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Hi-STANDARD独占ロングインタビュー【前編】バンドは“人生のシェア”――新ドラマー・ZAX加入と再始動の舞台裏

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2025-12-01 19:00
Hi-STANDARD独占ロングインタビュー【前編】バンドは“人生のシェア”――新ドラマー・ZAX加入と再始動の舞台裏
Hi-STANDARD独占ロングインタビュー【前編】バンドは“人生のシェア”――新ドラマー・ZAX加入と再始動の舞台裏
 新たなドラマーとしてZAXを迎え、難波章浩(ベース&ボーカル)、横山健(ギター&コーラス)、ZAXの3人でミニアルバム『Screaming Newborn Baby』を完成させたHi-STANDARD。盟友・恒岡章さんを失い、活動継続すら危ぶまれる中で、バンドはゼロから歩みを重ね、衝動をそのまま音に刻む制作へと踏み出した。ZAX加入に至る経緯、新体制での初制作、そして再び動き出した過程を振り返る。(聞き手:矢島大地)

【写真】CDショップにゲリラ設置されたHi-STANDARD試聴コーナー

■人生が1回リセットされちゃうくらいゼロからのスタートだった(難波章浩)

――恒岡さんが亡くなってからの2年半の歩み、ZAXさんの加入、そして新しいHi-STANDARDでの新しいミニアルバム『Screaming Newborn Baby』のリリース。うかがいたいことはたくさんあるんですが、とにかく『Screaming Newborn Baby』がすさまじ過ぎて。

難波 おお!うれしい。

――生々しいうえに、蒼くて瑞々しい楽曲ばかりであることに驚いたんです。9月24日に行われたYouTubeの生配信でも難波さんが今作について「初期衝動」とおっしゃっていましたが、人間って初期衝動や初心を忘れないことはあっても、それをゲットバックすることは難しいと思うんですよ。だけど初期衝動や生まれ変わりは本当にあるんだなと思って、そこに今作のすさまじさがあると感じたんですよね。

横山 自分でもそういう手応えはあって、本当に衝動が詰まってる作品だなって思う。で、その衝動をキャッチしてほしくて、そういうふうに自分たちを持っていったというか。サウンドはもちろん、バンドの行動そのものから衝動を感じてほしかった。

――ZAXさんが加入して動き出す新しいハイスタの姿を、そのまま新しい衝動にしていった。

横山 そう。ZAXと人の関わりをイチからちゃんと作って、それをサウンドに反映させていった結果、そういう作品になったんだと思う。

難波 そもそも、ハイスタの新しいスタートであるのは間違いないからね。ハイスタであることは事実だけど、人生が1回リセットされちゃうくらいゼロからのスタートだったんだよ。ツネちゃんが亡くなって、この先ハイスタをやれるのか?っていうところまでいったわけだから。そこからまたバンドをスタートさせようとなって、3人でスタジオに入って、楽曲を作って――その歩みの全部を音に収めるためにはどうしたらいいんだろう?っていうのが、作品を作るに当たって考えたことだったの。それで、クリックを聴かないでレコーディングしようっていう話になったんだけど。

――3人の間合いと生き物感をそのまま収めようと。

難波 そう。たとえば『LAST OF SUNNY DAY』って、今聴くとすごい作品だと思うのよ。そのすごさを自分なりに分析してみたら、『LAST OF SUNNY DAY』の頃は、お互いがお互いの音だけを聴いて演奏してたんだよ。クリックが入るとクリックを聴きにいってしまうし、クリックという第三者が入っている状態になる。だけど『LAST OF SUNNY DAY』はツネちゃんもクリックを聴いてないし、俺も健くんも頑張ってそのビートに音を乗せていた。『LAST OF SUNNY DAY』の曲はBPMも展開も変だけど、そこにとんでもないエネルギーを感じたというか、カッチリしていない部分にこそバンドの威力が出てるんだと気づいたんだよね。だから、今のハイスタの衝動とエネルギーを余すことなく伝えるにはクリックを聴かないのが一番いいと思って。そうすることで、新しいハイスタの衝動を表現できるんじゃないかと思ってた。

――音楽グルーヴと同時に、人間グルーヴも求めていたっていう話ですよね。

横山 そう。さっきナンちゃんが言っていたけど、演奏に他者が介在するのと、メンバーの演奏だけで完結させることには圧倒的な違いがあるから。メンバーの音だけで走る感じが『LAST OF SUNNY DAY』の衝動になってたんだろうし、今回も、それを再現しにいった自覚がある。

