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ホンダ・日産 経営統合破談“2つの理由” 日本の自動車産業の今後は【Bizスクエア】

経済
2025-02-26 07:00

自動車グループ世界3位を目指したホンダと日産による歴史的な経営統合は、わずか1か月半で破談となった。両社は、今後どのような道を進み始めるのか。限られた選択肢の中からベストな道を選ぶことはできるのか。


【画像でみる】ホンダ・日産 経営統合破談で生き残る道は…


ホンダ・日産 統合破談の背景は 日産・内田社長には厳しい声も…

破談から一週間あまり。神奈川県横須賀市にある日産の追浜工場では「ホンダの言っていた通りスピーディーに成し遂げておけばよかった」「日産のブランドが好きで日産に入ったのでブランドを残してほしい」「最初にホンダが言ったような持ち株会社に2社がぶら下がる形がいい」取材に応じてくれた日産の社員からは経営統合の破談を惜しむ声が聞かれた。


ホンダ 三部敏宏社長:
経営統合実現に踏み出すことができなかったのは、大変に残念。


日産自動車 内田誠社長:
我々にとって自主性はどこまで守られるのか。私たちは最後まで確信を持つに至らず、この提案を受け入れることはできなかった。


経営統合に向けた協議では、ホンダが示した「100%子会社化」案に日産が強く反発。統合案が白紙となった。


取材を続ける経済部の梅田記者は…


TBS経済部 梅田翔太郎記者:
なぜ破談になってしまったか端的に言えば、ホンダはスピード感を求めるがゆえに焦り過ぎてしまった。日産は日産で、会社の構造が硬直化していて、物事をすぐ決められなかった。
双方に取ってもやはり会社の体質として合わなかった部分もあってうまくいかなかった。


経営統合の再交渉の可能性については…


TBS経済部 梅田翔太郎記者:
(ホンダと日産が)今すぐにもう1回、交渉のテーブルにつくのは難しい。ないと両社の幹部がはっきり言っている。鴻海や自動車会社のテスラが組むという話が日産に対して下りてきていたりする中で、この2社とも日産がうまくいくかどうかは、まだわからないないというのが、正直なところ。その上でいろいろ調整してうまくいかなかった結果、またホンダと話し合いを始める可能性はゼロじゃないなと思っている。


また、日産・内田社長の進退については、厳しい声が上がっていると言う。


TBS経済部 梅田翔太郎記者:
社内では経営統合をまとめられなかったことや、日産の今の経営状況の悪化という観点で、内田社長に対する辞任を求める声っていうのが、社内からも社外からも高まっているのが現状。日産は4月に経営体制の刷新を行う予定。そこに内田社長自らが入ってくるのかというのも一つのポイントだと思っている。


ホンダ・日産 生き残る道は… 日本の自動車産業の今後は…

日産のディーラーで20年以上働く社員は、日産に対して「日産自動車に対しては裏切られた感が強い。我々2月3月が1年間で一番車が売れる時期。日産に足を向けてくれるお客様がすごく少ないのかなと感じる。社長の記者会見であった通り、売る車がないというのはもう我々10何年前から現場で言っていること。何を今さら言っているんだというのが正直なところ。そんなのわかってるんだったら、(車を)作れという話。どんどんお客様は(他に)流れていく現場の士気も下がるし、営業マンだって悲しい。10年、20年経って、ずっと付き合っていたお客さんがサクッといなくなるから」


今回の破談は、日本の自動車産業にとって、何を意味するのか。30年以上にわたり自動車産業の調査に携わってきた中西孝樹(なかにし・たかき)さんは…


ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹代表アナリスト:
8社の自動車メーカーが乱立しているというのは、先進国では本当に日本だけ。自動車というのは、これからソフトウェアの時代になっていく。ソフトウェアは開発するのにも規模が必要だし、データを集めるのも規模が必要。日本の自動車メーカーが8社、独立で存続するというのはもうどう考えても不可能。


日産は、2025年度通期の業績予想で、800億円の最終赤字が見込まれるなど、苦境に立たされている。今後生き残る道については…


ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹代表アナリスト:
(日産は)時間的ゆとりがない。外部環境、(トランプ)関税の話が出ているため、マイナスのダウンサイド(損失を受ける可能性)がいっぱいある。日産は一日も早く自分たちの再建を支えてくれる資金の出し手だとか、あるいは技術の出し手、事業のシナジーを作るそういったパートナーを見つけなければいけないという意味において、本当に切羽詰まった状態にいる。頻繁に名前が上がっているのが、台湾の鴻海。


