エンタメ
2025-11-05 07:00
Aぇ! groupの佐野晶哉が主人公、上白石萌歌がヒロインの声優を担当するミュージカルアニメーション映画『トリツカレ男』が11月7日から公開される。ミュージカルアニメでの声優に初挑戦した2人が、初めての挑戦を振り返りながら互いに感銘を受けた“歌声”、そしてこれまで自分を支えてきた“歌”について聞いた。
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今作はいしいしんじ氏による『トリツカレ男』(新潮文庫刊)が映画化。何かに夢中になると、他のことは一切見えなくなってしまうことから、周りのみんなに“トリツカレ男”と呼ばれている主人公・ジュゼッペ(佐野)。風船売りのペチカ(上白石)と出会い、恋に堕ちたことをきっかけにさまざまな奇跡を巻き起こす物語。
■「らしさ」に葛藤も…“月と太陽”のようなキャラクターを演じて
――佐野さんは幼少期に劇団四季のミュージカルにも出演されていた経験もあり、今回、長年愛されてきた作品がミュージカルアニメ化され、声がかかったときはどのような心境でしたか。
佐野:ミュージカルアニメーションはずっと出演してみたいと思っていたので、素直にめちゃめちゃうれしかったです。“いつかやりたい”と思っていたことがこんなに早く叶うなんて。原作も読ませていただき、このキャラクターを演じさせてもらえるのは役者みょうりに尽きます。僕は声優ではありませんが、声優をやらせていただく立場として、こんなにも余白が多くトリツカレるものによってすごく声色も変わり、例えばお医者さんになったり、いろんな言語をしゃべったり…ペチカに恋をしたとき、ペチカを励ます時のしゃべり方、照れている時のしゃべり方など感情の振り幅がとにかく激しいから、これは楽しそうやなと思いました。
――上白石さんもこれまでミュージカルをご経験されていて、今回アニメとしてのミュージカルに挑まれるというのは新鮮な気持ちはありましたか。
上白石:声だけで表現するというのはプレッシャーもありましたが、もともと原作者であるいしいしんじさんの本が好きで、家にエッセイ本を置いていたりしたので、いしいさんの世界に声で命を吹き込めるという嬉しさもありました。私にとってミュージカルアニメーションはすごく新鮮な試みだったので、いつも以上に自分が発する声のトーンや歌のニュアンスもいろいろ考えながらお芝居をしていくという感じではありました。
――お二方とも歌に関してはとても経験豊富ですが、アニメーションの中で歌うことに関して、普段の歌唱時との違いや意識されたことはありましたか。
佐野:普段しているパフォーマンスとはもちろんまったく違いますし、時々やらせてもらうミュージカルともまったく違っていて。ミュージカルは自分が動きますが、アニメーションの中で登場人物が空を飛び回りながら歌っている姿に声を合わせるときに、監督から“もっと空を飛んでるように”みたいに言われたりして、動きに合わせながら歌を歌うということが難しかったですね。
――監督から「それはジュゼッペじゃないね」と言われ、録り直したシーンもあったそうですね。
佐野:はい。めっちゃ難しかったです。
――その“ジュゼッペらしさ”はどのように出しましたか。
佐野:普段の声色よりは明るめに録るようにしました。この顔(ジュゼッペ)の人が出しそうな声みたいなイメージで、陽気さをなるべく出すようにしましたね。
――上白石さんはいかがですか。
上白石:私もミュージカルなどで役をまとって歌を歌うという経験は少しはあったのですが、“声だけで”となると、やっぱり普通の歌とはまた違う。自分の声の成分やトーンとかでその役の印象を決めてしまう感じがあったので、その緊張感はすごくありました。本編のお芝居よりも3ヶ月前ぐらいに歌の収録があったので、まだ役のことを掴みきれてない段階で歌を録らなきゃいけなかったのですが、逆に歌がすごく導いてくれることもあって。歌が“この人はこういう人だよ”というところを教えてくれました。すごく歌に助けられながらお芝居ができました。
――ペチカらしい声はどのように意識しましたか。
上白石:ジュゼッペが太陽だったら、ペチカは月のようなイメージ。氷や雪のような、しんしんとした声。最初の方は、お芝居を録っている時も“ちょっと今の声色だと元気なペチカすぎるね”といった指摘もあったりしたので。普段の自分よりもちょっと引き算をする、少し心に曇りがあるような声を最初は探りながら録っていました。
――アフレコ前に準備されたことはありますか。
上白石:いただいた映像を見て、その時キャラクターがどんな顔をしていて、どういう仕草をしてるか。なるべく自分もリンクして録りたいなと思っていたので、ひたすら映像を見たり、脚本の中にはなかった小説の細かい描写を自分でメモしたりして、“ペチカってどんな人だろう”と自分なりにたくさん考えました。
