エンタメ
2026-07-31 08:40
数々の伝説的な来日公演を手掛けてきた老舗プロモーター・ウドー音楽事務所と、世界的人気の多数のIPをゲーム、アニメ、玩具などの商品・サービスとして展開するバンダイナムコグループ。一見、異なるフィールドを歩んできたように見える両社が、戦略的パートナーシップを構築した。狙うのはライブイベントと音楽事業のさらなる強化、そして日本発エンタテインメントの海外展開を次のステージへと押し上げることだ。世界中でライブ体験への価値が高まる今、この提携は国産IPの可能性をどこまで広げるのか。両社が描く未来への構想を聞いた。
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◆『テイルズ オブ』シリーズがきっかけ、バンダイナムコとウドーがタッグ
今年6月27日、東京・渋谷にバンダイナムコグループ初の多目的ホール「Shibuya LOVEZ」がオープンした。『ガンダム』シリーズと縁が深く、主題歌を数多く担当してきたT.M.Revolutionおよび西川貴教が、2日間に渡ってこけら落とし公演を行った。
同グループでは2026年4月に映像音楽事業における組織再編を実施。グループ横断で音楽事業を強化・加速していく方針を宣言している。特に重要性を増しているのがライブ事業で、バンダイナムコミュージックライブが手掛けるライブイベントは年間800本を超える規模へと成長している。
「当社のあらゆる事業でも、時代や状況に関わらず価値が高まっているのが、玩具やアミューズメント施設、そしてライブといったリアルな体験を伴うエンタテインメントです。なかでもライブはIPの世界観を体感として届け、ファンとの繋がりを育む場として、さらに重要な役割を担うようになっています」(バンダイナムコホールディングス取締役副社長 グループ戦略担当(CW360)・桃井信彦氏)
一方で、事業の成長は新たな課題も浮かび上がらせていた。大型会場での制作・運営、そして海外展開──。挑戦するステージが大きくなるほど、求められるノウハウやリソースも高度になっていく。それを補完するパートナーとして、バンダイナムコがアプローチしたのがウドー音楽事務所だった。
「ウドーさんとはこれまでもさまざまな形で協業をしてきました。なかでもRPGゲーム『テイルズ オブ』シリーズの声優陣や主題歌アーティストが集結する大型イベント『テイルズ オブ フェスティバル』は、神奈川・横浜アリーナへ会場を移した2012年より運営と制作をお任せしています。収容人数の多い会場を取り仕切るオペレーション力に、数多くの大型アーティストの来日公演を成功させてきた力を実感しました」(バンダイナムコミュージックライブ 常務取締役 鈴木孝明氏)
◆グローバル化が課題の音楽に見出した“伸びしろ”、世界が渇望するライブ体験
かたや創業以来、独立独歩の歩みを続けてきたウドー音楽事務所にとっても、この提携は未来を見据えた挑戦だった。
「エンタメ産業のグローバル化やデジタル技術によるライブ体験の進化は、想像以上のスピードで進んでいます。ウドーは来年で60周年になりますが、実績に甘んじていては50年後の未来はありません。これまでの招聘事業に加え、まだ誰も見たことのないライブ体験を開発し、世界へ届けたい。バンダイナムコさんのIPプロデュース力と、私たちが積み重ねてきたライブ制作のノウハウが掛け合わされば、その未来は必ず実現できると確信しています」(株式会社ウドー音楽事務所 取締役・有動敦胡氏)
両社のパートナーシップの主要なテーマとなっているのが、「ライブ事業のグローバル展開」だ。アニメやゲーム、玩具といった日本発のIPが世界中でファンを獲得している。バンダイナムコグループもさまざまな事業で海外市場を開拓してきたが、その中で「大きな伸びしろが残されている領域がある」と桃井氏は言う。
「当社の事業で、よりグローバル化を推進したいのが音楽です。音楽を世界へ届ける試みは、当社に限らず日本の音楽業界全体の長年の課題でした。しかし状況は、急速に変わってきています。今年5月に米・ロサンゼルスで開催されたJ-POPフェス『CLOUD NINE presents “Zipangu” JAPANESE MUSIC EVENT 2026』では3万5000人が熱狂したように、アニメ主題歌をきっかけに世界的な人気を得るアーティストが続々と現れています。また昨今は、ゲーム音楽のオーケストラコンサート(オケコン)が、欧米を中心に世界的な潮流となっています。日本のIPを入り口としたライブ体験を、世界中の人たちが渇望しているのです」(桃井氏)
