“もしも”の時の選択肢が大きく変わろうとしています。望まない妊娠を防ぐ「緊急避妊薬」が、早ければ今年度中にも薬局などで処方箋なしで買えるようになります。一方で、薬の価格など課題も残っています。
「緊急避妊薬」薬局で販売へ
東京都内にある薬局。
薬剤師 鈴木怜那さん
「こちらが今回承認された緊急避妊薬のノルレボです」
厚労省が10月、市販薬として販売することを承認した「緊急避妊薬」。アフターピルとも言われています。
国内初の処方箋なしの緊急避妊薬として、早ければ今年度中にも薬局で購入できるようになります。
薬剤師 鈴木怜那さん
「安心して服用したり、相談していただけるような形で販売していければと思っています」
“望まない妊娠”を防ぐ緊急避妊薬。性行為から72時間以内に服用することで、妊娠を8割程度防ぐとされていて、早く服用するほど効果が高いといいます。
こちらの薬局では国の調査研究として、すでに試験販売を行っています。
服用にはこんな条件があります。
▼研修を受けた薬剤師が注意点などを患者に説明し、▼患者は薬剤師の前で服用することになっています。
この薬局では、個室を用意しています。
薬剤師・鈴木怜那さん
「リラックスして安心して、プライバシーが守られて服用されるように、しっかりと情報提供や薬を飲むサポートをしています」
緊急避妊薬の市販化について 街の声は
大学生の時に緊急避妊薬を服用した女性。
避妊薬を服用したことのある女性
「パートナーとの性行為中にコンドームが破けてしまい、その時に『服用しなきゃ』と思いました。学校とかやめないといけないのかなとか、夢とか、もし妊娠したら無くなってしまうんじゃないかという不安」
人に知られたくない気持ちがあり、自宅から離れた産婦人科を受診しました。
避妊薬を服用したことのある女性
「夜中に受診できるところは中々なかった。友人にとかにも知られたりするという怖さもあった」
夜遅くまで営業している薬局やドラッグストアで購入できることは、不安の解消につながると話します。
海外では約90の国や地域で、薬局などで買うことができる緊急避妊薬。薬局での販売について街の人は…
20代男性
「どこでも買えるというのはいいのかもしれない」
20代女性
「最近24時間開いてる薬局とかあるので、いいかなと思う」
20代男性
「予期せぬことがあったときのために買えるのもいいと思うが、簡単に手が届きすぎちゃうのはよくないかなと思う」
20代女性
「困ったときに、女性が手に取りやすくなるのがいいと思う反面、責任感の意識が下がったりするのかなというところもある」
50代男性
「望んでもいないのに妊娠してしまって、産むのか堕ろすのか、産んだ後もきちんと責任を取れない状態のまま、事件化するよりはよっぽどいい」
販売の条件「薬剤師の前で服用」
小川彩佳キャスター:
緊急避妊薬が早ければ今年度中には、処方箋なしで薬局などでも購入できるようになるということです。
私が「news23」を担当してすぐに緊急避妊薬について大きくお伝えしたことが記憶にあります。それが6年前なので、少なくとも6年前には議論が既に進んでいた中で、なかなか進まなかった。「ようやく」という感覚があります。
産婦人科 宋美玄さん:
そうですね。やはり緊急避妊薬は、いろいろ気をつけていても誰もが必要になる可能性のある最後のセーフティーネットなので、本当は手軽に手に入ることがすごく大事ですが、私も記憶する限り、7~8年ぐらい前からやっぱり市販化に向けて、我々産婦人科医の有志でもそういった活動もしていました。しかし、途中コロナ禍でオンライン診療が進んだりなどいろいろあって、「やっと」という感じで、本当に嬉しく思っています。
小川キャスター:
緊急時に必要な薬が、緊急に手に入らないという状況がずっと続いていたわけですが、藻谷さんは、緊急避妊薬の市販化の動きをどうご覧になりますか。
地域エコノミスト 藻谷浩介さん:
何かと進まない日本と言われてる中で、時間かかったけど何か動いたのはいいことだと思います。しかし、逆になぜそんなに時間がかかったのか。改めて聞いてみたいです。
産婦人科 宋美玄さん:
それには本当にいろいろな理由があります。
「女性の体を思い通りにさせない」という人たちもいるとも言われていますが、それはアフターピルに限ったことではありません。性教育も全然進まず、ピルなどの他の種類の避妊法の普及も遅れています。
その中で、アフターピルだけアクセスが良くなればいいかというと、そういうわけでもありません。やはり性教育をちゃんと広めたい人からすると、アフターピルのアクセスだけが進むのがアンバランスに感じられたり、一方で全てのものに対する抵抗勢力みたいなのもあり、すごく複雑なんです。
最後は、私の見立てではちょっとオンライン診療がすごく流行り、ピルなどの処方が結構無法地帯なんです。このあたりは感想にはなりますが、それで改めて薬局の方がまだちゃんとやるのではないかとなったこともあるのではないかと思います。市販化まではすごく長かったです。