――声をあてての演技というのは、映像作品と比べると違いは何かありますか。
佐野:最初、ジュゼッペが何かにトリツカレた時のしゃべり方や声色をどのように違いを表現するかで悩みましたが、アニメーションにおいてどんなタイミングでセリフを入れるのか確認してみると、実際にジュゼッペがしゃべるテンポはアニメーションの口の動きが作ってくれているので、そこに合わせるだけで自然とジュゼッペっぽくなったような気がします。監督の想定するセリフの尺が、今まで僕がやったことのあるお芝居よりはすごく早くて…逆にここでたっぷり間をとるんや、とか。アニメーションだからこそ、自分がこれまでしたことのないお芝居の幅が広がったし、なにか見つけられたような感覚がありました。
――ジュゼッペがトリツカレたときの早口には“好き”が詰まっているようでした。
佐野:早口でもあるけど、急ブレーキを踏んだりするんですよ。「で~も、さあ!」みたいな(笑)
――ご自身の中で、誰か好きなものについて語っている姿としてイメージしたり要素を取
り入れた方はいますか。
佐野:ジュゼッペの声を入れる時とかはもちろん全然意識はしていないですけど、初めてキャラクター像を見た時はメンバーの小島(健)にすごく似てるなと思いました。ここまでの狂気なトリツカレ具合ではないかもしれないけど、何かハマったら一途にハマり続けて、次を見つけたらそれをどっか捨てて(笑)また新しいものにハマる。移り変わる具合は似てるなと思いました。
――上白石さんは役柄のアプローチ方法に違いはありましたか。
上白石:普段の映像でのお芝居よりも材料がすごく多い気がして。原作もありますし、アニメーションの動きも姿形が決まっているので、自分がヒントにする材料は多くありました。それをなるべく見たり、自分の中で考えるってことはしましたね。あとは、台本を読んでいる時に、自分の声を録音してみて「どういうトーンで言ってるんだろう?」と。普段はやらないんですけど、声だけの世界になるので、“もうちょっと低くしてみよう”“もうちょっとこういうテンポでしゃべってみよう”みたいなことは事前にやりました。
――アフレコの前の下準備のような感じですね。
上白石:ただ現場に行ったら結構壊されてしまうことも多いんですけど、自分の安心する材料としてやってみたりして。普段はあんまり意識してこなかったけど“自分ってこういう声なんだ”とか、そういう発見はあったかもしれないです。
――上白石さんの中でペチカらしいイメージの方はいますか。
上白石:特定の人はいないのですが、抽象的なイメージ。雪みたいな…晴れてる日より雨の日が好きそうだなとか、細かな妄想はいろいろしていました。
■「ジュゼッペだ!」「ペチカやなぁ」初めて聞いた互いの歌声に感動
――劇中では掛け合いやデュエットシーンもありますが、お互いの声を聞いて印象はいかがでしたか。
上白石:“ジュゼッペだ!”と思いました。最初に歌を聞かせていただいたのですが、デモの段階、まだディレクションとか受けてない段階ですでにここまでキャラクターが立ち上がっていて、歌の中でジュゼッペがすごく生き生きしてるのが伝わったので、「これはまマズイ」っていう気持ちになりました。「私、ここまでできてないぞ」と思ったし、歌声がすてきなのはもちろん存じ上げてはいたんですけど、ここまで役をまとって歌に没入する方なんだなとすごくびっくりしたのを覚えてます。
――アフレコはそれぞれ別の日だったんですか。
佐野:別々でしたが、1日だけ一緒に演じました。歌のレコーディングはもう完全に別々です。
――デュエットシーンは一緒に録ったのかと思うほどの仕上がりでした。
上白石:歌はすでに録っていたのですが、役の感じをつかみたいなとなり、一回だけ一緒に歌いました。。
佐野:デュエットの前後のシーンを演じてみましたよね。その前のシーンを撮ったまま、「一緒に歌おうか」ってなって。カラオケみたいな感じになりました。
上白石:楽しかったですよね。
佐野:めちゃめちゃ楽しかった!たまに、あの動画見ます(笑)。監督が回してくれて…。
――それがほぼ“はじめまして”の段階ですよね。
上白石:そうでしたね。
佐野:やっと一緒に歌えたなって。
――佐野さんは上白石さんの歌声を聴いていかがでしたか。
佐野:“ペチカやなぁ”ですね(笑)。この純粋な、ピュアな、声の良さで勝負してる感じがして、“あっ、そういう感じでいくんですね。じゃあ僕はこっちでいかないとまずいですね”みたいな…。この作品の音楽への向き合い方、歌い方を上白石さんの声で教えてもらったような感覚がありました。
――では、お互いの声を聞いて、ちょっと調整した部分みたいなところもあった?
