エンタメ
2026-10-09 20:07
ホラー小説にも、デジタル化とタイパの波が押し寄せている。YouTube番組オリコンBiZトークでは、日本のホラー小説の変遷と現在のトレンドについて考察した。1990年代を代表する名作『リング』から最新のタイパホラーまで、時代とともに恐怖の対象はどう変わってきたのか。「最近の怪異はデジタルネイティブだ」というテクノロジーの視点と、流行するモキュメンタリーホラーの源流から探った。
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番組内でまず取り上げられたのが、近年のホラー界におけるバズワードとなっているモキュメンタリーだ。ドキュメンタリー手法を用いて架空の出来事を事実のように見せるこの手法は、読者参加型で考察のしがいがある作品として人気を集めている。雨穴の『変な家』(飛鳥新社)や、背筋の『近畿地方のある場所について』(KADOKAWA)などがその代表例として挙げられる。『近畿地方のある場所について』は、インターネットの掲示板への投稿や、雑誌の読者からの手紙をそのまま提示し、バラバラの情報を読み手が組み立てていくスタイルが特徴的である。
そのモキュメンタリーホラーの源流とも言える、読者に強烈な追体験をもたらす傑作として番組が取り上げたのが、小野不由美の『残穢』(新潮社)だ。十二国記シリーズで知られる小野だが、ホラーでも圧倒的な恐怖を描いている。同作は、ティーン向けホラー小説の読者から寄せられた手紙をきっかけに、小説家と投稿者であるライター久保が恐怖の真相を探っていく物語だ。手紙には、引っ越し先のマンションで畳をほうきで擦るような音が聞こえると記されていた。久保が調査を進めると、過去にも別の住人から同じような手紙が届いており、そのマンションでは住人の出入りが激しいという事実が浮かび上がる。さらに隣接する団地でも転居者が異常に多いことが分かり、怪異の範囲が1つの部屋にとどまらないことが明らかになっていく。
情報を集め、現代から1990年代、高度経済成長期へと過去を遡るにつれ、怪異の正体が少しずつ紐解かれていく。戦後間もない時期に首を吊った女性の帯が擦れる音が、現代で聞こえる音の正体であったと突き止めるが、物語はそこで終わらない。「やっと分かったと思いきや、ここから迫りくる恐怖がすごい」と番組内でも語られたように、さらに明治時代まで遡り、土地に根付いた恨みを伴う死が穢れとなって伝染し、拡大していく連鎖の恐怖が描かれている。2013年には第26回山本周五郎賞を受賞し、16年に映画化もされた同作は、モキュメンタリーホラーの先駆けとして圧倒的な恐怖を放っている。
番組の後半では、年代ごとのホラー小説の変遷について語られた。90年代を代表する作品が、鈴木光司の『リング』(KADOKAWA)だ。1991年の発売当時は爆発的なヒットではなかったものの、その後ホラー小説大賞などが設立され、映画化を機に大ブームを巻き起こした。この時代には他にも、瀬名秀明の『パラサイト・イヴ』(KADOKAWA)、貴志祐介の『黒い家』(KADOKAWA)、小野の『屍鬼』(新潮社)など、のちに名作として語り継がれる作品が次々と誕生した。
2000年代に入ると、若者向けのエンタメホラーが台頭する。山田悠介の『リアル鬼ごっこ』(文芸社)をはじめ、『あそこの席』(文芸社)、『親指さがし』(幻冬舎)など、デスゲームを題材にした作品が中高生を中心に支持を集めた。また、綾辻行人の『Another』(KADOKAWA)や恒川光太郎の『夜市』(KADOKAWA)といった作品も流行した。
2010年代になると、恐怖の舞台が特殊な世界から、家や家族、土地、職場といった日常的な空間へと移り変わる。小野の『営繕かるかや怪異譚』(KADOKAWA)、澤村伊智の『ぼぎわんが、来る』(KADOKAWA)、芦沢央の『火のないところに煙は』(新潮社)などが代表例である。日常の延長線上にある恐怖を描くことで、読者にリアリティのある恐怖を体験させる作品が増加した。
そして2020年代、ホラー小説は新たな局面を迎えている。『変な家』や、上條一輝の『ポルターガイストの囚人』(東京創元社)に見られる参加型ホラーが増加したほか、新しい読書体験を提供する作品が登場している。その筆頭として挙げられたのが、知念実希人の『スワイプ厳禁 変死した大学生のスマホ』(双葉社)だ。同作は、右ページにスマートフォンの画面が描かれ、左ページで物語が進行するという独特の構成で、スワイプ感覚でサクッと読めるのが特徴だ。番組では「タイパがいいホラー」として紹介し、背筋の『口に関するアンケート』(ポプラ社)などを含め、隙間時間に読めるタイパに優れたホラー作品が現在のトレンドになっていると分析した。
