高市総理の台湾有事をめぐる答弁の余波で、中国政府は日本への渡航自粛を呼びかけています。
日中関係の今後、そして中国からの訪日観光客が減少した場合の経済の影響はどうなるのでしょうか。
【写真を見る】日本への渡航自粛が呼びかけられている中、箱根を訪れる中国人観光客
中国が渡航自粛呼びかけ 訪日観光客への影響は?
井上貴博キャスター:
まず、観光地の影響についてです。
バス会社「ジョイフル観光」では、中国人観光客を扱う旅行会社から、12月分だけで約50件のキャンセルがあったそうで、金額にして2000万円~3000万円の損失となりそうです。
その一方で箱根のある宿泊施設では、現時点では影響がなく、予約状況も通常通りということです。
日本政府観光局によると、2025年1月~9月の訪日外国人客数の総数は約3165万人で、国・地域別でみると、中国が最多で約749万人(23.7%)でした。また、観光庁によると、中国からの観光客による消費額は、約1兆6400億円にのぼるということです。
【2025年1月~9月 訪日外国人客数】
▼中国:約749万人(23.7%)
▼韓国:約679万人(21.5%)
▼台湾:約504万人(15.9%)
▼アメリカ:約240万人
▼香港:約182万人
▼その他
では、今後の影響はどうなっていくのでしょうか。
反日デモの再燃は? 強まる国内監視と自己検閲
井上キャスター:
過去に起きた最悪のケースを見てみますと、2012年、日本が尖閣諸島を国有化したことで日中関係が大きく悪化しました。中国各地では反日デモが起き、日本車販売店では車が放火されました。
このとき、中国政府の日本への渡航自粛要請で、2012年の訪日客数は前年比で25.1%も減りました。リスクとして、同様の事態が起きる可能性もあるということです。
ですが、中国としても「このときのようなことは起こしたくない」という思いもあると思います。現在の状況をどう捉えていますか?
東京大学大学院 阿古智子 教授:
2012年の反日デモのときは、非常に多くの人が街頭に出て、日本に対して抵抗するような動きを見せました。同時に、集団で何か訴えるということは、中国政府にとっても恐ろしいことだということで、今の中国の他の政策に対して不満を持っている人が違うプラカードをあげることもありました。
今回の場合は、同じように大人数が街頭に出て反日デモをするということは、まずないのではないかと思っています。
出水麻衣キャスター:
自粛要請をしてるというようなところですと、中国国民の温度感も、中国政府としては冷静に見ているということですか?
東京大学大学院 阿古智子 教授:
今の中国の情勢は、政府から何か指示をされたとき、それに従わないと、「政治的に正しくないと言われるのではないか」という風潮があります。
例えば、職場でも監視されているような状況があって、「本当は自分は行きたいけどもやめておこう」というような人もいるかもしれない。
井上キャスター:
中国国民も中国政府からプレッシャーを受けているところもあるということですか?
東京大学大学院 阿古智子 教授:
監視システムや自己検閲をしなければいけないという雰囲気が、2012年のときよりも強くなっています。
軍事リスクや私生活に影響が? 台湾問題をめぐる緊張緩和の必要性
井上キャスター:
日本政府に対しても、中国政府はプレッシャーをかけていますが、長い歴史を考えても、隣国と政治的にうまくやるというのはなかなか難しいことです。でも、その高いハードルを越えられるのが民間交流で、その民間交流がいかに大切かということですよね。
実業家・インフルエンサー 岸谷蘭丸:
個人的には、そこは市場原理に任せておけば大丈夫なのではないかと思っています。
例えば、近年でも処理水の問題のときに、「日本の魚を食うな」みたいな流れがありましたが、結果、スシローに行列ができていて、「みんな寿司食ってたじゃん」ということがありました。結局、言っているだけで、ある程度時間が経てば観光客は戻ってくると思いますし、そこまで政府が介入するとも思えないので、これは騒ぎすぎずに「収まるといいね」くらいが正解なのかなと思います。
そして、もう一つ個人的に思うのは、国内で高市総理がやろうとしている政策に対して、こういう外交問題がちょっとしたノイズにもなっているのかなという気がしています。
やはり国内の経済政策を頑張りたい時期なのかなと思うので、外交問題に時間を取られすぎずに経済政策を頑張ってくれるといいなと思っております。
井上キャスター:
今後、日中関係をどういうふうに見ていきますか?
東京大学大学院 阿古智子 教授:
経済は経済として大事ですが、台湾の問題は扱うのが非常に難しいです。
曖昧な形で何とか現状維持を図ってきたというのが日本のこれまでの外交政策だったと思うのですが、それを変更しようとすることにより、色々な軍事的な動きが出てきてしまうのか、それによって私たちの生活に色々な影響が及んでしまうのではないかということもあるので、なるべく緊張は緩和する方向に持っていった方がいいと思います。
中国は一方的に情報統制しているので、外交努力や民間交流がないと、日本に対して間違った情報などがずっと煽られてしまうということになってしまい、危険な状況になるかなというのはありますね。
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<プロフィール>
阿古智子さん
東京大学大学院 教授
専門は現代中国研究
在中国日本大使館専門調査員などを経て現職
岸谷蘭丸さん(24歳)
ボッコーニ大学在学
岸谷五朗と岸谷香の長男
海外大受験塾「MMBH」設立
教育・多様性などを発信
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