佐野:セリフは僕が先に1人で入れちゃっていたのですが、その感覚が歌唱パートに関してはありましたね。元々、仮歌には制作されたAwesome City Clubのatagiさんの声が入っていて、いろんな上級なテクニックで歌われてるような、オーサムさんらしい世界観の楽曲がすごくすてきやったんですけど…それを聴くと“コピーしよう、コピーしよう”と思っていたところがあった。でも、上白石さんの声を聞いたら、もちろんテクニックやいろんなものを駆使してはいるけど、純粋な声で「この声が歌ってたらもう何をしていてもペチカやんな」と思える強さ、硬さがあった。だから僕もいろいろと考えずに、とにかくジュゼッペの声を見つけてピュアに歌っていかないとあかん。“テクニックとかじゃない!”と思いましたし、いろんなことやったら負けるな、と思いました。
上白石:いやいや(笑)。でも佐野さんの歌い方は普段と少し違って、より話し声に近い。歌っている感じが全然しなくて、本当にただおしゃべりをしてるというか、言葉を発してるような歌い方をされていたので、私も「歌を頑張らなきゃ」という気持ちがあったんですけど、“あ、役としてしゃべればいいんだ”と思いました。それくらい、役として発せられるものがもう確立していらっしゃったので。私もこんなふうに、おしゃべりするように歌いたいなと思って歌ったことはすごく覚えています。
――あとお二方が歌でコミュニケーションを取られてるっていうのがすごく伝わってきたんですけども、今回共演されてイメージに変化はありましたか。
佐野:初めてお会いする前に、KEY TO LITの岩崎大昇(※崎=たつさき)が上白石さんと共演していたので、「今度、共演するんやけど、どんな人?」って聞いたら、“とにかく優しい人”っていう評判を聞いていて。俺が知っているジュニアの中で、大昇が一番優しくて。
上白石:わかる!いい人だよね。
佐野:常に一緒にいる人の空気をあたたかくするような大昇から「とにかく優しい」と聞いて、実際に会ってみたらその評判どおりでした。まさしくその通り。お会いして、「あ、やっぱり言ってた通りだな」と思いました。
――上白石さんはいかがでしょうか。
上白石:佐野さんは、元々すごく器用だしいろんなことを卒なくこなせるイメージがあったのですが、本編の中でいろんな外国語をいっぱい話すっていうシーンでは、すごく努力を感じたというか、“あ、きっとこの人はすごく器用に見えつつも、めちゃくちゃ裏で努力をしてる人なんだろうな”というところは、その時ににじんで見えました。すごく努力家だし、自分の好きなことにまっしぐらになっている人なんだなと。
佐野:確かにあのシーンはめちゃくちゃ頑張りました。一番大変やったので。
上白石:結構、練習したりしたの?
