「103万円」「106万円」「130万円」など“働き控え”の原因になっていると言われる様々な年収の壁。いま注目されているのは、所得税が生じる「103万円の壁」ですが、実は専門家からは「ラスボスは130万円の壁だ」との意見も。どういうことなのでしょうか?
【写真を見る】「あとどれくらい働けるか…」年収103万円は壁ではない? 働き控えの“ラスボス”は130万円の壁? ファイナンシャルプランナー塚越菜々子さんが解説【news23】
新外務政務官に生稲晃子氏 “不記載議員”は起用せず
11月13日夜に行われた、新たな政務官の記念撮影。
外務政務官に当選1回の生稲晃子参院議員、内閣府政務官に今井絵理子参院議員が就任しました。
――意気込みはありますか?
生稲晃子新政務官
「もう精一杯与えていただいた仕事を頑張ってまいります。よろしくお願いします」
――特に力を入れていきたいことは?
生稲晃子新政務官
「それはもうこれから―――はい。頑張ってまいりますので、またよろしくお願いします。ありがとうございました」
石破総理は裏金問題で収支報告書に不記載があった議員については、まだ国民の理解を得られないなどとして起用しませんでした。
一方、国民民主党は玉木代表の不倫問題について党の倫理委員会が調査することを決定。
国民民主党 榛葉賀津也幹事長
「プライベートのこととはいえお騒がせをし、国民の皆さんに失望を与えたわけですから、まず我が党として倫理委員会に委任をして調べてもらうということです」
玉木氏は、倫理委員会の調査結果が出るまで代表としての職務を続けるということです。
103万円だけじゃない… 働き控え招く「年収の壁」
国民民主党が強く求めているのが年収「103万円の壁」の引き上げ。
年収103万円を超えると所得税がかかり“働き控え”を招いているとして、103万円の壁を178万円に引き上げると訴えています。
実際、街で聞いてみると…
大学生(アルバイト・20代)
「1年間で103万円とか。大体月々で8万円くらいを目安にシフトを出してくださいって」
大学生(アルバイト・20代)
「(2024年)前半に稼ぎ過ぎちゃったので後半抑え気味で。親からも(103万円を)超えないでねと言われているので」
アルバイトで働く学生などの場合、親の所得税の控除にも影響が出るため、103万円を意識して勤務時間を減らしているという声が聞かれました。
しかし、年収の壁は他にも…
保育士(パート・30代)
「年収の壁でパート」
――具体的にいくら?
保育士(パート・30代)
「130万円。扶養から外れて社会保険を払うとなったらもっと稼がないといけないけど、(子育てで)稼ぐ時間が取れない」
調理師(50代)
「私は130万までで働いてるんですけど、いま時給を上げてもらっても年収130万円を超えるので、だから働く日数をセーブするとか」
パートなどで働く主婦に聞くと、意識しているのは「130万円の壁」。企業の従業員数に応じ、年収106万円以上や130万円以上になると年金などの社会保険料の負担が生じることから、この社会保険料の壁こそが、“働き控え”に繋がっているとの指摘もあります。
130万円の壁 「11月の勤務は午後だけ」
京都市内の整骨院「かどのGenki鍼灸整骨院」では、社員20人と4人のパート従業員が働いていますが、影響があるのは「130万円の壁」だといいます。
Genki鍼灸整骨院 吉村直心社長
「どちらかというと(影響が)多いのは130万円の壁。できるだけ手取りを多くするために保険に入らなくていいくらいのところで働きたいという方が多いですね。11月になると皆さん調整するのでシフトがうまく組めなかったり」
パートで働く岸さんは、普段フルタイムで働いていますが、11月のシフトを見せてもらうと…。
パート勤務 岸みゆきさん
「11月は減らして午後だけになっているんですが、あとどれぐらい働けるか」
既に午後だけの4時間勤務にするなどシフトを調整していますが、今後さらに勤務を減らす可能性もあるといいます。
パート勤務 岸みゆきさん
「子どもにお金がかかる時期でもあるし、出来れば手取りとして置いておきたい」
整骨院側も、働き控えを解消するためには130万円の社会保険料の壁の見直しが欠かせないと話します。
Genki鍼灸整骨院 吉村直心社長
「中小企業は人が少ない中で、パートであっても働いてくれるチャンスが多ければ多いほど僕たちも助かる。社会保険も含めて、働きやすいなと思ってもらえるような形があればもっと活性化するのではないかなと思います」
年収の壁を巡っては14日、自民党・公明党・国民民主党の実務者が税制改正に向けた協議をスタートします。
また、立憲民主党は13日、「130万円の壁」に関する法案を提出。年収130万円を超えて社会保険料の支払いが発生した場合に、減少した手取り分を給付で補填する内容です。
立憲民主党 階猛 衆院議員
「各種の壁がある中で、130万円の壁が一番重大な壁であるというのが我々の認識で、ここに手当をしたものであります」
「働き控えの見直しには103万円の壁とセットで130万円の壁の見直しも必要」と指摘していて、与野党に協議を呼びかけたいとしています。
「103万円は壁ではない」?
藤森祥平キャスター:
年収の壁について、今回は夫が社会保険の加入者で、その扶養に入っている妻がパートで働いているというケースで考えてみます。これは700万人あまりが該当しているケースになります。
このケースでファイナンシャルプランナーの塚越菜々子さんが指摘する2つのキーワードがあります。1つ目は▼103万円は壁ではない。2つ目が▼ラスボスは130万円、最大の壁がここなんだと。
小川彩佳キャスター:
まず1つ目の「103万円は壁ではない」。壁ではないんですか?
