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【選挙の日、そのまえに】SNSで影響力拡大!政治系「切り抜き動画」制作者を直撃「最高で月80万円」「ある意味グレーというかブラック」【news23】

国内
2025-07-11 14:11

いまSNSで多くの再生回数を稼ぐ「切り抜き動画」。政治の話題を扱う動画では党首や候補者の発言を短く編集し、いまや選挙戦を左右するほど影響力を持っています。一体こうした動画は誰が、どのような目的で作っているのでしょうか。制作者を直撃しました。


【写真で見る】SNS上で拡散されている「news23」に関する誤情報


小川キャスター欠席で誤情報「切り抜き動画」が拡散

先週から、SNS上で拡散されている「news23」に関する誤情報。


SNSに投稿された動画
「【衝撃】 石破を注意したアナウンサー 自民に消される」


小川キャスターが、「石破総理を注意したことで番組を降板させられた」というものです。


発端となったのは、今月1日にnews23内でおこなわれた各党の党首討論でした。


コメの政策について、石破総理が発言する中…


石破茂総理大臣
「…説得しなきゃわかりません」


小川彩佳キャスター
「なるべく簡潔にお答えいただけたらありがたいんですけども…」


石破総理
「そんな簡単な話じゃないですよ」


小川キャスター
「わかっております」


このようなやりとりがありました。さらにその2日後、小川キャスターが事前に決まっていたスケジュールで放送を休んだところ、SNSには、多くの「切り抜き動画」が拡散されたのです。


SNSに投稿された動画
「圧力があったのか?小川アナ 石破逆ギレ事件後に謎の欠席」


番組中の発言の切り抜きは無断転載で、「事実ではない」過激なタイトルの動画も投稿されました。


一方、会見や演説を短くまとめるなどの政治系切り抜きチャンネルは年々増加しています。YouTubeを調べると、そのチャンネル数は800を超え、チャンネルの登録日ごとに分けると、今年はすでに半年余りで、去年の数を超えています。


今や選挙戦を左右するほどの影響力を持つ「切り抜き動画」。一体、どのような人たちが作っているのでしょうか?


政治系「切り抜き動画」制作者を直撃「最高で月80万円」

およそ2年前から切り抜き動画を制作しはじめた鈴木さん。現在の登録者数はおよそ3万人。今では月20本程度の動画を副業として作っています。


月の収益は…


世間を賑わすニュースあれこれ運営 鈴木さん(仮名)
「(月)10万、20万、飛んで40万とか、最高で(月)80万くらいまで行きました」


なんと、作った動画がバズると収益はおよそ80万円まで跳ね上がることも。平均でも月およそ30万円、収益が見込めるといいます。


鈴木さんの動画は政党や候補者などが配信している会見や演説の話題になりそうなキーワードをまとめるスタイル。現場に足を運ぶことはなく、配信された映像を10分程度に編集し動画を作っているんです。


世間を賑わすニュースあれこれ運営 鈴木さん(仮名)
「(Q.どんなのが伸びやすいとかバズりやすいってあるんですか?)シンプルにサムネイルが目を引くというのが大事。何とかを“大暴露”とか”マジ切れ”とか、タイトルとかサムネが目を引きやすい」


因みに鈴木さんがつけた「高市早苗がマジギレ」という刺激強めな動画は…105万回再生を記録。


しかし、こうした動画の切り抜きは問題ないのでしょうか?


世間を賑わすニュースあれこれ運営 鈴木さん(仮名)
「私の場合はそこに(著作権の)明言をしていない“使ってもいいよ”って言ってないところも使用はしているので、ある意味グレーというか、ブラック。


(Q.無断使用してるってことですか?)許可はとっていないので無断使用になるので、動画を勝手に使っている、それでお金儲けをしている」


こうした切り抜き動画は著作権を侵害しているとして、削除要請が来た場合は動画を削除しているといいます


世間を賑わすニュースあれこれ運営 鈴木さん(仮名)
「公平にというか、できる限り(情報を)フラットにという思いは一応あります。収益だけを目的にしているわけではないですし、BAN(利用停止)されるようなことをしているという事実は存在するので、BANされたらBANされたでしょうがない」


