年末年始をまたぎ、熱戦が繰り広げられている第33回高校女子サッカー選手権。昨年、一昨年と2年連続で準優勝の十文字(東京)もリベンジを誓った大会だったが、決勝を前に姿を消した。1年生の時からスタメン出場、今大会こそはと並々ならぬ思いで挑んだキャプテンの新井萌禾選手(3年)は、東京での生活を支えてくれた祖母に感謝を伝えた。
限界を感じていた新井選手を救った祖母との2人暮らし
「選手権で2年間悔しい思いをして、あと一歩で優勝に届かなくて。2年間の壁を越えられるように頑張りたい」
今年こそはと意気込んでいた新井選手のトレードマークは白いヘアバンド。裏面には仲間達からのメッセージが書き込まれている。
「プレーでも目立ちたいし、パッと見た時にも目立ちたい。ロナウジーニョ(元ブラジル代表)がつけていて、太いのをつけたら目立つかなと思ってつけはじめた」そうだが、サッカーを始めたのは小学校3年生から。高校サッカーをやりたくて、地元・神奈川から東京の強豪、十文字へ進学したが、1年生の終わり頃、片道2時間をかけて通学する生活に限界を感じ始めていたという。
「メンタルもやられ、しんどくなっていた」という新井選手。このままではサッカーを続けられないと追い込まれた彼女を救ってくれたのは、祖母の好子さんだった。新井選手の負担を少しでも減らしたいと孫と2人暮らしをするため、都内へ引っ越したのだ。
「主人を亡くして独りだった。孫も落ち込んでいたので頑張って2人暮らしをやってみようと思った。こんなおばあちゃんでもサポートできるかな」。好子さんは「お店を出した方がいい」と新井選手が絶賛するほどの手料理で孫を出迎えてきた。
朝はお弁当作りもする。「孫は元気な子なので、元気よく帰ってくると自分も元気をもらえる。もう今はそれが生きがいかもしれない。こうやって頑張っている子がいると思うと頼もしい」と、好子さんは嫌な顔を見せない。新井選手も「自分は朝早かったり夜遅くて、おばあちゃんにやってもらうことの方が多い。一番近くで一番支えてくれた。感謝しかない。一番恩返ししたい存在」と語る。
普段は照れくさくて言えなかったというが大会前には、「今までありがとうございました。たくさん迷惑かけた分、選手権で恩返しします」と伝えた新井選手。2人で涙を流し、選手権を迎えた。
祖母と孫、固い絆を育んだ高校サッカー
1回戦を勝ち上がった十文字は2回戦で今年度のインターハイ準優勝校、大商学園(大阪)と激突。「全員で絶対勝ちましょう!いくぞ!」と円陣で叫ぶ新井選手の姿を好子さんもスタンドから見守った。
キャプテンとしてチームを勝たせるため、新井選手は人一倍ピッチを駆け巡り、攻撃を牽引。しかし、コーナーキックから失点、先制点を許した。祖母の前で勝利をあげたい新井選手だったが、1点が遠く敗戦。新井選手は大粒の涙をこぼしながらスタジアムを後にした。
試合後、好子さんに「ごめんなさい」と泣きながら抱き着く新井選手。好子さんは「大丈夫、大丈夫」と新井選手を労った。
「これからまだまだ楽しい未来が待っていると思うので、飛び立っていってほしい」と話した好子さんに、新井選手は「一番恩返ししたいのはおばあちゃんだったので、結果はついてこなかったが自分なりにやりきれたかなというのはある。次のステージに向かってまた頑張りたい」と声を震わせながら話し、それに好子さんもうなずいた。
言葉では伝えきれない感謝の気持ちを込めて走った、新井選手の最後の冬だった。
【決勝の日程】
1月12日(日)神村学園(鹿児島)ー藤枝順心(静岡)
@兵庫・ノエビアスタジアム神戸
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