難波 これはちょっと話が飛んじゃうけど、そういう作り方は、近年のロックに対する提言みたいな意味合いもあって。ハイスタはラッキーなことに、録音環境がアナログからデジタルに転換する移り変わりを体感できたバンドなのね。で、2000年くらいからPro Toolsが用いられるようになって、ロックでもクリックを聴くのが当然、下手したらドラムすら叩いてませんっていう、ポップス的な作りがロックの中にも増えていったと思うの。それをハイスタもひと通り経験してみたうえで、ロック全体が初期衝動に回帰してくれたらいいなっていう気持ちもあったんだよね。ハイスタがより生々しいサウンドにトライしていくことで、これからロックに目覚める人が「これだよな」って感じてくれたらいいなっていうイメージもあった。

――ハイスタの在り方そのものに繋がる話だなと思いました。レジェンドとしての帰還ではなく、何度でも新しいトライをして、そのうえで人を巻き込んでいくのが自分たちなんだと。

難波 うん、そうかもしれないね。

■ツネさんが亡くなったあとハイスタをどうしていくのか?っていう気持ちが痛いほどわかった(ZAX)

――ZAXさんはいかがですか。YouTube配信の談話によればハイスタへの加入は2024年の5月に決まっていたそうですが、そこから難波さんと健さんと一緒にやってきて、そして作品を作り終えてみて、どんなことを感じましたか。

ZAX まず作品を作り終えてみて、何回聴いても飽きないものができたと思っていて。それは初めての経験だったんですよ。やっぱりね、何回もデモを聴いて臨むのが制作でありレコーディングですから、録る頃にはその曲に飽きていることもあるんです。だけど今回は、この3人で構築してきたサウンドはもちろん、そのときの3人の空気まで収められている感じがして。そこがすごいし、聴いていて飽きない理由なのかなっていう気がします。ライブ感が余すところなく入ってるし、「ちょっと走ってるなぁ、クッソー!」みたいなのも含めて、何回聴いても面白い。それもまた、ハイスタの衝動として伝わるんじゃないかなと思ってます。

――そうして新しいハイスタが生まれるまで、つまりZAXさんが加入するまでのお話もうかがっていきたいです。ツネさんが亡くなってから初めてのライブが『SATANIC CARNIVAL 2023』で、そこでサポートドラムとしてZAXさんが参加されたことが始まりだったと思います。あのライブではどんなことを感じていらっしゃいましたか。

横山 まず『SATANIC CARNIVAL 2023』のライブを思い返すと…あの時点では、ナヲとEKKUNNも含めて、ドラムを叩いてくれたことに対するありがたさしかなかった。こんなことに付き合ってくれてありがとうっていう温度感でもなかったんだけど…尊いなっていう感じだった。

難波 あのステージのことはあんまり覚えてないもんね。とにかくやり切ることに精一杯だったし、曲を演奏できただけでよかった。

ZAX 僕は僕で、2人を支えることしか考えてなかったです。僕は2022年に『BLARE FEST.』でPTPのライブをやったんですけど…PTPは『gene』というアルバムを作っているときにKが亡くなったので、そのアルバムの曲をライブでやったことがなくて。その曲たちを、いろんなボーカリストに力を借りて再現するライブをやったんですよ。そのライブを経たあとやったんで、ツネさんが亡くなったあとにハイスタをどうしていくのか?っていう健さんと難波さんの気持ちが痛いほどわかったんですよね。なので、声をかけてもらったときに「絶対に叩かせてください」と伝えました。それはもう、好きな人のためなら何でもやりますっていうだけでしたね。

――Hi-STANDARDというバンドは、ZAXさんにとってどんな存在だったんですか。

ZAX 雲の上の存在ですよ(笑)。絶対関わることないやろうなって思うほどのレジェンドで、曲がよくてメロディがよくて、誰でも知ってるすごいバンド。それが僕から見たハイスタだったんですけど、やっぱり『AIR JAM 2011』にPTPで出たときのハイスタが忘れられなくて。初めてハイスタのライブを観たのがそのときでしたけど、あれ以上のライブは観たことがないんです。スタンドの一番真ん中の上段でハイスタを観てたら、横浜スタジアムに気の穴が開いたんですよ。本当にボカーン!ってなってて。何やこれと思って、思わずクラウドサーフしてアリーナ最前まで行きましたもん。

難波 マジで!(笑)

ZAX 気の圧が半端じゃなかった。メガネ割れましたからね。

難波 はははははは!ツネちゃんすごかった?

