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人生を変える特別なメイク…視覚障害者が鏡を見ずに化粧ができるブラインドメイク 「褒めてほしい人ができた」27歳で初めてメイクに挑戦する女性の変化とは【news23】

国内
2025-05-03 15:21

視覚に障害がある人が鏡を使わずに化粧ができる、“ブラインドメイク”という化粧法があります。「より可愛らしくなって、褒めてもらいたい人ができた」、そんなきっかけで初めてメイクに挑戦している弱視の女性を喜入友浩キャスターが取材しました。


【写真で見る】「お化粧してる、可愛い」27歳で初メイク…自分も相手も笑顔に


「本当に心が変わる」 “ブラインドメイク”の肝とは

ブラインドメイク講師 山田博子さん
「私は綺麗になります。私はしっとりします」
「美しくなーれ」
「綺麗になるわー、気持ちいいわー」


ここは都内のメイク教室。ただ、生徒の前に、鏡が置かれていません。


吉本花奈好さん
「これでどうですか?」


ブラインドメイク講師 山田博子さん
「大丈夫そうかな。上手に塗れていました」


この日、初めてレッスンを受ける吉本花奈好さん(27)。生まれつき目に障害があります。


吉本花奈好さん
「普段見るものは大まかな形だったり、色だったりで判断していることが多いです」 


そこで教わっているのが、視覚に障害がある人が鏡を使わずにメイクができる“ブラインドメイク”。

講師の山田博子さんに話を聞きました。


喜入友浩キャスター
「ブラインドメイクの肝はどんなところですか?」


ブラインドメイク講師 山田博子さん
「手が目であるということと、手が道具であるということ。左右同時に同じ分量を取り、同じスピードで、同じ力関係で、余すところなく同じように動かしていく」


さらにブラシを使うときは、ムラがないように塗る動かし方を、機械的に体に染み込ませます。覚えるのも大変なのだそうです。


吉本花奈好さん
「忘れそう」


ただ、こうすることで、鏡で確認できなくてもきちんとメイクができるのです。


ブラインドメイク講師 山田博子さん
「ブラインドメイクの力は、やっぱり人生を変えられる。メイクをすると本当に心が変わるんですよ」


「綺麗になるっていうのがまだ…」 メイクを始めた理由、そして葛藤

2025年1月からブラインドメイクに挑戦している吉本さん。


吉本花奈好さん
「私、メイクを皆さんがされている、されていないというのもよく分かってはないんです。元々、人の顔は黒い目と赤めの唇があるなということしか、はっきりぱっと見は分からない」


喜入キャスター
「周りがどのくらいメイクをしているかというのは、これまで知らなかった?」


吉本花奈好さん
「まったく分かっていなくて。いま自分が化粧をするようになって、意識したら(化粧が)見えるのかなって思ってみたんですけど、やっぱり分からないですね」


メイクに興味を抱くこともなかったといいますが、メイクを始めたのには“ある理由”が…。


吉本花奈好さん
「より可愛らしくなって、褒めてもらいたい方ができたので、頑張りたいなって思って始めました」


気になる人ができたのでしょうか。それ以上は内緒です。


メイクを始めて4か月、こんな葛藤もありました。


吉本花奈好さん
「綺麗になるっていうのがまだよく分かっていなくて」


自分の姿をはっきりと見ることができないので、メイクで自分がどう変わったのか、実感できないといいます。


そんななか迎えた、最後のレッスン。この日は、マスカラを教わりました。


ブラインドメイク講師 山田博子さん
「マスカラが付いても構わないためのテープね。マスキングする」


マスカラがまつ毛からはみ出しても肌につかないように、事前に周りにテープを貼っておきます。


ブラインドメイク講師 山田博子さん
「動かしながら上げる」


塗り方も工夫が必要です。


ブラインドメイク講師 山田博子さん
「目が悪いから目はいいですというのではなくて、晴眼者と同じようにできればしてもらいたいのね。そうすることによって、一歩前に踏み出せると私は信じている。踏み出してこそ、彼女の人生がこれから始まるんじゃないかな」


