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「適切な経路で避難できれば確実に人命の被害が抑えられる」ゲームのシステムを使った“バーチャル津波避難訓練”で命を守れ

国内
2025-03-11 19:26

土地勘のない人が、どうやって安全な場所にたどり着くか。一刻を争う津波からの避難では「最適ルート」を選べるかどうかが明暗を分けます。中央大学の有川教授らはゲームのシステムを使った「バーチャル津波避難訓練」を開発中。南海トラフ巨大地震で津波の被害が想定される三重県紀宝町の人たちに、この訓練を体験してもらいました。


【写真を見る】バーチャルで再現された三重・紀宝町


津波を体感“バーチャル避難” 最新技術で最適ルートを把握

専用のゴーグルの中に広がる、ある港町の中をどんどん歩いていきます。すると、向こうから津波が。これは、次世代の津波避難訓練システム。開発しているのは、中央大学の有川太郎教授です。


この装置、もともとはゲーム用。専用のゴーグルを付け、すり鉢状のベース部分でセンサー付きの靴を履いて歩くと、映像が連動してバーチャル空間に没入できます。有川教授はゲーム映像の代わりに三重県紀宝町を再現した映像の中を歩きまわり、津波から逃げる訓練をできるようにしたのです。

紀宝町には、南海トラフ巨大地震が発生すると5分で津波が到達。最大の高さは11メートルに上るとされています。


中央大学 有川太郎 教授
「“適切な経路”で避難をすれば確実に人命の被害は抑えられるので、訓練をいかに効率的にやるかが大事」


今回、紀宝町の人たちがバーチャル避難訓練を体験することに。うまくいくのでしょうか?

ゴーグルを身に着けるのは有城やす子さん(77)。


視界に広がる紀宝町の街を歩いていくと、バーチャル映像に矢印が表示されます。これが最適な避難ルートを示しています。


有城やす子さん
「ここへ入るんですね」
中央大学 有川太郎 教授
「そうです、そこ入れます」


矢印に沿っていくと、町が指定する避難場所・役場に無事たどり着きました。


有城やす子さん
「こちらに行ったら海があるとか、崖があるとか、良く分かったので、いざとなった時に『あっちはダメだ』と良く分かる」


今回、役場周辺に土地勘のない14人にバーチャル訓練で最適ルートを覚えてもらいました。


“バーチャル避難”住民が体験 最適ルートは?避難の難しさ

そして、翌日。道を覚えた14人は、無事、役場に避難できるのか?海のそばから実際に逃げてみてもらいます。スタート地点から目に入る高台は、正面の山。避難するべき役場は、周りの建物が邪魔をして見えません。

有城さんがスタート。前方に山が見えてきましたが、そこには向かわず、迷うことなく左折して役場の方向に。前日にバーチャルで訓練したとおりです。

しかし、途中で道が分からなくなり、近所の人に道を尋ねることに。


有城やす子さん
「役場はこの細い道の方?」
近所の人
「こっち、こっち」


再び歩きはじめ、二股の道に差し掛かると、前日にバーチャル訓練で覚えたはずの「最適ルート」、右をとるべきなのに、左に行ってしまいます。

地元の人が近い右のルートではなく、分かりやすい左のルートを教えたため、有城さんは左を選択してしまったのです。役場には着いたものの、遠回りしてしまいました。


一方、別の男性は役場ではなく、スタート地点から見える高台・山へ。しかし、実はこの山に、続く道はありません。


役場ではなく山に向かった男性
「高台しか頭になくて」


結局14人のうち、「最適ルート」で役場に避難できたのは3人だけ。土地勘のない人が津波から逃げる難しさが浮き彫りになりました。


中央大学 有川太郎 教授
「体験した人の多くが『リアリティが少ない』と言っていたので、そこのリアリティの向上が一番の課題です」


最新技術でどう命を守るのか、試行錯誤が続いています。


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