
2026年下期の今、話題沸騰で大人気のテレビドラマといったら?
【写真を見る】『VIVANT』の大きな渦に巻き込まれるファン~TBSの専門家が分析「データからみえる今日の世相」~【調査情報デジタル】
手前味噌で大変恐縮ですが、それはTBSテレビ系列で毎週日曜よる9時から放送中の日曜劇場『VIVANT』だ、といっても差し支えないでしょう。
堺雅人さん演じる主人公の商社マン・乃木憂助が、自身の裏の顔である自衛隊の非公認部隊「別班」としての任務を通して、“世界を巻き込む大きな渦”に飲み込まれていく――。
誰が味方で、誰が敵か。絆と裏切りの人間関係が入り組む一方、迫力のアクションシーン満載でスカッとシンプルに楽しめるところもあり。毎回想像の斜め上を行く展開に目が離せず、日曜9時が待ち遠しいのは、ご多分に漏れず筆者も同じ。
番組公式サイトに「2023年夏、日本中を熱狂させた/『VIVANT』が日曜劇場に帰ってくる!」とあるように、このドラマは23年7月~9月に第1シーズンが放送され、26年7月に第2シーズンがスタート。
23年9月17日(日)放送の第1シーズン最終回(21:00~、79分)は、番組平均総合視聴率が世帯29.8%、個人全体4歳以上20.0%を記録(ビデオリサーチ調べ・関東地区、注1)。23年夏ドラマでトップに輝いたことから、その盛り上がり振りがうかがえます。
そして第1シーズンから3年。満を持した第2シーズンで、『VIVANT』に向き合う人がさらに増えている、というデータがあります。
全方位でファンを増やす『VIVANT』
それが、本コラムでよく取り上げるTBS生活DATAライブラリ定例全国調査の首都圏追加パネル調査。
毎年11月に、TBSテレビをキー局とするテレビの全国ネットワークJNN系列が、各局の放送エリアを対象に全国でアンケートを実施(注2)。首都圏を担当するTBSテレビは、この11月調査の回答者に、翌年2月、5月、8月にも追加の調査を独自に実施。そのため、『VIVANT』第1シーズン放送時の23年8月と第2シーズン放送中の今年(26年)8月のデータが存在しています(注3)。
調査では、その時点で放送中のテレビ番組を多数並べ、「最近1ヵ月に一度でも見た」もの、「見た見ないに関係なく好き」なものを、それぞれいくつでも選んでもらう質問を実施。「見た(視聴)」と「好き(好意)」は個別に回答するので、視聴のみ、好意のみの人も、両方だという人もあり。
その回答分布を『VIVANT』第1シーズンと第2シーズンで比べてみたのが、次の帯グラフ(1)です。
視聴と好意のどちらか一方、あるいは両方を選んだ人を、グラフでは赤枠で囲って表示。これを『VIVANT』ファンとすると、その大半は「視聴&好意」の人でした。
第1シーズンでは全体の3割だった『VIVANT』ファンは、第2シーズンでは4割弱まで増加。それも「視聴&好意」が8pt増えたおかげ。
『VIVANT』は「見て好きになった」「好きだから見ている」という視聴者に支えられていることがわかります。
上の帯グラフ(2)では『VIVANT』ファンの性年代構成を表示。パッと見て、若年層より年配層の割合が高いですが、高齢社会である日本の状況が反映されている面もありそう。
それ以上に注目したいのは、第1シーズンから第2シーズンにかけて、どの層も1~2pt程度、同じように増えているところ。
ゲームやSNSなど、人々が時間を費やす対象が数多くある今の世の中で、あらゆる層からファンを集め、3年越しにその幅を広げているテレビ番組『VIVANT』。その驚異的な存在感の一端がここにもうかがわれます。
生活にテレビが根付いた『VIVANT』ファン
今、テレビ番組として大きな存在感を示す『VIVANT』。そのファンなら、テレビそのものに対する向き合い方にも特徴があるかも?
