国内
2026-09-18 11:30
2026年の秋は、インフルエンザなどの感染症が例年より早く動き出している。インフルエンザにおいては1999年に感染症法下で統計を取り始めて以降、2番目に早い流行入り。秋冬の感染症は「冬の病気」と油断していると、思わぬタイミングで体調を崩してしまうことも。今年の秋冬に警戒すべき感染症の傾向や、ワクチンのベストな接種タイミング、予防法について、クリニックフォアの内科医・渥美義大先生に聞いた。
【一覧】インフルだけじゃない!秋冬に注意したい感染症がズラリ
■異例の早期インフル流行の原因は? 今年ならではの症状も解説
──今年の秋冬の感染症の傾向について、全体的な特徴を教えてください。
「ここ数年はマイコプラズマ肺炎や百日咳など、何かしら特定の感染症がイレギュラーに大流行することがありました。今年はマイコプラズマ肺炎も過去よりは少し高い水準で見られていますが、大きなピークを作るような感染症は今のところ見られず、比較的安心できるような状況が続いている印象でした。ただ、インフルエンザが早くも8月の終わり頃から流行を迎えているという点は今年ならでは。我々としても、こんなに暖かい季節に陽性が出てきていることに驚いています」
──なぜインフルエンザがそんなに早く流行しているのでしょうか?
「明確な理由は現段階ではわかりませんが、すでに冬の気候になっている南半球からの渡航者や、日本人が行って帰国した際などに持ち込まれた可能性は考えられます。それらの原因と、日本のお盆や夏休みの人流増加が重なったことなどが考えられるかもしれません」
――症状に特徴はありますか?
「現在はA型のインフルエンザが主流で、高い熱が出たり、節々や大きい筋肉が痛くなったり、それに伴う強いだるさが出るといった、みなさんがイメージされるであろうインフルエンザらしいタイプとなっています。ダラダラと長引くというよりは、夜から症状が出始めて翌日には強い症状になるという、急な発症となる方が多いです」
──では、新型コロナウイルスの動向はいかがでしょうか?
「件数は少しずつ増えてきています。以前話題になった『ニンバス株』のような、『カミソリで切られるように喉が痛い』といった強烈な特徴は今はそこまで見られません。それよりも、数日かけてだんだんと鼻水、咳、熱が出るような、一般的な風邪に近い症状の方が多い印象です」
――この秋に増えそうな型はどのようなものですか?
「『セミ型』と呼ばれる変異株があります。これはオミクロン系統の型の一つで、以前流行したものが2年ほど潜伏し再び出てきたことから、まるで夏に鳴くセミのようである、とのことでそう呼ばれているようです。従来のオミクロン株と大きくは変わらない一般的な風邪の症状とされ、現段階では重症度が高いといった報告はありません」
■ワクチンはいつ打つべき? 効果はどこまで持続するのか
──インフルエンザの流行が早いとなると、ワクチンの接種時期に迷います。いつ頃打つのが良いでしょうか?
「例年、多くの医療機関では10月1日以降からワクチン接種がスタートしますが、今年は流行が早いため、ワクチンの準備ができ次第、9月下旬頃から早めのスタートを切るクリニックも多い状況です。クリニックフォアでも、前倒しで9月18日よりワクチンの接種を開始します。なお、接種後に抗体ができるまでには約2週間程度かかると言われています」
――あまり早く接種すると、冬の間に効果が切れるのでは?と不安ですが…。
「ワクチンは基本的におおよそ5ヵ月ほどかけて徐々に弱まるため、10月頃に打てば12〜2月の流行本番まで十分にカバーできると考えられます。今年は少し早めに接種することを考えても良いと思いますが、多くの自治体の公費助成が適用されるのは10月1日以降。それぞれのご都合に応じて考えてみてください」
──コロナワクチンとの同時接種は可能ですか?
