全国で相次ぐ「保育現場での虐待」についてです。今年4月、千葉県の認可保育園で保育士が園児に対し暴行を加えた事件。閉ざされた空間で一体何が行われていたのか、その実態を取材しました。
【写真で見る】「まるで動物扱いを…」保育士が園児暴行で略式起訴
「やってはいけないことが起こっていて…」保育士が涙
担任保育士
「(パート保育士が)園児Aを叩いたり無理に食べ物を口に入れたりしていました。本当にやってはいけないことが起こっていて…」
職員による園児への暴行について涙ながらに話す保育士。これは2025年5月、千葉県船橋市にある認可保育園で保護者向けに行われた説明会での音声です。
起訴状などによると2025年4月、パート女性保育士(32)が当時2歳の男子園児に対し、頭を叩くなどの暴行を加えたとして、7月に略式起訴されました。
事件が起きたのは、昼食の時間。食べ終わらない園児を見ていたのがパートの保育士でした。
保護者説明会によると、その暴行の様子を記録した「ビデオ映像」が市または警察に対し「匿名」で通報され、事件が発覚したといいます。
その内容について、説明会に参加した保護者は次のように語っています。
保護者
「園児の頭を叩いたりとか引っ張ったり。首にかけるエプロンを引っ張ってまるで動物扱いをしているようだったと(被害園児の保護者は)話されていました」
さらに、説明会では別の事実も明らかになりました。
園長「保育士が子どもを叩くなんてことは常識の範囲外」
実は、担任の保育士らは以前から問題の保育士が泣いている子どもの頭をつついて、牛乳を無理やり飲ませている様子などを直接目撃。園長にも報告していたというのです。
担任保育士
「クラスからパート保育士を外してもらえないか園長に相談したところ『人数がいたほうがいいからそのまま部屋にいてもらうよう』園長から指示がありました。
やっぱり子どもたちに怪我をさせてはいけないし、危ない目にあわせてはいけないので、声を上げて自分たちのなかでは上げてきました。
こういうふうに本当に至らない私達の3人の責任であると、本当に叩いたりとか本当にやってはいけないことが起こっていて、本当に本当に心から申し訳ない気持ちで本当におります」
一方、園長は「注意はした」といいますが、事件が発覚するまでパート保育士をクラスから外してはいませんでした。
園長
「長年保育園をやってきて、保育士が子どもを叩くなんてことは常識の範囲外。想定外のことなんです。
申し訳ないけどクラスを任せたら、その3人とか4人で協力しあって保育をすすめていくというのが保育の原則です。それが守られなかったというのが私には想像できなかったです」
園は取材に対し、「園児の安全と保護者様から信頼して頂けることを第一に考え、再発防止に努めてまいります」などとコメントしています。
10月から始まる保育施設職員の通報義務。虐待防止に向けて何が変わるのでしょうか。
虐待に通報義務も…証言や匿名通報のみでは調査が難しい現状
TBS報道局 調査報道部 樫田小夜 記者:
2025年10月から改正児童福祉法などが施行され、保育施設・幼稚園などでの保育虐待を発見した場合、通報が義務化されます。
これまでも児童養護施設の職員などには義務化されていましたが、保育施設に関しては初めて義務化されることになります。
出水麻衣キャスター:
この義務はどこまで拘束力があるのでしょうか。
TBS報道局 調査報道部 樫田小夜 記者:
罰則はなく、とにかく保育虐待を発見したら速やかに通報するものになります。
井上貴博キャスター:
ようやく法律上で機運を醸成するものができたということですね。
TBS報道局 調査報道部 樫田小夜 記者:
通報を積極的に集めて、保育の安全な環境を整えていくことが目的になっています。
井上キャスター:
取材をするなかで、どのような課題を感じていますか。
TBS報道局 調査報道部 樫田小夜 記者:
どちらかというと、課題のほうが多く感じています。
これまで取材をしてきたなかでは、自治体側に適切に通報したのにもかかわらず、「証言だけでは対応が難しい」と言われてしまったという方がいました。
また、狭い職場だと実名での通報はとても勇気がいると思いますが、「匿名の通報だと調査が難しい」と言われてしまったという方もいました。
自治体側を取材していると、やはり日々の保育対応や待機児童対策で手一杯で、調査にかける時間や人手が足りないといった実情を話す人が多いです。
増田明美さん:
自治体側というのは、小学校であれば教育委員会にあたるのでしょうが、保育の場合はどこが担当しているのでしょうか。
TBS報道局 調査報道部 樫田小夜 記者:
保育の受け入れなど、保育全般を担当しているところが調査もしていることが一般的です。
増田明美さん:
自治体によってもその環境は違うでしょうね。
証拠が必要というのは、監視カメラなどで撮るということなのでしょうか。
TBS報道局 調査報道部 樫田小夜 記者:
保育所にカメラなどがあれば証拠がある場合も多いですが、今多く取材しているのは、たとえば保護者がやむを得ず音声を録れるものを子どもに持たせるというような事例です。
今回の船橋の事例も、たまたま誰かが匿名でその様子を撮影していて証拠があったという状況です。
井上キャスター:
証拠がないと話が進まないということになると、個人的にはカメラの設置などは進むといいなと思いますが、そのコストをどうするのかという課題があります。
教育現場でも同じことが言えますが、子どもたちは被害を自分で訴えることができないなかで、第三者の目をどう入れるかという課題は、コストの面でも人手不足の面でも、解消できないものかと思います。
TBS報道局 調査報道部 樫田小夜 記者:
今、保育虐待を積極的に調査して認定していこうという動きが自治体側の認識として低いと思います。それは人手不足でできないというのもありますし、どうやればいいのかわからないというような声もよく聞きます。
今度、通報制度の義務化に合わせて、国が対応ガイドラインの改定をする予定です。そこでは積極的に虐待を認識・調査し、ダメなものはダメだと認定しながら、しっかりと子どものために対策を立てていこうという作業が今も進められています。
自治体としても積極的にまず調査に取り組み、通報してくる人たちの声を真摯に聞いて、通報しやすい環境作りかつ、通報の内容を真摯に受け止めて調査するという姿勢を打ち出すことが大事だと思います。
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<プロフィール>
樫田小夜
TBS報道局 調査報道部・記者
子どもの虐待・性被害などを取材
増田明美さん
スポーツジャーナリストとして「細かすぎる解説」が話題に
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