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“自宅会談”で自動車関税の打開策は?USスチール買収“承認”の背景と交渉への影響【Bizスクエア】

経済
2025-05-28 06:00

関税を巡る日米交渉3回目と相まってトランプ大統領が「日本製鉄のUSスチール買収」を認めるようなSNSを投稿。その裏にあった狙いと日米関税交渉への影響は?


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「トランプ氏から」45分電話首脳会談

23日、関税をめぐる3回目の交渉のためアメリカへ出発した赤沢亮正経済再生担当大臣。
その出発のわずか30分後、石破総理とトランプ大統領が約45分間にわたって電話会談を行った。会談はトランプ氏からの申し出だったという。


関税措置をめぐり石破総理は「日本の立場を伝えた」と話し、日米交渉についての具体的な進展や合意に向け良い感触が得られたか聞かれると…


石破総理:
「お互いに努力をしてWin-Winの関係を築いていこうということは、会談全般において確認されたと考えている」


25%の自動車関税「設備投資難しい」

今回の交渉で注目されるのは、25%の追加関税がかかっている自動車関連だ。


【日本へのトランプ関税】
<品目別>
▼鉄鋼・アルミニウム(3月12日発動):25%
自動車(4月3日発動):25%
自動車部品(5月3日発動):25%
<相互関税>
▼全世界一律(4月5日発動):10%
▼上乗せ分(7月9日まで猶予):14%


21日から横浜市で開催された最新の自動車技術を集めた展示会「人とくるまのテクノロジー展2025」でも、部品メーカー各社から不安の声が聞かれた。


『木村鋳造所』檜垣憲太郎副社⻑:
長期的な見通しが立ちにくい。いつどのぐらい設備投資をしたらいいか難しい状況になってきた」


『ジヤトコ』佐藤朋由社⻑兼CEO:
「一番願いたいのはフリートレード。個人的には、関税は“5%レベル”であれば許容できるかもしれない」


米・自動車所管閣僚と“自宅会談”で成果は?

そして日本時間23日の夜中から始まった“ベッセント財務長官”不在の関税交渉。
赤沢大臣は、ラトニック商務⻑官、グリア通商代表と相次いで協議した。


赤沢大臣:
「今後6月のG7サミットの機会のありうべき日米首脳会談の接点も視野に、閣僚間で緊密に協議をしていくことになった」


ベッセント財務長官抜きでも訪米した【今回の会談の意味】はどこにあるのか。
ワシントン支局の涌井文晶記者によると、
「19日から4日間行われた〔事務レベルの協議〕をいったん〔閣僚レベル〕にあげ、認識の共有や課題のあぶり出しの狙いがあった」という。


では、【自動車関税での打開の兆し】は掴めたのだろうか?


涌井記者:
「自動車を所管するラトニック長官が今回、赤沢大臣を“自宅に招いて“会談したことで距離を縮める機会になった可能性はある。ただトランプ政権はイギリスに対して自動車関税を10%に引き下げる10万台の枠を設けたことも、“特別扱いだ”と明言しているので、今後の交渉も難しい状況が続くと見られる」


赤沢大臣は30日にも再び訪米し、ベッセント財務⻑官と協議する方向で調整している。


“勝利アピール”を計算?USスチール買収「承認」か

関税のもう一つの焦点である鉄鋼をめぐっては、日本時間24日朝にトランプ氏が【日本製鉄によるUSスチールの買収】についてSNSに投稿。


<これはUSスチールと日本製鉄の間で計画されたパートナーシップであり、少なくとも7万人の雇用を創出し、アメリカ経済に140億ドル(約2兆円)を追加するものだ>


投稿には明確に日本製鉄による買収を認めた表現は含まれていないが、
日本製鉄は「ご英断に心より敬意を表する。米国鉄鋼業、さらには米国製造業全体にとって画期的な転機となるものだ」とコメントを発表した。


少なくとも肯定的な【結論に至った背景】には何があったのか。
ワシントン支局の涌井記者は、24日時点ではホワイトハウスからの正式な発表はなく、日本製鉄が求めていた完全子会社化を認めたかなどは明かではないとしたうえで、「トランプ氏にとって『勝利だ』『成果だ』とアピールできる結論にいたった」とみる。