「はい、可能です。インフルエンザワクチンもコロナワクチンも『不活化ワクチン』であり、水疱瘡や麻疹風疹などの『生ワクチン』とは異なります。不活化ワクチン同士であれば、どちらかを打った後に特定の期間を空けなければならないといった制限もありませんので、同時に左右の腕に打つこともできますし、両方打つことは全く問題ありません。ただし、ワクチンは『感染を100%防ぐもの』ではなく『重症化を防ぐもの』と捉えるのが実態に近い理解です」
──熱や咳が出た場合、病院を受診する目安やオンライン診療の活用について教えてください。
「一般的な風邪症状でお薬をご希望の場合は、対面・オンライン診療のどちらでも症状に合わせたお薬のご提案や療養アドバイスを行いますので、ご自身のタイミングで受診いただけます。一方、インフルエンザやコロナを疑い抗ウイルス薬の処方の相談を希望される場合は、お薬の効果が期待できる発症後48時間以内であることと、診断のための検査が必要です。オンライン診療では検査ができないため、対面受診か、市販の抗原検査キットで陽性を確認してからオンライン診療を受診してください。なお、同居家族がインフルエンザの診断でご本人にも高熱などの症状がある場合も、診察に応じて処方が可能な場合があります」
──最後に、私たちが日常生活で気をつけるべき予防策を教えてください。
「体調が悪い時は無理をせずステイホームを心がけ、どうしても外出が必要な場合はマスクや咳エチケットを徹底して周囲に広げないようにすることが非常に重要です。解熱剤で無理に熱を下げて出勤・登校することも、周囲への感染拡大や、自身の回復の遅れにつながることがあります」
――私たちが良かれと思ってやっていることで、意外に効果がない…ということも?
「うがい薬(ヨード系)の使いすぎには注意が必要です。京都大学のグループによる無作為化比較試験では、『水だけでうがいをしたグループ』は風邪の発症が約4割減少した一方、『ヨード液でうがいをしたグループ』には明確な予防効果が確認できませんでした。ヨード系がのどの常在細菌叢まで殺菌し、かえって粘膜のバリア機能を弱めている可能性が指摘されています。また、アルコール消毒が万能だと思われがちですが、秋冬に流行するノロウイルスなどの感染性胃腸炎のウイルスにはアルコールが効かないものもいます」
――そうなんですね。インフルエンザ、コロナ、ノロにも有効な方法は?
「次亜塩素酸ナトリウムでの消毒か、昔ながらの『石鹸でしっかり洗って流水で物理的に流す』というスタンダードな手洗いが最強の対策となります。インフルエンザやコロナはもちろん、水虫菌などにも石鹸での流水洗いは有効ですから、基本に立ち返って手洗いを徹底していただきたいですね」
【監修】クリニックフォア監修医/内科医 渥美 義大
神戸大学医学部卒。東京都済生会中央病院で糖尿病内科スタッフやチーフレジデントとして勤務。現在は糖尿病専門医・日本内科学会認定医として、質の高いプライマリケアの実現と慢性疾患管理の向上に尽力している。
台風が来る前に…備えは雨戸だけじゃない、「頭痛」にも注意を
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■異例の早期インフル流行の原因は? 今年ならではの症状も解説
──今年の秋冬の感染症の傾向について、全体的な特徴を教えてください。
「ここ数年はマイコプラズマ肺炎や百日咳など、何かしら特定の感染症がイレギュラーに大流行することがありました。今年はマイコプラズマ肺炎も過去よりは少し高い水準で見られていますが、大きなピークを作るような感染症は今のところ見られず、比較的安心できるような状況が続いている印象でした。ただ、インフルエンザが早くも8月の終わり頃から流行を迎えているという点は今年ならでは。我々としても、こんなに暖かい季節に陽性が出てきていることに驚いています」
──なぜインフルエンザがそんなに早く流行しているのでしょうか?
「明確な理由は現段階ではわかりませんが、すでに冬の気候になっている南半球からの渡航者や、日本人が行って帰国した際などに持ち込まれた可能性は考えられます。それらの原因と、日本のお盆や夏休みの人流増加が重なったことなどが考えられるかもしれません」
――症状に特徴はありますか?
「現在はA型のインフルエンザが主流で、高い熱が出たり、節々や大きい筋肉が痛くなったり、それに伴う強いだるさが出るといった、みなさんがイメージされるであろうインフルエンザらしいタイプとなっています。ダラダラと長引くというよりは、夜から症状が出始めて翌日には強い症状になるという、急な発症となる方が多いです」
──では、新型コロナウイルスの動向はいかがでしょうか?
「件数は少しずつ増えてきています。以前話題になった『ニンバス株』のような、『カミソリで切られるように喉が痛い』といった強烈な特徴は今はそこまで見られません。それよりも、数日かけてだんだんと鼻水、咳、熱が出るような、一般的な風邪に近い症状の方が多い印象です」
――この秋に増えそうな型はどのようなものですか?