しかしアニメやゲームといった日本のポップカルチャーが世界中で人気なのは、今に始まったことではない。声優やアニソンライブも何十年にもわたって世界各地で行われてきたはずだ。
「ありがたいことに当社のコンテンツやアーティストにも、海外のイベント等から頻繁にお声がけをいただきます。しかし『呼ばれて行く』だけでは、生み出せる熱狂も“点”で終わってしまう。その熱狂を“線”から“面”へと広げていくためにも、こちら側から戦略的に仕掛けていくフェーズに来ているのを感じています。『Zipangu』はその先陣を切った好例でしたが、私たちもバンダイナムコらしいライブ体験を世界にお届けしたい。その点でも世界の音楽業界にネットワークを持つウドーさんのリソースを、大いに期待しています」(鈴木氏)
◆X JAPAN海外公演を大成功させたウドー、今度は『パックマン』『ガンダム』『たまごっち』を活用
バンダイナムコの期待に呼応するように、ウドー音楽事務所も海外アーティストの招聘で培ってきた世界的なネットワークと制作力を武器に、今度は「日本発のライブエンタテインメントを世界へ届ける」という方向へと、その役割を進化させようとしている。海外アーティストの招聘のイメージが強いウドー音楽事務所だが、日本人アーティストの海外公演も数多く支えてきた。その実績の1つであるX JAPANの米ニューヨークのマディソン・スクエアガーデン公演は鈴木氏も目撃しており、「ウドーさんの現地オペレーション力は圧巻でした」と振り返っている。
もっとも、ウドー音楽事務所の代表取締役社長・遠藤敬輔氏は「現場の主力はやはり海外からアーティストをお招きするインバウンド事業です」と現状を冷静に語る。
「今後さらに海外事業を発展させるためには、自分たちでライブコンテンツを企画し、世界へ届けるアウトバウンドの発想が必要でした。世界中で人気のIPを豊富にお持ちのバンダイナムコさんとパートナーを組むことで、その可能性は一気に現実味を帯びています」(遠藤氏)
そうした構想のもと、両社ではすでに複数のアイデアが上がっている。例えば、ゲーム音楽に特化した大型DJフェスや、キャラクターのバーチャルライブなどは「ライブをパッケージ化することで、アーティスト個人に依存することなく、世界各国を巡回する仕組みが構築できるのではないか」と遠藤氏は抱負を語る。
さらに有動氏は、両社のリソースを存分に活用した豪華なコラボレーション構想を描く。
「当社と長いお付き合いのある海外のアーティストには、『パックマン』や『ガンダム』といったバンダイナムコさんのIPが大好きな人もいます。彼らとキャラクターがステージで競演したり、コラボグッズを作ったり、さらには楽曲提供への意欲まで引き出せたら。年内にはバンダイナムコさんの資料を携えて、現地マネジメントに説明に行くことを考えています」(有動氏)
「例えば、世界中で人気の『たまごっち』のIPを活かして、「たまごっち×ライブ体験」のような、全く新しいファミリー向けのリアルイベントを作ることもできるかもしれません。可能性は無限にあります」(桃井氏)
ゲーム音楽に特化した大型DJフェス、キャラクターによるバーチャルライブ、海外アーティストとのコラボレーション──。今回のパートナーシップから生まれようとしている企画は、いずれも「ライブ」を起点に日本のIPの価値を世界的に高めるための取り組みだ。
◆数年のうちに「日本のポップカルチャーが世界的なムーブメントを起こす」
とはいえ、両社が見据えているのは、1つひとつのイベントの成功ではなく、その先にある日本のエンタテインメントそのものの未来と言ってもいいかもしれない。
「バンダイナムコさんは、世界観を作る天才なんです。一方、私たちは生の体験を作る職人。その2つが掛け合わされることで、今までにないライブコンテンツが生まれるのではないかとワクワクしています」(有動氏)
この有動氏のコメントは、まさに今回のパートナーシップを象徴したものだ。アニメやゲームが生み出した世界観を、ライブというリアルな体験へと昇華させる。その体験が新たなファンを生み、さらにIPの価値を広げていく。バンダイナムコとウドー音楽事務所が挑もうとしているのは、そうしたエンタテインメントの新たなエコシステムだと言えるだろう。
そして、その挑戦の追い風となっているのが、世界のエンタテインメント市場で起きているトレンドの変化だ。
「ここ数年で日本のポップカルチャーの受容層は明らかに変わってきています。以前は一部の熱心なファンのものだったのが、特にアジア圏では若者文化として定着しつつあります。音楽を含む日本のポップカルチャーが世界的なムーブメントを起こすタイミングは、ここ数年のうちに来ると思っています」(遠藤氏)
