
世代が近い発達障害当事者が困りごとを共有し、助け合う
今回は中高年の発達障害当事者会「みどる」を紹介します。
「みどる」は40歳以上の発達障害者の自助、自立のために設立されたピアサポート団体で、毎月1回、第1日曜日か第2日曜日に「茶話会」と呼ばれるイベントを開催しています。
【写真を見る】中高年に特化し支援する発達障害当事者会「みどる」!
これは基本的に40歳以上で、成人してから障害を診断されたり(成人期診断当事者)、障害を自覚する人が集まって困りごとの相談や情報交換をする会です。
(ケースによっては30代後半でも参加できるそうです)
会が現在の形になったのは2015年で、月に一度の茶話会はすでに100回以上開かれています。
40歳以上の方を中心に開催しているのには理由があります。
近年、成人してから発達障害を診断される20代、30代の方が増え、支援する当事者会、自助会の数も増えています。
ただ、その多くが若い人中心に開催されるそうです。いっぽうで40代、50代、60代の当事者もいて、中高年に特化した当事者会を開催することで、世代が近い人たちの困りごとを共有し、助け合うことをめざしています。
自分も障害を診断されている代表理事の山瀬健治さんに設立目的を聞きました。
中高年発達障害当事者会「みどる」・代表理事の山瀬健治さん
「当事者会や自助会にいらっしゃる方は増えてますし、そうした会そのものも増えているんですけど、参加者は若い方がボリュームゾーンなんですね。そうすると 40代、50代、場合によると60代の当事者の人って、 20代、30代の人とライフステージが違うので困りごとが全く通じないんですよ。40代以上の当事者って20代、30代の人に自分の話をしにくいこともあります。
実は当事者会のいちばんのメリットは自分はひとりじゃなかったんだ、仲間がいるんだって感じることなのに、仲間と話せるはずの当事者会で、むしろ孤立感を深めてしまうんです。相談しに行ったつもりが自分が聞き役になっちゃうケースもあったりして、それでは本末転倒なので、ライフステージが近い人たちで会を開くほうがピアサポート性が高まるので、 40歳以上に限定して開催させていただいてます」
年齢を重ねると、会社で要職についたり、子供がいたり、親の介護が必要になったり、若い人たちとは違う悩みが出てきます。
そうしたライフステージの違いが、世代間のギャップとして問題になります。
加えて今の中高年が若かった20年前、30年前には「発達障害」という言葉が一般的ではなく、中高年になってから障害を意識したり、診断された人もいて、若い人たちと共有できない困りごともあるそうです。
「みどる」の「茶話会」はそうした中高年世代の語り合い、支え合いの場になっています。
「茶話会」に参加した発達障害当事者の声
今回は3月上旬に港区で行われた茶話会を取材してきました。
当日は40代から80代までの男性2人、女性7人が参加。うち4人の方が初めて参加する人でした。毎回、初めての参加者が何人かいるそうです。
「自分の住む地域にはこうしたイベントはない」と東京都以外からやってくる人もいて、当事者には貴重なイベントだと分かりました。
会では2つのテーブルに分かれ、スタッフがついて参加者一人ひとりに困りごとを聴き、みんなで知恵や有益な情報を伝え、話し合います。
「職場に障害を理解する人がいない」「友達が少なくて悩んでいる」「経済的に不安があるが、どこに相談していいか分からない」など様々な相談があり、テーブルの人たちで助言し、話し合います。
1時間ほどで休憩をはさみ、席を入れ替えて、話題を変え、同じように話します。最後に感想を交換しあい、スタッフがまとめて終了になります。非常に和気あいあいとした、笑い声の絶えない会になっていました。参加された方はこんなふうに話しています。
参加者の声
「7~8回参加しています。いちばん大きいのは自分は1人じゃないんだって感じるっていうことで、それがないと孤独感がものすごく強くなって、日常生活が成り立たない可能性が高くなってしまうっていうとこですよね。本当に助かっています」(50代男性)
「今回初めて来ました。昔からの友人・知人に発達障害だっていうことをどう話せばいいのかっていうような相談をさせていただきました。皆さん、色々なノウハウとか知識の積み重ねがすごくあるんで、いろいろな情報を聞かせていただいてなるほどな、と思いました」(40代女性)
「初めて参加しました。コロナ禍が明けて、気がついたら友だちがいない、みたいな感じがあって、SNSで相談したらこういう集まりがあると助言されて、それで参加しました。自分とは違う視点からアドバイスしていただいて、『こういう風に考えてみたらどうですか?』 みたいに言ってもらえて、それは面白い視点だなと思いました。すごく役に立ちました」(50代女性)
このように、同じ困りごとを抱えている人と話をするのは大切なことです。
会の最後に全員でする感想の発表では「障害のことはここでしか話せない」「初対面なのに真剣に相談に答えてもらえてとても良かった」などの言葉がありました。
以前の会では「初めて自分の苦しみを分かってくれる人と話ができた」「初めて本音が話せた」と泣いてしまった人もいたそうです。
また、スタッフから行政の支援制度を知ることの大切さが伝えられ、どこの窓口に相談するべきか、どう手続きすればよいか、参考になる本の紹介など、具体的なサポートもありました。
山瀬代表はこうした茶話会の意義を次のように話しています。
中高年発達障害当事者会「みどる」・代表理事の山瀬健治さん
「会として大事にしていることがあって、長く続けていくことを考えています。
情報発信する人の所に集まるという役割が大きくて、僕自身、自分も知らなかった制度を参加者さんに教えていただいて利用したケースもありますし、発達障害っていっても十人十色なんで、人の話を聞くことで自己理解が深まることもあるんですよね。
そういう意味で医療や行政ではできない部分がピアサポートにはあるんじゃないかと思っていて、当事者同士にしかできないことが多々あり、こうした集まりは貴重な社会資源なので、長く続けたいと思っています」
このような困り事や情報を共有できる場があることを知らずに、ひとりで悩んでいる中高年世代の人もいると思います。
そうした方は、いちど「みどる」のホームページを見ることをおすすめします。
ホームページには「茶話会」の開催報告なども掲載されていて、どんなテーマだったか、どんな困り事があったか、どんな感想が出たかなども報告されていて、「茶話会」がどのような会か具体的にわかります。
「茶話会」は毎月1回、第1日曜日か第2日曜日に予定されており、次回は4月6日(日)に開催されます。参加費は500円、ネットからの申込制なので、興味のある方は「みどる」ホームページをご覧ください。また、メールマガジン登録者限定でオンラインでの会も開催されています。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当:藤木TDC)
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