「決断と前進の内閣」と命名した高市総理ですが、早速、危機管理対応に追われるスタートとなりました。
“積極財政”と“トランプシフト”の高市内閣で経済・外交どうなる?
高柳光希キャスター:
高市内閣はご覧のような顔ぶれになりました。前回の石破政権よりも、平均年齢は4歳若い59.3歳。初入閣は10人です。
【高市内閣】
総務:林 芳正(横すべり)
法務:平口 洋(初入閣)
外務:茂木敏充(再入閣)
財務:片山さつき(再入閣)
文部科学:松本洋平(初入閣)
厚生労働:上野賢一郎(初入閣)
農林水産:鈴木憲和(初入閣)
経済産業:赤沢亮正(横すべり)
国土交通:金子恭之(再入閣)
環境:石原宏高(初入閣)
防衛:小泉進次郎(横すべり)
官房長官:木原 稔(再入閣)
デジタル:松本 尚(初入閣)
復興:牧野京夫(初入閣)
国家公安委員長:赤間二郎(初入閣)
子ども政策:黄川田仁志(初入閣)
日本成長戦略:城内 実(横すべり)
経済安全保障:小野田紀美(初入閣)
急がれているのは経済政策、そして重要となるのが外交です。
経済政策では、積極財政を進めている片山さつき氏が財務大臣に、城内実氏が日本成長戦略担当大臣というポストに就任しました。
外交に関しては、「トランプシフト」ともありますが、茂木敏充氏が外務大臣に、そして赤沢亮正氏が経産大臣に就任しました。赤沢氏は石破政権の時にも、“トランプ関税”交渉のため、10回直接交渉しに行きました。10月末にはトランプ大統領が来日します。
そして、赤沢大臣は自身のXでこのようなポストをしていました。
赤沢大臣のXの投稿(22日)
「昨晩、#高市内閣の#経済産業大臣に就任。早速#ラトニック米国商務長官からお祝いの電話あり。日本時間の昨晩中にぜひ電話したいとのメッセージが来て、電話に出ると『おめでとう!』に加えて『ワンダフル!』を連呼。ラトちゃん、やさし(^ ^)」
政策面では安倍元総理を踏襲?
室井さんは、今回の外交・経済の人事をどのようにご覧になっていますか?
TBS政治部 室井祐作デスク:
今回の高市内閣を俯瞰して見ますと、官僚出身者、実務者が多いという印象です。その中でも、積極財政を掲げる二人は特徴的です。
片山財務大臣は旧大蔵省出身で女性初の主計局主計官と、まさに国家予算を編成・管理する役職でした。自民党の中でも、財務省出身なのに珍しく積極財政派の人です。同じく、城内実 日本成長戦略担当大臣も、外務官僚で積極財政を掲げ、高市総理とも政治信条が非常に近い人物です。
これから物価高対策が急がれていますが、21日の高市総理の会見でも、▼ガソリンの暫定税率の廃止、▼年収103万円の壁の見直し、さらに日本維新の会と▼社会保険料の値下げの話が今後焦点になりますが、やはりその注目は財源です。
財源をどうするのかが焦点になります。積極財政派の片山財務大臣がどのような手腕を発揮するのか注目しています。
さらに外交では、茂木外務大臣は2019年の経済再生担当大臣時代に、日米の貿易交渉でトランプ大統領と対峙し、日本の主張を一歩も譲らなかったことから“タフネゴシエーター”と呼ばれました。
また、赤沢大臣は直近の“トランプ関税”で直接交渉してきたこともあり、完全に10月末のトランプ大統領の来日に向け、“トランプシフトを組んだ”という印象を受けます。
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
今回の人事には大いに期待していますが、せっかく高市氏が総理になったので、女性がもっと入閣するかと思いましたが、女性閣僚が2人になったことには驚きました。
また、安倍派と言われるような人たちが、副大臣や政務官で復活していて、内閣官房参与では、今井尚哉氏が戻ってきたことで、第3次安倍内閣政権と言ってもいいような特徴があると見ています。
井上貴博キャスター:
政策面で安倍氏を踏襲していくということも見えますが、積極財政で片山氏が入り、これまで財務省との「財源をどうするのか」という綱引きでしたが、本当に積極財政で成長していくのかは見てみたいと思います。絵にかいた餅なのか、踏み込むことができるのか。
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
