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2026-10-23 17:44
「月に一度、わたしの夫は恋人に会いに行く」。不穏さを感じさせるこの書き出しから物語が始まるのが、横浜流星と広瀬すずのW主演で映画化された凪良ゆうの恋愛小説『汝、星のごとく』(講談社)だ。オリコンBiZトークでは、本作を特集し、本屋大賞を受賞した作品の魅力や、オリコンが持つランキングデータから見える反響の大きさ、そして著者の経歴を紹介した。さらに、続編となるスピンオフ作品も含め、読む者の心を揺さぶる大恋愛の全貌を紐解いた。
【動画】『汝、星のごとく』を原作と続編から語る
『汝、星のごとく』は、2023年に第20回本屋大賞を受賞した凪良の恋愛小説である。映画で主人公の青野櫂を演じる横浜は、原作を読んで「この物語を生きたい」と切望し、原作者の凪良に直接熱い思いを伝えて映画化が実現したという。メガホンを取るのは、横浜と7度目のタッグとなる藤井道人監督だ。両者は、24年公開の映画『正体』で日本アカデミー賞の優秀主演男優賞と優秀監督賞を受賞しており、強力な布陣となっている。脚本には連続テレビ小説などで知られる安達奈緒子が名を連ねる。もう1人の主人公である井上暁海を演じる広瀬も、過去に凪良原作の映画で全身全霊の芝居を見せており、今回のキャスティングはまさに適役と言えるだろう。
物語の舞台は風光明媚な瀬戸内の島である。島で育った暁海と、母親の恋愛に振り回されて転校してきた櫂という、家庭に恵まれず孤独を抱える2人が互いに唯一の心の支えとなり、恋に落ちる。やがて漫画原作者の夢を掴むために上京する櫂と、家族のために島で働く暁海の間には、無情にもすれ違いが生じていく。15年にわたる時間の末に2人が下した決断を描く、王道かつ直球のラブストーリーだ。
一見するとよくある設定に思えるかもしれないが、読めば読むほど登場人物の行動から目が離せなくなり、中盤の暁海が覚醒する場面以降はページをめくる手が止まらなくなる引力がある。また、プロローグとエピローグの仕掛けも秀逸だ。「月に一度、わたしの夫は恋人に会いに行く」という不穏な始まり方をするプロローグの文章が、エピローグで全く同じように登場するのだが、読み手にまったく異なる意味をもたらす。まさに読書の醍醐味を味わえる構成だ。
物語本編は、瀬戸内から櫂が上京して1日に何十万円も使うようになる一方で、島に残った暁海が毎月数万円を節約する生活を続けるなど、物理的な距離だけでなく価値観のズレが顕著になっていく。すれ違う2人の姿にもどかしさを覚えながらも、最後には涙を抱えずにはいられない、非常に感情を揺さぶられる作品となっている。 また、作中で描かれる登場人物の人間模様は、現代の結婚観や恋愛観を非常にリアルに映し出している。
著者の凪良は滋賀県生まれで京都市在住だ。06年に雑誌に作品が掲載され、07年に本格的に作家デビューを果たした。35歳でのデビューであり、それまでは専業主婦をしていた時期もある。かつて好きだった作品に関する記事を読んだことがきっかけで創作に打ち込むようになったという。当初はBL作品を数多く発表し、アジアを中心に大ヒットを記録して映画化もされた。17年のデビュー10周年の節目に作品を刊行し、これを機に一般文芸にも活躍の場を広げた。
その後、凪良の快進撃は続く。20年に『流浪の月』(東京創元社)で本屋大賞を受賞し、21年には別の作品で2年連続ノミネートを果たした。そして23年、『汝、星のごとく』で2度目の本屋大賞に輝いた。本屋大賞を2度受賞したのは恩田陸と凪良の2人だけという快挙である。本作は凪良にとって初めて男女の恋愛を描いた長編作品であり、裏話として、編集者が10代の頃の恋人と未だに連絡を取っているというエピソードを聞いたことが執筆のきっかけになったそうだ。
本作に対する読者の熱気は、オリコンのデータからもはっきりと読み取れる。22年8月に単行本が発売され、同年8月15日付の初登場ランキングでは19位だった。しかし、翌23年4月12日に本屋大賞を受賞すると、直後の4月24日付週間文庫本ランキングで一気に2位へ急浮上した。さらに25年7月に映画化が発表されて文庫本も発売されると、7月28日付ランキングで初登場2位を記録。映画公開後の10月26日付週間では1位に浮上し、発売から1年3ヵ月を経て本作初の首位を獲得している。累積売上53.9万部となり、50万部を突破した。
本作の魅力をさらに深めるのが、スピンオフ作品となる『星を編む』(講談社)の存在だ。同書には中編が3本収録されており、本編の主人公たちを導いた恩師の過去を描く物語や、櫂の才能を見出して伴走した編集者たちの情熱に焦点を当てた物語、そして暁海の人生をかけた恋愛の結末を描く完結編が収められている。本編を読んでからスピンオフを読むことで、登場人物一人ひとりの背景や人間関係の構成がより立体的に浮かび上がり、物語全体がすっきりと落ち着く構造になっている。