ファイナンシャルプランナー 塚越菜々子さん:
「昔壁だった残像」みたいなイメージを持ってもらえるといいと思います。昔は確かに影響が大きかったんですが、今は制度が変わりました。
103万円を超えるとパート本人に税金がかかってしまうと言われますが、仮に103万円を超えて104万円になったとして、増える税金の負担は大体500円ぐらいです。そう考えると、ものすごく手取りが減るというイメージにはならないと思うのでここは負担ではありません。
もう一つは、昔は「扶養を外れる」と言われ103万円に控えていた方がいましたが、今はルールが変わり、2018年からは(配偶者特別控除が)150万円まで広がったので、150万円までは夫への影響は全くありません。
今までは103万円を超えると夫の税金が増えることがありましたが、今は150万円まで夫の税金は増えないので、これに関してはもう壁ではないということです。
藤森キャスター:
パートで働く方々は、年間150万円まで働いても、その家族にとっての税負担は増えない。
塚越菜々子さん:
税金の負担は増えません。変わってからだいぶ経っているんですが、知らされるものでもないので、本人が気にしていなければ意外と知らないままの方も多いとは思います。
小川キャスター:
説明を受けなければなかなかここには注目しないかもしれないですよね。
トラウデン直美さん:
全然気づけないと思いますし、これを日々調べている人はそんなに多くないですし、誰かに言われないと気づけない。
塚越菜々子さん:
と言っても会社がわざわざ「今年からあなたは150万円ですよ」とはおそらく言わないと思うので、本人が調べないと気づかないケース。だから勘違いしたままの方も多くいらっしゃるんじゃないかなと。
藤森キャスター:
今の点で言うと150万円が一つ壁になっているということですね。
「働き控えのラスボス」は130万円?
トラウデン直美さん:
でも本当のラスボスは130万円なんですよね。
小川キャスター:
2つ目のキーワード、「働き控えのラスボスは130万円」。こちらは税ではなくて社会保障の壁ということになりますね。
藤森キャスター:
この130万円の壁を超えると今度は自分自身で国民健康保険や国民年金の保険料を支払うことになり、家族として大きく手取りが減ることになる。
塚越さんの試算を出しました。例えば年収128万円だと、手取りは約123万円にとどまる。壁を越えて年収132万円だと、国民健康保険や国民年金に加入しなければならず、手取り自体が約100万円まで減ることになります(東京・世田谷区在住の場合)。
小川キャスター:
振れ幅がかなり大きいので、これを考えると130万円までにしようという意識が働くのは無理もない話ですよね。
塚越菜々子さん:
これを払ってその代わりに何か受け取るものや得るものがあったらまた違うと思うんですが、この場合支払いが発生しても扶養に入っていると受けられるものは一切変わりません。そうなると「払っても何もないんだったら払わないで手元にお金残ってた方がいいよね」と思うのは無理はないことだと思う。
トラウデン直美さん:
税の部分と社会保障の部分で、正直区別して考えるのもややこしくて難しいんですけど、なぜこんなに複雑になっているんですか。
塚越菜々子さん:
制度がそもそも違って、考え方自体が違うのでばらついてきてしまう。パートの賃金自体がそんなに高くなかった時代は(年収の壁に)あまり関係のない人が多かったです。時給が上がるにつれてこの壁に自分が近づいていったので、見えてくる壁がいくつも現れてきたみたいなイメージが近いんじゃないかなと。
トラウデン直美さん:
ちなみにこの年収130万円のラインを超えて国民年金ではなくて、社会保険に入るっていうことは。
塚越菜々子さん:
社会保険に入ることもできないわけではないですが、会社の規模やどれくらい稼げるかによって違ってきます。実際には小さい会社だと社会保険に入るためにはかなり長い時間働かないといけないので、パートで一定の時間までに抑えたい場合は社会保険に入ることができなくて扶養を外れると国民年金・国民健康保険に入るということに。
社会保険に入ることができる方はそんなに多くなくて、ほとんどの方は130万円の壁にあたるという問題があるんですよね。
小川キャスター:
なぜこんな複雑怪奇な制度になってしまっているんでしょうか。
トラウデン直美さん:
「ここまでいくと、手取りが減ってしまう」というイメージが多いと思うので、もっとシンプルにしてほしいなと思います。もちろん社会保険の部分は制度上難しい部分もあるのかもしれませんが、税の部分に関してはこんなに壁・壁・壁としなくてももっと緩やかにシンプルな構造にならないのかなと思います。
塚越菜々子さん:
税金の方は比較的なだらかになってきてはいるんですが、社会保険と税金は別々に考えないといけないので、学生なのか主婦なのかどの層のための政策なのかによってもだいぶ違ってくるんじゃないか。その辺を総合的に考えていろいろと施策をしていく必要がある。
小川キャスター:
今後、私たちはこの議論のどのようなポイントに注目していく必要があるのでしょうか。
塚越菜々子さん:
まず数字自体がどう変わるのかっていうのもそうですし、その制度に合わせて自分たちが働き方を変えるというよりは、「自分たちがどう働きたいか」「どれくらいのお金が欲しいのか」を考えた上でどうするか、自分主体で見ていく考え方を持っていくしかないのかなと思います。
トラウデン直美さん:
釈然としないですね。
藤森キャスター:
生活が苦しいと感じる方がどんどん多くなっている中で、ちゃんと働いた分稼げるような感覚を持てるシステムにしてほしいなと思います。
小川キャスター:
数字が独り歩きしているところもありますから、私たちの「意識の壁」だったり「思考停止の壁」を越えていく努力も必要になってくるかもしれないです。
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<プロフィール>
塚越菜々子さん
ファイナンシャルプランナー
「共働き家計の金銭不安解消」を目指し資格取得
「年収の壁」などをテーマに執筆
トラウデン直美さん
環境問題やSDGsについて、積極的に発信
趣味は乗馬・園芸・旅行
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