2024年9月、神奈川県横須賀市で起きた交通事故。当時22歳の男性が死亡し、車を運転していた在日アメリカ軍の兵士に、27日、執行猶予付きの判決が言い渡されました。この事故の後、兵士が再び運転をしていることなど日米地位協定の様々な問題が明るみに出ています。
死亡事故後も「週4回運転」なぜ?
記者
「ヤノスさん、被害者や遺族に対して何かコメントはありますか」
5月7日、初公判に向かったのは在日アメリカ軍・横須賀基地所属のヤノス・ジェイデン・エドウィン被告(22)です。
ヤノス被告は2024年9月、横須賀市の国道で車を運転中に右折禁止の交差点を右折し、対向車線を直進してきたバイクと衝突し、会社員の伊藤翼さん(当時22)を死亡させた罪に問われています。
ヤノス被告は起訴内容を認めたうえで…
ヤノス被告(被告人質問)
「本当に申し訳ない。胸が張り裂けそうだ」
ヤノス被告は「事故などを起こした場合はまず憲兵隊に連絡するよう言われている」と証言し、事故直後、警察の事情聴取を受けることなく、憲兵隊に連れられ、基地に戻っていました。
さらに…
ヤノス被告(被告人質問)
「週に4回程度、交際相手の車を運転している」
ヤノス被告が事故の後、基地の中で再び運転を始めていたことがわかったのです。
一般的に日本で死亡事故を起こせば、運転免許の取り消し処分を受けます。なぜ、ヤノス被告は運転ができるのでしょうか?
アメリカの運転免許証を持っている兵士は軍が発行する「許可証」を取得すれば日本の公道で運転できます。日米地位協定では日本の試験を受ける必要はないとされていて、警察庁によりますと、アメリカ兵が交通違反をしても日本の行政処分を受けることはないということです。
記者
「事故の後に車の運転を再開した理由を教えてください」
そして、27日、横浜地裁横須賀支部は「被告は道路標識の意味を正しく理解していない」などと指摘し、ヤノス被告に禁錮1年6か月、執行猶予4年の判決を言い渡しました。
JNNは在日アメリカ軍側に兵士に対する日本の交通ルールの教育について質問しましたが、回答はなく、回答がない理由を聞いても返答がありませんでした。
米軍「迅速な帰国を検討する」遺族は「これが正義なのか」と憤り
翼さんの母(判決後)
「判決は非常に残念で、納得いくものではなかった。(実刑求めた)被害者の気持ちが届いているのか本当に疑問に思う」
裁判では、在日アメリカ海軍司令部の法務部長から裁判官に宛てた“異例の書簡”が提出されました。
提出された書簡記載の「米軍の方針」
「起訴された兵士の執行猶予付き判決が確定すると迅速な帰国を検討する」
これを受けて遺族の代理人は、アメリカ軍が組織として裁判所に対し執行猶予付きの判決を出すよう求めてきたと感じたといいます。
被害者代理人 呉東正彦 弁護士
「一国の軍隊とか政府機関から裁判所に(書簡が)出てくれば、司法の独立を脅かすような圧力がかかるのは間違いない」
翼さんの父
「これで(被告と)二度と会えないことになってしまうと思うと悔しい。これが正義なんですかね」
相次ぐアメリカ兵による過失運転致傷罪 治外法権?日米地位協定の壁
小川彩佳キャスター:
アメリカ兵による過失運転致傷罪の件数で、おととし1年間で検察庁が受理したのは全国で221件に上っています。そして、25日にも那覇市でひき逃げ事件が起きました。
小説家 真山仁さん:
明治時代の治外法権を撤廃しようという動きがあったと思いますが、日本にまだ残っているとしか思えないです。米兵が日本で何かすると、地位協定が理由となって「残念、しょうがない」と日本政府も言います。まともな外交をしていたら「こういう制度辞めませんか」と交渉する重要さに気づくと思いますが、なぜ政府は気づかないのでしょうか。関税の交渉よりも、遥かにこちらの方が大事だと思います。
小川キャスター:
石破総理も地位協定の改定には意欲を示してきましたが、まさにこうした理不尽にこそ、正面からメスを入れていただきたいです。
小説家 真山さん:
ざっくりと「協定の改定」と言いますが、「こういう問題は駄目だ」という具体性を言わないから、アメリカは「全体的には難しい」と答えるのだと思います。
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<プロフィール>
真山仁さん
小説家 「ハゲタカ」「ロッキード」など
最新著書に「ロスト7」
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