こうした切り抜き動画について各党の対応を番組が調べたところ、日本維新の会などは容認。


特に、共産党と国民民主党は切り抜きの拡散を呼びかけ、動画データの提供も積極的に行っています。


また、自民党や公明党、立憲民主党などは営利目的ではないものは容認しているが、偽・誤情報のものに対して対応を検討するなど条件付きで容認。


社民党は明確なガイドラインはないものの公益福祉に反している場合は対応するしています。


特にルールはなく、各党の対応は様々です。


さらに取材を続けると、進化系とも言える切り抜き動画を見つけました。


記者
「TBSテレビです、よろしくお願いします」


ガッツリ国会ch運営 腰山椋太郎さん
「よろしくお願いします」


去年の都知事選の時、石丸伸二氏の推し活をきっかけに政治に興味を持ったという腰山さん。去年9月にYouTubeを開設し、登録者数は2220人。その動画の特徴は…


ガッツリ国会ch運営 腰山さん
「解説を入れているというのが、このチャンネルの一番の特徴になります」


ガッツリ国会chの動画
「皆さんこんにちは。ガッツリ国会chの葉子です」


なんと、独自解説を加えるスタイル。


ガッツリ国会ch運営 腰山さん
「政治家が話していることの背景だったりとか意図が伝わらないこともあるのかなと思いまして、葉子という人物の解説を入れている」


演説や記者会見の動画の切り抜きを担当するのが腰山さん。“自撮りによる解説”を担当しているのが腰山さんの親戚で、奈良県在住の会社員・葉子さんです


ガッツリ国会ch運営 腰山さん
「次、投稿する動画だけど〜」


週に1、2回ほどふたりは動画の内容を電話などで打ち合わせし、動画制作をしているといいます。


ガッツリ国会ch解説担当 葉子さん
「(Q.解説の内容はどのように考えていますか?)私はあまり切り抜き動画を見なくて、元々ある動画を見るんですけど、わからない政策とかあったらその都度調べています」


実際にどのような解説をしているのでしょうか。保育士の待遇に関する動画では…


ガッツリ国会chの動画
「業務量の多さと低賃金から就職先には選ばなかった人たちが私の周りには多くいます」


政治記者などの経験がないからこその伝え方があるという葉子さん。


ガッツリ国会ch解説担当 葉子さん
「政治にそもそも興味がない人たちをターゲットにして語りかけている。ママ友とか職場の人たちと喋るような内容を喋っています」


専門家「感情的な判断だけでは済ませないという態度が必要」

こうした切り抜き動画について街の声は…


10代
「ちょっとした時間でも見られるから。ニュースで見ない分、そっちの方が良いかもしれない」


30代
「あくまで切り抜きはハイライトみたいな感じで見て、そこからそれについて調べたりとか」


肯定的な意見がある一方…


50代
「どうしても思惑とかちょっと盛っちゃったりとか、あまり良いイメージは持っていないです」


10代
「意図的にそういう情報を流そうと思ってわざと流してるって思っちゃうので、あくまでも情報の一部として自分は見ています」


参院選を前に、有権者は切り抜き動画をどう見ればいいのでしょうか?専門家は…


成蹊大学 伊藤昌亮教授
「その人(制作者)たちの動機というのは、自分の意見を届けるということだけではなくて、むしろそれによって収益化していくこと。政治的な意見とか政策とか、そういうこと以前にコンテンツとしての面白さとか、心を揺さぶってくれる強さとか、そういうことがまず求められる」


その上で、自分にとって都合の良い情報だけを投票の材料にしないことが重要だと指摘します。


成蹊大学 伊藤教授
「まずやっぱり感情的な判断だけでは済ませないという態度が必要。感情的に『これ気持ちいいな』『これ面白いな』と、それで自分の態度をすべて決めるのではなくて、その背後に何があるのか、その背後で何がちゃんと言われているのか、そこに目を向けていくことが大事だと思いますね」


中室牧子さん「ルールをより明確にすることが大切」

小川彩佳キャスター:
一口に切り抜き動画といってもフェイクや誤情報が含まれるものだけでなく、緻密に計算されて慎重に編集されたものもあります。SNSを通じて政治との接点が格段に増えたということは言えますよね。


教育経済学者 中室牧子さん:
そうですね。切り抜き動画は今若い人たちを中心によく見られていると思います。なので誤情報が含まれているからといって排除するのではなく、切り抜き動画が存在することを前提に、社会の中でどのように扱うかがすごく重要だと思います。


指摘のあった著作権の問題以外にも、例えば、プロプラットフォーム側やテレビ局側、政党や官公庁の方の規約に違反しているといった問題もありますので、その点では著作権や規約などについて、引用のガイドラインをきちんと提示するとか、NG集みたいなものを作り、ルールをより明確にすることが大切だと思います。


藤森祥平キャスター:
切り抜かれたまま放置すると被害が広がったり、情報の肯定に繋がるので、今回こうやって改めて出すということで、いろいろ複雑だったと思うんですけど、違うものは違うと言っておかないといけないことも私たちはありますよね。


小川キャスター:
考えていただきたいことですし、こと選挙のときに恐ろしいのが、投票の後に誤情報やフェイクに気づいてももう遅いですから、どうか拡散する前に、鵜呑みにする前に立ち止まって考えることを習慣づけていただきたいと思います。


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<プロフィール>
中室牧子さん
教育経済学者 教育をデータで分析
著書「科学的根拠で子育て」


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