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政府のムダ削減進めるマスク氏が目の敵に…「USAID」とは?東日本大震災では日本にも支援 「陰謀論」との指摘も【news23】

海外
2025-02-13 13:37

アメリカ・トランプ大統領から『ムダ削減』を任され、大なたを振るっているイーロン・マスク氏。いま、ターゲットとしているのが途上国の支援などを行うUSAID=国際開発局。なぜ、狙われているのでしょうか。


【グラフで見る】2023年の支出は約6.5兆円 USAIDの年間支出は右肩上がり


アメリカ湾“改称”に「いい響きだ」

9日、フットボールの王座決定戦「スーパーボウル」観戦のため、専用機で移動していたトランプ大統領。機内ではこんなアナウンスが…


アナウンス
「エアフォース・ワンは現在、国際水域にいます。名称変更されたアメリカ湾上空を飛ぶのは歴史上初めてのことです」


トランプ大統領
「うまくやったね。いい響きじゃないか。アメリカを再び偉大な国にしようということだ」


就任初日に「メキシコ湾」を「アメリカ湾」に改称する大統領令に署名したトランプ氏。


大統領令を受けてGoogleは「Google Map」上での表記を「アメリカ湾」に変更。ただ、メキシコでは「メキシコ湾」のまま表記、その他の国では「メキシコ湾(アメリカ湾)」と表記されるようになりました。


アメリカ第一主義の大統領令を連発するトランプ氏。11日は、イーロン・マスク氏と息子のX君(4)とともに大統領執務室にいました。


トランプ大統領
「X大丈夫か?この子がX君だ。いい男でIQ(知能指数)が高い」


最高権力者を前に、自由に振る舞う4歳のX君。


イーロン・マスク氏
「息子が遊んじゃって…私の耳に指を突っ込んでいるんだ。ちょっと聞きづらくて。やめなさい」


マスク氏が敵視「USAID」とは

トランプ大統領
「重要な署名をするぞ。DOGE(政府効率化省)についてだ。何十億ドルもの金が浪費・不正搾取・悪用されてきた。それが当選した理由の一つだ」


マスク氏が進める政府の効率化に関する大統領令。マスク氏に協力し、人員の削減や部局の廃止などを進めるよう各省庁に命じるものです。


イーロン・マスク氏
「この国の官僚機構は、憲法に反する第4の権力として、選挙で選ばれた議員たちより大きな力を持っている」


これまで300兆円以上の支出を削減できると豪語してきたマスク氏。1月末には、200万人以上の連邦政府職員に、一斉メールで「人生の分かれ道。2月6日までに退職を決めれば9月30日までの給料を支払う」という選択を迫りました。


マスク氏がツイッター社を買収したとき、従業員に退職を迫ったのと同じようなやり方。


そして、削減の大きなターゲットとして名前を挙げているのが「USAID」です。
「USAID」とはアメリカ国際開発局のこと。世界各国で人道支援や開発支援を行う政府機関ですが、トランプ氏もこう批判します。


トランプ大統領(2日)
「急進的な狂人が運営するUSAID。私たちは彼らを追い出す。そして決断を下す」


約1万人の職員全員に、休職の通知が送られたというUSAID。


記者
「USAIDの本部です。大きなロゴマークがありましたが、黒いビニールで覆われています。その上の看板も外されていて、うっすらと跡が残っています」


事実上の閉鎖となっていますが、トランプ氏・マスク氏のコンビからなぜそこまで批判されているのでしょうか。


アメリカ政治に詳しい 明海大学 小谷哲男教授
「(トランプ氏らは)闇の政府が自らのやりたいことや私腹を肥やすために、政府予算を無駄遣いしていると考えている。その大元の一つがUSAIDだと考えている。陰謀論だが、トランプ氏の支持層の中には一定程度この陰謀論を信じている人たちがいる。一番多いのはオバマ元大統領が未だに裏で政府を動かしているということ。陰謀論は全く事実に反したものだと言える。USAIDは100か国以上で様々な支援をしているので全体像が見えにくい」


USAIDの支出は右肩上がりに増えてきました。バイデン政権の2022年に大きく跳ね上がっていますが、この年にウクライナ侵攻が始まりました。2023年の支出は約420億ドル、日本円で6兆円を超えています。


USAIDの支出先を見える化した地図を見ると、最も額が大きいのはウクライナで、日本にも薄く色がつけられています。


「USAID」閉鎖の弊害は

岩屋毅外務大臣
「我が国は過去の自然災害において、USAIDから支援を受けたことがある」


2011年の東日本大震災では、USAIDの関係者が現地で救助活動や、物資の輸送などを行いました。


ーーUSAIDの活動は価値があると考えるか?


