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戦時下で起こった長生炭鉱水没事故 今も残る“183人の遺骨” 「遺族の元に返す」炭鉱内でようやく見つかった遺骨は…【news23】

国内
2025-09-13 15:25

太平洋戦争中、瀬戸内海にある海底炭鉱が水没し、多くの朝鮮半島出身者を含む183人が亡くなりました。80年以上経つ今も、遺骨は冷たい海に残されたままです。遺族の元へ遺骨を返そうと取り組む市民たち。その活動に大きな動きがありました。


【写真を見る】海底には横たわる人のような姿も ようやく叶った潜水調査


“家族を連れて帰りたい” 遺族の願いに80年越しの光

瀬戸内海の底にあった長生炭鉱。レンガで造られた門を抜けると、周囲が木の板で囲われた坑道へ。さらに泳ぎ進めると、床に積もった土が舞い上がります。80年以上の時を経て、その内部が徐々に明らかになってきました。


韓国のダイバー
「見つけた!ここ、ここにいる」


骨は確かにそこにあったのです。


山口・宇部市。瀬戸内海に面し、炭鉱で栄えました。この地域で採掘される炭鉱の7割近くが、海底で石炭を採掘する海底炭鉱でした。

そのうちの一つが長生炭鉱。2本の筒状の構造物「ピーヤ」が、炭鉱内の排気や排水の役割を担っていました。


長生炭鉱があった場所は、安全基準で47m未満での採掘は禁止されていました。しかし、実際は37mほどの浅い層を掘る“危険な炭鉱”だったといいます。


炭鉱労働者の証言(証言・資料集「アボジは海の底」より)
「しょっちゅう水漏れがしていました」
「頭の上で船のスクリューの音が聞こえて恐ろしく、逃げることばかり考えていました」


太平洋戦争中、総動員体制のもと危険な採掘が続けられ、1942年2月3日、坑道の天井が落ちて水没。183人が犠牲になりました。犠牲者の7割以上、136人が朝鮮半島出身者でした。無理やり連れて来られたり、だまされて来たりした人もいたといいます。


事故後、彼らの救出は行われず、炭鉱内に取り残されました。“家族をふるさとに連れて帰りたい”。韓国人遺族の言葉に立ち上がったのは、地元の市民でした。


市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」共同代表の井上洋子さん。事故を経験した人から聞き取った証言を、フィールドワークで伝えています。


長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会 共同代表 井上洋子さん
「その人たちの骨は必ずここにあると、わかってる方たちのご遺骨すら掘り起こしてあげられないのはどうなのかな」


井上さんら「刻む会」は、犠牲者の遺骨を収集し、遺族に返還することを目指して活動を続けてきました。


2015年、埋められた炭鉱の入り口「坑口」を探る調査を実施。2024年、地下4mから掘り起こしました。ピーヤの中に崩れ落ちていた障害物も撤去し、炭鉱内に入る道を切り開きました。


ついに始まった潜水調査 海底には横たわる人のような姿も

強力な助っ人も現れました。狭く、閉ざされた環境での潜水技術を持つ、ダイバーの伊左治佳孝さんと、韓国のダイバーが調査に加わったのです。


約1年前に始まった潜水調査。水が濁って前が見えない。坑道が崩れて先に進めない。遺骨があるとみられる坑口から約500m先の、本坑道の部分に到達。そして、6回目の調査となった8月25日、韓国のダイバー2人が、ついに人の骨を発見しました。


持ち帰ったのは足の骨など3本。大きいもので、42cmほどありました。

次の日の調査でも、長靴を履き、横たわった人のような姿も確認できます。


ダイバーが持ち帰ったのは頭の骨でした。


遺骨を発見した韓国のダイバー
「半分くらいが埋まっていました。きのう見つけた遺骨のすぐ近くでしたので、もしかしたら同じ人かもしれない」


ダイバーは、周辺に複数の靴のようなものも確認し、「4人の遺体があったと思う」とも話しました。犠牲者の遺族は…


祖父を亡くした日本人遺族
「183人の尊い命を、この世にもう一度出すことができて、本当に感謝しております。本当にありがとうございました」


長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会 共同代表 井上洋子さん
「やっとご遺骨に巡り会えたという、これは本当に長生炭鉱の刻む会にとって、遺族にとっても記念すべき日になったと思います」


事故で父親を亡くした常西勝彦さん(83)のもとにも、その知らせが届きます。「父の遺骨の可能性は低いと思う」と言いながらも、喜びは隠し切れません。


常西勝彦さん(83)
「見れただけでもね、今まで生きとったかいが、83年生きとったから見れる、これが」


「単なる事故ではない」政府の支援求めるも…

市民の力によって見つかった遺骨。


長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会 共同代表 井上洋子さん
「あれが単なる事故だったらね。単なる事故じゃないですよ。戦争中のエネルギー政策で、日本の国のために無理をして、人災で殺された人たちです。やっぱりそこは国が責任を取らないと」


「刻む会」は、政府に対し遺骨の調査・返還の支援を繰り返し求めていますが、厚生労働省は安全性の懸念などを理由に、退け続けてきました。

発見から2週間以上が過ぎた9月12日現在も、遺骨のDNA鑑定に関する政府の方針は決まっていない状況です。


事故で父親を亡くした常西勝彦さん(83)
「少しでも政府が力を貸してくれれば、もう少し大々的にやれると思うけど。私もいつまで動けるかわからんけどさ、そう長いことはないんじゃないと思う」


「認知症の父に遺骨抱かせたい」遺族の高齢化も進む

上村彩子キャスター:
日本と韓国の市民の方たちで協力し合って、遺骨が初めて見つかったというのは大きな一歩ですよね。ただDNA鑑定が進んでいない、そして遺族の方のもとにかえっていないという点では道半ばですね。


喜入友浩キャスター:
そして韓国人の遺族も、「認知症の進む父に、なんとか遺骨を抱かせたい」「183人は同じ魂だと思っている。1人だけでも見つけ出されてほしい」と語っています。ただ、こうした遺族たちの高齢化も進んでいるというのが現状です。


上村キャスター:
遺族の気持ちを考えると、スピード感をもって進んでほしいと思うのですが、安全も確保しながらとなると、難しい面もありますよね。

亡くなられた方たちの心が少しでも安らぐように、調査や議論が進んでほしいと思います。


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