TBSのアーカイブにはずいぶん珍しい白黒フィルムが残っています。これは「敬老の日」の前身「としよりの日」が制定されたときに撮られた映像なんですが、なるほどこれが60歳…。(アーカイブマネジメント部 疋田 智)
【写真を見る】「としよりの日」制定された昭和26年の60歳の姿
最初の「としよりの日」
古いフィルムの中に残っていた1951(昭和26)年の60歳たちです。
一目見て驚きますよね。この時代は60歳でもう完全に「お年寄り」です。男も女もザ・ご老人。今とまるで違います。
写真のお年寄りが着ているのは、もちろん還暦祝いの「赤い頭巾と赤いちゃんちゃんこ」ですから、ぴたり60歳。はっきり記録されてないのですが、昭和26年のことですから、もしかして「かぞえで六十」かもしれません。その場合、この方々は、まだ58歳か59歳です。
彼らが生まれたのは1889(明治22)年〜1891(明治24)年というところ。大日本帝国憲法が公布され、ようやく日本が国際社会にデビューしようかというところです。
以前は年をとるのが早かった?
食べもの、環境(寒暖差とか)、労働のあり方などいろいろな要因があると思うのですが、現在の60歳と写真の60歳を比較すると、日本人が選んできたライフスタイルはおおむね正しかったと言えるのかもしれません。
……と殊更にいうのは、よく「昔の方が生活も食べものも健康的だった、朝早く起きて、添加物のない無農薬の食べものを食べていた」みたいな話を聞くじゃないですか。
しかし、これを見るかぎり、どっちがいいかというと、そういうのを飛び越えて、多くの人は「今がいい!」と答えることでしょう。我々は少しずつ健康で長生きなライフスタイルを手にしてしてきたのです。
歯科の進歩と、娯楽の多様化
1951年のお年寄りを見ていると、なるほど「歯が残っている」というのは重要なことだと思います。歯科医師たちがよく言うように「噛むことは生きること」なのでしょう。
また、お年寄りは隠居するもの、という意識も大きかったかもしれません。まだテレビも普及しておらず、娯楽も少なかった頃、仕事を辞めると急速に老け込んだ、というようなこともよく起きていました。
だからというべきか、このフィルムの中では「ボケ防止のためにパチンコを」とパチンコの刺激が推奨されていたりします。
平均寿命はあがったが
厚生労働省によると、1951年の平均寿命は男性60.8歳、女性64.9歳でした。これが最新のデータ(2022年)だと、男性が81.05歳、女性が87.09歳にまでのびました。
その分、我々は若い時代が長くなったのですが、ちょっと気になるのが、一人暮らしの高齢者が激増していることです。
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が2024年11月に公表したデータによると、全世帯の中で、一人暮らしをする65歳以上の高齢世帯の割合は、現在13.2%、今後も増え続け、2050年に20%を超える見通しだそうです。
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