イーロン・マスク氏
「価値があるものもある。しかし、全体的に見れば費用対効果はあまりよくなかった。USAIDが行っていたことは選挙に影響を与えるような、怪しげで白日の下に晒せないようなやり方が多かった」


トランプ大統領
「USAIDは一つだ。軍も見ていくし、教育も見ていく。もっと大きな分野だ。しかしUSAIDは非常に腐敗している。無能で本当に腐敗している。彼(マスク氏)はビッグビジネスマンで成功している男だ。だから彼にこの仕事をやらせている。成功のない男にはやらせたくない」


「マスク大統領を解雇しろ」「イーロン・マスクに投票した人はいない」など、強引な削減策に、議事堂前では抗議デモも。


デモ参加者
「悲劇だ。アメリカにとっても国際的にも。やっていることがめちゃくちゃ」
「一つの部署に人が多すぎるとか非効率なら、段階的にやっていかなきゃ。いきなり閉鎖はダメ」


政府の効率化に向けて大なたを振るうマスク氏。しかし、世界各地での支援活動を止める弊害について小谷教授はこう指摘します。


明海大学 小谷哲男教授
「明日食べるものがない、飲める水がないという人たちに援助が届かないし、教育支援が滞ることで、途上国においてテロリストが貧しい人たちを雇用し、アメリカに対しテロを行うこともある。アメリカの国際社会における影響力が大幅に低下していくと考えられるし、アメリカが海外援助から手を引く分、中国・ロシアの立場を支持する国が増えるということもある」


「USAID」とは?トランプ氏“無駄”

小川彩佳キャスター:
「USAID」を巡っては、今すぐ完全になくすわけではなく、国務省の一部門として機能させるという報道もあります。しかし、どの事業がどれだけの規模で存続するのかは全く不透明です。ネット上では様々な情報が飛び交っていますが、一体何が真実なのでしょうか。


23ジャーナリスト 須賀川拓 記者:
陰謀論が飛び交っていますが、「陰謀論なんて関係ない」と言うのは簡単で、その過激な陰謀論が生まれる背景を考えなければいけません。

トランプ氏が敵視している「USAID」ですが、「過激な左翼の狂気」とまで表現しています。しかし実態は異なり、紛争地の難民支援や世界の公衆衛生にも大きく寄与してきました。

今回のトランプ氏の動きで、既に現場レベルでも影響が出てきていると聞いています。実際、国連で支援事業をしている日本人の女性の方にもお話を伺いました。


国連人道支援関係者 大津さん:
ナイジェリアの場合は、公衆衛生や保健関係がかなり大きく占めていて、2022年から2024年の2年間で10億や20億ドルくらいのHIV患者へのサービスとしてかなり莫大な予算を下してサポートしている。最終的に影響を受けるのは支援対象者なので、HIVの患者の方の場合は1か月に1回、HIVの治療薬のパッケージをもらうが、それもどこかで止まってしまうかもしれない

不正があったとか賄賂を受け取ったという事実がもし本当にあるとすれば、支援事業を止めるのではなく、それを証拠を持って解明して、しっかりと組織改革をするのが通常のプロセスだと思う。


トラウデン直美さん:
支援の意味も重要ですが、それ以外にもアメリカにとっては、外交的な意味もあるはずです。大幅に支援を引き上げてしまって大丈夫なのかと思います。

イーロン・マスク氏は選挙で選ばれたわけではないのにも関わらず、ここまで幅を利かせていることに対する批判の声も多いのではないでしょうか。


藤森祥平キャスター:
米・キニピアック大学が行った調査では、「マスク氏がトランプ政権で重要な役割を果たすことを支持するか」について、▼支持…39%▼不支持…53%と、不支持のほうが大きいという結果が出ています。