佐野:あの外国語のシーンは資料が来るのがその日とか前日とかで(笑)。精いっぱいできることはしていきました。
上白石:淀みなくやっていたから。
佐野:大変でした。あのシーンはテレビやビデオ通話で監修の方に教えてもらいました。でも、ほんまになんとかなってよかったなと思いました。
――あのシーンの正解はロシア語ですか。
佐野:はい。小説にもロシア語と書いてあるんです。
――お二方ともアーティスト活動をされていますが、ミュージカルの歌でお客さんに届けることと、普段の歌唱で感覚に違いはありますか。
佐野:小学校3年生からミュージカルに出演していたので、逆にアイドルのようなJ-POPに苦手意識があって。歌っていてもミュージカルっぽくなってしまう。歌い方が難しかったけど、ミュージカルアニメということで小さい頃から培ったものを出せばよかったので、苦労はなかったです。
上白石:私も幼い頃、ミュージカルスクールに通っていてミュージカルの作品も経験があったので、佐野さんと同様、普段の歌よりも親しみやすく、自分の声になじむ感じもあった。だから私はやっぱりこういう曲が好きだな、と再確認しました。
――2人の歌唱力があってこそのジュゼッペとペチカ。2人にとって“歌”とはどんな存在でしょうか。
佐野:歌っている時間が一番楽しい。いろんなことに興味を持って手を出してみても、結局、音楽に戻ってくるし、歌っている時間が一番楽しいです。
上白石:私も小さい頃から歌が好きで、原点でもある。歌えばいつでも幼心に戻れるし、純粋に“好きだ”という気持ちが芽生える唯一のもの。結局、歌が好きだと思います。
――歌に救われた経験はありますか。
上白石:歌うことも音楽を聴くのも大好き。本当にしんどいときに救ってもらったことも何度もある。このアルバムがなかったらダメになっていたかもしれないというものも何枚かあるので、ダイレクトに救われてきているなと思います。
佐野:僕は小さい頃から音楽が身近にあったので、何回も救われてきています。曲を聴けば今でもそのときのことが思い出せるような作品が、人生の節目節目にあります。
――ラブストーリーではありますが、好きな人に好かれることよりも、好きな人の幸せを願う――。友情にも似た感覚でもある。ジュゼッペとペチカの関係について、どのようなものを観に来た人に感じてほしいですか。
佐野:人を好きになることのあたたかさ。何かを好きになって熱中することの尊さや楽しさを、たくさんの人に気づいてもらえたら。こういう時代だからこそ気づいてほしいですね。
上白石:“好き”という気持ちから発せられるものはすごくポジティブ。人に対してだけでなく、自分が好きなことや打ち込むことに心を注ぐってすてき。ひとつでも自分が熱中できるものがある人、推しがいる人、“好き”って気持ちを大切にしている人に、ひとりでも多く届いてほしいなと思います。
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今作はいしいしんじ氏による『トリツカレ男』(新潮文庫刊)が映画化。何かに夢中になると、他のことは一切見えなくなってしまうことから、周りのみんなに“トリツカレ男”と呼ばれている主人公・ジュゼッペ(佐野)。風船売りのペチカ(上白石)と出会い、恋に堕ちたことをきっかけにさまざまな奇跡を巻き起こす物語。
■「らしさ」に葛藤も…“月と太陽”のようなキャラクターを演じて
――佐野さんは幼少期に劇団四季のミュージカルにも出演されていた経験もあり、今回、長年愛されてきた作品がミュージカルアニメ化され、声がかかったときはどのような心境でしたか。
佐野:ミュージカルアニメーションはずっと出演してみたいと思っていたので、素直にめちゃめちゃうれしかったです。“いつかやりたい”と思っていたことがこんなに早く叶うなんて。原作も読ませていただき、このキャラクターを演じさせてもらえるのは役者みょうりに尽きます。僕は声優ではありませんが、声優をやらせていただく立場として、こんなにも余白が多くトリツカレるものによってすごく声色も変わり、例えばお医者さんになったり、いろんな言語をしゃべったり…ペチカに恋をしたとき、ペチカを励ます時のしゃべり方、照れている時のしゃべり方など感情の振り幅がとにかく激しいから、これは楽しそうやなと思いました。
――上白石さんもこれまでミュージカルをご経験されていて、今回アニメとしてのミュージカルに挑まれるというのは新鮮な気持ちはありましたか。
