発生から6日目を迎えた岡山の森林火災は、ようやく「鎮圧」したと発表されました。
ただ、消えたと思っても油断は禁物。鎮圧後も警戒が必要なワケとは。
【写真で見る】焦げた木が倒れているなか一つ一つ熱源を確認する大船渡の消防団
岡山市が“鎮圧宣言”も「鎮火」ではない
小林由未子キャスター:
3月23日から続いた岡山市と愛媛・今治市の山林火災は、27日から降り続いた雨によって、岡山市は28日正午ごろに鎮圧が宣言されました。
【岡山市の山林火災】
・3月23日午後、南区の山林で発生
・焼失面積:約565ha(28日午前11時時点)
・前日からの雨量:28.5ミリ
【今治市の山林火災】
・3月23日夕方、市内の山林で発生
・焼失面積:約442ha(28日午前8時時点)
・前日からの雨量:28.5ミリ
一方、今治市は延焼中で、31日までの鎮圧を目指すということです。
元東京消防庁 特別救助隊 田中章さん:
雨が少し降ったので、鎮圧に向けて少しスピードアップしたのかなと思います。
まだ“残り火”があるので、空中消火も含めて、消火活動を進めていっていただければと思います。
日比麻音子キャスター:
“鎮圧”というのは、どういった状況を確認して、鎮圧とされるのでしょうか。
元東京消防庁 特別救助隊 田中章さん:
消防の用語規定の中に「鎮圧」と「鎮火」という二つのカテゴリーがあります。
「鎮圧」とは、有炎現象が終息した状態のことをいい、目に見える炎がなくなった状態を言います。
日比キャスター:
岡山市では、鎮圧宣言がされましたが、「鎮火」ではないということですよね。
小林キャスター:
鎮圧した後も警戒が必要というわけです。
岩手・大船渡市の山林火災は、平成以降最大の山林火災と言われています。
2月26日に火災が発生し、焼失面積は約2900ヘクタール。建物の被害は210棟、うち住宅全壊は76棟に及んでいます。
発生から8日でやっと雨が降り、3月9日(発生から12日)に鎮圧宣言がなされました。
ただ約3週間経っても、まだ「鎮火」には至っていません。
▼「鎮圧」
火災の勢いが弱くなり、これ以上、延焼拡大がない状態
▼「鎮火」
火災・熱源が消し止められ、消火活動が必要なくなった状態です。
鎮圧宣言がされても、鎮火に向けてまだ活動しなければならず、危険な状況は続いているということです。
岩手県大船渡市の火災で、消防団の鎮火活動に密着しました。
「18Lの水を背負い」一つ一つ掘り起こしながら地中の火種も消火
23日、周辺には複数の焦げた木があちこちに倒れているなか、消防団員たちは急な山の斜面を登っていました。
団員たちは、その間を歩きながら火が残っていないか、丁寧に確認します。
目視では、火が消えているように見えるところも、サーモグラフィーで見てみると、樹木の内側や根っこには熱源が残っていることもあります。
そんなときは、ジェットシューターという消火器材を使って水をかけていきます。
木の内部が高温だった場合は、チェーンソーで伐採し、消火しなければならないこともあるそうです。
鎮圧した後も団員たちは、サーモグラフィーで樹木や地表などの温度を計測し、高温のところがないかをチェックします。
あった場合、地面を掘り起こし、地面の中の火種も消していきます。
また内部の温度が高い樹木は、チェーンソーで伐採して消火する、大がかりな作業になってきます。
23日にも、2件の熱源が発見されましたが、消火に至っています。
日比キャスター:
一つ一つ、足を運んで確認しなければならないんですね。
元東京消防庁 特別救助隊 田中章さん:
背負い式消火水のうというものを背中につけ、18Lの水を背負っています。
スコップなどで掘り起こしながら、背中の背負い式消火水のうの水を少しずつ出して、完全に消火をするという活動をしています。
アメリカで消防隊を経験 ハロルド・ジョージ・メイさん:
私はアメリカの消防隊で経験があります。熱源はサーモグラフィーなどを使えば確認できますが、やはりそこだけではなく、地中深くに入っているのが一番怖いです。
元東京消防庁 特別救助隊 田中章さん:
空中消火によって、おおむね消火はできたとしても、山林火災の場合は、火災の範囲が非常に広いんです。
あとは人が山に入って、一つ一つ掘り起こしながら、鎮火に向けて活動するしかありません。
消えたはずなのに…地中から再燃の危険
小林キャスター:
鎮圧から鎮火にかけての活動の中で、目に見えないところの火に注意が必要です。「地中火」というものが大きく関係しています。
元東京消防庁の田中章さんによると、火災があって消火活動が行われると、目に見えている地表の火は消し止められます。
しかし、その下の腐った葉っぱなどでできた「腐葉土」は、葉が重なっているので、隙間が生まれています。
その隙間に火の粉などが入ることによって、中に火がくすぶっていたり、また表に出てきたり、木の根っこを燃やしてしまうこともあり、「ゾンビ火災」とも言われています。
元東京消防庁 特別救助隊 田中章さん:
隊員が一つ一つ、サーモグラフィーで確認しながら、少しでも煙が上がっているところを掘り起こして、腐葉土の中にある残り火を少しずつ消していく。そんな地道な活動しかありません。
小林キャスター:
山火事の原因の1位は「たき火」となっています。
【山火事の原因】
1位 たき火 32.6%
2位 火入れ 19%
3位 放火 7.6%
4位 たばこ 4.5%
5位 マッチ・ライター 2.6%
※林野庁より
元東京消防庁の田中章さんによると、たき火やバーベキューで使用した炭なども、目に見えているところは消したつもりが、「地中火」を引き起こしている可能性があるそうです。
南波雅俊キャスター:
山火事・山林火災などのニュースがありますが、増えているのでしょうか。
元東京消防庁 特別救助隊 田中章さん:
山林火災で言うと、例年は1月から5月くらいまでが一番多いです。今年は大きな火災が多かったので、「山林火災が非常に多い」という印象はあると思います。
(大きくなる要因は)家の周りでごみを焼却して、それが風によって飛ばされて山に移ることもあります。
ただ、いまは空き家と空き地の管理が非常によろしくありません。空地が草だらけになっていたり、空き家があって燃えやすいものがあったりして、それで山林に移る可能性が非常に高くなっています。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
ほとんどの場合、人間がやってしまっている場合が多いので、私はキャンプをよくやりますが、バーベキューやたき火でも、決して地面ではやらないですね。
台の上に乗せて、たき火をするとリスクが非常に少なくなると思うので、気をつけていかないといけないですね。
日比キャスター:
私たちが気をつけるべきことは何でしょうか。
元東京消防庁 特別救助隊 田中章さん:
やはり風の強い時期、あと乾燥する時期には、火を使わないということです。
なるべく、たき火、野焼きはしないことを心がけていただければと思います。
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<プロフィール>
田中章さん
元東京消防庁特別救助隊・元深谷市消防長
危機管理アドバイザー
ハロルド・ジョージ・メイさん
日本コカ・コーラ副社長やタカラトミー社長などを歴任
現在パナソニック社外取締役 アース製薬社外取締役など
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