そこはこれまでとは少し違う政策が出てくるのではないかという期待もなくはありませんが、すでに給付の話もなくなることもあり、積極財政が防衛費の増大などに使われてしまうと、私たちの暮らしには直結しないのではないかという心配はあります。
高市内閣肝いり「外国人政策」ポイントは「秩序ある共生」
高柳キャスター:
高市総理肝入りの外国人政策を担うのが、小野田紀美 経済安全保障担当大臣です。
経済安全保障担当大臣に加え、新しいポストである“外国人との秩序ある共生社会推進担当大臣”というポストにも就任しました。
高市氏ともかなり繋がりが強く、2025年の総裁選では、高市陣営のキャプテンを務めました。そしてXでは、外国人政策などの持論を発信しており、フォロワーは73万人を超えている人物です。
外国人政策においては、「秩序ある共生」がポイントになります。
室井祐作デスク:
これまで総裁選で各候補者の討論会などを見ていても、外国人政策は議論にはなりましたが、土地規制や入国規制といった“規制”の方に軸足が向いていて、野党からも「“共生”が全くなかった」という批判がありました。
そのため今回は「共生社会」、さらにポイントは「秩序ある」というところだと思います。ただ単純に共生をするのではなく、ルールをしっかり守ってもらう。そのために、「外国人の労働力は受け入れるが、しっかりとルールを守る」という政権の姿勢の表れだと見ています。
高柳キャスター:
その中で少し話題となったのが、21日の小野田大臣の総理官邸での取材対応です。
「すみませんNGで、ちょっと時間がなくて」という発言もありましたが、このあたりはどのようにご覧になりますか。
室井祐作デスク:
各大臣が取材対応に追われていた時に、唯一、小野田大臣だけが「取材NG」と出ていってしまったシーンが印象的でしたが、やはり好き嫌いが若干激しい方という印象を受けています。あまりメディア対応も好きではないという印象があります。
ですが、外国人労働力に関する施策については、昔からライフワークでやっていた方なので、その辺りの実績が今回評価されたと見ています。
防衛大臣に小泉進次郎氏で…“小泉封じ”の声も
高柳キャスター:
そして若手としてもう一人、44歳の小泉進次郎氏が防衛大臣に就任しました。総裁選では強力なライバルでしたが、この人事についてはいかがですか。
室井祐作デスク:
高市総理が21日、防衛省 戦略三文書の改定の必要性について言及しました。それを受けて、小泉防衛大臣は「緊迫感をもって高市総理が訴えてこられた戦略三文書の見直しを検討する必要があると認識している」と発言しています。
やはり防衛三文書の改定は、防衛費の増大に伴う話なので、さっそく政府与党内からは「小泉封じ」という声も出ています。
難しい局面に矢面に立たされるポジションになったということ、さらには小泉氏は「選挙の顔」として地方を回っていました。しかし、22日に北朝鮮のミサイル発射もありましたが、政府内でも危機管理を担わなければならず、なかなか地方に行けないポジションです。
「将来のライバルつぶし」や、「“小泉封じ”の人事ではないか」という声が上がっています。
井上キャスター:
重要ポストを心配する声もありますが、少し角度を変え、高市総理と取り巻く人は外交関係の強硬派が多いと考えると、外交関係で少しぶつかるリスクがあったと思います。そこまで強硬派ではない小泉氏を置くことにより、バランスがとれるのかなという見方もできますよね。
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
小泉氏はバランサーなんですね。大変なものを全部押し付けられて、「小泉あとは全部やっておけよ」となったらかわいそうだなと思って。もっとここで小泉氏が次に繋がるようなポジションになることを期待していました。
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<プロフィール>
斎藤幸平
東京大学准教授
専門は経済思想・社会思想
著書『人新世の「資本論」』50万部突破
室井祐作
TBS報道局政治部デスク
元官邸キャップ
与党キャップ・野党キャップなどを担当
・見つかった娘(14)の遺体には「身を守れ」と父が願い伝えた“長袖・長ズボン”「1羽じゃかわいそう」中3・喜三翼音さんが家族に残した“生きた証”
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