上白石:声だけで表現するというのはプレッシャーもありましたが、もともと原作者であるいしいしんじさんの本が好きで、家にエッセイ本を置いていたりしたので、いしいさんの世界に声で命を吹き込めるという嬉しさもありました。私にとってミュージカルアニメーションはすごく新鮮な試みだったので、いつも以上に自分が発する声のトーンや歌のニュアンスもいろいろ考えながらお芝居をしていくという感じではありました。
――お二方とも歌に関してはとても経験豊富ですが、アニメーションの中で歌うことに関して、普段の歌唱時との違いや意識されたことはありましたか。
佐野:普段しているパフォーマンスとはもちろんまったく違いますし、時々やらせてもらうミュージカルともまったく違っていて。ミュージカルは自分が動きますが、アニメーションの中で登場人物が空を飛び回りながら歌っている姿に声を合わせるときに、監督から“もっと空を飛んでるように”みたいに言われたりして、動きに合わせながら歌を歌うということが難しかったですね。
――監督から「それはジュゼッペじゃないね」と言われ、録り直したシーンもあったそうですね。
佐野:はい。めっちゃ難しかったです。
――その“ジュゼッペらしさ”はどのように出しましたか。
佐野:普段の声色よりは明るめに録るようにしました。この顔(ジュゼッペ)の人が出しそうな声みたいなイメージで、陽気さをなるべく出すようにしましたね。
――上白石さんはいかがですか。
上白石:私もミュージカルなどで役をまとって歌を歌うという経験は少しはあったのですが、“声だけで”となると、やっぱり普通の歌とはまた違う。自分の声の成分やトーンとかでその役の印象を決めてしまう感じがあったので、その緊張感はすごくありました。本編のお芝居よりも3ヶ月前ぐらいに歌の収録があったので、まだ役のことを掴みきれてない段階で歌を録らなきゃいけなかったのですが、逆に歌がすごく導いてくれることもあって。歌が“この人はこういう人だよ”というところを教えてくれました。すごく歌に助けられながらお芝居ができました。
――ペチカらしい声はどのように意識しましたか。
上白石:ジュゼッペが太陽だったら、ペチカは月のようなイメージ。氷や雪のような、しんしんとした声。最初の方は、お芝居を録っている時も“ちょっと今の声色だと元気なペチカすぎるね”といった指摘もあったりしたので。普段の自分よりもちょっと引き算をする、少し心に曇りがあるような声を最初は探りながら録っていました。
――アフレコ前に準備されたことはありますか。
上白石:いただいた映像を見て、その時キャラクターがどんな顔をしていて、どういう仕草をしてるか。なるべく自分もリンクして録りたいなと思っていたので、ひたすら映像を見たり、脚本の中にはなかった小説の細かい描写を自分でメモしたりして、“ペチカってどんな人だろう”と自分なりにたくさん考えました。
――声をあてての演技というのは、映像作品と比べると違いは何かありますか。
佐野:最初、ジュゼッペが何かにトリツカレた時のしゃべり方や声色をどのように違いを表現するかで悩みましたが、アニメーションにおいてどんなタイミングでセリフを入れるのか確認してみると、実際にジュゼッペがしゃべるテンポはアニメーションの口の動きが作ってくれているので、そこに合わせるだけで自然とジュゼッペっぽくなったような気がします。監督の想定するセリフの尺が、今まで僕がやったことのあるお芝居よりはすごく早くて…逆にここでたっぷり間をとるんや、とか。アニメーションだからこそ、自分がこれまでしたことのないお芝居の幅が広がったし、なにか見つけられたような感覚がありました。
――ジュゼッペがトリツカレたときの早口には“好き”が詰まっているようでした。
佐野:早口でもあるけど、急ブレーキを踏んだりするんですよ。「で~も、さあ!」みたいな(笑)
――ご自身の中で、誰か好きなものについて語っている姿としてイメージしたり要素を取
り入れた方はいますか。
佐野:ジュゼッペの声を入れる時とかはもちろん全然意識はしていないですけど、初めてキャラクター像を見た時はメンバーの小島(健)にすごく似てるなと思いました。ここまでの狂気なトリツカレ具合ではないかもしれないけど、何かハマったら一途にハマり続けて、次を見つけたらそれをどっか捨てて(笑)また新しいものにハマる。移り変わる具合は似てるなと思いました。
――上白石さんは役柄のアプローチ方法に違いはありましたか。