『汝、星のごとく』は、登場人物たちが人生をかけた大恋愛の物語である。ピュアな恋愛小説を読みたい人はもちろん、忘れられない人がいる人や一歩踏み出せない人にも深く刺さる内容だ。それだけでなく、周囲の人を大切にする気持ちや、人間関係の向き合い方を考え直させられる普遍的な力を持っている。スピンオフの『星を編む』も含めて、多くの人に手に取ってほしい珠玉の1冊である。
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『汝、星のごとく』は、2023年に第20回本屋大賞を受賞した凪良の恋愛小説である。映画で主人公の青野櫂を演じる横浜は、原作を読んで「この物語を生きたい」と切望し、原作者の凪良に直接熱い思いを伝えて映画化が実現したという。メガホンを取るのは、横浜と7度目のタッグとなる藤井道人監督だ。両者は、24年公開の映画『正体』で日本アカデミー賞の優秀主演男優賞と優秀監督賞を受賞しており、強力な布陣となっている。脚本には連続テレビ小説などで知られる安達奈緒子が名を連ねる。もう1人の主人公である井上暁海を演じる広瀬も、過去に凪良原作の映画で全身全霊の芝居を見せており、今回のキャスティングはまさに適役と言えるだろう。
物語の舞台は風光明媚な瀬戸内の島である。島で育った暁海と、母親の恋愛に振り回されて転校してきた櫂という、家庭に恵まれず孤独を抱える2人が互いに唯一の心の支えとなり、恋に落ちる。やがて漫画原作者の夢を掴むために上京する櫂と、家族のために島で働く暁海の間には、無情にもすれ違いが生じていく。15年にわたる時間の末に2人が下した決断を描く、王道かつ直球のラブストーリーだ。
一見するとよくある設定に思えるかもしれないが、読めば読むほど登場人物の行動から目が離せなくなり、中盤の暁海が覚醒する場面以降はページをめくる手が止まらなくなる引力がある。また、プロローグとエピローグの仕掛けも秀逸だ。「月に一度、わたしの夫は恋人に会いに行く」という不穏な始まり方をするプロローグの文章が、エピローグで全く同じように登場するのだが、読み手にまったく異なる意味をもたらす。まさに読書の醍醐味を味わえる構成だ。
物語本編は、瀬戸内から櫂が上京して1日に何十万円も使うようになる一方で、島に残った暁海が毎月数万円を節約する生活を続けるなど、物理的な距離だけでなく価値観のズレが顕著になっていく。すれ違う2人の姿にもどかしさを覚えながらも、最後には涙を抱えずにはいられない、非常に感情を揺さぶられる作品となっている。 また、作中で描かれる登場人物の人間模様は、現代の結婚観や恋愛観を非常にリアルに映し出している。
著者の凪良は滋賀県生まれで京都市在住だ。06年に雑誌に作品が掲載され、07年に本格的に作家デビューを果たした。35歳でのデビューであり、それまでは専業主婦をしていた時期もある。かつて好きだった作品に関する記事を読んだことがきっかけで創作に打ち込むようになったという。当初はBL作品を数多く発表し、アジアを中心に大ヒットを記録して映画化もされた。17年のデビュー10周年の節目に作品を刊行し、これを機に一般文芸にも活躍の場を広げた。
その後、凪良の快進撃は続く。20年に『流浪の月』(東京創元社)で本屋大賞を受賞し、21年には別の作品で2年連続ノミネートを果たした。そして23年、『汝、星のごとく』で2度目の本屋大賞に輝いた。本屋大賞を2度受賞したのは恩田陸と凪良の2人だけという快挙である。本作は凪良にとって初めて男女の恋愛を描いた長編作品であり、裏話として、編集者が10代の頃の恋人と未だに連絡を取っているというエピソードを聞いたことが執筆のきっかけになったそうだ。
本作に対する読者の熱気は、オリコンのデータからもはっきりと読み取れる。22年8月に単行本が発売され、同年8月15日付の初登場ランキングでは19位だった。しかし、翌23年4月12日に本屋大賞を受賞すると、直後の4月24日付週間文庫本ランキングで一気に2位へ急浮上した。さらに25年7月に映画化が発表されて文庫本も発売されると、7月28日付ランキングで初登場2位を記録。映画公開後の10月26日付週間では1位に浮上し、発売から1年3ヵ月を経て本作初の首位を獲得している。累積売上53.9万部となり、50万部を突破した。
本作の魅力をさらに深めるのが、スピンオフ作品となる『星を編む』(講談社)の存在だ。同書には中編が3本収録されており、本編の主人公たちを導いた恩師の過去を描く物語や、櫂の才能を見出して伴走した編集者たちの情熱に焦点を当てた物語、そして暁海の人生をかけた恋愛の結末を描く完結編が収められている。本編を読んでからスピンオフを読むことで、登場人物一人ひとりの背景や人間関係の構成がより立体的に浮かび上がり、物語全体がすっきりと落ち着く構造になっている。
『汝、星のごとく』は、登場人物たちが人生をかけた大恋愛の物語である。ピュアな恋愛小説を読みたい人はもちろん、忘れられない人がいる人や一歩踏み出せない人にも深く刺さる内容だ。それだけでなく、周囲の人を大切にする気持ちや、人間関係の向き合い方を考え直させられる普遍的な力を持っている。スピンオフの『星を編む』も含めて、多くの人に手に取ってほしい珠玉の1冊である。
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