国内
2026-08-18 07:10
3年前に飼いはじめた1匹のカニをめぐる、驚きの展開を紹介した動画『3年前、カニを1匹飼ったら』に123万再生を超える注目が集まっている。「聖なる母カニ??」「生命の神秘ですね」「パパ出て来なさーい」「肝っ玉カニちゃんになりそう」など、多くの反応が寄せられたカニ類の持つ衝撃生態とは。投稿者で、自宅で15種類のカニと暮らす“るう”さん(@ruuaquarium)に話を聞いた。
【写真】1匹のカニを飼って3年後のまさかの事態とは…?
■「あんなに小さなカニだったのに…」飼い主も驚がくしたサワガニの繁殖能力
――3年間、単独飼育してきたメスのサカモトサワガニが子ガニを産んだ…というエピソードを紹介した動画、とても興味深く拝見しました。なぜこのようなことが起こったと考えられるのでしょうか?
「私が最も有力だと考えているのは、『サカモトサワガニのメスが我が家へ来る前にオスと交尾し、その精子を体内に保存(貯精)していた』という可能性です。カニ類では、一度の交尾で得た精子を保存し、その後の産卵に利用できるということが知られています」
――まさか、カニにそんな驚きの生態があるとは…。
「ただ私が知る限り、サワガニ科において『何年ぐらい貯精できるのか』ということを明確に示した研究はなく、今回のように約3年という期間を経ても繁殖に至ったことに、正直とても驚いています。深海のカニについては、雌雄が出会う機会が少ないため長期間の貯精能力を持つ可能性が高い、と書いてあった文献を読んだことのある気がするのですが、サワガニ科でここまで長く能力を維持できるとは予想していませんでした」
――今回の出来事で特に印象的だったことを教えてください。
「我が家へ迎えたとき、この個体はプリンカップで販売されていたほど小さなサイズだったので、『すでに交尾を経験している』とは全く思っておらず、そのことが一番の衝撃でした。しかし現在、我が家で繁殖している本土のサワガニで、生後2年ほどの比較的小さな個体の交尾行動を確認しているため、見た目以上に早い段階で性成熟し、繁殖能力を持つ可能性があるのかもしれない…と考えています」
■飼育情報がぜんぜん見つからない! そんな幼少期の経験から“発信する側”に
――るうさんは現在、15種類ものカニを飼育されていますが、さまざまな生き物がいるなかで、なぜカニを選ばれたのでしょうか?
「カニを飼い始めたきっかけは、正直なところあまり覚えていません(笑)。私は幼い頃から父によく海や汽水域、川へ連れて行ってもらっており、そこでさまざまな生き物を採集しては飼育していました。小学校の夏の自由研究でも海の生き物をまとめるなど、とにかく生き物は身近な存在だったんです」
――その頃からカニも飼育されていたのですか?
「そうですね。気が付けば自然とカニを飼っていて、おそらく最初に飼育したのは地元の海で採集したヒライソガニだったと思います。夕食にシラスやマグロの刺身が出ると、こっそりカニにお裾分けしていたことも今では懐かしい思い出です」
――とても素敵な思い出ですね。
「そんな感じで、さまざまな生き物の飼育を経験してきましたが、カニはメダカや熱帯魚に比べて飼育者が少なく、情報が非常に限られているんです。私自身、幼少期にカニやウズラといった比較的マイナーな生き物を飼っていた際には、知りたいことがあっても情報がほとんど見つからず、図書館で蔵書検索をして資料を探し回っていました」
――手探り状態での飼育はご苦労も多かったのでは…?