ZAX ツネさんすごかったですねえ、半端じゃなかった。

――今のお話からもZAXさんの人柄が垣間見えるんですが、難波さんと健さんは、NOFXのツアーを経て、ZAXさんのどんな部分に惹かれて加入のオファーをしたんですか。

難波 ZAXのいいところは…とにかく真面目(笑)。とにかく何事からも逃げない人なんだよ。真っ向から受け止めて、ダメだとしてもぶち当たってくる感じ。それが絶対的に必要だったんだよね。ハイスタのドラムになるなんて相当大変なことだと思うし、プレッシャーもあるだろうし。だからまず、心が折れない人かどうかっていうのが大事なポイントで。もちろん技術はある人だから、その上で真っ直ぐな心でぶつかってきてくれるところがいいなと思った。

――音の前に人間をシェアする感覚が一番大事だった。

難波 そう。シェアっていう意味では、ZAXがなんでこんなに強いんだろうって考えると、ZAXもまた、PTPをやっていた頃にKくんを亡くしているからなのかなっていう気がしていて。それもあって、こんなに強い人なのかもしれないよね。

横山 ZAXは本当に、話す言葉、伝えてくれる気持ちが彼の人間性そのままなのよ。で、最初の頃は「そんなに真っ直ぐな人間いないぜ?」って思っちゃって。あまりに真っ直ぐ過ぎて、普通はもうちょっと裏があるだろうなって勘ぐるところがあったの。でも、去年のNOFXのツアーのステージの上で感じることが多くて。ZAXが何故ここにいて、ZAXが何故ハイスタの曲でドラムを叩いて、何のつもりでいるんだろう?っていうのが見えた気がしたんだよね。

――ZAXさんの奥にどんなものが見えたんですか。

横山 ZAXは何のつもりでもないのよ。

ZAX はははははは!

■技術以上に人間と人間の繋がりが大事なんだよ(横山健)

横山 ハイスタの楽曲を全力で演奏するために俺はここにいるんだっていうだけなのよ。そこで本当に、ZAXの裏表のない人間性を理解できた気がして。ドラムもギターもベースも人それぞれの個性があるし、いいところを見ようと思えばいくらでも見られる。でもやっぱり、さっき言ってくれた「シェア」の感覚が大事で。バンドは人生のシェアだと思ってるし、結婚とも仲間とも会社とも違う、独特の繋がりだから。そう考えると、技術以上に人間と人間の繋がりが大事なんだよね。そういう意味で、NOFXのツアーを回る中で、ZAXという人間に対して腑に落ちる感じがして。直感で「ZAXとならHi-STANDARDを動かせるかもしれない」と思った、その感覚を信じようと思った。

――ハイスタとは、人生のどんなものを持ち寄ってシェアする集団なんだと思いますか?

横山 人生のシェアとは言ってもバンドそれぞれなんだろうけど、ハイスタの場合は、その公約数がけっこうデカいと思う。特に俺とナンちゃんは90年代のアタマから一緒にやっていて、途中10年くらいは一緒にやれなかったけど、その時間も含めてすごく大きなものをシェアしているんだと思う。これとこれを共有しているんだっていう明確な言葉にはできないけれども、相当大きなものをシェアしているんじゃないかな。

難波 まあ、一緒に叶えてきたことも含めて、ハイスタとはカルチャーそのものなのかな。…なんつって(笑)。

横山 ははははははは!

難波 やっぱり90年代にハイスタというカルチャーが生まれて、そのカルチャーを共有してきたことは俺らの公約数としてデカいんじゃないかな。で、あの時代を経験したうえで、今またそれを成そうとするヤツはなかなかいなくて。新しく結成したバンドが今から頑張ろうねっていうのとは全然違うし、実際にカルチャーを作って、それを経てきたハイスタにしかできないことがあると思うんだよね。

――何から何まで初めてのことを成して、音楽シーンのシステムの外にイチから場所を作ってきたからこそ、そのバンドがイチからスタートを切ることがロックそのものを初期衝動に引き戻すアクションになるんじゃないかっていうことですよね。

難波 そう。俺らはまだ新しい何かを提示しようとしてるし、それは、俺らが改めてスタートを切るタイミングでこそ考えられたことなんだと思う。

【プロフィール】
1991年から活動を開始。『LAST OF SUNNY DAY』(94年)、『GROWING UP』(95年)、『ANGRY FIST』(97年)といったミニ/フルアルバムをリリースし、97年には主催フェス『AIR JAM』をスタート。99年に自主レーベル『PIZZA OF DEATH RECORDS』を設立してアルバム『MAKING THE ROAD』をリリースし、インディーズとしては異例のミリオンヒットを達成した。2000年の『AIR JAM 2000』を最後に活動休止し、11年に東日本大震災の復興支援を目的とした『AIR JAM 2011』を開催して復活。16年に16年半ぶりの新作『ANOTHER STARTING LINE』をリリースし、その後も『AIR JAM 2016』『AIR JAM 2018』の開催や、18年ぶりとなるアルバム『THE GIFT』をリリースした。23年2月にドラマーの恒岡章さんが死去。4月に恒岡さんの遺作となる「I'M A RAT」を配信リリースし、6月にサポートドラマーを迎えて『SATANIC CARNIVAL 2023』に出演した。今年9月にThe BONEZ/Pay money To my Painのドラマー・ZAXが正式加入することが発表され、11月26日にアルバム作品としては8年ぶりとなるミニアルバム『Screaming Newborn Baby』をリリース。12月23日よりツアー『Screaming Newborn Baby Tour』を開催する。

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