涌井記者:
「投稿では<USスチールはアメリカに留まる>とも綴っているので、『買収は認めない』としてきたこれまでのスタンスを大きく変えない範囲で<少なくとも7万人の雇用><140億ドルの経済効果>とアピールできる形になったと判断したのではないか。トランプ氏は30日にはUSスチール本社があるピッツバーグで集会を開くとも表明していて、選挙で毎回激戦州になるペンシルベニア州の労働者にアピールできる材料になるという計算もあるとみられる」


日鉄のUSスチール買収を巡っては
▼米・大統領選の真っ只中に、トランプ氏が先にネガティブなコメントを出し
▼バイデン前大統領が追いかける形で、国家安全保障上の懸念を理由に中止命令
▼3月にトランプ氏が政府の「外国投資委員会」に審査のやり直しを命令。委員会は21日までに審査を終え結果をトランプ氏に報告していた。


一方、今回の結論は「日鉄の粘り勝ち」と評価するのは、金融・日本経済を中心に調査研究する矢嶋康次さんだ。


『ニッセイ基礎研究所』エグゼクティブ・フェロー矢嶋康次さん:
「元々この買収案件はアメリカにとっても良い話だったと思うが、政治的に二転三転し元々の大筋に戻ったということ。買収がうまくいくかわからないという見方は結構あったが、胆力というか粘り強さが日本製鉄にはあった。最初に言っていた話を長期的に戦略的に進められたというのが今回の勝利を産んだのではないか」


ーー投資もする、雇用も続ける。アメリカの鉄鋼業が復活し、高性能の自動車用鋼板がアメリカで作れるようになるかもしれない。これは鉄鋼も自動車もアメリカで作れということとマッチする


矢嶋さん:
「トランプ政権が言っている目標・課題を全部クリアしてる話なので非常にいいことだと思うが、日本サイドから見ると140億ドル(約2兆円)の投資はどうなのか…?というところは逆に今後色々な評価が出てくると思う」


「相互関税10%・品目別25%」で成長率試算

また、USスチールの話が日米関税交渉と相まって出てきている点も重要だ。
矢嶋さんも播摩卓士キャスターも、石破総理とトランプ氏の電話会談は「日鉄の話だった」とみている。


ーー米国への投資が増えることが、関税交渉を合意に導く1つのポイントでもある


矢嶋さん:
「やはり自動車関税が日米交渉の一番のポイントだと思うが、そこでも日本がアメリカで投資をしているというところが鍵になる。その一つの案件として日本製鉄の2兆円以上の投資は、ディールに使えるものすごく良い材料」


日本の対米輸出では(2024年度・財務省「貿易統計」より)
▼【自動車】⇒28.6%で6兆1919億円
▼【自動車部品】⇒5.6%で1兆2081億円
自動車関連の就業人口は558万人で、25%の追加関税が長く続けば日本経済にとって大きなダメージになるというシミュレーションも出ている。


【日本の実質GDP成長率】
※相互関税10%、自動車など品目別関税25%の場合
▼2025年4-6月期⇒マイナス成長
▼その後少し伸びるも、伸び率は低く「何かショックが起きればすぐにマイナス成長になる」(矢嶋さん)
▼2025年度の成長率は0.3%と予測
(内閣経済社会総合研究所資料よりニッセイ基礎研究所作成)


ーーつまり自動車関税25%が続くと、日本経済は2025年もゼロ成長になってしまうと


矢嶋さん:
「日本経済の下期で色んなことが多分悪い方向に変わるので、日米交渉上<品目別の25%>を受け入れるわけにはいかないと。最近のアメリカの中国やイギリスとの交渉を見ると、相互関税はどうも10%以下には下がらない。自動車もイギリスは下がったと言っても10%。そうすると日本の目標観をどこに持っていくのかが交渉での本丸の話になっていると思う」


賃上げ好循環は「崩れる」

ーー関税の時期や率によっては、これまでの【賃上げ好循環ストーリー】が完全に崩れる可能性もあるか


矢嶋さん:
崩れると思う。企業の経営から考えると、先がわからないので設備投資をちょっと待っている状態。関税がこのままだと恐らく設備投資をやめてしまう。その後に従業員の賃金を今までみたいに払うことは難しくなるよねとなって、夏場以降はコメントが変わってくると思う。好循環の流れが少し止まるリスクは非常に高くなってる


(BS-TBS『Bizスクエア』 2025年5月24日放送より)


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