「そうですね。ただ、その経験があったからこそ『情報が少ないなら、自分が発信する側になろう!』と考えるようになりました。現在、15種類ものカニを飼育しながら情報発信を続けているのは、マイナーな生き物の魅力や飼育方法を、多くの方に分かりやすく伝えたいという思いがあるからです」
――るうさんが思う「カニ飼育ならではの魅力」をお聞かせください。
「表情が少ない生き物だからこそ、何気ない仕草一つひとつに意味を感じられることでしょうか。一般的にカニはじっと隠れているイメージがあると思いますが、実は目を動かしたり、口をもぐもぐ動かしたりと、常になにかしらの行動をとっています。その小さな変化から『いまは落ち着いているな』『これは警戒しているのかな』といった様子や、飼育環境の状態まで少しずつ分かるようになってくるんです」
――そんなに読み取れるように…じっくりと観察してみたくなりました(笑)
「人を見ているのかは分かりませんが、つぶらな目でこちらを見つめてきたり、突然威嚇してきたりする姿は、とても愛らしく、思わず笑ってしまうこともありますよ」
■脱皮事故によりハサミ、脚、口まで失ったカニが見せた生命力とたくましさ
――飼育してきた中で特に印象に残っている行動やエピソードはありますか?
「印象に残っている出来事のひとつは、自宅で渓流の景色を再現しようと水槽をレイアウトした時のことです。私は渓流の景色と、そこに暮らすサワガニの姿が大好きなので、苔や岩を使って理想の景観を一生懸命作り上げました。しかし翌朝、水槽を見ると岩組は掘り返され、丁寧にならした砂には巣穴が掘られ、3000円ほどかけた苔は一瞬で食べ尽くされていまして…」
――そ、それはショックですね…。
「サワガニにとっては人間が作った景観よりも、自分たちが暮らしやすい環境を作ることの方が大切だったのでしょう。その光景はあまりに衝撃的で、呆れるというより笑ってしまいました(笑)。もうひとつ忘れられない出来事は、飼っていたサワガニが脱皮事故によって両方のハサミとほとんどの脚、さらに口の一部まで失ってしまったことです」
――ハサミや脚を失って、餌は食べられたのでしょうか?
「自力で餌をつかめなくなってしまったため、毎日ピンセットで少しずつ餌を与え続けました。仕事から帰宅したら、まずはカニの介護をする…という生活が半年ほど続きましたが、その後の脱皮で少しずつ脚やハサミが再生し、最終的にはほかのサワガニたちと一緒に元気に暮らせるまで回復してくれたんです」
――すごい生命力です…!
「脱皮はカニにとって命がけの行動です。脚の欠損や変形はもちろん、時には体力が尽きて死んでしまうこともあります。しかし、カニには高い再生能力もある。この出来事を通して、カニが持つ生命力とたくましさを改めて実感しました」
■カニ飼育のベテランが考える「初心者におすすめな種類」&「気をつけたいポイント」
――るうさんのお話を聞いて、「カニを飼ってみたい」と興味を抱いた人も多いことと思います。初心者におすすめするカニの種類を教えてください。
「初めてカニを飼うのであれば、個人的には淡水や汽水域に生息するカニがおすすめです。代表的なのはサワガニですが、『丈夫そう』というイメージとは違い、実は暑さに弱いというのが難点ですね。渓流に生息する水質指標生物でもあるため、水温や酸素量などの環境変化にも比較的敏感で、長期飼育は意外と難しい種類だと思います」
――なるほど。では、比較的簡単なのは…?
「初心者の方であれば、ベンケイガニはとても飼いやすい種類かと。丈夫で環境への適応力も高く、陸地と浅い水場を用意してあげれば飼育できます。河口や大きな川の岸辺などで見つけられることもあるので、自分で採集して飼育を始めるという楽しさも味わえると思いますよ」
――それは楽しそうですね。
「もし冬場にヒーターを用意できるのであれば、ヴァンパイアクラブもおすすめです。カラーバリエーションが豊富な小型のカニで、陸地と水場を再現したテラリウムなどで飼育すれば、インテリアとしても楽しめます。見た目が美しいだけでなく、丈夫で意外と長生きする種類なので、初めて熱帯性のカニを飼育する方にも向いていると思います」
――飼育する際に、気を付けたほうがいいポイントはありますか?
