
市役所に勤めていた時の後悔
2024年9月に発足した「千葉精神医療人権センター」は精神科医療に関わる全ての人の権利を守り、安心してかかれる精神科医療を目指して活動しています。主な活動は、毎週土曜日に受け付けている「電話相談」や、入院患者さんのもとへ直接出向く「面会相談」です。
【写真を見る】精神科病院の入院患者の人権を守り、声を届ける。千葉精神医療人権センターの取り組み
相談のほとんどは精神科病院に入院中の患者からで「退院したいのに出してもらえない」という切実な訴えです。
代表を務める池澤直行さんは千葉県市川市役所の元職員で、精神科病院での勤務経験もあります。池澤さんは千葉精神医療人権センターを立ち上げたきっかけを、このように話します。
自分自身がかつて精神科病院で働いていて、権利擁護の部分で問題だなと思うことが多くありました。しかし自分自身はあまり大したことができなかった。ある種の罪責感みたいなものを引きずっていたので、原点に戻り精神科医療の分野で権利擁護の取り組みができたら、という思いはありました。
たまたま神奈川の人権センターの関係者に話を聞く機会があり、そのときに「これが自分のやりたかったことなんだ」と思ったんです。非常にカジュアルな取り組みで、電話で相談を受けたり、面会に行ったりという形で、精神科医療に関わっている人たちの声を聞くという活動をやっていたり。それを聞いて千葉で同じような事をやってみたいと思ったんです。(千葉精神医療人権センター代表・池澤直行さん)
入院患者の声が届かない、構造的な課題
こうした人権センターは1980年代から全国で設立され、千葉県以外にも10か所以上があります。背景にあるのは日本の精神科医療が抱える構造的な課題です。実は、日本は世界的に見ても精神科病院のベッド数が非常に多く、1年以上の長期入院も多いという特徴があります。
さらに、本人の同意がない「強制入院」や、「隔離・身体拘束」などの行動制限が条件付きで認められている一方、権利擁護の仕組みが乏しいのが現状です。こうした中、患者が本来持っている権利を行使できるようにアドバイスし、支援する機能が大きな意味を持ちます。
池澤さんは第三者が関わる重要性について、こう話します。
話したいことを聞いてくれる人というのが、いまの病院の中ではなかなか用意できないだろうとは思います。それは、別に病院がサボっているということではなく、むしろとても忙しいのです。だから外部の第三者機関が入って、その人の話を聞く時間を作るということは、とても大事なことだと思うんです。(千葉精神医療人権センター代表・池澤直行さん)
精神科医療には「精神科特例」という一般医療とは別の規定があり、看護師や医師の配置基準が一般病床よりも少なく設定されています。そのため、一人ひとりの患者に割く時間や人員が物理的に不足してしまいます。病院側に自分の意見がうまく伝えられないとき、千葉精神医療人権センターのような第三者機関が関わって、話を聞くだけでも患者の大きな支えになるということです。
精神科医療を特別なものにしない
千葉精神医療人権センターでは月に1回、活動報告などを行う定例会を開いています。取材した7月23日の定例会では、当事者や関係者による活発な意見交換が行われていました。そのなかで印象に残ったのが、面会ボランティアとして活動していて、自らも精神科に通うスタッフの言葉でした。
この方は、身体拘束の現場を見て「これでは安心して精神科に繋がることはできないと感じた。当事者も支援者も『自分たちがリカバリーできる』と信じられるような環境を少しずつ作っていきたい」と話していました。
また、千葉精神医療人権センターでは個別の相談活動だけではなく、千葉県内の精神科病院ごとの”病床数”や”平均在院日数”などのデータを県に開示請求する活動にも取り組んでいます。精神科病院がブラックボックス化している現状があるため、その実態を明かそうとしているのです。このねらいについて、池澤さんに伺いました。
非常に社会的なストレスが高まっていく中で、ちょっとしたことで心を病むことは誰でもあり得ると思います。そうなったときに、あなたはどこの病院にかかりますか?判断付きますか?と思うわけです。精神科医療というものが「特別な人がかかる特別な医療じゃない」ということが社会の共通認識として定着すれば、差別や偏見が無くなっていくだろうと思います。(千葉精神医療人権センター代表・池澤直行さん)
このように、精神科医療の環境改善に取り組む千葉精神医療人権センターですが、メンバー全員が本業の合間に活動しているため、慢性的な人手不足、そして資金不足が課題となっています。固定の事務所もありません。そのため現在、法人格を取得して活動基盤を強化するための「クラウドファンディング」に挑戦しています。ぜひホームページなどをご覧ください。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当 : 亀山真帆)
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