その時、世界へ届けるべきものは個別のIPやコンテンツではない。作品の世界観をライブというリアルな体験へと広げ、その体験を通じて、日本という国や文化そのものへの愛着が育まれる──。バンダイナムコが育ててきたIPと、ウドー音楽事務所が半世紀以上にわたり磨き続けてきたライブ制作。その2つが交わることで日本発のエンタテインメントは今、かつてないステージへと踏み出そうとしている。
(文/児玉澄子)
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同グループでは2026年4月に映像音楽事業における組織再編を実施。グループ横断で音楽事業を強化・加速していく方針を宣言している。特に重要性を増しているのがライブ事業で、バンダイナムコミュージックライブが手掛けるライブイベントは年間800本を超える規模へと成長している。
「当社のあらゆる事業でも、時代や状況に関わらず価値が高まっているのが、玩具やアミューズメント施設、そしてライブといったリアルな体験を伴うエンタテインメントです。なかでもライブはIPの世界観を体感として届け、ファンとの繋がりを育む場として、さらに重要な役割を担うようになっています」(バンダイナムコホールディングス取締役副社長 グループ戦略担当(CW360)・桃井信彦氏)
一方で、事業の成長は新たな課題も浮かび上がらせていた。大型会場での制作・運営、そして海外展開──。挑戦するステージが大きくなるほど、求められるノウハウやリソースも高度になっていく。それを補完するパートナーとして、バンダイナムコがアプローチしたのがウドー音楽事務所だった。
「ウドーさんとはこれまでもさまざまな形で協業をしてきました。なかでもRPGゲーム『テイルズ オブ』シリーズの声優陣や主題歌アーティストが集結する大型イベント『テイルズ オブ フェスティバル』は、神奈川・横浜アリーナへ会場を移した2012年より運営と制作をお任せしています。収容人数の多い会場を取り仕切るオペレーション力に、数多くの大型アーティストの来日公演を成功させてきた力を実感しました」(バンダイナムコミュージックライブ 常務取締役 鈴木孝明氏)
◆グローバル化が課題の音楽に見出した“伸びしろ”、世界が渇望するライブ体験
かたや創業以来、独立独歩の歩みを続けてきたウドー音楽事務所にとっても、この提携は未来を見据えた挑戦だった。
「エンタメ産業のグローバル化やデジタル技術によるライブ体験の進化は、想像以上のスピードで進んでいます。ウドーは来年で60周年になりますが、実績に甘んじていては50年後の未来はありません。これまでの招聘事業に加え、まだ誰も見たことのないライブ体験を開発し、世界へ届けたい。バンダイナムコさんのIPプロデュース力と、私たちが積み重ねてきたライブ制作のノウハウが掛け合わされば、その未来は必ず実現できると確信しています」(株式会社ウドー音楽事務所 取締役・有動敦胡氏)
両社のパートナーシップの主要なテーマとなっているのが、「ライブ事業のグローバル展開」だ。アニメやゲーム、玩具といった日本発のIPが世界中でファンを獲得している。バンダイナムコグループもさまざまな事業で海外市場を開拓してきたが、その中で「大きな伸びしろが残されている領域がある」と桃井氏は言う。
「当社の事業で、よりグローバル化を推進したいのが音楽です。音楽を世界へ届ける試みは、当社に限らず日本の音楽業界全体の長年の課題でした。しかし状況は、急速に変わってきています。今年5月に米・ロサンゼルスで開催されたJ-POPフェス『CLOUD NINE presents “Zipangu” JAPANESE MUSIC EVENT 2026』では3万5000人が熱狂したように、アニメ主題歌をきっかけに世界的な人気を得るアーティストが続々と現れています。また昨今は、ゲーム音楽のオーケストラコンサート(オケコン)が、欧米を中心に世界的な潮流となっています。日本のIPを入り口としたライブ体験を、世界中の人たちが渇望しているのです」(桃井氏)
しかしアニメやゲームといった日本のポップカルチャーが世界中で人気なのは、今に始まったことではない。声優やアニソンライブも何十年にもわたって世界各地で行われてきたはずだ。
「ありがたいことに当社のコンテンツやアーティストにも、海外のイベント等から頻繁にお声がけをいただきます。しかし『呼ばれて行く』だけでは、生み出せる熱狂も“点”で終わってしまう。その熱狂を“線”から“面”へと広げていくためにも、こちら側から戦略的に仕掛けていくフェーズに来ているのを感じています。『Zipangu』はその先陣を切った好例でしたが、私たちもバンダイナムコらしいライブ体験を世界にお届けしたい。その点でも世界の音楽業界にネットワークを持つウドーさんのリソースを、大いに期待しています」(鈴木氏)
