沖縄尚学の初優勝で幕を閉じた夏の甲子園。その地方大会に、知的障害がある生徒が通う特別支援学校が挑戦しました。初出場だった去年は0対66で敗れましたが、その姿に憧れて入部した1年生も。19人の球児が全力で挑む2年目の夏を追いました。
【写真を見る】「先輩たちともっと野球を…」1年生が流した悔し涙
元メジャーリーガーも応援 特別支援学校“2年目”の夏
東京・世田谷区の「青鳥特別支援学校」の野球部部員たちは皆、軽度の知的障害があります。
久保田浩司 監督
「口でぱっと言ったことは、なかなか理解するのが難しいところがある。できるだけ見本を示して、こうやるんだよというのを形で示すと、理解しやすいところはある」
2024年、全国で初めて特別支援学校の単独チームとして夏の大会に出場。結果は0ー66で敗戦しました。
新チームの船出も厳しいものでした。2024年9月の大会も0ー66で敗戦。
久保田浩司 監督
「同じ66点から始まった新チームですから、これがいかに失点を少なくして得点を増やせるか。そういう意味では価値のある66失点だという見方をしたいと思います」
1月、グラウンドには元メジャーリーガーの岩隈久志さんの姿がありました。
岩隈久志さん
「昨年の夏の大会の、青鳥のニュースを見てたというのもあった。キャッチボールも上手くなっていく姿もありましたし」
そして新年度になり、1年生が9人入部しました。
「アウト1個とるたびにすごく喜んでた」 去年の大会を観戦し入部した新入生
1年生のレギュラー、セカンドを守る上野空虎くん。小学校から野球を始めた上野くんは、去年の大会を観戦し、この学校への進学を決めたといいます。
1年 上野空虎くん
「去年の夏の大会を球場で見てました。すごく雰囲気良くて、アウト1個とるたびにすごく喜んでたり」
父 智一さん
「試合見てる最中から『俺も行きたい。青鳥で(野球を)やりたい』と」
その理由の一つには…
1年 上野空虎くん
「ヒット打って、ショートを守って、守備も安定してて」
父 智一さん
「(観戦中に)『岩本くんと二遊間守るんだ』と」
チームの要・2年生の岩本大志くん。
――岩本くんはどんな存在?
1年 上野空虎くん
「でもやっぱり憧れですね。周りと比べて全然レベルが違う子が1人いる」
入部から2か月、すっかり打ち解けた2人。
1年 上野空虎くん
「憧れの先輩です。でも俺の方が守備は上手い」
2年 岩本大志くん
「いや、俺です」
1年 上野空虎くん
「俺です。俺の方が守備上手い」
久保田浩司 監督
「今までにない競争が生まれてることが、すごく今、チームとして大きいと思う。(去年の大会での)どんな逆境にもめげずに、皆で声を掛け合ってた姿に、そこに共感する子たちがまた次の世代で入ってきてくれた」
大会に出られない女子部員「それでもいいから野球部に入りたい」
本来なら部員全員が背番号をもらえるはずですが、1年生の女子部員・小山紫織さんは登録を外れました。
久保田浩司 監督
「大会の参加規定で女子の生徒は出られない。一生懸命練習して、練習試合にも出ている。男子生徒と一緒にやっている部員ですから」
――紫織さんは家ではどんな子?
父 太一さん
「割とよくしゃべってるイメージ」
姉 雪那さん
「すごく運動が好きで、前は家で普通に筋トレを始めて」
父 太一さん
「昔から活発でしたね」
運動が大好きで、小さい頃は公園を夢中で走り回っていた詩織さん。これまで野球は未経験でしたが、毎日のように運動ができることに魅力を感じ、野球部に入部。
1年 小山紫織さん
「キャッチできると嬉しかったです。フライ初キャッチです。なのでもっと頑張りたいです」
父 太一さん
「公式戦には出られないよ、練習試合は多分出られるけどと伝えた。『それでもいいから私は野球部に入りたい』と」
男子部員に交じり、2か月間練習に励んだ紫織さん。選手ではなく、マネージャーとしてベンチに入ることになりました。
父 太一さん(大会前日)
「ユニホームじゃないんだね」
紫織さん
「そうそう、この制服で行くの」
父 太一さん
「試合中もその制服で入るの。そうなんだ。背番号がないだけじゃないんだ」
紫織さん
「試合で戦わないから」
父 太一さん
「詩織ちゃん、試合に出たいと思う?」
紫織さん
「うん」
父 太一さん
「そりゃそうだよね」
紫織さん
「最初は別に試合に出なくてもいいかなと思ってたんですが、練習とか、練習試合とかしてて、やっぱり私も出たいなという思いが強くなっていきましたね。ベンチには入れるので、ベンチでの自分の役割を全うしたい。スコアも応援も皆に勇気を与えたい」
0ー66から1年…青鳥初得点 「また新たな“成長”に繫がれば」
2025年7月6日、青鳥野球部の2年目の夏が始まります。
小山紫織さんの父
「うちで一番声大きいんだから、試合会場でも一番大きい声出したらいいよ、と送り出してきました」
上野空虎くんの父
「一つの白球を思い切り追いかけて、楽しくやってもらえればいいんじゃないか」
上野くんは2番セカンド、岩本くんは3番ショートで、先発出場。ピッチャーは1年生エースの禰冝田翔くんです。
去年はエラーが続出し11点を失った初回ですが、今年は3失点に抑えました。攻撃では、上野くんの一打で1点をとり、夏の大会で初めての得点を記録しました。
しかし、1ー22(5回コールド)で敗戦。
――青鳥にとって夏初めての得点
1年 上野空虎くん
「はい、嬉しかったです」
――でも、その言葉とは裏腹に…
「悔しかったですね。先輩たちともっと野球がしたかったので」
3年 後藤浩太くん
「でも1点とれたじゃん。きょう、お前、塁出たっけ。俺は(塁)出てないから、正直どっちが上手いと思う?俺と上野、お前だろ?」
1年 上野空虎くん
「俺っすね…」
1年 小山紫織さん
「すごく活躍してて、すごくがんばってて、1点がとれたというのは本当に嬉しいです」
久保田浩司 監督
「あれだけ上野が泣いて悔しがってね、これも高校野球のいいところですし、こういう悔しさを次のバネにして、また新たな、学校名の通りで“成長”に繋がれば」
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