上白石:普段の映像でのお芝居よりも材料がすごく多い気がして。原作もありますし、アニメーションの動きも姿形が決まっているので、自分がヒントにする材料は多くありました。それをなるべく見たり、自分の中で考えるってことはしましたね。あとは、台本を読んでいる時に、自分の声を録音してみて「どういうトーンで言ってるんだろう?」と。普段はやらないんですけど、声だけの世界になるので、“もうちょっと低くしてみよう”“もうちょっとこういうテンポでしゃべってみよう”みたいなことは事前にやりました。
――アフレコの前の下準備のような感じですね。
上白石:ただ現場に行ったら結構壊されてしまうことも多いんですけど、自分の安心する材料としてやってみたりして。普段はあんまり意識してこなかったけど“自分ってこういう声なんだ”とか、そういう発見はあったかもしれないです。
――上白石さんの中でペチカらしいイメージの方はいますか。
上白石:特定の人はいないのですが、抽象的なイメージ。雪みたいな…晴れてる日より雨の日が好きそうだなとか、細かな妄想はいろいろしていました。
■「ジュゼッペだ!」「ペチカやなぁ」初めて聞いた互いの歌声に感動
――劇中では掛け合いやデュエットシーンもありますが、お互いの声を聞いて印象はいかがでしたか。
上白石:“ジュゼッペだ!”と思いました。最初に歌を聞かせていただいたのですが、デモの段階、まだディレクションとか受けてない段階ですでにここまでキャラクターが立ち上がっていて、歌の中でジュゼッペがすごく生き生きしてるのが伝わったので、「これはまマズイ」っていう気持ちになりました。「私、ここまでできてないぞ」と思ったし、歌声がすてきなのはもちろん存じ上げてはいたんですけど、ここまで役をまとって歌に没入する方なんだなとすごくびっくりしたのを覚えてます。
――アフレコはそれぞれ別の日だったんですか。
佐野:別々でしたが、1日だけ一緒に演じました。歌のレコーディングはもう完全に別々です。
――デュエットシーンは一緒に録ったのかと思うほどの仕上がりでした。
上白石:歌はすでに録っていたのですが、役の感じをつかみたいなとなり、一回だけ一緒に歌いました。。
佐野:デュエットの前後のシーンを演じてみましたよね。その前のシーンを撮ったまま、「一緒に歌おうか」ってなって。カラオケみたいな感じになりました。
上白石:楽しかったですよね。
佐野:めちゃめちゃ楽しかった!たまに、あの動画見ます(笑)。監督が回してくれて…。
――それがほぼ“はじめまして”の段階ですよね。
上白石:そうでしたね。
佐野:やっと一緒に歌えたなって。
――佐野さんは上白石さんの歌声を聴いていかがでしたか。
佐野:“ペチカやなぁ”ですね(笑)。この純粋な、ピュアな、声の良さで勝負してる感じがして、“あっ、そういう感じでいくんですね。じゃあ僕はこっちでいかないとまずいですね”みたいな…。この作品の音楽への向き合い方、歌い方を上白石さんの声で教えてもらったような感覚がありました。
――では、お互いの声を聞いて、ちょっと調整した部分みたいなところもあった?
佐野:セリフは僕が先に1人で入れちゃっていたのですが、その感覚が歌唱パートに関してはありましたね。元々、仮歌には制作されたAwesome City Clubのatagiさんの声が入っていて、いろんな上級なテクニックで歌われてるような、オーサムさんらしい世界観の楽曲がすごくすてきやったんですけど…それを聴くと“コピーしよう、コピーしよう”と思っていたところがあった。でも、上白石さんの声を聞いたら、もちろんテクニックやいろんなものを駆使してはいるけど、純粋な声で「この声が歌ってたらもう何をしていてもペチカやんな」と思える強さ、硬さがあった。だから僕もいろいろと考えずに、とにかくジュゼッペの声を見つけてピュアに歌っていかないとあかん。“テクニックとかじゃない!”と思いましたし、いろんなことやったら負けるな、と思いました。
上白石:いやいや(笑)。でも佐野さんの歌い方は普段と少し違って、より話し声に近い。歌っている感じが全然しなくて、本当にただおしゃべりをしてるというか、言葉を発してるような歌い方をされていたので、私も「歌を頑張らなきゃ」という気持ちがあったんですけど、“あ、役としてしゃべればいいんだ”と思いました。それくらい、役として発せられるものがもう確立していらっしゃったので。私もこんなふうに、おしゃべりするように歌いたいなと思って歌ったことはすごく覚えています。