「どの種類にも共通して言えることですが、カニは魚のように水だけあれば飼える生き物ではありません。それぞれの種類が自然界でどのような環境に暮らしているのかを知り、その環境をできるだけ再現してあげることが、長く健康に飼育するための一番のポイントだと思います」
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――3年間、単独飼育してきたメスのサカモトサワガニが子ガニを産んだ…というエピソードを紹介した動画、とても興味深く拝見しました。なぜこのようなことが起こったと考えられるのでしょうか?
「私が最も有力だと考えているのは、『サカモトサワガニのメスが我が家へ来る前にオスと交尾し、その精子を体内に保存(貯精)していた』という可能性です。カニ類では、一度の交尾で得た精子を保存し、その後の産卵に利用できるということが知られています」
――まさか、カニにそんな驚きの生態があるとは…。
「ただ私が知る限り、サワガニ科において『何年ぐらい貯精できるのか』ということを明確に示した研究はなく、今回のように約3年という期間を経ても繁殖に至ったことに、正直とても驚いています。深海のカニについては、雌雄が出会う機会が少ないため長期間の貯精能力を持つ可能性が高い、と書いてあった文献を読んだことのある気がするのですが、サワガニ科でここまで長く能力を維持できるとは予想していませんでした」
――今回の出来事で特に印象的だったことを教えてください。
「我が家へ迎えたとき、この個体はプリンカップで販売されていたほど小さなサイズだったので、『すでに交尾を経験している』とは全く思っておらず、そのことが一番の衝撃でした。しかし現在、我が家で繁殖している本土のサワガニで、生後2年ほどの比較的小さな個体の交尾行動を確認しているため、見た目以上に早い段階で性成熟し、繁殖能力を持つ可能性があるのかもしれない…と考えています」
■飼育情報がぜんぜん見つからない! そんな幼少期の経験から“発信する側”に
――るうさんは現在、15種類ものカニを飼育されていますが、さまざまな生き物がいるなかで、なぜカニを選ばれたのでしょうか?
「カニを飼い始めたきっかけは、正直なところあまり覚えていません(笑)。私は幼い頃から父によく海や汽水域、川へ連れて行ってもらっており、そこでさまざまな生き物を採集しては飼育していました。小学校の夏の自由研究でも海の生き物をまとめるなど、とにかく生き物は身近な存在だったんです」
――その頃からカニも飼育されていたのですか?
「そうですね。気が付けば自然とカニを飼っていて、おそらく最初に飼育したのは地元の海で採集したヒライソガニだったと思います。夕食にシラスやマグロの刺身が出ると、こっそりカニにお裾分けしていたことも今では懐かしい思い出です」
――とても素敵な思い出ですね。
「そんな感じで、さまざまな生き物の飼育を経験してきましたが、カニはメダカや熱帯魚に比べて飼育者が少なく、情報が非常に限られているんです。私自身、幼少期にカニやウズラといった比較的マイナーな生き物を飼っていた際には、知りたいことがあっても情報がほとんど見つからず、図書館で蔵書検索をして資料を探し回っていました」
――手探り状態での飼育はご苦労も多かったのでは…?
「そうですね。ただ、その経験があったからこそ『情報が少ないなら、自分が発信する側になろう!』と考えるようになりました。現在、15種類ものカニを飼育しながら情報発信を続けているのは、マイナーな生き物の魅力や飼育方法を、多くの方に分かりやすく伝えたいという思いがあるからです」
――るうさんが思う「カニ飼育ならではの魅力」をお聞かせください。
「表情が少ない生き物だからこそ、何気ない仕草一つひとつに意味を感じられることでしょうか。一般的にカニはじっと隠れているイメージがあると思いますが、実は目を動かしたり、口をもぐもぐ動かしたりと、常になにかしらの行動をとっています。その小さな変化から『いまは落ち着いているな』『これは警戒しているのかな』といった様子や、飼育環境の状態まで少しずつ分かるようになってくるんです」
――そんなに読み取れるように…じっくりと観察してみたくなりました(笑)
「人を見ているのかは分かりませんが、つぶらな目でこちらを見つめてきたり、突然威嚇してきたりする姿は、とても愛らしく、思わず笑ってしまうこともありますよ」
■脱皮事故によりハサミ、脚、口まで失ったカニが見せた生命力とたくましさ
――飼育してきた中で特に印象に残っている行動やエピソードはありますか?