番組の最後には、ホラーとテクノロジーの進化の関係について評論が展開された。MCは最近の怪異や幽霊は「デジタルに強すぎる」「デジタルネイティブだ」と述べた。かつて『リング』の貞子がビデオテープやテレビから這い出てきたように、当時のテクノロジーに適応して恐怖を伝播させていた。若者が手紙を書かなくなり、本を読む機会が減った現代において、幽霊もまたテクノロジーを研究し、伝播の経路をスマートフォンやSNSへと移行させている。今後は、AIをテーマにしたホラー作品が登場するかもしれない。はたして、次にどの戦場に怪異は現れるのだろうか。
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そのモキュメンタリーホラーの源流とも言える、読者に強烈な追体験をもたらす傑作として番組が取り上げたのが、小野不由美の『残穢』(新潮社)だ。十二国記シリーズで知られる小野だが、ホラーでも圧倒的な恐怖を描いている。同作は、ティーン向けホラー小説の読者から寄せられた手紙をきっかけに、小説家と投稿者であるライター久保が恐怖の真相を探っていく物語だ。手紙には、引っ越し先のマンションで畳をほうきで擦るような音が聞こえると記されていた。久保が調査を進めると、過去にも別の住人から同じような手紙が届いており、そのマンションでは住人の出入りが激しいという事実が浮かび上がる。さらに隣接する団地でも転居者が異常に多いことが分かり、怪異の範囲が1つの部屋にとどまらないことが明らかになっていく。
情報を集め、現代から1990年代、高度経済成長期へと過去を遡るにつれ、怪異の正体が少しずつ紐解かれていく。戦後間もない時期に首を吊った女性の帯が擦れる音が、現代で聞こえる音の正体であったと突き止めるが、物語はそこで終わらない。「やっと分かったと思いきや、ここから迫りくる恐怖がすごい」と番組内でも語られたように、さらに明治時代まで遡り、土地に根付いた恨みを伴う死が穢れとなって伝染し、拡大していく連鎖の恐怖が描かれている。2013年には第26回山本周五郎賞を受賞し、16年に映画化もされた同作は、モキュメンタリーホラーの先駆けとして圧倒的な恐怖を放っている。
番組の後半では、年代ごとのホラー小説の変遷について語られた。90年代を代表する作品が、鈴木光司の『リング』(KADOKAWA)だ。1991年の発売当時は爆発的なヒットではなかったものの、その後ホラー小説大賞などが設立され、映画化を機に大ブームを巻き起こした。この時代には他にも、瀬名秀明の『パラサイト・イヴ』(KADOKAWA)、貴志祐介の『黒い家』(KADOKAWA)、小野の『屍鬼』(新潮社)など、のちに名作として語り継がれる作品が次々と誕生した。
2000年代に入ると、若者向けのエンタメホラーが台頭する。山田悠介の『リアル鬼ごっこ』(文芸社)をはじめ、『あそこの席』(文芸社)、『親指さがし』(幻冬舎)など、デスゲームを題材にした作品が中高生を中心に支持を集めた。また、綾辻行人の『Another』(KADOKAWA)や恒川光太郎の『夜市』(KADOKAWA)といった作品も流行した。
2010年代になると、恐怖の舞台が特殊な世界から、家や家族、土地、職場といった日常的な空間へと移り変わる。小野の『営繕かるかや怪異譚』(KADOKAWA)、澤村伊智の『ぼぎわんが、来る』(KADOKAWA)、芦沢央の『火のないところに煙は』(新潮社)などが代表例である。日常の延長線上にある恐怖を描くことで、読者にリアリティのある恐怖を体験させる作品が増加した。
そして2020年代、ホラー小説は新たな局面を迎えている。『変な家』や、上條一輝の『ポルターガイストの囚人』(東京創元社)に見られる参加型ホラーが増加したほか、新しい読書体験を提供する作品が登場している。その筆頭として挙げられたのが、知念実希人の『スワイプ厳禁 変死した大学生のスマホ』(双葉社)だ。同作は、右ページにスマートフォンの画面が描かれ、左ページで物語が進行するという独特の構成で、スワイプ感覚でサクッと読めるのが特徴だ。番組では「タイパがいいホラー」として紹介し、背筋の『口に関するアンケート』(ポプラ社)などを含め、隙間時間に読めるタイパに優れたホラー作品が現在のトレンドになっていると分析した。
番組の最後には、ホラーとテクノロジーの進化の関係について評論が展開された。MCは最近の怪異や幽霊は「デジタルに強すぎる」「デジタルネイティブだ」と述べた。かつて『リング』の貞子がビデオテープやテレビから這い出てきたように、当時のテクノロジーに適応して恐怖を伝播させていた。若者が手紙を書かなくなり、本を読む機会が減った現代において、幽霊もまたテクノロジーを研究し、伝播の経路をスマートフォンやSNSへと移行させている。今後は、AIをテーマにしたホラー作品が登場するかもしれない。はたして、次にどの戦場に怪異は現れるのだろうか。
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