――あとお二方が歌でコミュニケーションを取られてるっていうのがすごく伝わってきたんですけども、今回共演されてイメージに変化はありましたか。
佐野:初めてお会いする前に、KEY TO LITの岩崎大昇(※崎=たつさき)が上白石さんと共演していたので、「今度、共演するんやけど、どんな人?」って聞いたら、“とにかく優しい人”っていう評判を聞いていて。俺が知っているジュニアの中で、大昇が一番優しくて。
上白石:わかる!いい人だよね。
佐野:常に一緒にいる人の空気をあたたかくするような大昇から「とにかく優しい」と聞いて、実際に会ってみたらその評判どおりでした。まさしくその通り。お会いして、「あ、やっぱり言ってた通りだな」と思いました。
――上白石さんはいかがでしょうか。
上白石:佐野さんは、元々すごく器用だしいろんなことを卒なくこなせるイメージがあったのですが、本編の中でいろんな外国語をいっぱい話すっていうシーンでは、すごく努力を感じたというか、“あ、きっとこの人はすごく器用に見えつつも、めちゃくちゃ裏で努力をしてる人なんだろうな”というところは、その時ににじんで見えました。すごく努力家だし、自分の好きなことにまっしぐらになっている人なんだなと。
佐野:確かにあのシーンはめちゃくちゃ頑張りました。一番大変やったので。
上白石:結構、練習したりしたの?
佐野:あの外国語のシーンは資料が来るのがその日とか前日とかで(笑)。精いっぱいできることはしていきました。
上白石:淀みなくやっていたから。
佐野:大変でした。あのシーンはテレビやビデオ通話で監修の方に教えてもらいました。でも、ほんまになんとかなってよかったなと思いました。
――あのシーンの正解はロシア語ですか。
佐野:はい。小説にもロシア語と書いてあるんです。
――お二方ともアーティスト活動をされていますが、ミュージカルの歌でお客さんに届けることと、普段の歌唱で感覚に違いはありますか。
佐野:小学校3年生からミュージカルに出演していたので、逆にアイドルのようなJ-POPに苦手意識があって。歌っていてもミュージカルっぽくなってしまう。歌い方が難しかったけど、ミュージカルアニメということで小さい頃から培ったものを出せばよかったので、苦労はなかったです。
上白石:私も幼い頃、ミュージカルスクールに通っていてミュージカルの作品も経験があったので、佐野さんと同様、普段の歌よりも親しみやすく、自分の声になじむ感じもあった。だから私はやっぱりこういう曲が好きだな、と再確認しました。
――2人の歌唱力があってこそのジュゼッペとペチカ。2人にとって“歌”とはどんな存在でしょうか。
佐野:歌っている時間が一番楽しい。いろんなことに興味を持って手を出してみても、結局、音楽に戻ってくるし、歌っている時間が一番楽しいです。
上白石:私も小さい頃から歌が好きで、原点でもある。歌えばいつでも幼心に戻れるし、純粋に“好きだ”という気持ちが芽生える唯一のもの。結局、歌が好きだと思います。
――歌に救われた経験はありますか。
上白石:歌うことも音楽を聴くのも大好き。本当にしんどいときに救ってもらったことも何度もある。このアルバムがなかったらダメになっていたかもしれないというものも何枚かあるので、ダイレクトに救われてきているなと思います。
佐野:僕は小さい頃から音楽が身近にあったので、何回も救われてきています。曲を聴けば今でもそのときのことが思い出せるような作品が、人生の節目節目にあります。
――ラブストーリーではありますが、好きな人に好かれることよりも、好きな人の幸せを願う――。友情にも似た感覚でもある。ジュゼッペとペチカの関係について、どのようなものを観に来た人に感じてほしいですか。
佐野:人を好きになることのあたたかさ。何かを好きになって熱中することの尊さや楽しさを、たくさんの人に気づいてもらえたら。こういう時代だからこそ気づいてほしいですね。
上白石:“好き”という気持ちから発せられるものはすごくポジティブ。人に対してだけでなく、自分が好きなことや打ち込むことに心を注ぐってすてき。ひとつでも自分が熱中できるものがある人、推しがいる人、“好き”って気持ちを大切にしている人に、ひとりでも多く届いてほしいなと思います。
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