台湾の鴻海精密工業は、「iPhone」の受託生産で成長を遂げ、2016年に日本のシャープを買収。EV=電気自動車の開発を支援するなど連携を強化していて、日本市場への進出を狙っている。


ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹代表アナリスト:
資金あるいはソフトウエアの技術で日産にメリットを大きく提供することは可能。ただ問題は鴻海はどこまでいっても電気自動車を作る。自社ブランドもあるが、他の自動車メーカーの車を作って、ものすごいスケール(規模)で作ることによって、コストを下げてわずかながら利幅を稼いでいくようなファウンドリー(受託生産)の商売。鴻海のビジネスモデルを考えると、日産が持っている膨大なサプライチェーンが本当に活かされるかどうか、非常に先行き不安。


一方、ホンダの今後について、中西さんは…


ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹代表アナリスト:
(ホンダは)チップから自動運転ソフトから、様々な技術を電池もそうだが、全部自前でやろうとしている。ホンダはやはり垂直統合型の自前主義的な将来技術。要素技術を全部本当に自前でやる必要があるのか、ないのか。それをやるためには規模が必要。その規模を補完するパートナーはなかなかこれから見つけていくのは難しいと思う。ホンダは、自分たちの戦略を独自で進めますと言っているが、難しいから日産のアライアンス(業務提携)を選んだわけで、いみじくも経営統合を選択したのは、ホンダの戦略にも大きな限界があることを自らそれを吐露してしまった状態。その戦略を実現するためにはホンダは次何をやらなければいけないか、どうやって戦略を修正していくのか。考える時間はあるわけだが、いま日産非常に苦しんでる姿は逆に言うと、ホンダの5年後の姿。


そして日本の自動車産業の今後について、中西さんは…


ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹代表アナリスト:
世界のある一定の比率、例えば2割とか3割そういったものがどんどんテスラ的なあるいは中国OEM(他社ブランドの製品製造)的な価値に置き換わったとする。残りの70%はまだまだ伝統的な価値観が残っていて、日本の自動車産業としてはトヨタを軸とした勝ち筋で、日本が勝つというものを目指そうとしてると思う。(トヨタの)ウーブン・シティが実際のサービスになるのは2030年からで先の話なわけですから、トヨタが見据えているものは残った市場でできるだけ稼いで、しっかりと投資しながら2030年でまた自分たちの有利な価値を作っていきたいという戦略。(一方)ホンダ・日産というものをどうやって、世界の中で勝ち残れるブランドにしていくか。うまく別れた後でも両社が勝ち筋を作っていくというものができれば、ある一定の規模と競争力を維持できると思う。そこにしっかりとした勝ち筋をやっぱり見出していくということが大切なんだと思っている。


――経営学専門の立場から見て、どうか。


早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄氏:
私自身は経営統合の報道があったときから、これはうまくいかない、ディール破談するのではないかと。理由は2つあって、両社の企業文化があまりにも違う。どちらかというとホンダは現場主導で技術屋さんの会社。日産はどちらかというとお堅いというか、やや官僚主義的なところもあるような会社で尺度が全然違う。なので、ここはうまくいくはずがないというのが一つ。それからもう一つ、この2社が組んでもあまりメリットがない。両社とも北米が中心。北米のパイも限られているので、スケールメリットを追求してもそれほどでもないし、一部にはホンダが日産の電気自動車の技術を取りたいっていう話もあるようだが、そこまでの技術なのかという話もあるし、むしろ今、中長期的に勝ち筋になるような戦略を考えた上で、異業種と組んでくような経営統合ならわかる。非常に似た会社が、例えば企業文化だけあったら違うといったところが組むことにあまりメリットが見出せないと思う。