鏡に近づいてようやく見える目元を見てみると…


喜入キャスター
「どうです?」


吉本花奈好さん
「目が開いていて嬉しい」


喜入キャスター
「全然違う?」


吉本花奈好さん
「眠たそうな顔をしていないから、活力を感じます」


ブラインドメイク講師 山田博子さん
「とても綺麗になりました。だから自信持ってね。賢いんだから。これから頑張ってください。ありがとうございました」


メイクして初めてのおでかけ… お世話になった方と2年ぶりの再会

吉本花奈好さん
「今日は大学時代にすごくお世話になった方と会う予定があります。会うのは2年ぶりです。最後にお会いしたときはメイクは何もしていなかったです」


一人でフルメイクをして、初めてのお出かけです。最後のレッスンで教わったマスカラは…


吉本花奈好さん
「マスカラは難しくて。まずテープをまぶたに貼るというところからできなくて。皆さんも結構目元っていうのは凝るものだよって伺っていましたし、頑張ってみました」


喜入キャスター
「気づいてくれますかね?」


吉本花奈好さん
「気づいていただけると嬉しいなと思っています」


待ち合わせ場所のカフェに着いた吉本さん。


吉本花奈好さん
「『久しぶり』みたいな感じでは話してくれるとは思います。いつ見栄えの話をしてくれるか。でも『大人になったね』とか言ってくれるのかな。どうだろう」


そして…


塚田かおりさん
「こんにちは、久しぶり元気だった?お化粧してる、可愛い。すごい、初めて見た。お化粧してるとこ」


吉本花奈好さん
「この前から…」


塚田かおりさん
「自分でやったの?すごい。上手にできてる」


吉本花奈好さん
「ありがとうございます」


メイクがきっかけで、会話も弾みました。


吉本花奈好さん
「久しぶりに会った方にこんなに褒めていただけると本当に嬉しかったです。自信になりました」


喜入キャスター
「メイクを習ってよかったですか?」


吉本花奈好さん
「よかったです。すごく前向きな気持ちにもなれました」


災害時で鏡がなくても… ブラインドメイクの可能性と課題

上村彩子キャスター:
メイクには工程がたくさんあり、日々修行です。大きな鏡、そして手元の鏡といろいろ見ながらやるので、難しいんですよ。だからこそ鏡を見ないで、吉本さんのように細かいところができるのはすごいです。


喜入キャスター:
もし鏡がなかったらどうですか?


上村キャスター:
考えられないです。


喜入キャスター:
私も髪をセットするとき、鏡はかなり頼りにしていますが、鏡を使わなくていいブラインドメイクの技術は、視覚に障害のある方以外にも役立っています。

たとえば老眼の方は、鏡を見ようとすると、老眼鏡をかけないといけません。かけた状態だと目元のメイクができないので、そういった方もブラインドメイクの技術を習得しているそうです。

山田先生は、災害時で鏡がないときや、もしくは停電したときもメイクができるのだと、ブラインドメイクの可能性をお話されていました。


上村キャスター:
吉本さんはとても手さばきがすごかったのですが、どれぐらい練習したのでしょうか?


喜入キャスター:
4か月毎日練習して、メイクした写真をお母様に送ってチェックしてもらっていました。山田先生とのレッスンはだいたい1か月に1回、2時間程度のものを4回行ったそうです。

先生は生徒の代わりの目となって、どこにムラがあるのかしっかり丁寧に指導しているのですが、こうしたブラインドメイクを教える化粧訓練士という方が、まだ足りていない現状があるそうです。


上村キャスター:
喜入さんはなかなかわからないかもしれませんが、メイクが上手くいった日は、とても嬉しくなります。自分に自信が持てますし。

でも、だからこそ「きょうのアイシャドウ、色が似合ってるね」などと褒めてもらえたら嬉しいですし、もしメイクがよれてしまっていたら、それも教えてもらえるとすごく嬉しいんですよね。


喜入キャスター:
仮に気付いたとしても、なかなかちょっと言いにくい世の中というか、あとは誰に言われるかも結構大事じゃないですか。

そういう世の中ですが、吉本さんはこのようにお話されていました。


「私たちは、人から言ってもらって初めてメイクが上手にできていること、綺麗になっていることが分かる。正直に言ってくれる人の存在はとてもありがたい」


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撮影 出町紗希
音声 吉良絵里菜
編集 庄司尚慶
協力 小山久瑠実、吉田謙治
取材・構成・ナレーション 喜入友浩


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