須賀川拓記者:
ある種社会的・経済的に成功した企業家が、ビジネスマインドや効率化重視で政治をコントロールしてもいいという意識が広く浸透してしまうと、民主主義の価値そのものが薄れてしまいかねない、非常に危機的なことです。

一方で、様々な支援事業が無駄なく完璧にできているかというと、そうではありません。私も取材でパキスタンやアフガニスタンなどに行った際に、支援機関が必要以上に贅沢な施設や移動手段を使っているケースも散見されました。組織が大きくなると、どうしても無駄が生じてしまう。それを納税者が嫌がるのも、全くわからないわけではないと思います。


ホワイトハウス「USAID」の「無駄」リスト発表 支援の実態は

藤森キャスター:
丁寧な議論や進め方に問題があるのではないかということですよね。


3日、ホワイトハウスはホームページ上で、USAIDにおける「無駄」のリストを発表しています。


▼セルビアでの職場の多様性促進…150万ドル
▼ベトナムでの電気自動車普及…250万ドル
▼ペルーのトランスジェンダー漫画…3万2000ドル
▼グアテマラの性転換LGBT活動…200万ドル


思惑として、アメリカ国内の経済が厳しく、「国内にもっと目を向けてくれよ」という国民の声を汲み取っているという表れかもしれません。


トラウデン直美さん:
必要のない部分もあるのかもしれませんが、政府が「無駄」として発表したものに対し、少し恣意的なものを感じてしまいます。その背景には、数年間のリベラルな流れの中で、環境保護や多様性の尊重がかなり性急に進められ、私はその流れを支持する気持ちがあります。

しかし、それとは異なる意見の人々が、意見を発しにくい土壌ができてしまっているとも思います。それがトランプ氏を支持する、支援が無駄だという声が大きくなっている背景にあるのではないでしょうか。どんな意見を出すときも、反対側の意見を出せる環境を作っておかないといけないというのは強く感じます。


小川キャスター:
そうした不安や不満は、視野をどんどん狭めていく部分もあるのではないかと感じます。そもそもアメリカ国民は、「USAID」をどのように捉えていたのでしょうか。


須賀川拓 記者:
国民の総意はわからないですが、トランプ氏やマスク氏に賛同している人たちは、まさにこうした政府が「無駄」として発表した情報に触れています。非常に刺激的な数字と内容ではありますが、本来ならば政府機関として、数字の根拠となる元の調査資料や原点を提示するべきです。
しかし、その根拠として、「Mail Online」や「The Daily Caller」など自分たちにとって都合の良い情報をあげています。それをホワイトハウスのホームページが行っている異常性に、トランプ支持者が気づきづらい状況になっているのは由々しき事態だと思います。


どんな支援機関も、組織の運営にはお金がかかります。一般的にも、寄付した半分ぐらいの金額は組織の運営に使われていると言われています。

だからこそ無駄があるのであれば、スリム化していく必要はあると思います。小さな膿を出すために、世界で最も裕福な人が、世界で最も恵まれてない人たちへの支援を、ドラスティックな改革でいきなり解体しようとするのは、あまりにも乱暴な方法だと感じます。やはり段階的な手段は必要だと思います。


マスク氏の手法について「みんなの声」は

NEWS DIGアプリでは『マスク氏の手法』について「みんなの声」を募集しました。


Q.イーロン・マスク氏が率いる「政府効率化省」の手法 どう思う?


「大いに賛成」…4.9%
「賛成」…6.0%
「進め方がやや強引」…35.9%
「反対」…50.0%
「その他・わからない」…3.2%


※2月12日午後11時17分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは13日午前8時で終了しました。


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<プロフィール>
須賀川拓 記者
前JNN中東支局長 ガザやアフガンなど取材
「ボーン・上田記念国際記者賞」受賞

トラウデン直美さん
環境問題やSDGsについて積極的に発信
趣味は乗馬・園芸・旅行


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情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

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