◆X JAPAN海外公演を大成功させたウドー、今度は『パックマン』『ガンダム』『たまごっち』を活用
バンダイナムコの期待に呼応するように、ウドー音楽事務所も海外アーティストの招聘で培ってきた世界的なネットワークと制作力を武器に、今度は「日本発のライブエンタテインメントを世界へ届ける」という方向へと、その役割を進化させようとしている。海外アーティストの招聘のイメージが強いウドー音楽事務所だが、日本人アーティストの海外公演も数多く支えてきた。その実績の1つであるX JAPANの米ニューヨークのマディソン・スクエアガーデン公演は鈴木氏も目撃しており、「ウドーさんの現地オペレーション力は圧巻でした」と振り返っている。
もっとも、ウドー音楽事務所の代表取締役社長・遠藤敬輔氏は「現場の主力はやはり海外からアーティストをお招きするインバウンド事業です」と現状を冷静に語る。
「今後さらに海外事業を発展させるためには、自分たちでライブコンテンツを企画し、世界へ届けるアウトバウンドの発想が必要でした。世界中で人気のIPを豊富にお持ちのバンダイナムコさんとパートナーを組むことで、その可能性は一気に現実味を帯びています」(遠藤氏)
そうした構想のもと、両社ではすでに複数のアイデアが上がっている。例えば、ゲーム音楽に特化した大型DJフェスや、キャラクターのバーチャルライブなどは「ライブをパッケージ化することで、アーティスト個人に依存することなく、世界各国を巡回する仕組みが構築できるのではないか」と遠藤氏は抱負を語る。
さらに有動氏は、両社のリソースを存分に活用した豪華なコラボレーション構想を描く。
「当社と長いお付き合いのある海外のアーティストには、『パックマン』や『ガンダム』といったバンダイナムコさんのIPが大好きな人もいます。彼らとキャラクターがステージで競演したり、コラボグッズを作ったり、さらには楽曲提供への意欲まで引き出せたら。年内にはバンダイナムコさんの資料を携えて、現地マネジメントに説明に行くことを考えています」(有動氏)
「例えば、世界中で人気の『たまごっち』のIPを活かして、「たまごっち×ライブ体験」のような、全く新しいファミリー向けのリアルイベントを作ることもできるかもしれません。可能性は無限にあります」(桃井氏)
ゲーム音楽に特化した大型DJフェス、キャラクターによるバーチャルライブ、海外アーティストとのコラボレーション──。今回のパートナーシップから生まれようとしている企画は、いずれも「ライブ」を起点に日本のIPの価値を世界的に高めるための取り組みだ。
◆数年のうちに「日本のポップカルチャーが世界的なムーブメントを起こす」
とはいえ、両社が見据えているのは、1つひとつのイベントの成功ではなく、その先にある日本のエンタテインメントそのものの未来と言ってもいいかもしれない。
「バンダイナムコさんは、世界観を作る天才なんです。一方、私たちは生の体験を作る職人。その2つが掛け合わされることで、今までにないライブコンテンツが生まれるのではないかとワクワクしています」(有動氏)
この有動氏のコメントは、まさに今回のパートナーシップを象徴したものだ。アニメやゲームが生み出した世界観を、ライブというリアルな体験へと昇華させる。その体験が新たなファンを生み、さらにIPの価値を広げていく。バンダイナムコとウドー音楽事務所が挑もうとしているのは、そうしたエンタテインメントの新たなエコシステムだと言えるだろう。
そして、その挑戦の追い風となっているのが、世界のエンタテインメント市場で起きているトレンドの変化だ。
「ここ数年で日本のポップカルチャーの受容層は明らかに変わってきています。以前は一部の熱心なファンのものだったのが、特にアジア圏では若者文化として定着しつつあります。音楽を含む日本のポップカルチャーが世界的なムーブメントを起こすタイミングは、ここ数年のうちに来ると思っています」(遠藤氏)
その時、世界へ届けるべきものは個別のIPやコンテンツではない。作品の世界観をライブというリアルな体験へと広げ、その体験を通じて、日本という国や文化そのものへの愛着が育まれる──。バンダイナムコが育ててきたIPと、ウドー音楽事務所が半世紀以上にわたり磨き続けてきたライブ制作。その2つが交わることで日本発のエンタテインメントは今、かつてないステージへと踏み出そうとしている。
(文/児玉澄子)
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