TBS生活DATAライブラリには、テレビの見方や考え方、態度などについて多くの選択肢を用意して、あてはまるものをいくつでも選んでもらう質問も多数含まれています。
その回答結果を、『VIVANT』第2シーズンのファンとそれ以外の人で比べてみたのが次の棒グラフ(『VIVANT』ファンとテレビへの態度)です。
グラフに並ぶ8つの項目のうち、上半分の4項目には『VIVANT』ファンでの選択率が高いトップ4を並べました。
これを見ると、一番上に「家族がそろって過ごすときはテレビをつけている」、上から4番目に「家族でテレビをきっかけに会話をする」と、家族に関係する項目がランクイン。
家族が集まるとテレビがついて、テレビが家族をつなぐハブであるようなイメージは、還暦目前の筆者が幼かった頃の原風景。今でも生活にテレビが根付いている家庭の人に、『VIVANT』はとてもウケている様子。
今どきはテレビ放送を見逃しても、TVerを始めとするネット配信でいつでもキャッチアップできる時代。それでも『VIVANT』ファンは「見たいテレビ番組は必ず録画するほう」で、単に見るだけでなく、手元に置きたい気持ちが強い感じ。それだけ番組との距離感が近いのかも知れません。
また「テレビを見ながらネットをすることがよくある」人も多いですが、スマートフォンが普及した今、「ネットをするときにテレビも見ている」というほうが実感に近いかも。それでも、テレビを消さずにいてくれるなら、テレビ局にとっては御の字。
一方、上の棒グラフ(『VIVANT』ファンとテレビへの態度)の下半分4項目は、「テレビ親近感尺度」という心理尺度の項目。欧米のテレビ視聴研究で用いられ、筆者と共同研究者で日本語版を作りました(江利川ほか、2007;江利川・山田、2012)。
テレビ親近感を学術的に定義すると「人々がテレビまたはテレビ番組に割り当てる重要性を反映したメディアへの態度」(江利川ほか、2007)となりますが、項目を見ればどういうことかは一目瞭然。
先ほど『VIVANT』ファンは生活にテレビが根付いている感じと書きましたが、ファンの4割が「テレビを見るのは大切な生活の一部になっている」と回答。同じくファンの4割弱が選択した「テレビを見るのが大好きだ」は、ファン以外の人との差がなんと15pt。
「テレビなしでは楽しく暮らしていけないような気がする」や「もしもテレビが壊れたら代わりにすることがなくて困ると思う」という項目は、全般に選択率が低いものの、比べればファンのほうが高めという結果。
総じて『VIVANT』がテレビ好きに刺さっていることが見て取れます。
退潮するテレビ親近感、しかし……
テレビ親近感に関するデータは、TBS生活DATAライブラリで2001年以降、四半世紀に及んで蓄積されています。項目ごとの選択率の推移をまとめてみると、次の折れ線グラフ(テレビ親近感の推移)のようになります(注4)。
これを見ると、2015年頃までは「大切な生活の一部」が4割強、「大好き」が4割弱、「テレビなしでは楽しく暮らせない」が2割強、「壊れると代わりがない」が2割弱というところで安定。
しかし、それ以降は各項目で減少傾向が見られ、現在は「大切な生活の一部」と「大好き」がいずれも3割弱、「楽しく暮らせない」と「代わりがない」が1割強といったところ。
2010年代後半以降、何があったのか。例えば、スマートフォンや動画視聴の普及などは関係がありそうです。
モバイル社会研究所によると、携帯電話所有者におけるスマートフォンの比率は2015年に「5割を突破し、2017年に7割、2019年に8割、2021年には9割を超え、2025年に98%」に到達(モバイル社会研究所、2025)。
さらに、NHK放送文化研究所がコロナ禍の2020年に行った調査では、「若年層だけでなく40代でも、コロナ禍で動画利用時間が増加した人(略)が、テレビの視聴時間が増加した人(略)を上回った」とのこと(保髙・阿曽田、2021)。
スマートフォンが広く社会に普及し、いつでもどこでもネットにつながって、ゲームもSNSも動画視聴も思いのまま。コロナ禍での自宅待機は、テレビを見る以上に動画を見るきっかけになったのかも。
昔、もっとテレビとの距離が近く、親しみを抱く人が多かった頃だったら、『VIVANT』はとてつもない視聴率を記録したかもしれません。