「『セミ型』と呼ばれる変異株があります。これはオミクロン系統の型の一つで、以前流行したものが2年ほど潜伏し再び出てきたことから、まるで夏に鳴くセミのようである、とのことでそう呼ばれているようです。従来のオミクロン株と大きくは変わらない一般的な風邪の症状とされ、現段階では重症度が高いといった報告はありません」
■ワクチンはいつ打つべき? 効果はどこまで持続するのか
──インフルエンザの流行が早いとなると、ワクチンの接種時期に迷います。いつ頃打つのが良いでしょうか?
「例年、多くの医療機関では10月1日以降からワクチン接種がスタートしますが、今年は流行が早いため、ワクチンの準備ができ次第、9月下旬頃から早めのスタートを切るクリニックも多い状況です。クリニックフォアでも、前倒しで9月18日よりワクチンの接種を開始します。なお、接種後に抗体ができるまでには約2週間程度かかると言われています」
――あまり早く接種すると、冬の間に効果が切れるのでは?と不安ですが…。
「ワクチンは基本的におおよそ5ヵ月ほどかけて徐々に弱まるため、10月頃に打てば12〜2月の流行本番まで十分にカバーできると考えられます。今年は少し早めに接種することを考えても良いと思いますが、多くの自治体の公費助成が適用されるのは10月1日以降。それぞれのご都合に応じて考えてみてください」
──コロナワクチンとの同時接種は可能ですか?
「はい、可能です。インフルエンザワクチンもコロナワクチンも『不活化ワクチン』であり、水疱瘡や麻疹風疹などの『生ワクチン』とは異なります。不活化ワクチン同士であれば、どちらかを打った後に特定の期間を空けなければならないといった制限もありませんので、同時に左右の腕に打つこともできますし、両方打つことは全く問題ありません。ただし、ワクチンは『感染を100%防ぐもの』ではなく『重症化を防ぐもの』と捉えるのが実態に近い理解です」
──熱や咳が出た場合、病院を受診する目安やオンライン診療の活用について教えてください。
「一般的な風邪症状でお薬をご希望の場合は、対面・オンライン診療のどちらでも症状に合わせたお薬のご提案や療養アドバイスを行いますので、ご自身のタイミングで受診いただけます。一方、インフルエンザやコロナを疑い抗ウイルス薬の処方の相談を希望される場合は、お薬の効果が期待できる発症後48時間以内であることと、診断のための検査が必要です。オンライン診療では検査ができないため、対面受診か、市販の抗原検査キットで陽性を確認してからオンライン診療を受診してください。なお、同居家族がインフルエンザの診断でご本人にも高熱などの症状がある場合も、診察に応じて処方が可能な場合があります」
──最後に、私たちが日常生活で気をつけるべき予防策を教えてください。
「体調が悪い時は無理をせずステイホームを心がけ、どうしても外出が必要な場合はマスクや咳エチケットを徹底して周囲に広げないようにすることが非常に重要です。解熱剤で無理に熱を下げて出勤・登校することも、周囲への感染拡大や、自身の回復の遅れにつながることがあります」
――私たちが良かれと思ってやっていることで、意外に効果がない…ということも?
「うがい薬(ヨード系)の使いすぎには注意が必要です。京都大学のグループによる無作為化比較試験では、『水だけでうがいをしたグループ』は風邪の発症が約4割減少した一方、『ヨード液でうがいをしたグループ』には明確な予防効果が確認できませんでした。ヨード系がのどの常在細菌叢まで殺菌し、かえって粘膜のバリア機能を弱めている可能性が指摘されています。また、アルコール消毒が万能だと思われがちですが、秋冬に流行するノロウイルスなどの感染性胃腸炎のウイルスにはアルコールが効かないものもいます」
――そうなんですね。インフルエンザ、コロナ、ノロにも有効な方法は?
「次亜塩素酸ナトリウムでの消毒か、昔ながらの『石鹸でしっかり洗って流水で物理的に流す』というスタンダードな手洗いが最強の対策となります。インフルエンザやコロナはもちろん、水虫菌などにも石鹸での流水洗いは有効ですから、基本に立ち返って手洗いを徹底していただきたいですね」
【監修】クリニックフォア監修医/内科医 渥美 義大
神戸大学医学部卒。東京都済生会中央病院で糖尿病内科スタッフやチーフレジデントとして勤務。現在は糖尿病専門医・日本内科学会認定医として、質の高いプライマリケアの実現と慢性疾患管理の向上に尽力している。
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