藤森祥平キャスター:
緊急避妊薬の販売条件について、情報をまとめます。
これは当たり前ですが、妊娠・性教育については男性も当事者として捉えるべきことです。
しっかりとお伝えしていきます。
「転売など悪用の懸念がある」という意見が一部の専門家から出ていまして、購入者は薬剤師の目の前で服用することが条件になります。映像で出てきた女性は、目の前で飲むプレッシャーや、飲んでいるところを誰かに見られるという不安もお話をされています。厚生労働省としては、一定期間後、面前服用の見直しについても議論することにしています。
産婦人科 宋美玄さん:
面前服用については、いろいろな議論があると思いますが、アクセスが良くなることは女性にとってすごくいいことですが、悪用したい人にとっても都合のいいことでもあります。
実際に処方していると、男性がびっちり付いてきて服用するまで見届ける人や、明らかにそれを飲まされている人、例えば性風俗を強要されてる人など、いろいろな悪用例もあるので、これについては「女性を信用してない」という意見も最もですが、慎重派の人がこれを条件にしていて、そこは一旦その条件を飲んで前に進めようということで、また見直せばいいというふうに思います。
地域エコノミスト 藻谷浩介さん:
持ち帰って流通させる、転売する人がいるかもしれないという心配があるということですね。
産婦人科 宋美玄さん:
そうですね。面前服用については、一旦このまま進めるという感じですね。
藤森キャスター:
価格についても見ていきましょう。
試験販売時は大体7000円〜9000円で手に入るといいます。アメリカは約1500円、イギリスは約4600円で手に入れることができ、かなりまだ差があります。一定の要件のもとで、無償・安価で提供する国が、実はいま世界的に増えています。
産婦人科 宋美玄さん:
そうなんです。日本はやはり薬を承認するときに、治験などにすごくお金がかかります。アフターピルも認可されるまでに、すごく時間がかかりました。私も開業医なので卸値を知っていますが、市場原理だとこれぐらいの費用になるのは仕方がありません。
そのため、体の自己決定権、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツのために、国が公費助成をすべきだと私は思っています。
必要な人の手に届くようにする。例えば、この値段で10代の子が手に入れられるかというとやはりちょっと難しいですよね。そのため。今度はお財布の話に進めていきたいと思っています。
小川キャスター:
課題もあるという中で、同時に進めていかなければならないことも本当に多くあると思います。
産婦人科 宋美玄さん:
日本では性教育が長い間どうしても十分でない状態が続き、いろいろな世代がちゃんと避妊のことを知らなかったりします。アフターピルが手に入りやすくなることで、「コンドームをつけなくてもいいや」みたいになる可能性は十分にあると思います。
やはり性教育や他の避妊法へのアクセスも同時に進めていかないと、アフターピルは決してそんな確実な避妊法ではなく、毎日服用するピルや子宮の中に入れる避妊具に比べると、補助的なものとして考えないといけません。同じ生理周期に複数回使うこともできないので、「アフターピルがあるから大丈夫」という感じになるとすごく怖いです。
地域エコノミスト 藻谷浩介さん:
こういう議論において、「無責任になる」という意見がありますが、男性・女性どちらにもあるのでしょうが、恐らく男性が無責任で起きている問題の方が多いと思います。
避妊をちゃんとしないことは、本来男性側の責任であるはずで、「アフターピルがあるから」と避妊しないような人が増えるのは困りますよね。
産婦人科 宋美玄さん:
男性は自分で主体的にできるコンドームを、性感染症の予防にもなるので、緊急避妊薬がどれだけ広まってもつけていただくことが大切です。
地域エコノミスト 藻谷浩介さん:
そもそも避妊せずに性行為をすることは、お互いが「子どもをつくろう」という気持ちになって初めて免許が下りるというふうに自分で考えておくべきだと思います。
小川キャスター:
誰もが主体的に考えるということが本当に必要だと感じます。
緊急避妊薬の市販化について「みんなの声」は?
NEWS DIGアプリでは『緊急避妊薬』について「みんなの声」を募集しました。
Q.緊急避妊薬の市販化 どう思う?
「販売条件も含め妥当だと思う」…36.6%
「薬局以外でも販売すべき」…14.3%
「避妊への意識低下が心配」…31.9%
「販売すべきではない」…13.1%
「その他・わからない」…4.2%
※11月6日午後11時20分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは7日午前8時で終了しました
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