しかし、TVerで配信した第2シーズン初回は、配信開始後8日間再生数が887万を突破し、TVer配信の全番組における単一エピソード再生数で歴代最高記録を更新(株式会社TVer、2026)。今、『VIVANT』は配信でもよく見られています。
放送でも配信でも、見られるものは見られるし、面白いものは面白い。『VIVANT』の圧倒的な存在感は、そんなシンプルな事実を示しているだと思います。
注1:総合視聴率は、ある放送について、リアルタイムまたはタイムシフトでの視聴の合計が、全体に占める割合を示す指標です。ちなみに『VIVANT』第1シーズン最終回について、リアルタイムの番組平均視聴率は、世帯19.6%、個人全体4才以上12.9%でした(ビデオリサーチ調べ・関東地区)。
注2:TBS生活DATAライブラリ定例全国調査は、TBSテレビをキー局とするテレビの全国ネットワークJNN系列が、1970年代から毎年実施する大規模ライフスタイル調査です。同じ回答者にメディア行動や価値観、個人材・世帯財の購入などを総合的に調査するシングルソースデータです。なお、調査を行うテレビ局の好き嫌いなどが回答に影響するのを防ぐため、調査は実務を依頼する調査会社の名義で行っています。
注3:TBS生活DATAライブラリ定例全国調査・TBSテレビ担当分の調査対象者(=首都圏追加パネル調査の対象者)は、東京駅起点30km圏(東京・千葉・埼玉・神奈川)在住の13歳以上の男女で、年齢の上限は1993年まで59歳、2014年まで69歳、15年以降74歳と順次拡大しています。回答者数は、昨年(2025年)11月調査が1,744人、今年8月の追加調査が835人でした。5月追加調査の回答者数は11月調査の48%ですが、両者の間に性年代分布の差はなく(χ2=9.34, df=13, ns)、22年11月調査(1,742人)と翌23年8月追加調査(865人)も同様でした(χ2=9.54, df=13, ns)。11月調査の標本構成は人口分布に従うよう設計されていますが、追加調査の集計結果も同等の代表性があると考えられます。
注4:この集計では、追加パネル調査対象の年齢上限が69歳だった2014年以前と、74歳に拡大した2015年以降の時系列変化を全体として眺めるため、集計対象を13~69歳に揃えています。
引用・参考文献(掲載順)
● TBSテレビ(2026)「はじめに|日曜劇場『VIVANT』公式サイト」
● VR Digest編集部(2023)「ビデオリサーチ調べ!2023年夏ドラマまとめ ~総合視聴率ランキング~」『VR Digest plus』2023年10月11日
● 江利川滋・山田一成・川端美樹・沼崎誠(2007)テレビ親近感とテレビ視聴行動の関連性について 社会心理学研究, 22, 267-273
● 江利川滋・山田一成(2012)改訂版テレビ親近感尺度の信頼性と妥当性 心理学研究, 82(6), 547-553
● NTTドコモ モバイル社会研究所(2025)「スマートフォン比率 2010年4%から2025年98%に:買い替えたきっかけは『電池の劣化』2010年約3割から2025年は約5割へ」『モバイル社会研究所』2025年4月21日
● 保髙隆之・阿曽田悦子(2021)「コロナ禍はテレビと動画の利用者にどんな影響を与えたか:~『コロナ時代のテレビの価値』調査の結果から~」『NHK放送文化研究所』2021年10月1日
● 株式会社TVer(2026)「堺雅人主演『VIVANT(2026)』全番組における単一エピソード再生数が歴代最高記録を更新 第1話が887万再生突破!」『株式会社TVer コーポレートサイト ニュース』2026年8月3日
〈執筆者略歴〉
江利川 滋(えりかわ・しげる)
1968年生。1996年TBS入社。
視聴率データ分析や生活者調査に長く従事。テレビ営業も経験しつつ、現在は法務・コンプライアンス方面を主務に、マーケティング&データ戦略局も兼務。
【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。
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