トランプ関税に反発した中国にはたくさんの関税を課す一方、日本のように話し合っていこうという国には対しては90日猶予という状況の今、赤沢大臣が行くというのは、まさしく見極め・温度感を知るということが求められるでしょう。
そして、閣僚同士がしっかりコミュニケーションをとることで、今回は対面で直接話して、その後は電話やオンラインなどを使いながら、何か起こったときにすぐにコンタクトが取れて、情報収集ができる状況を整えるという目的もあるはずです。
そこから、どのカードを切るべきかを見極めるということになると思うので、まず何か(成果を)出すというより、閣僚同士の密接な関係を作るということを最大限やるべきかなと私は思います。
“トップバッター”はプラス?マイナス?
井上キャスター:
この世界のトップバッターで、日本の閣僚が会いに行けるという点は、ある程度はプラスに捉えてもいいのでしょうか。
TBS報道局経済部 竹岡記者:
この点については二つの見方があります。
今も関税がかかってる状態なので、刻一刻と企業の利益が減っている状態です。優先交渉権を得たので、早く交渉を進めて早く関税を引き下げられるのではないかというプラスの見方もあれば、他の国の交渉を見て相場を見極めてから対策を練った方がいいのではないかという声も政府内ではありました。
井上キャスター:
先陣を切ることで割りを食うこともあるかもしれませんが、どこかが先陣を切らなくてはいけません。
日本の交渉がどうなるのかということで、大きなニュースになっているわけですね。
出水麻衣キャスター:
世界中の閣僚が日本とアメリカの交渉がどのように進捗していくのかを見ていると思うので、今回は見極めだけで終わってしまうのかというもどかしさのようなものもあります。
TBS報道局経済部 竹岡記者:
トランプ政権は朝令暮改という指摘もあり、そういう意味では「今回はこれを交渉しよう」と範囲をしっかりと定めて固定することも、交渉を円滑に進めるためには重要なのではないかという声もあります。
まずは土俵作りをして、自分たちの土俵で戦えるか、その最初のステップなのではないかと思っています。
航空・旅行アナリスト 鳥海さん:
今は見極めをしていく大事な時期です。
株価の乱高下を防ぐ目的もあるので、ある程度の方向性をつかむためにもまずは関係構築をして、いつでも連絡を取り合える仲になることが先陣を切る日本の大きな役目だと思います。
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<プロフィール>
竹岡建介
TBS報道局経済部 内閣府担当
経済政策や金融政策を取材
鳥海高太朗さん
帝京大学 非常勤講師
航空・旅行アナリストとして国内外の旅行事情に精通
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