――日本は、自動車で持っている国。日本が生き残っていけないっていう危機感がある。


早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄氏:
おそらくこれから10年ぐらいの間はまだ大丈夫。ハイブリッドが今欧米の主力になってきていて、どうも電気自動車一本槍もハイブリッド中心なってきてると。そうするとトヨタはハイブリッド強いですしホンダもハイブリッドを持ってるんで、この辺りで比較的、残存者利益が取れる可能性がある。一方でこれから大きな構造転換があるのは間違いなくて、実際にもう中国はほぼ日本車メーカーは勝つのが不可能な状態。もう完全に地場系にやられて下手するとこれから撤退がどんどん始まるのではないかという状態。それからおそらくこの中国のEVの波が既に東南アジアにはかなり浸透してきていて、タイなんかは今もう中国製のEVが相当走っている。なので、10年ぐらいは何とかなる可能性があるが、その先のEV含め、自動走行を含めて大きな構造転換のときにどういう戦略を持っているのかというのが極めて重要だ。


5年や10年後かに日本の自動車産業が引き続き世界をリードできる立場になっているかどうか。今のね自動車産業の勢力図を見てみる。2024年の新車販売台数のランキング。1位がトヨタ。2位がフォルクスワーゲンで3位に韓国のヒョンデ。7位に中国のBYDが入ってきていて、テスラは178万台。だから、もう既にホンダや日産より販売台数はBYDが上にあったり、ヒョンデ(現代自動車)も遥かに上だ。BYDやテスラが出している電動車的な作り方みたいなものに世界が席巻されるのではないかという恐怖心がある。


それから世界の販売台数の世界比較。見ると驚いたが、中国が世界一の自動車市場で1年に3000万台、アメリカが1600万台、日本はインドにも抜かれている。新しい価値がある車をどうやって作るかということと、中国とアメリカで車が売れないと、自動車メーカーは生き残れないということだ。


早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄氏:
中国は先ほど言ったように、ほぼ完全に地場メーカーが席巻しているので、日本車もドイツ車ももう売れないという状況になってきている。中国は諦めた方がいい。そうすると、アメリカですが、日産の場合、ホンダはまだアメリカで売れているが、日産はアメリカで全盛期よりも4割減ぐらい。ヒット車がないというのが今の苦境に繋がっているということ。


――とにかく、新しい価値を作っていくことが大事か。


早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄氏:
ポイントはその新しい価値が何かということ。どこの企業も今は頭を悩ませていてまだわからない。はっきりとした道筋は見えてない。


――BYDやテスラが、最後の勝利者になれるか。


早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄氏:
まだそれはわからない。トヨタが今ウーブン・シティをやってるというのは、自動車を動かすというだけのビジネスモデルだと、もう価値が出せなくてだったら、もうまちづくりからやって、住宅や建物と自動車を融合させるような世界を作っていく。もしかしたら不動産デベロッパーみたいな事業まで乗り出すっていうことまで考えているのが、一つの勝ち筋になるかもしれないと思ってやっている。ホンダは、私の視点だが、元々、内燃機で祖業はオートバイだから、四輪自動車にこだわる必要はない。今伸びつつある飛行機やロボット、元々農業機械もやっている。中長期的にはロケットを作ることだってあり得ると思う。そういう多角化をした総合重機メーカーみたいになるという勝ち筋もないわけではないと思う。


――もう一つ、日本は、繊維、鉄鋼、電気自動車と来て、次に何があるのか。


早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄氏:
視点を変える必要があると思っていて、確かに今までみたいな直線的な感じで自動車となると「次は何か」と思うが、実は意外と既存の製造業の中にも、これからむしろ価値を出しうる業界で結構ある。例えば今一番期待してるのはいわゆるIoTと呼ばれる分野で製造業と物作りとデジタルを融合させることで、新しい価値を出すという会社。例えば既に勝ち出してるのがコマツ。スマートコンストラクションという、もの作りとデジタルを融合させて、今成功している。それから工作機械でDMG森精機という会社があり、ここも今世界的に飛躍しているが、工作機械はデジタルとすごく相性いい。こういうIoTで新しい価値を作っていくというのが、一つのやり方だ。


――要はビジネスになるもの、そこを見つけていくことが大事だ。


早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄氏:
おっしゃる通り。半導体もそうだ。半導体そのものよりも今、周辺産業の素材のところが、日本はものすごく強いので、様々な化学メーカーとかが今まで持っていたもので、そういう半導体関連領域とか新しいものに入っていく可能性が結構あると思う。


(BS-TBS『Bizスクエア』 2月22日放送より)


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情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

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