「印象に残っている出来事のひとつは、自宅で渓流の景色を再現しようと水槽をレイアウトした時のことです。私は渓流の景色と、そこに暮らすサワガニの姿が大好きなので、苔や岩を使って理想の景観を一生懸命作り上げました。しかし翌朝、水槽を見ると岩組は掘り返され、丁寧にならした砂には巣穴が掘られ、3000円ほどかけた苔は一瞬で食べ尽くされていまして…」
――そ、それはショックですね…。
「サワガニにとっては人間が作った景観よりも、自分たちが暮らしやすい環境を作ることの方が大切だったのでしょう。その光景はあまりに衝撃的で、呆れるというより笑ってしまいました(笑)。もうひとつ忘れられない出来事は、飼っていたサワガニが脱皮事故によって両方のハサミとほとんどの脚、さらに口の一部まで失ってしまったことです」
――ハサミや脚を失って、餌は食べられたのでしょうか?
「自力で餌をつかめなくなってしまったため、毎日ピンセットで少しずつ餌を与え続けました。仕事から帰宅したら、まずはカニの介護をする…という生活が半年ほど続きましたが、その後の脱皮で少しずつ脚やハサミが再生し、最終的にはほかのサワガニたちと一緒に元気に暮らせるまで回復してくれたんです」
――すごい生命力です…!
「脱皮はカニにとって命がけの行動です。脚の欠損や変形はもちろん、時には体力が尽きて死んでしまうこともあります。しかし、カニには高い再生能力もある。この出来事を通して、カニが持つ生命力とたくましさを改めて実感しました」
■カニ飼育のベテランが考える「初心者におすすめな種類」&「気をつけたいポイント」
――るうさんのお話を聞いて、「カニを飼ってみたい」と興味を抱いた人も多いことと思います。初心者におすすめするカニの種類を教えてください。
「初めてカニを飼うのであれば、個人的には淡水や汽水域に生息するカニがおすすめです。代表的なのはサワガニですが、『丈夫そう』というイメージとは違い、実は暑さに弱いというのが難点ですね。渓流に生息する水質指標生物でもあるため、水温や酸素量などの環境変化にも比較的敏感で、長期飼育は意外と難しい種類だと思います」
――なるほど。では、比較的簡単なのは…?
「初心者の方であれば、ベンケイガニはとても飼いやすい種類かと。丈夫で環境への適応力も高く、陸地と浅い水場を用意してあげれば飼育できます。河口や大きな川の岸辺などで見つけられることもあるので、自分で採集して飼育を始めるという楽しさも味わえると思いますよ」
――それは楽しそうですね。
「もし冬場にヒーターを用意できるのであれば、ヴァンパイアクラブもおすすめです。カラーバリエーションが豊富な小型のカニで、陸地と水場を再現したテラリウムなどで飼育すれば、インテリアとしても楽しめます。見た目が美しいだけでなく、丈夫で意外と長生きする種類なので、初めて熱帯性のカニを飼育する方にも向いていると思います」
――飼育する際に、気を付けたほうがいいポイントはありますか?
「どの種類にも共通して言えることですが、カニは魚のように水だけあれば飼える生き物ではありません。それぞれの種類が自然界でどのような環境に暮らしているのかを知り、その環境をできるだけ再現してあげることが、長く健康に飼育するための一番のポイントだと思います」
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