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「実証実験の街」ウーブン・シティが目指す未来とは<シリーズ SDGsの実践者たち>【調査情報デジタル】

国内
2026-02-14 08:00

静岡県裾野市に誕生したトヨタのウーブン・シティ。第1期では300人、将来的には2000人が暮らす街では、いったい何が行われるのか。街の中に入ってみた。「シリーズSDGsの実践者たち」の第51回。


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自動運転に対応できるEVや開発中の乗り物が走る

静岡県裾野市で、2025年9月から実証が始まり、人が住み始めた「Toyota Woven City(以下、ウーブン・シティ)」。東海道新幹線が停車するJR三島駅から車で約30分、JR御殿場線の岩波駅から徒歩10数分のところに広がる、できたばかりの街だ。


街の中に入ると、5階建くらいまでの中低層の住宅が並ぶ。道路にはトヨタのバッテリーEVで自動運転システムにも対応できる「e-Palette」が走るほか、まだ発売されていない3輪の電動キックボード「Swake」に乗っている人も見かける。 


ただ、訪れた2025年12月の時点では、入居しているのはまだ数世帯だけだった。本格的に入居が始まるのは2026年以降の予定だ。広報を担当する比留間陽介さんは、ウーブン・シティを「実証実験の街」と表現する。


「未来都市、次世代都市、スマートシティと言われる場合がありますが、いずれもそうではありません。ウーブン・シティはモビリティのテストコース、あるいは実証実験の街と我々は呼んでおります。モビリティは人の心を動かすもの全てを指します。そのモビリティを試す場所がウーブン・シティです」


ウーブン・シティがある場所は、1967年から2020年まで稼働した東富士工場の跡地。2011年に東日本大震災が発生したことを受け被災地を支援しようと、東富士工場の機能を宮城県と岩手県に移転した。跡地には製品やサービスのプロトタイプを作ることができる工場を残しながら、新たにウーブン・シティを建設した。ウーブンは「織られた」という意味で、トヨタグループの創業が木製の人力織機の発明だったことに由来している。


完成している第1期エリアは広さ約4万7000平方メートル。130戸分の住居が用意されていて、約300人が暮らす予定だ。第2期エリアも含めると、面積は29万4000平方メートルに及び、約2000人が暮らせるようになる。


ウーブン・シティの「つながるインフラ」

では、どんな実証実験が行われているのだろうか。トヨタが独自で進めているのが、あらゆるものがつながるインフラだ。


ウーブン・シティ内の道路は、e-Paletteをはじめとするモビリティが走る道と、Swakeが走る道、それに歩行者用の道の3つに分かれている。交差点には、多機能ポールが建てられていて、信号のほかセンサー、カメラなどが設置されている。


歩行者用の横断歩道は基本的に青信号になっていて、e-Paletteが近づくと信号は横断歩道用が赤に、車両用が青になる。現在はセンサーが車両の接近や停止を感知する車両感応式信号の仕組みだが、e-Palette自体にも位置と速度の情報をクラウド上に開発されたサーバーに送り、信号機に近づくタイミングで青に切り替わるといった仕組みが備わっている。


また、ウーブン・シティに暮らす人や、勤務する人、それに外部から訪れる人は、あらかじめ登録した上で、顔認証で街の入り口やさまざまな建物の中を出入りする。


実際に暮らす人は、鍵を使うことなく建物や部屋に入ることができる。敷地内にあるコンビニエンスストアなどで買い物する場合も、顔認証だけで決済が可能だ。


エネルギーは、太陽光発電のインフラを整えていて、多くの建物の屋上には太陽光パネルが載っている。さらに、水素もパイプラインで引き込み、車の充電などに使う予定だ。


信号の制御や顔認証、エネルギーなどは、全て自社で内製したシステムで制御している。あらゆるデータを取得して、解析することが可能になっている。


さらに、全ての建物は地下でつながる。本格的な入居が始まれば、外部の業者から届けられた品物を、自動物流システムによって特定の住戸などに配送する実証を行うことにしている。それ以外にも、地下ではさまざまな実証実験ができると比留間さんが説明する。


「まだ完成していないプロダクトを外で実証するとなると、雨の日はできない、風の日はできないといった非機能要件を解消しなければなりません。それが地下だと、基本的に温度も変わらない。風も吹かない。雨も降らない。条件が一定です。なので、地下は実証実験をするのにすごく適した場所になります。駐車場としての用途だけでなく、実証をする上で大切な場所の一つになっています」 


「カケザン」によって新たなサービスや製品を生む

ウーブン・シティのあらゆるものがつながるインフラを活用して、トヨタグループ以外の企業も実証実験を行っている。実証実験を通してプロダクトやサービスの開発を行う発明家の人たちはインベンターズと呼ばれ、現在20者がインベンターとして参加を決めた。


このうち、日本最大級のコーヒー専業企業のUCCグループは、ウーブン・シティ内に上島珈琲店を出店して、9月から実証実験を始めた。 


一部の席にカメラを設置して、店に滞在している客がコーヒーを飲んだりパソコンで仕事をしたりする行動を記録し、その画像をAIで解析。コーヒーの香りと味わいや店舗の環境が、人の集中力や作業パフォーマンスにどのような影響を与えるのかを研究している。コーヒーが持つ力を最大限に引き出すための飲み方や環境づくりを考案して、未来のカフェ空間を想像するのが目的だ。


ダイドードリンコは、これまでの常識を覆す自動販売機を設置している。「HAKU」と呼ばれるこの自動販売機は真っ白で、商品のサンプルやボタン、コインの投入口がない。あるのは商品の取り出し口だけだ。商品はQRコードを通じて購入し、キャッシュレスで決済する。 


この自動販売機の前面はディスプレイになっていて、画像や映像を投影することでその場の雰囲気に合わせてカスタマイズできる。


この他にも、ダイキン工業が室内に花粉が侵入するのを防ぐ「花粉レス空間」や、気流のコントロールなどによってリラックスできる空間を実現する「パーソナライズされた機能的空間」を実現する新技術を導入。教育事業を展開する増進会ホールディングスは、すでに保育園を開設したほか、2026年度以降は学童保育も開校する予定だ。子どもの自立心や自律心などを育むモンテッソーリ教育をベースに、子どもたちの活動を記録し、解析することで適切な援助をしていくという。


インベンターが提供するサービスや製品を実際に試し、フィードバックするのがウィーバーと呼ばれる住民や街の訪問者。インベンターとウィーバーによる「カケザン」によって改良を重ねることで、新たなサービスや製品を生み出していくことが、ウーブン・シティが目指す未来だ。


動き始めた「未完成の街」

ウーブン・シティには住居以外にもさまざまな建物がある。ウーブン・シティの概要について知ることができるウェルカムセンターやオフィスのほか、インベンターが開発中の製品をウィーバーが試すことができる施設「Kakezan Invention Hub」も開設されている。 


街の中心にある広場のコートヤードも、インベンターとウィーバーが交流する場所だ。人とモビリティとインフラがつながり合うことで、新たなアイデアを形にしていくことが期待されている。 


ウーブン・シティの第2期エリアの完成時期などは決まっていない。第1期エリアの始動から3か月経った時点では、顔認証システムに見つかった不具合を改善するなど、本格的に住民を受け入れるための準備を進めている。


今後多くの住民が入居して、インベンターが増えていくことで、現時点では思いつかないようなサービスや製品が生まれていくかもしれない。ウーブン・シティは「未完成の街」として、今動き始めたところだ。


(「調査情報デジタル」編集部)


【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。


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